Sightsong

自縄自縛日記

ポール・モチアンのトリオ

2015-03-06 06:27:58 | アヴァンギャルド・ジャズ

ドラムスの個性ということでいえば確実に歴史に名を残す存在であるものの、実は、ポール・モチアンのリーダー作をさほどは聴いていない。というのも、ほとんどの作品に参加しているテナーのジョー・ロヴァーノが少し苦手だというそれだけの理由。そんなわけで、以下の2枚をよく聴く。

■ 『Le Voyage』(ECM、1979年)

Paul Motian (ds, perc)
J.F. Jenny-Clark (b)
Charles Brackeen (ts, ss) 

■ 『Lost in a Dream』(ECM、2009年)

 

Chris Potter (ts)
Jason Moran (p)
Paul Motian (ds)

両方ともトリオだが、前者はベース、サックスと、後者はピアノ、サックスと。フォーマットから言えばピアノなしの前者のトリオのほうが、自由度が高いように思えて好みなのだが、ここでは、両方とも震えるほど素晴らしい作品である。

どちらかと言えば、強度の高いJ.F.ジェニー・クラークのベースが前面に出てこない分、後者のトリオでは、モチアンのドラムスが全体を支配している。そのことは、共通して演奏している「Abacus」を聴き比べると明らかに思えるのだがどうか。

モチアンの伸び縮みするドラムスは、実に柔軟に踊り場を作り出し、サックスを招き入れる。あるいはサックスに合わせて踊り場を作り出す。このあたりがモチアンの魔術である。その結果、何故だろう、泣きのサックスが生まれる。やや荒っぽいチャールズ・ブラッキーンも、完璧に音をコントロールしているようなクリス・ポッターも良い。

ところで、森口豁さんのドキュメンタリー『広場の戦争展・ある「在日沖縄人」の痛恨行脚』(1979年)だったか何だったかにも、『Le Voyage』が使われていたような記憶があるが、ご本人には確認していない。

●参照
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』
ビル・マッケンリー『Ghosts of the Sun』
ジェリ・アレン+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Segments』
ポール・ブレイ+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Memoirs』
ゴンサロ・ルバルカバ+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン
キース・ジャレット+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Hamburg '72』
70年代のキース・ジャレットの映像
キース・ジャレットのインパルス盤
ビル・エヴァンス『The Complete Village Vanguard Recordings, 1961』