Sightsong

自縄自縛日記

ルイス・ブニュエル『黄金時代』

2015-03-29 23:36:11 | アート・映画

アンソロジー・フィルム・アーカイヴズに足を運び、ルイス・ブニュエル『黄金時代』(1930年)を観る。ブニュエルの監督第2作であり、前作『アンダルシアの犬』に続き、脚本をサルバドール・ダリと協力している。

1時間ほどのフィルムは奇怪なプロットで埋め尽くされている。

イカれた男が登場し、泥の中で女といちゃついているところを取り押さえられる。連行される途中、男は偏執狂的に(ダリ的に)、目に入った犬や虫をことごとく殺そうとする。逃れおおせて入ったパーティー会場では、うっかり自分の服にワインをこぼした老婦人に激昂し殴り、庭に逃亡。泥の中から引き離された女とようやく遭うことができ、庭で抱き合うも、ふと目に入った彫像の女の足が気になり、舐め始める。女もうっとりして舐める。

道徳を嘲笑し、倫理には無配慮で応え、倒錯、分裂、フェティシズムといった人間の業をなんのためらいもなくこれ見よがしに提示する映画。ブニュエルもダリも天才だ。公開当時、右翼がスクリーンに爆弾を投げつける事件が起きて、その後50年間公開が封印されたというが、当然かもしれない。

●参照
『夜顔』と『昼顔』、オリヴェイラとブニュエル


ジェームズ・マーシュ『博士と彼女のセオリー』

2015-03-29 15:11:05 | 思想・文学

機内で、ジェームズ・マーシュ『博士と彼女のセオリー』(2014年)も観る。

スティーヴン・ホーキングの自伝『My Brief History』をもとにしたと思われる伝記映画である。ケンブリッジでひときわ目立つ天才だったホーキングが、次第に、筋肉の制御ができなくなる難病に侵されていく。それを知りながらホーキングと結婚した女性は、しかし、重荷に耐えられなくなっていく。結果として、ふたりは離婚し、それぞれ別の再婚相手を見つけることになる。そしてホーキングは時間に関する理論を構築し、世界中から称賛される。

観るまではベタベタのお涙頂戴ものかと決めつけていたのだが、そうでもない。結婚式などの場面を、8mmのホーム・ムーヴィーらしき処理をして見せるところも悪くない。

決定的に面白いのは、自伝を読んでホーキングの口癖だなと思った「・・・だ、but・・・」が、映画でも再現されていることである。

●参照
スティーヴン・ホーキング『My Brief History』


アレハンドロ・G・イニャリトゥ『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

2015-03-29 14:54:30 | 北米

飛行機のプログラムで、アレハンドロ・G・イニャリトゥ『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)を観る。

ジャズファン的には、アントニオ・サンチェスのドラムスが目玉ということになる。もちろんそれは興奮するほどカッコ良いものなのだが、それは置いておいても面白い。プライドが高く、短期で、やることなすことうまくいかない男(マイケル・キートン)に共感必至。映画に登場する誰もが弱く、ちょっと優しい言葉をもらえただけで救われるということにも、やられてしまう。