金大禮『天命(Supreme)』(Sound Space、1995年)を聴く。
Kim DaeRye (vo)
Park ByungWon (piri, vo)
Kim GiBong (jing, piri)
Park DongMae (janggo, vo)
金大禮(キム・デレ)は韓国・珍島の歌い手である。
女性ではあるが男性のような迫力のある声だ。腹の底からなのか、全身からなのか、生命力のようなものが喉を伝わり、頭蓋と上半身を震わせた音が絞り出される。これはコブシと言うには単純に過ぎるだろう。そして他の歌い手や、太鼓や、笛の音とともに共鳴し、声が絞り出されている途中にもその性質や音量が変貌してゆく。とんでもない。
先日、里国隆のドキュメンタリー『黒声の記憶』について齋藤徹さんに話したところ、テツさんが、里国隆に似た歌い手として挙げた人である。テツさんによれば、彼女はムソク(シャーマン)の家系ではないが啓示を受けてムソクに入り、練習の途中で声が変わったところで「今、神が降りました」と言ったともいう。また、彼女のチン(jing、銅鑼)の手で持つところは髪の毛であったともいう。さらには、CDで聴いてもこの迫力に魅せられるのではあるが、このバイブレーションは周囲に居た人を巻き込んだはずだ、とも(里さんについても、近くで聴くと、苦痛で逃れられないような体験であったとの証言があった)。
調べてみると、2011年に亡くなったようだ。
●参照
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
パンソリのぺ・イルドン(2012年)
金石出『East Wind』、『Final Say』(1993、97年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、94年)
イム・グォンテク『風の丘を越えて/西便制』(1993年)
『人はなぜ歌い、人はなぜ奏でるのか』 金石出に出会う旅