Sightsong

自縄自縛日記

マルグリュー・ミラー逝去、チャーネット・モフェット『Acoustic Trio』を聴く

2013-05-30 23:57:25 | アヴァンギャルド・ジャズ

名ピアニスト、マルグリュー・ミラーが脳卒中で亡くなったとの報。まだ57歳だというのに。

目立って尖ったプレイをしたわけでもなく、わたしも別に熱心な聴き手ではない。ファンであるともいえない。それでも、トニー・ウィリアムスがブルーノートに吹き込んだ爽やかな諸作も、リーダー作『Wingspan』も、気に入って散々聴いていた。どっしりとして、軽やかで、常に新しい感覚があって、よくわからないが大変な技量だったのだろう。

トニー・ウィリアムスが亡くなる直前、マルグリュー・ミラー、アイラ・コールマンとのトリオで来日した際に、BN東京に聴きに行った。わたしの席は、ミラーの大きな尻の真後ろだった。その時の演奏曲メモが、演奏後にはらりと落ちて、つい拾ってしまった。誰が書いたのかわからないが、いまも大事に取ってある。

 
トニーのライヴメモ(表と裏、1996年拾う)

そんなわけで、帰宅してから、個人的な追悼のつもりで、チャーネット・モフェット『Acoustic Trio』(Sweet Basil、1997年)を聴く。

Charnett Moffett (b)
Mulgrew Miller (p)
Louis Hayes (ds)

リーダーがウルトラ・テクニシャンのモフェットであり、その技術をひたすら顕示する演奏群である。嫌味を通り越して、もの凄くカッコ良い。このとき、モフェットはなんとまだ30歳。わたしはいちどだけ、「GM Project」というグループで来日したモフェットを目の当たりにした。大きなダブルベースとエフェクターを意のままに使う姿に仰天したのだったが、そのときは20代だったということか。

そんな中でも、ミラーはいつものミラーであり、素晴らしい。冒頭の「Moon Light」ではモフェットのテクに圧倒され、3曲目のミラーのオリジナル曲「The Eleventh Hour」(『Wingspan』にも収録されていた!)では、華麗なミラーのピアノ世界を少し開陳してくれる。そして、かなり年上のルイ・ヘイズは、風圧ということばを想起させるドラミング。

亡くなってから気がついたように聴いているわけだが、どうしても惜しむ気持ちになってしまうのは仕方がない。

●参照
トニー・ウィリアムスのメモ
ルイ・ヘイズ『The Real Thing』