Sightsong

自縄自縛日記

アルバート・"トゥーティー"・ヒース『Philadelphia Beat』

2015-03-01 23:24:26 | アヴァンギャルド・ジャズ

「大」が付くヴェテラン・ドラマーのアルバート・"トゥーティー"・ヒースが、新作『Philadelphia Beat』(Sunny Side、2014年)を出した。今年で80歳、それに対してピアノのイーサン・アイヴァーソンは42歳。まあ、そんな興味で聴いてもいいじゃないですか(誰に言っている)。

Albert "Tootie" Heath (ds)
Ethan Iverson (p)
Ben Street (b)

そんなわけで、生きるバップを中心としたピアノトリオであり、拍子抜けするほど普通である。しかしそれは最初から分かって聴いている。

ヒースのドラムスにはいろいろな得意技があり、ドタバタする音を聴いていると何だか嬉しくなってくる。アイヴァーソンはヒースをリスペクトした演奏。ジョン・ルイス、セロニアス・モンク、ユービー・ブレイク、バッハなど様々な曲を弾きこなすのはアイヴァーソンならではか。ルイスとかモンクのように放っておいても浸み出てくるような体液は見えないが、何度も聴いていると味を感じてくるのはなぜだろう。


クリス・チーク『Blues Cruise』

2015-03-01 07:44:58 | アヴァンギャルド・ジャズ

クリス・チーク『Blues Cruise』(Fresh Sound、2005年)を聴く。

Chris Cheek (ts, as, ss)
Jorge Rossy (ds)
Brad Mehldau (p, fender rhodes)
Larry Grenadier (ds)

クリス・チークのサックスの魅力は、突き抜けた奇抜な音を出さず、ゆったりと揺れながら、酸っぱいようなサウンドを発することだろうか。ビブラートもきわめて繊細にしてなめらか。

それゆえカーラ・ブレイやアンディ・シェパードの音楽との親和性が高いのかなと思ってみる。スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』において陶然とさせられたのは偶然ではない。ここでもその音世界が満載。ブラッド・メルドーのピアノが刺さったことはないのだが、フェンダーローズは抜群に良い。

●参照
フィリップ・ル・バライレック『Involved』(クリス・チーク参加)
スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』(クリス・チーク参加)


若松孝二『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

2015-03-01 00:21:02 | 政治

若松孝二『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008年)を観る。偶然、ちょうどあさま山荘でのメンバー検挙と同じ日だった(1972年2月28日)。

あさま山荘事件への対処を綴った佐々淳行氏の本は、「なぜそれが起きたのか」という観点がまったく欠落したものであった。連合赤軍の一員として死刑が確定した坂口弘氏の手記や吉野雅邦氏についての本などを読んでも、割り切れない思いばかりが残った。パトリシア・スタインホフ氏が事件について取材しまとめた本(『死へのイデオロギー』)には、ある程度の共感を覚えたものの、どうしても第三者的なフィルターが気になるものでもあった。

そんなわけで、この映画が企画され資金集めをしていたときから関心は少なからずあったのだが、あまりにも怖くて、結局いままで接近できなかった。

ようやく観たあとも、やはり割り切れない思いだけが残る。なぜ、理想を掲げた者たちが異常な権力構造を支えあったのか? なぜ、論理と知とが積極的に排除されて精神至上主義が暴走したのか? なぜ、閉じた変革運動となってしまったのか?

太田昌国氏は、この連合赤軍リンチ事件を含めた一連の凄惨な事件によって、「変革にシンパシーを持つ人たちの心が離反し、大衆的な共感が冷め、多くは高度経済成長に満足するようになってしまった」と語っている。

ところで、若松孝二『天使の恍惚』(1971年)は事件を先取りしてしまったような面もある映画だが、そこで横山リエが歌う「ここは静かな最前線」を、この映画では、渚ようこが歌っている。若松監督自身にも、『天使の恍惚』と事件とを結びつける気持ちがあったのか、それともただのノスタルジーだったのか。

●参照
『狂気の正体 連合赤軍兵士41年目の証言』
太田昌国の世界「60年安保闘争後の沖縄とヤマト」
『田原総一朗の遺言2012』(『永田洋子 その愛 その革命 その・・・』)
渚ようこ『あなたにあげる歌謡曲』、若松孝二『天使の恍惚』
オリヴィエ・アサイヤス『カルロス』