バール・フィリップス『Live in Vienna』(Quantum Leap、2006年)を観る。
Barre Phillips (b)
guest: John Hollenbeck (ds, toys, piano, etc.)
胴体の木や弦の金属といった素材感を含め、独特の芳香を放つバールのソロには魅せられてしまう。このコンサートでは、聴客に対し、楽器から学ぶのだ、楽器に働きかけるのだと話したのち、ウッドベースという大きな楽器の可能性を試すかのように、さまざまな音の色を繰り出してくる。
さらには、「What's in the cracks between the keys?」と、詩の朗読とも取れる問いを発して、確かに、音階という不連続の間に潜む魔を解き放つかのようなアルコ・ソロ。ベースは不連続ではない、連続的なのだということを思い知らされる。
後半、ゲストとして、ジョン・ホレンベックが登場し、玩具や打楽器やピアノによって奇妙な音空間を作り出す。それに入っていくバールのソロ。このホレンベックという個性をもう少し堪能したかったところではある。
DVDにはインタビュー映像も収録されており、バールは米国生まれらしからぬ歯切れの良い英語で嬉しそうに話している(みんなこんな英語だったら自分も楽なのに)。曰く、インプロヴァイザーは毎日、新しいストラクチャーとヴォキャブラリーを構築しているんだよ、と。バールが言えば説得力がある。
先日聞いたところでは、この10月に再来日し、齋藤徹さんと共演するという。歌舞伎町ナルシスでのベース・ソロもありそうだ。わたしは1998年頃に、そのナルシスでバールのソロを聴いた。真ん前に座っていたので、バールの弓をスウェーしてかわしながら聴くという贅沢だった。それをまた体感できるのかと思うと!
バール・フィリップス、ナルシス(98年頃?) Pentax MZ-3、FA 28mm/f2.8、プロビア400、ダイレクトプリント
●参照
○齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』、バール・フィリップス+今井和雄『プレイエム・アズ・ゼイ・フォール』
○リー・コニッツ+今井和雄『無伴奏ライヴ・イン・ヨコハマ』、バール・フィリップス+今井和雄『プレイエム・アズ・ゼイ・フォール』
○歌舞伎町ナルシスでのバール・フィリップス