片岡義男『万年筆インク紙』(晶文社、2016年)を読む。
中身は、タイトル通りである。つまり、万年筆とインクと紙。あえて言えば、あとはボールペンと、出たてのワープロ。
著者は、たとえば、万年筆で敢えて書くことが、その書かれたことにとって世界とのかかわりがどのようなものかといったことや、あるいは、ブルーブラックというインクの色がどのような意味を持つのかといったことについて、折に触れ、考察する。というよりも、印象を語る。
はっきり言って、そんなことはどうでもいいのだ。文房具愛好家が、自分自身の常軌を逸したさまに不安を抱き、あれこれと落としどころを見つけようとしているだけの話である。面白いのは文房具への具体的な執着という各論なのであり、わたし自身は常軌は逸してはいないと信じるものの、わかるわかると思いながら読んでしまう。
つまり、大事なのは、リーガルパッドに万年筆で書くと盛大に滲むことであり、ライフのノーブルノートはなかなか良いことであり、インク瓶の形が重要なことであり、エルバンのローラーボール(万年筆用のカートリッジを使う)の書き心地が渋いことであり、三菱鉛筆のジェットストリームの書き心地は最高だが軸がダメなことであり、万年筆とインクと紙の相性が永遠の課題ということであり、・・・・・・。
●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
万年筆のペンクリニック(6)
万年筆のペンクリニック(7)
本八幡のぷんぷく堂と昭和の万年筆
沖縄の渡口万年筆店
鉄ペン
行定勲『クローズド・ノート』
モンゴルのペンケース
万年筆のインクを使うローラーボール
ほぼ日手帳とカキモリのトモエリバー
リーガルパッド
さようならスティピュラ、ようこそ笑暮屋
「万年筆の生活誌」展@国立歴史民俗博物館