Sightsong

自縄自縛日記

アルバート・マンゲルスドルフ『A Jazz Tune I Hope』、リー・コニッツとの『Art of the Duo』

2015-01-25 22:52:00 | アヴァンギャルド・ジャズ

気が向いて、アルバート・マンゲルスドルフを聴いている。実は、昔、新宿DUGでのライヴ盤(1971年)に馴染めずいまに至るのだが、それも美味しいものを逃してきたような気がして。

■ 『A Jazz Tune I Hope』(MPS、1978年)

Albert Mangelsdorff (tb)
Wolfgang Dauner (p)
Eddie Gomez (b)
Elvin Jones (ds)

また聴いてみようと思ったのは、エルヴィン・ジョーンズの参加によるところが大きいのだが、やはり期待以上のプレイだった。ん、どどっ、と、ボディのあらゆる箇所を叩かれ続ける感がエルヴィンならではだ。しかも油断して弛緩した部分に。

マンゲルスドルフはといえば、確かに大変なレベルのテクニシャンだったのだなと強く思い知らされる。吹きながらの肉声の混入も含めて、実に多彩な音色の群れなのだ。

編成はカルテットだが、1曲おきに、ピアノ、ドラムス、ベースそれぞれとのデュオで演奏される。それはそれで愉しいのだが、やはり全員がそろって、エルヴィンの鞭で泡を吹くくらいに煽られて演奏するほうがカラフルだ。(エディ・ゴメスのダサいベースはさほど気にならない。)

■ リー・コニッツとの『Art of the Duo』(Enja、1983年)

Albert Mangelsdorff (tb)
Lee Konitz (as)

こんな興味深いデュオがあることを知らなかった。これは変態の室内楽だ。

マンゲルスドルフのテクはここでも鮮やか。これに、まだふくよかに変貌しきる前のコニッツのアルトサックスが絡む(このセッションの数年前に吹きこまれたギル・エヴァンスとの演奏では、もっとエアが入っていたような)。緊張感が漂っているようでいて、あるいはリラックスしているようでもあって、何とも不思議。このふたりには、演奏しながらどのような時間が流れていたのだろう。

●参照
リー・コニッツ『Jazz at Storyville』、『In Harvard Square』
ケニー・ホイーラー+リー・コニッツ+デイヴ・ホランド+ビル・フリゼール『Angel Song』
ギル・エヴァンス+リー・コニッツ『Heroes & Anti-Heroes』
リー・コニッツ+ルディ・マハール『俳句』
今井和雄トリオ@なってるハウス、徹の部屋@ポレポレ坐(リー・コニッツ『無伴奏ライヴ・イン・ヨコハマ』)
ジャズ的写真集(2) 中平穂積『JAZZ GIANTS 1961-2002』


ジェレミー・ペルト『Tales, Musings and other Reveries』

2015-01-25 08:36:11 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジェレミー・ペルト『Tales, Musings and other Reveries』(High Note、2014年)を聴く。

昨年(2014年)の6月に、ニューヨーク・SMOKEでこのグループによる演奏を観たとき、9月の録音を公表していた。ライヴが鮮やかなものでもあったため、楽しみにしていた。

Jeremy Pelt (tp)
Simona Premazzi (p)
Ben Allison (b)
Billy Drummond (ds)
Victor Lewis (ds)

右チャンネルはビリー・ドラモンド、左チャンネルはヴィクター・ルイス。ふたりのドラマーがまったく異なる文脈のパルスとリズムを発するわけである。両方の音に耳をそばだてていると、そのふたつが時々刻々と形成するカオスが、何やら映像的なイメージとなって脳内に現れる。

こんなカオスの中で、ペルトのトランペットは奇をてらうことなく真ん中を突き進む。いやこれは聴けば聴くほど素晴らしい。ふと、何年か前に来日したMLBのライアン・ハワードのバッティングを思い出す。ハワードは、あらゆる日本投手の球を余裕をもって迎え、ただシンプルに、驚嘆するような打球を打ち返していた。

クリフォード・ジョーダンの「Glass Bead Games」など曲も良い。ペルトのこの路線をもっと続けて聴きたいところ。


ジェレミー・ペルト、2014年6月、SMOKE(NY) 

●参照
ジェレミー・ペルト@SMOKE
ジェレミー・ペルト『Men of Honor』
ルイ・ヘイズ『Dreamin' of Cannonball』(ペルト参加)