香港からリヤドに向かう機内で、ジョニー・トーの最新作『名探偵ゴッド・アイ』(2013年)を観ることができた。原題は『盲探(Blind Detective)』だが、このようなおかしな邦題になったのは、「盲」を使えない日本の事情によるものだろう。改悪であることは間違いない。
全盲の探偵(アンディ・ラウ)。彼は数年前に視力を失ったが、それを受け入れ、さらに凄腕の探偵と化している。彼が使う武器は、鼻(嗅覚)だけではない。事件の被害者や加害者と同じ環境に身を置くことによって、ほとんど妄想に近い想像力を働かせ、事件の真相に迫っていく。
奇怪な手法を使うがゆえに言動がエキセントリックな刑事・探偵が登場するという設定は、これまでのジョニー・トー作品にもあった。『暗戦/デッドエンド』(1999年)も、その続編『デッドエンド/暗戦リターンズ』(2001年)もしかり。そして、『MAD探偵』(2007年)は、まさに想像力で事件の当事者に移入し、幻視するという物語だった。
話が飛びまくり、やがて事件の解決と愛の成就につながっていくストーリー展開も、やはり、過去の作品を想起させる。従って、とても面白く工夫が凝らしてはあるが、従来のジョニー・トー世界の中にとどまっており、嬉しいサプライズはない。要は、デジャヴ感満載なのだ。これだけを観れば、傑作なのだろうけど・・・。
●ジョニー・トー作品
○『ドラッグ・ウォー 毒戦』(2013)
○『高海抜の恋』(2012)
○『奪命金』(2011)
○『アクシデント』(2009)※製作
○『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(2009)
○『スリ』(2008)
○『僕は君のために蝶になる』(2008)
○『MAD探偵』(2007)
○『エグザイル/絆』(2006)
○『エレクション 死の報復』(2006)
○『エレクション』(2005)
○『ブレイキング・ニュース』(2004)
○『柔道龍虎房』(2004)
○『PTU』(2003)
○『ターンレフト・ターンライト』(2003)
○『スー・チー in ミスター・パーフェクト』(2003)※製作
○『デッドエンド/暗戦リターンズ』(2001)
○『フルタイム・キラー』(2001)
○『暗戦/デッドエンド』(1999)
○『ザ・ミッション 非情の掟』(1999)