Sightsong

自縄自縛日記

彭祥杰の写真

2011-05-18 07:00:03 | 中国・台湾

以前に北京の書店で入手した彭祥杰(ペン・シャンジー)の写真集。中国工人出版社が出版した写真家シリーズのひとつで、他にも解海?(『希望』を撮った)、楊延康(チベットやカトリックの写真群を撮った)、陸元敏(『上海人』を撮り、ロモにはまった写真家)などの写真集を出している。ところが、表紙の質がべこべこの厚紙で、皆が自由気ままに手に取る中国の書店ではもうぼろぼろになる。立ち読みして、気にいったらビニール掛け品を探すのが一番である。

写真集は3部構成になっている。サーカス一座の人びと(陝西省が多い)、新疆ウイグル自治区の綿花労働者、街角で花を売る子どもたち(これも陝西省西安が多い)。

印刷がいまひとつだが、モノクロ写真のプリント技術は良い。光の足りない状況下で、寒い空気、砂風の中での息遣いを覚える。しかし、この人たちの生活に近づき過ぎるくらい近づいているにも関わらず、そしてレンズのほうを向いているにも関わらず、何かスクリーンのような存在を間に感じてしまうのはなぜだろう。

あれこれと思いを巡らしてみたが、どうもきっかけをつかむことができない。同じ陝西省のカトリック信者たちを撮った楊延康『郷村天主教/Catholic In The Country Side』(>> リンク)には、写真家と被写体との狭間を感じない。

ウェブ上に彭祥杰の写真群があった。>> リンク

●参照 中国の写真家
陸元敏『上海人』、王福春『火車上的中国人』、陳綿『茶舗』
張祖道『江村紀事』、路濘『尋常』、解海?『希望』、姜健『档案的肖像』
劉博智『南国細節』、蕭雲集『温州的活路』、呉正中『家在青島』
楊延康、徐勇@北京798芸術区
亜牛、ルー・シャンニ@北京798芸術区
孫驥、蔣志@上海の莫干山路・M50
邵文?、?楚、矯健、田野@上海OFOTO Gallery
海原修平『消逝的老街』 パノラマの眼、90年代後半の上海
陸元敏のロモグラフィー


『アンフォルメルとは何か?』@ブリヂストン美術館

2011-05-18 00:44:24 | アート・映画

八重洲のブリヂストン美術館で開かれている『アンフォルメルとは何か? 20世紀フランス絵画の挑戦』を観る。

「アンフォルメル」など最近ではあまり聞かない運動名になってしまっている。こうして改めて多くの画家たちの作品を眺めると、近代から現代に至り噴出した異端たち、あるいはフォロワーたちを、まとめて運動に押し込めたものではないかという印象を抱いてしまう。ここでも展示されている今井俊満(素晴らしい!!)もアンフォルメル側であるし、同時代の米国中心の「抽象表現主義」(やはり、サム・フランシスジャクソン・ポロックが展示されている)と同時に観てもやはり地続きである。

それはともかく、現代の扉を開いた画家たちの作品には動悸動悸する。毒々しくないマテリアル感が何故か内臓露出を思わせるジャン・フォートリエ、大野一雄の傷痕写真のようなルーチョ・フォンタナの空間的な作品、浮遊感と夜の海のような青が素晴らしいザオ・ウーキー(趙無極)。べとべとの黒絵具を横に擦りのばし、摩擦の違いとアスペリティを利用したピエール・スーラージュによる手法は、きっとゲルハルト・リヒターに影響を与えているに違いないと思ったのだが、さて美術史的にはどうか。