ウォン・カーウァイ『楽園の疵 終極版』(2009年)を観る。広州の書店で、30元だった。
オリジナル版『楽園の疵』(東邪西毒)(1994年)を再編集した作品である。
12世紀、中国西域。武侠者たちが交錯する。
人殺し稼業の者(レスリー・チャン)は、恋人(マギー・チャン)が兄と結婚し、故郷を出て、砂漠の中で暮らす。彼のもとには、流れ者(レオン・カーフェイ)が1年に1回だけ訪れ、記憶を失くすために酒を呑む。また、兄と妹との両人格を持つ女性(ブリジット・リン)が、かたや妹の心を弄んだ流れ者を、かたや兄を殺してくれと、依頼に来る。さらには、やがて視力を失う者(トニー・レオン)は、自分の妻が流れ者と関係したのではないかと疑い、さすらう。
パーシー・アドロン『バグダッド・カフェ』を想起させる、ぎとぎとに鮮やかな砂漠の風景と傾いたフレーム。あざといほどの映像だが、見事に呑まれてしまう。
登場人物たちは、裏切られ、愛を求めて、理性的とはいえない行動を続ける。記憶こそが悪さをする。しかし、忘れようとするほどに記憶が蘇ってくる、希求するものを得ようとして得られない者は、覚え続けることだ、とするメッセージが全編を覆い尽くしていて、哀しくなってしまった。