気分転換に、万城目学『プリンセス・トヨトミ』(文春文庫、原著2009年)を読む。「まんじょうめ・まなぶ」ではなく、「まきめ・まなぶ」である。『ウルトラQ』の万城目淳が頭に刷り込まれていて、この本を手に取るまで知らなかった。
500頁を超える長編小説だが、ひたすら面白く、合間を見つけては読み続けた。もうすぐ映画も公開されるというので、もう登場人物の顔を思い浮かべながら読むことができる・・・と思っていたら、会計監査院の脇役ふたりの男女が入れ替わっていた。長身で優秀な女性「旭・ゲーンズブール」は綾瀬はるかではなく、岡田将生である。
豊臣が滅ぼされてからのち、生き残りの末裔をシンボルとして、「大阪国」が今に至るも続いている。毎年5億の日本国家予算がその存続に充てられている。大阪の大人の男はみんな知っているものの、決して口には出さない。父から息子への口伝えである。そんなアホな話はありえない、しかし大阪であるせいか、奇妙にリアルなホラ話を聴かせてもらったような良い気分である。
大阪をそんなにうろついていないため、「坂の町」という印象はない。しかし、ここで舞台となる「空掘商店街」は坂の中の商店街として実在しているし、そういえば、北井一夫『新世界物語』も、階段の多い風景を撮っていたのだった。次に大阪に足をはこぶ時は、また鶴橋で焼肉を食べるか、大正区の沖縄タウンを彷徨してみようかなどと思っていたのだが、こうなれば、空掘商店街でお好み焼きを食べるべきか。