Sightsong

自縄自縛日記

オーネット・コールマン『Trio Live / Free Trade Hall Manchester 1966』、『Who's Crazy?』

2018-08-04 11:24:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

オーネット・コールマン『Live Free Trade Hall Manchester 1966』(Hi Hat、1966年)を聴く。

Ornette Coleman (as, tp, vln)
David Izenzon (b)
Charles Moffett (ds)

1966年5月の英国ツアーにおいてラジオ放送した音源とのこと。デイヴィッド・アイゼンソン、チャールス・モフェットとのトリオであり、全盛期の(全部全盛期かもしれないが)かれらの音が悪いわけはない。ちょっと音質がこもったような感じだが気にならない。それに、名曲「European Echoes」を冒頭にプレイし、最後には抑制する「Sadness」で締めくくっている。

いつでもそうなのだが、アイゼンソンの不穏なアルコは絶品だし、モフェットのエネルギーを直出しするようなドラミングも良い。オーネットはエド・ブラックウェルとも多く共演しているわけだが、原始的に跳躍するような感覚に共通点がある。(そういえば、モフェットは「G.M. プロジェクト」の一員として来日予定だったところ直前にキャンセルとなり、結局観ることができなかった。代役のドラマーが誰だったのか覚えていない)

とは言え、同じトリオによる『Town Hall 1962』(1962年)、『Chappaqua Suite』(1965年)、『Golden Circle』(1965年)における張り詰めたような緊張感はここでは、それほどには創出されていない。Hi Hatからの別の発掘盤『Trio Live / Tivoli Koncertsalen Copenhagen 1965』は『Golden Circle』の少し前であり、同様に、ジャズ史に屹立する傑作群と比べれば少し訊き劣りがする。

本盤と同じ1966年の初頭に同じメンバーで収録された『Who's Crazy?』と改めて聴き比べてみてもやはりその印象である。冒頭の「January」は中盤に(そう書いてはいないが)「Sadness」に移行する。このときの息を呑むような感覚は素晴らしいものだが、この収録のときの映像『David, Moffett and Ornette』を観ていたからなおさらそう思うのかもしれない。同映像には最後の曲を吹く場面も収録されており、浮かれたイカレポンチの様子が忘れられない。いまあらためて聴いても笑いだしそうになってくる。しかもそのまま「European Echoes」になだれ込むのだ。もう最高。

●オーネット・コールマン
オーネット・コールマン『Waiting for You』(2008年)
オーネット・コールマン『White Church』、『Sound Grammar』(2003、2005年)
オーネット・コールマン&プライム・タイム『Skies of America』1987年版(1987年)
シャーリー・クラーク『Ornette: Made in America』 再見(1985年)
シャーリー・クラーク『Ornette: Made in America』 オーネット・コールマンの貴重な映像(1985年)
オーネット・コールマン『Live at Teatro S. Pio X 1974』(1974年)
オーネット・コールマン『Ornette at 12』(1968年)
オーネット・コールマンの映像『David, Moffett and Ornette』と、ローランド・カークの映像『Sound?』(1966年)
スリランカの映像(6) コンラッド・ルークス『チャパクァ』(1966年)
オーネット・コールマン『Trio Live / Tivoli Koncertsalen Copenhagen 1965』(1965年)
オーネット・コールマン『Town Hall 1962』(1962年)
オーネット・コールマンの最初期ライヴ(1958年)
オーネット・コールマン集2枚(2013年)

レイモンド・マクモーリン+片倉真由子@小岩COCHI

2018-08-04 09:14:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

小岩のCOCHIに足を運び、レイモンド・マクモーリンと片倉真由子のデュオ(2018/8/3)。

Raymond McMorrin (ts)
Mayuko Katakura 片倉真由子 (p)

最初の「Billie's Bounce」ではふたりともバップのあれこれを詰め込んだような演奏。続くフレディ・ハバードの「Up Jumped Spring」も愉しく跳躍した(いい曲!)。3曲目の「Body and Soul」では、冒頭のレイモンドの独奏に少し驚いた。以前のストレートなものよりも音色の幅が広がり、かすれた音もフラジオの高音も倍音もあってとても良い。あとで一緒に帰るときに訊いたら、いろいろと実験していて、マルチフォニックもそのひとつだと言った。4曲目の「Evidence」は逆に片倉さんのピアノソロから入った。同じモンクの「Epistrophyの断片なんかも見え隠れした。そこにレイモンドがかすれた音で入ってきて、また良いデュオになった。

セカンドセットは「Milestones」から(ジョン・ルイスの古い方)。2曲目の「Theme for Ernie」はアーニー・ヘンリーに捧げられた名曲だが、片倉さんがぜひデュオで演奏したいと持ってきたのだという。確かにこの日の白眉だったかもしれないバラード演奏で、琴のように少しスライドする効果のピアノにも、表現が幅広いテナーにも、いちいち新鮮に驚かされた。そして「Stablemates」と「Oleo」では、テナーに対してまったく引かず強力なフレーズをばんばん繰り出し続ける片倉さんの音から、確信感のようなものが伝わってきた。やっぱり素晴らしいピアニスト。

何度も共演しているがデュオは今回がはじめて。演奏後の意気投合ぶりからみて、今後も続けられるに違いない。

ところで、先日クリスチャン・マクブライドの来日公演でプレイしたジョシュ・エヴァンスは、レイモンドとなんども共演している。今回はレイモンドのライヴにシットインする筈だったが時差ボケで寝てしまい、実現しなかったらしい。次の機会で共演するようなことがあれば、ぜひ駆けつけたいものだ。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●レイモンド・マクモーリン
レイモンド・マクモーリン+山崎比呂志@なってるハウス(2017年)
レイモンド・マクモーリン+山崎比呂志@なってるハウス(2017年)
山崎比呂志 4 Spirits@新宿ピットイン(2017年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
レイモンド・マクモーリン@h.s.trash(2015年)
レイモンド・マクモーリン『RayMack』、ジョシュ・エヴァンス『Portrait』(2011、12年)

●片倉真由子
ジーン・ジャクソン・トリオ@Body & Soul(2018年)
北川潔『Turning Point』(2017年)