2017年3月3日に亡くなったミシャ・メンゲルベルクへの個人的な追悼として、ICPオーケストラ『Bospaadje Konijnehol』(ICP、1986-91年)の2枚組を聴く。
Ernst Reijseger (cello)
Ernst Glerum (b)
Han Bennink (perc)
Misha Mengelberg (p)
Ab Baars (reeds)
Michael Moore (reeds)
George Lewis (tb)
Wolter Wierbos (tb)
Evert Hekkema (tp)
Maurice Horsthuis (viola)
Maartje Ten Hoorn (vln)
Ernst Reijseger (cello)
Tristan Honsinger (cello)
Ernst Glerum (b)
Han Bennink (perc)
Misha Mengelberg (p)
Ab Baars (reeds)
Michael Moore (reeds)
Wolter Wierbos (tb)
Evert Hekkema (tp)
Maartje Ten Hoorn (vln)
両方ともアートワークは例によってハン・ベニンクの手による。ほとんど似たようなジャケット画をわざわざ別々に描いているのが愉しい。
2枚目にはミシャ・メンゲルベルクのサインを貰った。それは1997年10月11日に世田谷美術館において豊住芳三郎と共演した後のことだったが、同時にみせたFMP盤の『Impromptu』を一瞥して、「これはFMPなのか?そうなのか?」と真顔で訊ねてきた奇妙な記憶がある。あれはどういうことだったのだろう。
そのときも、酸いも甘いも噛み分けたうえでユーモラスに迫るふたりの演奏はとても刺激的だったのだが、ICPオーケストラの演奏もまた素晴らしいものだった。オケの来日は1982、2006、2008、2014年の4回であり、2014年には既にミシャは体調を崩していて同行しなかった。わたしが新宿ピットインで目撃したのは2006年のこと(2008年は不都合で行けなかった)。それは大人の玩具箱、衒いも迎合も皆無だった。
本盤も聴けば聴くほど味わいがある。タイトルはオランダ語であり、英語では「Forest Path Rabbithole」。確かにこのサウンドは森林であり、人を騙すウサギも落とし穴もある。
1枚目は「Ellington Mix」と「De Purperen Sofa」(The Purple Sofa)。いちいち「It Don't Mix」とかふざけたタイトルが付されていて顔がひきつる。アンサンブルもハンのパーカッションも大変な運動量を自在に急停止させ、急発進させる(何なんだ!)。ミシャのピアノは悠然たるものだ。そして「De Purperen Sofa」はミシャによる作品であり、ヴィオラなど弦をフィーチャーしている。
2枚目は「K-Stukken」(K-Pieces)、「Tegenstroom」(Countercurrent)、「Epiloog」(Epilogue)のミシャ3連作。「K-Stukken」ではなかなか出てこないミシャがピアノを弾き始めると実にホッと嬉しくなる。「Epiloog」で叫ぶのは誰だ、ハンか。油断も隙もない、ソファに深々と座って安心すると同時に、唐突に展開が変わり仰天させられ、また、何てことないという感覚でソロイストが突然暴れはじめるので動悸動悸する。ダダイストか。
愛すべきアヴァンギャルディスト、ミシャ・メンゲルベルク、安らかに。
ICPオーケストラ ミシャ・メンゲルベルグ、トリスタン・ホンジンガーら(2006年) Leica M3、Elmarit 90mmF2.8、Tri-X(+2)
●参照
ハン・ベニンク@ディスクユニオン Jazz Tokyo(2014年、ICPオーケストラで来日時)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)(ハン・ベニンク)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)(ミシャ・メンゲルベルグ登場)
イレーネ・シュヴァイツァーの映像(2006年)(ハン・ベニンク)
ハン・ベニンク キヤノン50mm/f1.8(2002年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981、91、98年)(ハン・ベニンク)
レオ・キュイパーズ『Heavy Days Are Here Again』(1981年)(ハン・ベニンク)
ウェス・モンゴメリーの1965年の映像(1965年)(ハン・ベニンク)
エリック・ドルフィーの映像『Last Date』(1964年)
横井一江『アヴァンギャルド・ジャズ ヨーロッパ・フリーの軌跡』(2011年)