気が付かないうちに、神谷千尋の新譜『ウタ織イ』(SINPIL RECORDS、2012年)が出ていた。慌てて入手して聴いている。
『美童しまうた』(2003年)は、民謡とポップスとが絶妙に組み合わさった名作だと思っている。『ティンジャーラ』(2004年)、さらにそのあとの吹き込みでは、どんどんポップス色が強くなっていき、こちらの聴きたい神谷千尋ではなくなってしまった。
そんなわけで、注目しないでいたために気付かなかったようなものだが、ここにきて『美童しまうた』のような民謡とポップスとのブレンド率。これは嬉しい。
それにしても、この人は唄が冗談でないほど上手い。乾いた声というべきなのかもしれないが、技巧で潤いも湿りも加えられていて、聴き惚れてしまう。「ケーヒットゥリ節」や「浜千鳥」などの沖縄民謡もオリジナル曲もいい。
面白いのは、曲によって相方をつとめる弟の神谷幸昴。若いはずなのに、妙にとぼけてお爺さんのようないい声。さすが、津堅島の神谷一族。
神谷千尋(2006年) Leica M3、Summicron 50mmF2、Tri-X、フジブロ2号
●参照
○さがり花(『美童しまうた』)
○松島哲也『ゴーヤーちゃんぷるー』(『ティンジャーラ』)