Sightsong

自縄自縛日記

廣木光一+渋谷毅『Águas De Maio 五月の雨』

2018-08-11 23:33:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

廣木光一+渋谷毅『Águas De Maio 五月の雨』(Hiroki Music、2018年)を聴く。

Koichi Hiroki 廣木光一 (g)
Takeshi Shibuya 渋谷毅 (p)

『So Quiet』(Mugendo、1998年)は出た当時から好きで、今に至るまで繰り返し聴いている。それ以来2枚目のデュオ作品である。20年も経っているのか。

再演曲は2曲。「He is Something」(廣木)は故・武田和命のために書かれた曲だそうだが、本人の吹いた録音は出ていない(と、渋谷さんが書いている)。新旧の演奏を比較してみると、新しい方がすこし溌剌としているように聴こえる。主旋律という物語の語り手が廣木さんであり、渋谷さんの合いの手を挟んで、また廣木さんへと戻る。武田さんのブロウはどのようなものだったのだろう。

そして、わたしを含め多くのファンが愛する「Beyond the Flames」(渋谷)、場合によっては「無題」。これはやはり、たゆたい循環する渋谷さんのピアノが中心にある。20年前の演奏では全般に廣木さんのギターが介入していた。本盤では主にピアノの時間の節目においてギターが入ってきており、さらにコラボレーションが動悸を引き起こす。2分過ぎにギターがピアノに重なる音を聴いてほしい。間違いなく小さい声であっと叫ぶだろう。昨日、中野のSweet Rainでこの曲が流され、植松孝夫さんが浅川マキの思い出をぽつぽつと呟いた。たまらないな。

他の曲ももちろん素晴らしい。最近のライヴで廣木さんがよく演奏する「人生は風車」(カルトーラ)とか「Frenesi」(廣木)なんて実に実に良い曲なんである。

何気なさを装って圧倒的に強靭で清冽な音を出すふたりのデュオ。

●廣木光一
高田ひろ子+廣木光一@本八幡cooljojo(2017年)
安ヵ川大樹+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
吉野弘志+中牟礼貞則+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
Cooljojo Open記念Live~HIT(廣木光一トリオ)(JazzTokyo)(2016年)
廣木光一(HIT)@本八幡cooljojo(2016年)
廣木光一『Everything Shared』(2000年)
廣木光一『Tango Improvisado』(1995年)

●渋谷毅
今村祐司グループ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅@裏窓(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅@裏窓(2016年)
渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(2015年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
渋谷毅+津上研太@ディスクユニオン(2011年)
渋谷毅のソロピアノ2枚(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)
『RAdIO』(1996, 99年) 
渋谷毅+川端民生『蝶々在中』(1998年)
『RAdIO』カセットテープ版(1994年)
『浅川マキを観る vol.3』@国分寺giee(1988年)
『山崎幹夫撮影による浅川マキ文芸座ル・ピリエ大晦日ライヴ映像セレクション』(1987-92年)
浅川マキ+渋谷毅『ちょっと長い関係のブルース』(1985年) 
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
見上げてごらん夜の星を 


マーク・ドレッサー+スージー・イバラ『Tone Time』

2018-08-11 09:05:41 | アヴァンギャルド・ジャズ

マーク・ドレッサー+スージー・イバラ『Tone Time』(Wobbly Rail、2003年)を聴く。

Mark Dresser (b)
Susie Ibarra (ds)

マーク・ドレッサーは、コントラバスの中音域を中心として、決して地響きのするような轟音やノイズなど目立つ音は出さない。それでも音楽を推進する力強さが常にあって、耳が吸いつけられる。

一方のスージー・イバラは曲の全体を俯瞰する知性があって、放つパルスは自然体であるという、なんとも言えない魅力がある。

このふたりによるデュオ、聴いてみるとなるほど素晴らしいマッチングである。特にタイトル曲の丁々発止ぶりが見事。

●マーク・ドレッサー
マーク・ドレッサー7@The Stone(2017年)
マーク・ドレッサー7『Sedimental You』(2015-16年)
テイラー・ホー・バイナム+マーク・ドレッサー『THB Bootlegs Volume 4: Duo with Mark Dresser』(2014年)
マーク・ドレッサー『Unveil』、『Nourishments』(2003-04年、-2013年)
『苦悩の人々』再演
(2011年)
クリスペル+ドレッサー+ヘミングウェイ『Play Braxton』(2010年)
スティーヴ・リーマン『Interface』(2003年)
藤井郷子『Kitsune-Bi』、『Bell The Cat!』(1998年、2001年)
ジェリー・ヘミングウェイ『Down to the Wire』(1991年)
ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy』(1988年)

●スージー・イバラ
YOSHIMIO+スージー・イバラ+Phew、勝井祐二+ユザーン@スーパーデラックス


植松孝夫+永武幹子@中野Sweet Rain

2018-08-11 01:32:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

中野のSweet Rainで、植松孝夫・永武幹子デュオ(2018/8/10)。昨春の北千住Birdland以来である。

Takao Uematsu 植松孝夫 (ts)
Mikiko Nagatake 永武幹子 (p)

開演前。廣木光一・渋谷毅『Águas De Maio 五月の雨』の「Beyond the Flames」が流れ、植松さんが浅川マキの思い出を話している。渋谷さんがいつも弾いていた、この曲のときは自分は吹くことはなかったけれど、と。

ファーストセット。「Lament」(J.J.ジョンソン)、「Four」(マイルス・デイヴィス)のあと、「Softly, as in a Morning Sunrise」。マキさんの話を聞いたせいか、深い倍音でストレートに吹き、駆け上がり、少しレイドバックする植松さんのテナーから、どうしても新宿や池袋の夜の匂いがする。テーマはしばらくしてから現れた。続く「Speak Low」では永武さんのピアノが飛ばし、右肘が上がる。「黒いオルフェ」では、お茶目にも植松さんがピアノの椅子に腰かけた。「All Blues」では、ピアノのあざやかなイントロから、ふたりで合図しあい、テナーが入っていく面白さがあった。

セカンドセット。もう植松さんは自分の椅子を用意した。2曲ほど即興をやったのだが、特に後半のブルースに、植松孝夫カラーがばんばんと放出され、たびたびのけぞる。それは、「Dindi」(ジョビン)においてもそうであって、濃厚な倍音の奔流に、ピアノが手探りするようにあわせていった。「Now's the Time」は植松さんの我流のタイム感、力技で引っ張る引っ張る。やがてふたりともスピードアップしていき、その中で永武さんは高音を転がすような弾き方もみせた。一旦は終わったかと思ったのだが、植松さんはにやりとして、またテーマを吹き始めた。天を仰いで笑う永武さん。最後は「In a Sentimental Mood」。

それにしても唯一無二のテナー。嬉しくて聴きながら笑ってしまった。

Nikon P7800

●植松孝夫
植松孝夫+永武幹子@北千住Birdland(JazzTokyo)(2017年)
本田竹広『EASE / Earthian All Star Ensemble』(1992年)
『山崎幹夫撮影による浅川マキ文芸座ル・ピリエ大晦日ライヴ映像セレクション』(1987-92年)
浅川マキ『アメリカの夜』(1986年)
ジョージ大塚『Sea Breeze』(1971年)
植松孝夫『Debut』(1970年) 

●永武幹子
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
永武幹子+類家心平+池澤龍作@本八幡cooljojo(2018年)
永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス(2018年)
永武幹子+瀬尾高志+竹村一哲@高田馬場Gate One(2017年)
酒井俊+永武幹子+柵木雄斗(律動画面)@神保町試聴室(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)
永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One(2017年)
MAGATAMA@本八幡cooljojo(2017年)
植松孝夫+永武幹子@北千住Birdland(JazzTokyo)(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)