Sightsong

自縄自縛日記

崎山多美『うんじゅが、ナサキ』

2017-01-05 22:36:11 | 沖縄

崎山多美『うんじゅが、ナサキ』(花書院、2016年)を読む。

主人公は突然わけのわからない力に呼び止められ、奇妙な世界を旅する。力とはシマコトバであり、ゆく先は海であったり地下壕であったりする。言ってみれば崎山多美お得意の展開だが、過去の作品に比べても、そのわけのわからなさは際立っているようだ。崎山多美版の『不思議の国のアリス』のようなものだ。

理解してはならぬ、それはすなわち、世界と歴史を「括る」暴力に身をゆだねてはならないからだ。主人公を襲う無数の理解できぬ存在と理解できぬコトバは、それが歴史そのものであることを意味する。そして不可能であると知りながら、無数の声を記録してゆこうとすることとは何か。

イマジネーションを喚起してやまない過去の崎山作品ほどの傑作ではないが、この意図的な「放置プレイ」が、つぎの声を呼び寄せるようである。

●崎山多美
崎山多美講演会「シマコトバでカチャーシー」
崎山多美『ムイアニ由来記』、『コトバの生まれる場所』
崎山多美『月や、あらん』
『現代沖縄文学作品選』
『越境広場』創刊0号
『越境広場』1号


ブーガルー・ジョー・ジョーンズ『What It Is』

2017-01-05 07:35:52 | アヴァンギャルド・ジャズ

ブーガルー・ジョー・ジョーンズ『What It Is』(Prestige、1971年)を聴く。

ピーター・バラカンが『ミュージック走査線』(新潮文庫、1993年)でジャケットを掲載していた盤であり、ずっと気になっていた。運よくアナログのオリジナル盤を手に入れた。なお、同書ではバラカン氏は多くを語っていないものの、かれについて「限りなくヒップ」だとの賛辞を贈っている。

Boogaloo Joe Jones (g)
Grover Washington Jr. (ts)
Butch Cornell (org)
Jimmy Lewis (b)
Bernard Purdie (ds)
Buddy Caldwell (congas, bongos)

ギターにオルガン、甘いテナーサックスと、典型的といえば典型的なソウル・ジャズのフォーマットだが、だからこそ異常なほど気持ちがいい。アナログの音であるからさらに気持ちがいい。

ブーガルーのギターは線が太く歌いまくる。確かにグラント・グリーンの影響なんかもあるのかな。そして、リズムを取っているだけなのにいつもカッチョいいと思えてしまう、バーナード・パーディのドラムス。いちどロンドンで、まさにグリーンの息子のギターとリューベン・ウィルソンのオルガンとのトリオを観たが、酸欠になって倒れかけるほど興奮した。パーディはどや顔でキメキメのドラムスを叩いているだけなのに。(リューベン・ウィルソンにお釣りをもらったこと

曲は、ブーガルーのオリジナルに加え、ビル・ウィザーズの「Ain't No Sushine」、キャロル・キングの「I Feel the Earth Move」といったソウル~ロックの流行歌。馴染みがないのでYou Tubeで原曲を探して聴き、改めて本盤を再生するとまた愉しい。

ジョー・ジョーンズはフィリーとパパだけではない。

●ブーガルー・ジョー・ジョーンズ
ブーガルー・ジョー・ジョーンズ『Right on Brother』
(1970年)