Sightsong

自縄自縛日記

張猛『鋼的琴/The Piano in a Factory』

2013-05-13 00:58:13 | 中国・台湾

張猛『鋼的琴/The Piano in a Factory』(2010年)を観る。広州で、20元で買った。

去年の福岡国際映画祭では、『鋼のピアノ』という邦題で上映されている。

遼寧省の田舎町。鋳造工場の労働者チェンは、リストラの憂き目にあっても、仲間と組んだバンド活動で糊口をしのいでいる。彼はアコーディオン、仲間はサックスやトランペットやヴォーカル。さらに、チェンは、妻から離婚を言い渡されるが、娘を手放そうとはしない。ただ、娘が好きなピアノがない。板とペンキで形だけのピアノを作ったりもする。そして、仲間に頼んで、鋳造工場でピアノを自作しようとする。

ジャケットの雰囲気から、ハイソな人情劇かなと思って観はじめたのだが、その予想は冒頭からあっさり裏切られる。発電所の冷却塔前で、葬式の依頼仕事をやっつけているバンドの場面から、シュールなる時空間に誘い込まれてしまう。笑いそうでひきつるような感覚。

奇妙な仲間たち。バンドの演奏ぶりも、生活ぶりも、まったく格好良くはなく、むしろセコく、ショボい。本気で怒り、誰かを追いかけまわし、殴る。嫉妬に狂い、やはりみっともなく追いかけまわし、殴る。それでも情がある。ただ、時間の進み方はノロい。そうこうしているうちに、娘は大きくなっていき、鋼のピアノは完成に近づく。

意外にも面白い作品だった。古い映画を意識したような色調も悪くない。