デイヴィッド・マレイのライヴ映像、『Live in Berlin』(jazzwerkstatt、2007年)を観る。気になりつつ放っておいて数年、中古で発見した。「Black Saint Quartet」名義である。
David Murray (ts, bcl)
Lafayette Gilchrist (p)
Jaribu Shahid (b)
Hamid Drake (ds)
ジャリブ・シャヒドとハミッド・ドレイクは「鉄板」のメンバーだが、残念ながら、音のバランスが悪くあまりプレイを堪能できない。むしろ目立つのは、ラファイエット・ギルクリストのピアノである。2006年に亡くなったジョン・ヒックスの後を継いだ形であり、ヒックスのピアノがモーダル、流麗、抒情的であるのに対し、ギルクリストのそれはコード上で音が立ち、ギクシャクとしている。
そしてデイヴィッド・マレイのプレイ。コードから意図してかせずか外れる音色、フラジオ奏法による高音のクリシェ、決して上手いサックス奏者ではないのだろうと思う。しかし、歌手にとって声の個性が最大の武器であるように、この音とフレーズはマレイ独特の個性である。情がこもっていて、湧き出るイメージとエネルギーがあって、ブルージーだ。ジョン・コルトレーンの曲「Giant Steps」にインスパイアされたマレイのオリジナル曲、「Murray's Steps」では、頻繁なコードチェンジの中で繰り広げるマレイのソロに熱くなってしまう。やはりマレイの訴求力はいい。
惜しむらくは、バスクラの演奏が、短い曲「Banished」でしか聴くことができない。何年前だったか、バスクラのソロで新宿ピットインを(文字通り)狂乱の渦に巻き込んだマレイの姿が忘れられない。
●参照
○デイヴィッド・マレイ『Saxophone Man』(Black Saint Quartetでの2010年の演奏がある)
○デイヴィッド・マレイのグレイトフル・デッド集
○マル・ウォルドロン最後の録音 デイヴィッド・マレイとのデュオ『Silence』
○マッコイ・タイナーのサックス・カルテット(デイヴィッド・マレイ『Special Quartet』)
○ワールド・サキソフォン・カルテット『Yes We Can』