Sightsong

自縄自縛日記

櫻澤誠『沖縄現代史』

2015-11-06 07:20:30 | 沖縄

櫻澤誠『沖縄現代史 米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで』(中公新書、2015年)を読む。

戦後の沖縄の歴史を、現在のありようまでまとめている通史。同じ題名ながら、新崎盛暉『沖縄現代史』が新崎氏の観点で貫かれたものであるのに対し、本書はより網羅的であるように思える。

とは言え、分厚い分析のなかから明らかに見えてくるものがある。

日本への「復帰」が基地的なものから脱却せんとした運動であったこと。その願いは完全に意図的に裏切られ、まったく逆の結果となったこと。「保守」と「革新」とは基地に対する考えでは分類しがたいこと。沖縄経済の自律化は基地だけでなく「本土」への裨益を最優先する形で疎外され、最初から「ザル経済」化していったこと(すなわち、オカネが通過するだけで付加価値は生まれない)。基地経済は沖縄経済を疎外していることが、沖縄ではもはや常識化していること。「島ぐるみ」の抗する対象は、「対米軍」ではなく「対日本政府」となっていること。「オール沖縄」はあくまで日米安保を前提として基地縮小を求める運動であること。

とても凝縮してあり、ざっと通読するだけでは読み落としてしまうことが少なくないだろう。しかし一読されるべき良書。

●参照
新崎盛暉『沖縄現代史』、シンポジウム『アジアの中で沖縄現代史を問い直す』
由井晶子『沖縄 アリは象に挑む』
ガバン・マコーマック+乗松聡子『沖縄の<怒>』
いま、沖縄「問題」を考える ~ 『沖縄の<怒>』刊行記念シンポ
林博史『暴力と差別としての米軍基地』
豊下楢彦『昭和天皇・マッカーサー会見』
琉球新報『普天間移設 日米の深層』
琉球新報『ひずみの構造―基地と沖縄経済』
沖縄タイムス中部支社編集部『基地で働く』
前泊博盛『沖縄と米軍基地』
屋良朝博『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』
渡辺豪『「アメとムチ」の構図』
渡辺豪『国策のまちおこし 嘉手納からの報告』
高野孟『沖縄に海兵隊はいらない!』
高橋哲哉『沖縄の米軍基地 「県外移設」を考える』
高橋哲哉『犠牲のシステム 福島・沖縄』
前田哲男『フクシマと沖縄』
宮城康博・屋良朝博『普天間を封鎖した4日間』
エンリコ・パレンティ+トーマス・ファツィ『誰も知らない基地のこと』
押しつけられた常識を覆す
来間泰男『沖縄の米軍基地と軍用地料』
佐喜眞美術館の屋上からまた普天間基地を視る
『世界』の「普天間移設問題の真実」特集
大田昌秀『こんな沖縄に誰がした 普天間移設問題―最善・最短の解決策』
浦島悦子『名護の選択』
浦島悦子『島の未来へ』