KAAT神奈川芸術劇場において、『独儀:七つの息』と題されたジェン・シューのソロ・パフォーマンスを観る(2017/2/14)。
Jen Shyu (vo, dance, instruments)
ジャズ・リスナーにも見えないオーディエンスはどのような人たちなのだろう、日本人はむしろ少なかった。その多民族・多国籍な様子が、シューのパフォーマンスに相応しいようにも思えた。
ステージ上には、台湾の丸いリュート、韓国の琴、ピアノ、ジャワの赤い布などが置いてある。シューはそれらを使い、アジアの湿気が感じられるような物語を、弱弱しくも力強くもある声により、多言語で展開した。英語はわかっても他のことばは皆目わからない。韓国のパンソリは、盲目の男が娘と再会する物語のようであった(シュー自身が、パフォーマンスの途中で休憩を挟み、何を隠すこともないように説明した)。彼女のルーツは東ティモールと台湾である。おそらくパンソリは伝統という観点での「本物」ではない。そうなれば他の言語と文化によるパフォーマンスも「本物」かどうかわからない。
しかし彼女のパフォーマンスを魅力的なものにしているのは、そのような伝統の相伝ではなく、広いアジアを自身の裡に取り込み、表現として吐き出すという、越境性と個人性なのだった。
●参照
ジェン・シュー『Sounds and Cries of the World』(2014年)