Sightsong

自縄自縛日記

飽きもせずに蒲田の三州屋と喜来楽(と、黒色戦線社)

2017-02-11 14:11:52 | 関東

編集者のMさん、OAM(沖縄オルタナティブメディア)のNさんと、久しぶりの蒲田で呑んだ。庵野秀明+樋口真嗣『シン・ゴジラ』において蒲田がゴジラに襲われ仰天してから、たぶん蒲田には足を運んでいなかった。なんど来てもいい街である。しかも今回はジモティーのおふたりがいて心強い。

まずは東口の三州屋。鳥豆腐で暖まり、さらに鯛かぶと煮、牡蠣フライ、葱ぬた、どじょうの丸煮など、どれもこれも旨い。

ところで、神田や飯田橋にも同じ名前の店があるのだが、どうやらここが本店であるらしい。それではやはり多く見かけるもつ焼きの加賀屋はどうなのだろう。

次に東急線の横を歩いてゆき、台湾料理の喜来楽。(「シライル」と読むらしいが覚えられない。)

たぶん3回目なのだが、相変わらず強烈である。お店のおばあさんは過剰にフレンドリーで、タッパーに入ったビーフシチューをわれわれ3人の鼻元に近づけて匂いを嗅がせたり、大蒜味の浅蜊の汁にご飯を入れるべきだと強く薦めるので、じゃあ、と頼むと、ご飯がなかったり、お孫さんの写真を何度も見せてくれたり。高邁なるテーマの話をしようとしていたが、まったくできなかった(笑)。

そんな過剰さが好きで、また結局薦められるままに食べることになる料理も旨いので、何度も来るわけなのだが。

そんなわけで、ペースを完全に奪われ、3軒目にと思っていたジャズ喫茶・直立猿人には行けず仕舞。

何でもMさんによれば、ここには昔、黒色戦線社というアナキズム関連の出版社があった。確かに見せていただいた『金子文子歌集』の奥付に書かれた住所を確認すると、いまの直立猿人がある場所。

●参照
飽きもせずに蒲田の東屋慶名
飽きもせずに蒲田の鳥万と喜来楽
蒲田の鳥万、直立猿人
蒲田の喜来楽、かぶら屋(、山城、上弦の月、沖縄)
蒲田のニーハオとエクステンション・チューブ
「東京の沖縄料理店」と蒲田の「和鉄」


川下直広『漂浪者の肖像』

2017-02-11 11:40:33 | アヴァンギャルド・ジャズ

川下直広『漂浪者の肖像』(off note、2005年)を聴く。

Naohiro Kawashita 川下直広 (ts)
Masaru Watanabe 渡辺勝 (vo, p, g) (track 6-9)
Hiroshi Funato 船戸博史 (b) (track 8-10)
Takero Sekijima 関島岳郎 (tp) (track10)
Kanji Nakao 中尾勘二 (ds) (track10)
Yuriko Mukoujima 向島ゆり子 (vln) (track10)
Takero Fukui 福井岳郎 (Charango) (track 10)

何しろ川下さんのテナーである。濁っていて、情そのもののようなヴィブラートがあって、聴く者は共振してしまうのである。

昨年末に(2016年12月23日)、新宿ゴールデン街のナベサンにおいて2メートルの距離でじっくりとこの音を体感することができた(川下直広@ナベサン)。企画そのものが、本盤を川下さんとオフノートの神谷さんが聴いて再発見したことによるものだったと記憶している。そのときも、本盤に収録されている「St. Thomas」、「La Vie En Rose」、「Que Sera Sera」なんかを吹いていた。

本盤も完全ソロだと思い込んで聴いていたところ、突然6曲目に渡辺勝さんの声が出てきてびっくりした。ダンディで味わい深く、川下さんのテナーと本当によくマッチする。「Truth」は、なってるハウスでのライヴ(渡辺勝+川下直広@なってるハウス)のときに聴いて印象に深く残った曲。

そして最後の10曲目は、船戸・関島・中尾・向島・福井という素晴らしい面々を迎えての「Comme A La Radio(ラジオのように)」。いや濁りと情とがますます増していて、聴き入ってしまう。川下さんは『RAdIO』カセットテープ版でも『RAdIO』CD版でもこの曲を吹いていた。個の賑々しさを出した表現は、ブリジット・フォンテーヌがアート・アンサンブル・オブ・シカゴを迎えて吹き込んだときから曲に似つかわしいものである。またシャンソンの声と向島ゆり子さんのヴァイオリンとが重なるようで、喜多直毅さんの演奏でもそのように感じられた(喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器)。

さて川下さんの新たな艶歌集の制作が、つげ忠男さんとのコラボレーションのもと進んでいるようで、とても楽しみなのだ。オフノートの神谷さんのツイッターによれば、つげ忠男さんは、「田端義夫の『かえり船』は欠かせませんね」と言っているそうである。

●川下直広
川下直広@ナベサン(2016年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2016年)
渡辺勝+川下直広@なってるハウス(2015年)
『RAdIO』(1996, 99年)
『RAdIO』カセットテープ版(1994年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』(1988年)