Sightsong

自縄自縛日記

ローガン・リチャードソン『Shift』

2015-11-05 23:40:26 | アヴァンギャルド・ジャズ

ローガン・リチャードソン『Shift』(Blue Note、2013年)を聴く。

Logan Richardson (as)
Pat Metheny (g)
Jason Moran (p, fender rhodes)
Harish Raghavan (b)
Nasheet Waits (ds)

日本先行発売というマーケティングへの力の入れようは、やはりパット・メセニーの参加によるものだろう。ただ、何度聴いても、リチャードソンとの相性がさほど好いとは思えない。それはたぶん、メセニーの太いマーカーでくっきり描くようなギターと、滑らかではっきりしたラインを描くリチャードソンのアルトとが妙に似ていて、相乗効果など生まれていないからである。

リチャードソンのアルトには、時にワビサビ的な抒情性もあるのだから、ギターとアルトが押してばかりではつまらない。『Cerebral Flow』におけるマイク・モレノのほうが良い。

ジェイソン・モランの知的できらびやかなピアノと、ナシート・ウェイツの柔軟な変拍子は見事。

●参照
ローガン・リチャードソン『Cerebral Flow』(2006年)
パット・メセニーとチャーリー・ヘイデンのデュオの映像『Montreal 2005』(2005年)
パット・メセニーの映像『at Marciac Festival』(2003年)
デイヴィッド・サンボーンの映像『Best of NIGHT MUSIC』(1988-90年)(メセニー参加)
映像『Woodstock Jazz Festival '81』(1981年)(メセニー参加)
アンブローズ・アキンムシーレ『The Imagined Savior is Far Easier to Paint』(2014年)(ラガヴァン参加)
カート・ローゼンウィンケル@Village Vanguard(2015年)(ウェイツ参加)
デイヴィッド・マレイ・ビッグ・バンド featuring メイシー・グレイ@ブルーノート東京(2013年)(ウェイツ参加)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、13年)(ウェイツ参加)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)(ウェイツ参加)
デイヴィッド・マレイ『Be My Monster Love』、『Rendezvous Suite』(2009、12年)(ウェイツ参加)


アンドレ・マルケス『Viva Hermeto』

2015-11-05 00:33:53 | 中南米

アンドレ・マルケス『Viva Hermeto』(Boranda、2014年)を聴く。

Andre Marques (p)
John Patitucci (b)
Brian Blade (ds)
Rogerio Boccato (perc) (6)

1曲だけパーカッションが参加しており、また1曲だけピアノソロが挿入されているが、他はピアノトリオによる演奏である。しかも、タイトル通り、すべてブラジルのレジェンド、エルメート・パスコアールの曲ばかり。

愉しそうに固いベース・テクニックを披露するジョン・パティトゥッチも、やはり愉しそうにさまざまな大技中技小技を展開するブライアン・ブレイドも気持ちがいい。そして名前を知らなかったアンドレ・マルケスのピアノは、いかにも難しそうなエルメートの曲を、左手と右手を微妙にずらして見事に弾きまくっている。それもそのはずで、マルケスは、エルメートのサイドマンを20年も務めたピアニストであるらしい。

それにしても、狂騒的に浮かれ果てて執拗に変奏する、エルメートの変わった曲の数々。循環し、繰り返し、果たしてどこに連れていかれるのか愉快の極みである。抒情的な名曲「Bebe」は、ガリアーノ=ポルタル『Blow Up』における名手ふたりのデュオにも決して負けていない。エルメート自身によるピアノ・ソロは、また別の時空間で我が道をゆく感じではあるけれども。そして、『Slaves Mass』の冒頭を賑々しく飾った「Tacho」。他にもどこかで聴いたようなエルメート感覚が散りばめられている。好き好きエルメート。

●参照
2004年、エルメート・パスコアル
エルメート・パスコアルのピアノ・ソロ