Sightsong

自縄自縛日記

小泉定弘『明治通り The Meiji Dori』

2017-02-19 11:38:06 | 関東

小泉定弘さんの写真集『都電荒川線 The Arakawa Line』と、『隅田川 The Sumida』にサインをいただいたとき、写真集が三部作であり、それは実は重要なメッセージを含み持つことを告げられ仰天した。つまり、「都電荒川線」が12キロ、「隅田川」が23キロ、そして「明治通り」が33キロ。このようなコンセプトを平然と使い語る小泉さんは何者なのか。

そんなわけで、ようやく、残る『明治通り The Meiji Dori』(1988年)を入手できた。

言うまでもなく明治通りは環状道路であり、大正の東京市における都市計画の一環として開発された。1921年に着工され、そして1932年には「大東京都の中間部環状線」の名称が募集されている。審査結果として残った名称は「明治通」と「環城通」。しかし昭和通と大正通があって明治通がないという理由で採択されたという。

この写真集は、明治通りの端から端までをひたすら撮った作品集である。わたしなどは自動車を運転しないから、駅を中心に場所や風景を認識する。そのような蟻の眼でも、古いものと新しいものとが混在することを見出すことができるのが、東京の面白さである。

一方、このように高いところにのぼって道路の流れを俯瞰する眼で見ても、やはり、古いものと新しいものとが混在している。一見、いまの東京と変わらない。しかし、馴染みのある場所をじろじろ見ると、変わるところは変わっている。渋谷なんてその典型であり、この写真にある渋谷は、わたしが上京してきたころの風景だ。勅使河原宏『他人の顔』に登場する渋谷はもっと古く、ぜんぜん違う。

 

ちょうど町屋で飲み食いする機会があったので、新三河島の歩道橋から撮られた風景と同じところをスマホに記録した。変わらないように思えて、実はかなり変わっている。それなりに大きなビルが建ち、また、阪神淡路大震災以後だろうか、京成線の高架の補強工事がなされている。30年近く経っているのだから当然である。一方で、新三河島駅のホームやパチンコ店など、まったく同じように見える。


写真集(1988年)


現在(2017年)

●参照
小泉定弘写真展『漁師町浦安の生活と風景』
小泉定弘『都電荒川線 The Arakawa Line』
小泉定弘写真展『小さな旅』


ジェレミー・ペルト『Make Noise!』

2017-02-19 10:27:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジェレミー・ペルト『Make Noise!』(High Note、2016年)を聴く。

Jeremy Pelt (tp)
Victor Gould (p)
Vincente Archer (b)
Jonathan Barber (ds)
Jacquelene Acevedo (perc) 

このところ、ジェレミー・ペルトは普通のジャズ・フォーマットに回帰し集中しているように見える。本盤もクインテットというべきか、カルテット+パーカッションというべきか。

ただ、『Tales, Musings and other Reveries』(2014年)やそれに先立つSMOKEでのライヴ(2014年)でもみられたように、きっと、打楽器をふたりとして強烈で複雑なビートを創りだし、その上で堂々としたトランペットを吹く路線の継続でもある。このビートが聴く者をボディブローのように攻める。聴けば聴くほど快感を覚える。

それもペルトの力強い剛球があってのことである。どこかで、ペルトはまろやかな音色で聴かせるトランぺッター云々と書いてあったが、とんでもない。ライヴを観れば、球の重さに驚くことだろう。

●ジェレミー・ペルト
ジェレミー・ペルト『#Jiveculture』(2015年)
ブラック・アート・ジャズ・コレクティヴ『Presented by the Side Door Jazz Club』(2014年)
ジェレミー・ペルト『Tales, Musings and other Reveries』(2014年)
ジェレミー・ペルト@SMOKE(2014年)
ジャズ・インコーポレイテッド『Live at Smalls』(2010年)
ジェレミー・ペルト『Men of Honor』(2009年)
ルイ・ヘイズ『Dreamin' of Cannonball』(2001年)