Sightsong

自縄自縛日記

高島正志+竹下勇馬+河野円+徳永将豪「Hubble Deep Fields」@Ftarri

2018-08-20 23:13:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2018/8/19)。

高島正志 (ds, G.I.T.M.)
竹下勇馬 (electro b)
河野円 (casette tape, recorder, feedback)
徳永将豪 (as)

(※)写真を使っていただいた

高島正志の作曲作品「Hubble Deep Fields」。それは少なからず奇妙であり、図示による楽譜、五線譜に少ない音符と指示が書き込まれた楽譜との組み合わせによるものだった。ファーストセットにその順序、セカンドセットは逆の順序。

あとで高島さんに訊くと、リハーサルは行わなかったという。その場でおのおのが楽譜の指示を見ながら試行するように音を出してゆく。「うまく従うことができるかどうか」といった点も含めて、緊張感が支配する時間でもあった。その結果、独自性の強い即興音楽家のもつ要素がまるで抽出されたかのような印象となった。社会になったと見ることもできた。サードセットには「時間が余ったから」という理由で短いインプロ演奏がなされたのだが、そのときの共振的な印象と比較すると、この抽出的な作品がなおさら特異なものに聴こえた。

はじめは静かに音が出され重なってゆく。やがて脈動的になり、また連続的なものと不連続的なものが入れ替わってあらわれたりもする。高島さんのときおりの手による指示は、要素以上の介入だった。フィードバックやエフェクトと、人為(不均一なバスドラムや、アナログな周波数プロファイルたるサックス)との対照。エレクトロベースの痙攣や河野さんの装置の振り回しと、自律的なグルーヴとの対照。そういった異質なものの共存が音楽になった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●高島正志
高島正志+古池寿浩+秋山徹次「Blues Frozen Xīng ブルース 凍てついた星」@Ftarri(2018年)
高島正志+河野円+徳永将豪+竹下勇馬@Ftarri(2018年)

●河野円
高島正志+河野円+徳永将豪+竹下勇馬@Ftarri(2018年)

●竹下勇馬
Zhu Wenbo、Zhao Cong、浦裕幸、石原雄治、竹下勇馬、増渕顕史、徳永将豪@Ftarri(2018年)
高島正志+河野円+徳永将豪+竹下勇馬@Ftarri(2018年)
TUMO featuring 熊坂路得子@Bar Isshee(2017年)
竹下勇馬+中村としまる『Occurrence, Differentiation』(2017年)
二コラ・ハイン+ヨシュア・ヴァイツェル+アルフレート・23・ハルト+竹下勇馬@Bar Isshee(2017年)
『《《》》 / Relay』(2015年)
『《《》》』(metsu)(2014年)


ファドも計画@in F

2018-08-20 00:12:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

大泉学園のin Fに足を運び、「ファドも計画」。(2018/8/19)

Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Yuki Saga さがゆき (vo, g)
Keiki Midorikawa 翠川敬基 (cello)

「ファド化計画」あらため「ファドも計画」。ファドも演る、とはいえ最初はファド2曲から。「孤独」では、ヴァイオリンのしなる弦、ここにチェロの指の音と、口蓋にて想いを共鳴させるような声が入ってきて妙に動かされる。さがさんのヴォーカルを聴くのは実に久しぶりだが、それがいつ誰とだったか思い出せない。「奇妙な人生」では、翠川さんは静かに指で弾いていたが、クライマックスに差し掛かるとおもむろに弓で音の塊を発する。凄い音である。喜多さんはチェロとヴォーカルとに呼応し、震え泣き叫ぶ声を表現した。

ここでいきなり昭和歌謡にシフトする。松尾和子が歌った「再会」では弦ふたりの抑制した擦れ音のシンクロが印象的だった。また、翠川さんの抑制された丸い音には惹かれるものがある。続いて中島みゆきの「この空を飛べたら」。中盤でさがさんが喉を鳴らすように声を出し、その瞬間は黙っていたヴァイオリンが激しい音を放つ。曲を締めるときのヴァイオリンの軋みが効果的に聴こえた。

そしてなんと、八代亜紀が歌った「舟唄」。さがさんの歌声はひときわ力強くなり、ヴァイオリンは震え咽び、チェロは弦を押さえてのはじく音から強い音に移り変わっていった。続き、「ざんげの値打ちもない」では、ヴァイオリンが細いながら振幅の大きな波形を発生させ、また、チェロが入るところでまたしてもぞくりとさせられた。最後に、ちあきなおみの「かもめの街」。泣き笑いの気持ちが沁みてくる。

セカンドセットは、ファドの「難船」から加藤登紀子が歌った「難破船」(わたしは中森明菜を思い出すのだけれど)。揺れ動くヴァイオリン、弦3人での哀しいアンサンブル。ヴァイオリンが滑るような表現などをして、その一方で、サウンドから浮かび上がってくるチェロが色気を感じさせる。

早川義夫の「からっぽの世界」はたいへんな世界だ。ここで翠川さん、喜多さんの重ねる不協和音が歌とマッチした。続いて「セントジェームス医院」。三者の役割分担や移り変わりに注目していると面白い。

ファドに戻り、「私の中のファド」、「アルファーマ」。ファドの哀愁の強さを表現するかのように、さがさんがギターを叩き、それにヴァイオリンとチェロが重ねていった。次はファドではなくスペインの曲「ありがとう人生」。翠川さんは揺れながら旋律を弾いてゆく、それにどうしても気を奪われてしまう。最後はゴキゲンな「マリア・リスボア」で締めた。

それにしてもファドと昭和歌謡。実は同じ場所に居てもいいのだという気がしてくる。哀しさも楽しさもそのへんから勢いよくはみ出してきて、いいライヴだった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●翠川敬基
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
1999年、井上敬三(1999年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981、91、98年)
富樫雅彦『かなたからの声』(1978年)
翠川敬基『完全版・緑色革命』(1976年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年)

●喜多直毅
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(2016年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)