Sightsong

自縄自縛日記

中国延辺朝鮮族自治州料理の店(2) 池袋の千里香

2018-01-13 23:36:54 | 中国・台湾

中国東北地方・吉林省の延辺朝鮮族自治州の料理は、中国、北朝鮮、韓国の要素が入り混じっていて、独特で旨い。最相葉月『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』に書かれているように、このあたりの人たちは民族大移動と言っても大袈裟でないほど外に出てきている(中国沿岸部、韓国、日本)。そんなわけで、移住先の人が多ければ料理店も真っ当なものとなることは当然である。なお、戦時中に獄死させられた詩人・尹東柱の故郷でもある。

実は前から犬肉を食べたかったのだが、常にあるものではないようで、昨年も池袋の千里香でも楽楽屋でもメニューにはあっても実際には食べられなかった。最近また入ってきたという話を聞き、この地域出身の友人と、池袋の千里香を再訪した(なお、大久保にも店舗がある)。

着いてみると大人気で、20分くらい待つことになった。店内では中国語や韓国語しか聞こえてこない。そして「犬肉あります」との貼紙がある。ついにたどり着いた。

犬肉料理は火鍋や炒め物などもあったのだが、家庭料理はこれだというので、スープを頼んだ。やや白濁しており、臭い消しなのか香草が入っている(ちょうど沖縄の山羊料理にフーチバーが使われるように)。肉はほろほろと柔らかく、とても食べやすい。豆板醤を好きなだけ入れて辛くし、ご飯と一緒に食べると最高だった。そしてしばらく食べているうちに、なんとなく癖がわかってきた。

他には、豚肉を澱粉のふわふわした衣で揚げて甘いたれをかけた料理。また、山の人参を干したあとに水で戻し、両面を焼く料理。これらは北朝鮮にもある。そして好物、太刀魚の揚げ物。韓国ではスーパーの鮮魚コーナーでひときわ目立っているが、日本では西の食べ物である。

実は、やはり北朝鮮料理にもある黒い餃子も食べたかったのだが、さすがに腹が一杯で無理だった。はじめてウランバートルの北朝鮮料理店で目にしたときには仰天したものである。皮を作るジャガイモを一度凍らせてすりおろす段階で変色するからなのであり、極寒の気候風土ならではの料理だということができる。

ところで、店内には、「美国加州」(アメリカ・カリフォルニア州)の牛肉面なる麺料理のポスターが貼られている。何でも、かつて延辺でカリフォルニアの麺というものが大流行し、それが現地でアレンジされたものであるようだ。元のカリフォルニアの麺とはどんなものだったのだろう。食べ物の伝播とは実に面白いものだ。

さてこれで元気になるかな。

●参照
中国延辺朝鮮族自治州料理の店 浅草の和龍園
旨いウランバートル その3
旨いウランバートル その2
旨いウランバートル
高野秀行『移民の宴』
最相葉月『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』
朝鮮族の交流会
詩人尹東柱とともに・2015
尹東柱『空と風と星と詩』


ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』

2018-01-13 09:45:21 | アヴァンギャルド・ジャズ

ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(Klein、2013年)を聴く。

Joachim Badenhorst (cl, bcl, ts)
John Butcher (ts, ss)
Paul Lytton (perc)

聴く前からわかっているようなものだけれど、ヨアヒム・バーデンホルストとジョン・ブッチャーの違いが面白い。ブッチャーは、仔細に情報が書き込まれた羊皮紙を何枚も自在に積み重ねて力技で提示する感覚。一方のバーデンホルストは、もっとファジーに回路の隙間を覗き込んだり全体を包み込んだりして遊泳する感覚。このふたりにとって時間のピッチのとらえ方も違うのではないか、なんて思ったりして。

ポール・リットンは張りのゆるいドラムや割れたシンバルを叩き、この対決とは言えない出逢いをさらに曖昧なものにしている。

●ヨアヒム・バーデンホルスト
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 

●ジョン・ブッチャー
ジョン・ブッチャー+ジョン・エドワーズ+マーク・サンダース『Last Dream of the Morning』(2016年)
歌舞伎町ナルシスの壁(2016年)
ジョン・ブッチャー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2015年)
鈴木昭男+ジョン・ブッチャー『Immediate Landscapes』(2006、15年)
ジョン・ブッチャー+ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ『So Beautiful, It Starts to Rain』(2015年)
ジョン・ブッチャー+トマス・レーン+マシュー・シップ『Tangle』(2014年)
ロードリ・デイヴィス+ジョン・ブッチャー『Routing Lynn』
(2014年)
ジョン・ブッチャー@横浜エアジン(2013年)
ジョン・ブッチャー+大友良英、2010年2月、マドリッド(2010年)
ジョン・ブッチャー+マシュー・シップ『At Oto』(2010年)
フレッド・フリス+ジョン・ブッチャー『The Natural Order』(2009年)
ジョン・ブッチャー『The Geometry of Sentiment』(2007年)
デレク・ベイリー+ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Scrutables』(2000年)
『News from the Shed 1989』(1989年)

ジョン・ラッセル+フィル・デュラン+ジョン・ブッチャー『Conceits』(1987、92年) 

●ポール・リットン
ガイ+クリスペル+リットン『Deep Memory』(2015年)
ネイト・ウーリー『Seven Storey Mountain III and IV』(2011、13年)


クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』

2018-01-11 08:15:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(Monotype Rec.、2017年)を聴く。

Christian Kobi (ts, ss)
Wakana Ikeda 池田若菜 (fl) (3)
Taku Sugimoto 杉本拓 (g) (3)
Yoko Ikeda 池田陽子 (vln) (3)

インプロを音響でのみ語るのは馬鹿げたことだと思うが、それは置いておいても、クリスチャン・コビのサックスによる響きはとても多様であり、これらの音をどうやって出しているのか観察するだけでも大した仕事に違いない。バルブのような音や、普通でない音域を使った倍音、管全体の過剰な共鳴と共振は、いちど鳴らし始めたら慣性のように楽器が鳴り続けるものかもしれない。そのコントロール、偶発性、自律性のバランスと共存がとても面白い。ソプラノを使った4曲目では、唇の先で発する音をのみ増幅させたりもする。

3曲目ではフルート、ギター、ヴァイオリンの3人が入る。しかしそれは別々の楽器の世界をぶつけていくようなものではない。むしろコビの作り出すサウンド領域に、各々が音を鋭敏に選んで、腫れ物に触るようにか大胆にか重ね合わせてゆく。その結果、どれがどの楽器か判別しにくいほどになっており、おそらくライヴの観客は息を呑んで見守ったのだろう。

水道橋のFtarri、鹿沼の興文堂、大阪のNooo Kittyにおける演奏。観に行けばよかったな。

●池田若菜
Sloth、ju sei+mmm@Ftarri(2017年)

●杉本拓
杉本拓+増渕顕史@東北沢OTOOTO(2017年)

●池田陽子
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)


うたものシスターズ with ダンディーズ『Live at 音や金時』

2018-01-10 22:56:24 | アヴァンギャルド・ジャズ

うたものシスターズ with ダンディーズ『Live at 音や金時』(自主制作、2017年)。

Utamono Sisters:
Yoko Tada 多田葉子 (ss, cl, uta)
Rutsuko Kumasaka 熊坂路得子 (accordion, uta)
with Dandies:
Takero Sekijima 関島岳郎 (tuba, recorder)
Mamoru Hoshi 星衛 (cello, bamboo-fl)

なんでも台湾遠征が決まってすぐに作ったCD-Rだとか。たしかに手作り感満載で、ジャケットは厚紙をぱたぱた折ったものだし、可愛いアートワークはうたものシスターズのふたりによる。

演奏もまた手作り感でいっぱいである。蛇腹と笛、共振、なんて人間的。ライヴというより音楽会といった方がふさわしいかもしれない。いいなあ。

●熊坂路得子
TUMO featuring 熊坂路得子@Bar Isshee(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)


メテ・ラスムセン+タシ・ドルジ+タイラー・デーモン『To The Animal Kingdom』

2018-01-09 22:54:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

メテ・ラスムセン+タシ・ドルジ+タイラー・デーモン『To The Animal Kingdom』(Trost、2016年)を聴く。

Mette Rasmussen (as)
Tashi Dorji (g)
Tyler Damon (ds)

メテ・ラスムセンは細身の身体をまるで柔らかくも強い鋼のバネのように使い、アルトと一体化して、すさまじい圧の音を発する。2017年の来日時、とくに阿佐ヶ谷天での演奏はどうしても忘れられない。そのときメテさんは、その場で跳ねるバネからの轟音を放ち続けただけでなく、コヤのはじからはじまでカツカツと歩きながら吹いたのだった。

本盤の録音にもその雰囲気が詰まっている。いやこの音は誰のものでもない。すごい。すばらしい。

また、ブータン出身のタシ・ドルジの異様さは特筆すべきものであって、宗教儀式のような繰り返しからはただならぬ気配を感じる。割れた音のドラムスとともに、暴力的なほどに、メテさんの大きなバネの収縮をバンド全体に拡張し、陶然とさせられるサウンドを創りあげている。

もし昨年聴いていたなら、これこそベストだと思ったかもしれない。聴けば呆れる。

●メテ・ラスムセン
Kiyasu Orchestra Concert@阿佐ヶ谷天(2017年)
メテ・ラスムセン@妙善寺(2017年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ@Candy、スーパーデラックス(2017年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ@Candy(JazzTokyo)(2017年)
ドレ・ホチェヴァー『Transcendental Within the Sphere of Indivisible Remainder』(JazzTokyo)(2016年)
メテ・ラスムセン+ポール・フラハーティ+クリス・コルサーノ『Star-Spangled Voltage』(2014年)
シルヴァ+ラスムセン+ソルベルグ『Free Electric Band』(2014年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ『All the Ghosts at Once』(JazzTokyo)
(2013年)
『Trio Riot』(2012年)


藤井郷子『Kitsune-Bi』、『Bell The Cat!』

2018-01-09 20:40:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

昨日の夜とか今日の夜とか、藤井郷子さんのライヴを観に行きたかったのだけれど、花粉のせいか調子がいまいちでやめた。そんなわけで藤井郷子トリオの旧譜を2枚、『Kitsune-Bi』(Tzadik、1998年)と『Bell The Cat!』(OnOff、2001年)。

いずれも、マーク・ドレッサー、ジム・ブラックのトリオであり、前者にはゲストとして早坂紗知参加。ジム・ブラックの音を割りながらのアタックの強さも、マーク・ドレッサーの柔軟なベースもとても良いのだ。そして藤井さんのピアノは冷たく硬くありながらレンジが幅広く、独特な間のようなものがある。ところで『Bell The Cat!』の最終曲が沖縄音階でおおっと思ったら、タイトルが「Champloo」。

今年藤井さんは還暦記念で毎月1枚ずつCDをリリースする。俄然、全部聴こうという気持ちになってきた。

Satoko Fujii 藤井郷子 (p)
Mark Dresser (b)
Jim Black (ds)
Sachi Hayasaka 早坂紗知 (ss)

Satoko Fujii 藤井郷子 (p)
Mark Dresser (b)
Jim Black (ds)

●藤井郷子
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
This Is It! @なってるハウス(2017年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)


齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術

2018-01-08 21:51:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

成城学園前にできたばかりのアトリエ第Q藝術にはじめて足を運んだ(2018/1/8)。

Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)
Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Chikako Kaido 皆藤千香子 (dance)

第1部は齋藤徹・喜多直毅デュオ。

はじまりは、コントラバス、ヴァイオリンそれぞれの音の領域がある。擦る、振る、叩く、つねる(つねらないか)、はじく。多様な手を使ってその音領域が重ね合わされる。喜多さんはまるで宇宙と交信するかのように外部との接点を音にし、また、テツさんのコントラバスからはわらべ歌のような旋律も聴こえる。

目の前の世界からなにかをたぐりよせようとするような、手段としての引っかき合い。ふたりの倍音とノイズはときに親しみやすく、ときに人の手の届かぬ音にもなってしまう。喜多さんが小さな振幅を繰り返し、それにより大きなうねりを創り出す。テツさんは楽器の違いもあり、その変動のサイズが異なるところをみせる。ひとしきりこれらの離合があって、擦りのアンサンブルに至った。やや狂った感覚もあった。

このあたりでテツさんの弓が2本、床に落ちた。しかしそれも音楽の一部となったことは愉快な発見だった。喜多さんが激しく動き、テツさんは敢えてたたらを踏む。このふるまいや音ももちろん音楽となった。

テツさんのコントラバスは、指や2本の棒で激しくはじくたびに、ミクロな塵芥が自分自身の存在に気付いたかのように放出されるものに聴こえた。

第2部は皆藤千香子さんも入ってのトリオ。

テツさんが空気を一変させる意図があってなのか、はじめに大きな音を出し漸減させた。喜多さんのヴァイオリンは対照的にかすかな音。しかしふたりの音は連続的に変化してゆき、素晴らしい倍音を創出する。その中でテツさんが左手の指でときどき弦をはじく。

しばらくじっとしていた皆藤さんが、横向きにつつつとサウンドの領域内に入ってきた。動きは動きそのものに意味があるものだと思うが、それにしても、観る私(たち)は、そこにドラマ性を見出してしまう。

生命の発散もあった。皆藤さんが両手で顔を挟み、そのまま前に突き出す動きからは、不可逆の人生を生きることに対する葛藤のようなものを感じた。鳥のような大きな飛翔もあった。枷に身体の自由を奪われた中での動きを感じさせるものもあった。そして、テツさん、喜多さんのサウンドと相互に侵入するかのような動きもあった。魅せられてしまった。

ところで、このアトリエ第Q藝術は、2016年末に明大前のキッドアイラック・アートホールがなくなり、その精神を継ぐような形で作られたスペースである。なんと改造前は、高山辰雄のアトリエであったという。

天井が高く、木の壁と木の床であるためか響きがとても柔らかい。コンクリート内装のキッドアイラックとはまた性質が異なる音の良さである。今後のイヴェントが楽しみだ。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、XF35mmF1.4、Nikon P7800

●齋藤徹
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 

●喜多直毅
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(2016年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)

●皆藤千香子
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)


Zhao Cong、すずえり、滝沢朋恵@Ftarri

2018-01-08 19:24:11 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2018/1/7)。Leo Okagawaさんもいらしていて、印象を互いに呟きながら観た。

■ 滝沢朋恵

始まるでもなく始まった。ターンテーブルや何かの機械をアンプにつなぎ、まるで日常生活の延長であるかのように、思いついては音を出したり大きくしたり絞ったり。洟をかんだり。そしてバスドラム用のペダルさえも遊びの道具と化した。一応は終わりと宣言したのではあるが、終わるともなく終わった。

■ すずえり

ピアノ脇のテーブル上にはレコーダーや小さなスピーカーや時計やケーブルやクリップなどが雑然と置かれている。すずえりさんは毛糸を取り出し、片方にはピアノの内部、片方にはスプーンがぶら下がり、特定の鍵盤を叩くとそれが金属のボウルをヒットする。

また、大きなやじろべえには小さなミラーボールや金属板やなにやら変なオーナメントやレコーダーがぶら下げられ、小さな青いプロペラで寂しい音を発しながらぶいーんぶいーんと回転する。光がそれらを通り抜け、天井や床が詩的な光のフラグメンツで明滅する。

なんという不完全さ、なんという中途半端な自動制御と人の介入。そういったことを試し、次につなげ、他とのバランスを取り、そしてどうやらうまくいったらしいことの嬉しさというのか、一緒にこの過程につき合わされてしまうことの諦めと悦びというのか。

■ Zhao Cong

北京出身のZhao Congさん。昨年は観客として複数回遭っただけなので、今回パフォーマンスを観ることができてうれしい。

彼女はテーブルを前に座り、コントローラーと、丸い容器に入って光を発するものに、静かに手を加えてゆく。そのひとつは物理的な衝撃を増幅するようにできているようで、それに粉を振りかけたりもしていた。朦朧として、時間の経過がわからなくなる。

この6月には、昨年は同行していたパートナーのZhu Wenboさんも一緒に再来日するとのこと。ところで自分にとっては、北京でこのような活動をしていることが驚きであり、昨年、ふたりにその様子を訊いてみた。曰く、あまり活動の場所はなく(ギャラリーでもサウンドへの関心は薄い)、自宅やスタジオでいろいろやっているそうである。

そして3人でのセッション。最初から最後まで奇妙な時間が流れていた。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●すずえり
ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri(2017年)
すずえり、フィオナ・リー『Ftarri de Solos』(2017年)

●滝沢朋恵
網守将平+岡田拓郎、角銅真実+滝沢朋恵、大城真+川口貴大@Ftarri(2017年)


永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス

2018-01-08 11:23:02 | アヴァンギャルド・ジャズ

東中野のセロニアス(2018/1/7)。注目の面々なので予約までして駆けつけた。永武幹子さんはインフルエンザが治ったばかりで今年はじめての演奏とのこと。

Mikiko Nagatake 永武幹子 (p)
Ippei Kato 加藤一平 (g)
Takashi Seo 瀬尾高志 (b)
Raiga Hayashi 林ライガ (ds)

インプロ的なはじまりから、「After All」(ビリー・ストレイホーン)。「Stardust」を思わせもするがこれもストレイホーンだった。林さんは最初はマレットを使うがやがてスティックに持ち替え、いきなりフルスロットル。柔軟というよりも硬くばしばしと押すドラミングである。ギターがエロチックでもサイケデリックでもあり、瀬尾さんのベースは重い。林さんのぎらぎらとしたアイコンタクトがこちらにも伝わってくる。

次に「Brilliant Corners」(セロニアス・モンク)。モンクは自分自身の演奏時には、スピードを厳格に決めていたという。つまりこのゆったりとしたメロディの流れ方もモンク固有のものであって、それがマジックとなって演奏にも影響する。崩壊してはふたたび走りはじめる、その繰り返し。瀬尾さんのベースには重く跳躍する感覚があり、ここに加藤さんのギターがジョーヘンを思わせるホーンライクな介入をみせた。

「ベオ・カリーニョ」(古澤良治郎)。ピアノの美しいイントロにベースが伴い、やがてその立場を逆転させる。ここでのドラムスのパルスもとても重い。ピアノトリオを中心とした時間のあと、加藤さんのギターが、太い地声で艶歌でもうたうように入ってきて演奏を牽引した。腰も浮かせてエクスタシー感あふれるソロだった。それにしてもこの重量級メンバーのなかで、永武さんのピアノは知的に浮かび遊んでいるように聴こえる。

セカンドセットもまたインプロ的にはじまった。ピアノの模索、ベースとギターの呼応。林さんは背後で嬉しそうに次の展開を考えている模様。そして全員がエネルギー強度の高い領域で、たいへんにカオティックながら秩序もつど創出されるような素晴らしい演奏をみせた。演奏は瀬尾さんのアルコにより収斂しつつ、次の曲へ。林さんのマレットからブラシへの転換が見事にみえる。また瀬尾さんのベースは全体を包み込むような広がりがある。

そして「We See」のあと、アンコールが「The Lord Is Listenin' To Ya, Hallelujah」(カーラ・ブレイ)。「自由な気持ちで」と示し合わせた通り、おのおのの音を発展させる面白さがあった。林さんのドラミングには、この曲に限っては、森山威男の得意技が重なってみえたがどうだろう。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●永武幹子
永武幹子+瀬尾高志+竹村一哲@高田馬場Gate One(2017年)
酒井俊+永武幹子+柵木雄斗(律動画面)@神保町試聴室(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)
永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One(2017年)
MAGATAMA@本八幡cooljojo(2017年)
植松孝夫+永武幹子@北千住Birdland(JazzTokyo)(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)

●加藤一平
竹内直+加藤一平@セロニアス(2017年)
鈴木勲セッション@新宿ピットイン(2014年)

 
 

松本茜『Memories of You』

2018-01-07 09:19:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

松本茜『Memories of You』(Concept Record、2015年)を聴く。

Akane Matsumoto 松本茜 (p)
Gene Jackson (ds)
Peter Washington (b)

いきなりユービー・ブレイクの「Memories of You」、その後もオスカー・ピーターソン、ヘンリー・マンシーニ「Moon River」、トラディショナルの「Danny Boy」といった古き良きメロディを聴かせるような曲が並ぶ。その中で松本茜のピアノプレイは強いアタックを見せるでも独特なアレンジを示すでもなく、流麗にピアノトリオ全体のサウンドをくるんでいくような印象。

ピーター・ワシントンのオーソドックスなベースももちろん悪くない。しかし個人的にはサウンドからの個人技として飛び出るのは、とにかくジーン・ジャクソンである。強靭で安定したドラミング、随所にみせるドシャメシャというキメ。せっかく日本で活動しているのだから、もっと観に行かなければ。

●ジーン・ジャクソン
オンドジェイ・ストベラチェク『Sketches』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
及部恭子+クリス・スピード@Body & Soul(2015年)
デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(1995年)

●ピーター・ワシントン
ベニー・グリーン『Tribute to Art Blakey』(2015年)
リー・コニッツ『Frescalalto』(2015年)


トリオ深海ノ窓『目ヲ閉ジテ 見ル映画』

2018-01-07 00:16:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

トリオ深海ノ窓『目ヲ閉ジテ 見ル映画』(Nonoya Records、2017年)を聴く。

Nonoko Yoshida 吉田野乃子 (sax)
Noriko Togashi 富樫範子 (p)
Hajime Totani トタニハジメ (b)

野乃子さんがセンチメンタルな方向へと進んでいる。アルトのプレイも、哀切なメロディを持つ曲も(ときにカーラ・ブレイの曲を思わせる)。

アルトには微妙なヴィブラートがかけられており、中身がみっちり詰まっているようだ。エネルギーを機関銃かインベーダーゲームのようにピキピキピキと発射するときも素晴らしい。

そしてトリオの息があった様子もまた良いのだ。ピアノはアルトの連続に対して絶えず断絶を持ち込み鮮やか。3曲目で奇妙なエフェクトを入れるベースもまたおもしろい。廻り舞台のうえの3人が、気が付くとお互いに主役を交替していたりする。DVDの映像でもそのような感覚であり、画像のエフェクトがそのイメージを増している。

●吉田野乃子
『トリオ深海ノ窓 Demo CD-R』、『Iwamizawa Quartet』(2017、2007年)
乱気流女子@喫茶茶会記(2017年)
吉田野乃子『Demo CD-R』(2016年)
吉田野乃子『Lotus』(2015年)
ペットボトル人間の2枚(2010、2012年)


池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri

2018-01-05 07:32:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2018/1/4)。

1. ソロ
Akihiko Ando 安藤暁彦 (electronics)

告知されていたサックスは使わずエレクトロニクスのみ。ラップトップPCに接続されたLIVIDのコントローラーには4×8個のつまみがあり、それを操ってサウンドを創る。

はじめはぶちぶちというノイズがかすかに駆動力として機能する。そのうちにさまざまな音色と音量の音波がビートとなり、複合し、面白くなっていった。

2. トリオ
Naoto Yamagishi 山㟁直人 (ds, perc)
Darren Moore (ds)
Yoko Ikeda 池田陽子 (vla)

はじめにダレンさん(以下D)は櫛などを、山㟁さん(以下Y)は弦を使い、擦りのフェーズ。池田さん(以下I)のヴィオラとともに連続的な音を発し、不安を昂らせる。Dはスティック、Yは金属板も使う。そしてDがシンバルを叩き鳴らしたことが、それまで醸成されたヴァルネラブルな空気のなかで恐怖として作用したように聴こえた。

つぎにIが連続的なヴィオラに断絶を入れ、それを機にダイヴァーシファイされたフェーズとなった。Dはブラシでシンバルを鳴らすが、既に聴き手の脳はこの破断に馴らされている。Yは弦や金属片で擦り、超高音を創る。

発散した音が、Iの次々にシフトしていく周波数により、収斂してきた。三者の各々の音が生き物のように跳躍し、夜の奇妙なパーティを想像させる。

フェーズは残響へ。D、Yともにシンバルを効果的に用いる。Iのヴィオラは運命的な物語を思わせるように奏でられ、それが可視世界だとして、YとDのサウンドは意識下をまさぐるようにも思われた。

YとDとの超高音のハウリング。その中でも他の音のディテールが却って浮き彫りになってきて面白い。Iのヴィオラは、ノイズとともに、生物の息遣いが弱くなっていくように聴こえる。Dは別のドラムでノイズを、またYは枯草を持ち込み、ドラムを直接息と声とで震わせはじめた。

そして破裂のフェーズ。Dの音はドラムスの素材を破くのではないかと思えるほどである。Iは弦を指ではじいた。Yは正のフィードバック的に音をさらに次の音に向けて激しくしていった。破裂の臨界点に向かってのサウンドとなった。

音のフェーズとは、音域だけでなく、それを発する媒体のサイズや響かせる時間の長さといった音楽的な距離によっても変わってくるものにちがいない。この日のサウンドは、三者のゆるやかな合意により、フェーズを次々に変貌させてゆく、贅沢なものだった。

●ダレン・ムーア
サイモン・ナバトフ@新宿ピットイン(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
Kiyasu Orchestra Concert@阿佐ヶ谷天(2017年)


クリス・デイヴィス『Duopoly』

2018-01-04 23:44:15 | アヴァンギャルド・ジャズ

クリス・デイヴィス『Duopoly』(Pyroclastic Records、2015年)。8人のミュージシャンとのデュオ集であり、曲を演奏する前半と、相方の順番を逆にしてフリーインプロを行う後半との全16曲から成る。

また、同じ演奏がCDとDVDとに収録されている。DVDは左半分にクリス・デイヴィス、右半分に相方という形であり、CDの音源を何度も聴いた後に観ると、ああそういうことだったのかと納得する点が少なくない。あるいはその逆でも楽しめるかもしれない。

Kris Davis (p)
Bill Frisell (g)
Julian Lage (g)
Craig Taborn (p)
Angelica Sanchez (p)
Billy Drummond (ds)
Marcus Gilmore (ds)
Tim Berne (as)
Don Byron (cl)

相方も、ギター、ピアノ、ドラムス、管楽器がそれぞれふたりずつ。よく考えられているし、実際に比較の妙がある。

ビル・フリゼールは大きな物語で(音のサイズもそうだが)包み込むようであり、ジュリアン・ラージは尖らせて刺す。クレイグ・テイボーンは思索的にピアノの二重らせんの間に音を挟んでくるようであり、アンジェリカ・サンチェスはデュオで何かの形を見つけようとしているように聴こえる。ドラムス美学の形を最初から提示するマーカス・ギルモア、一方、何を出そうかと苦悩しながら多様なビートを繰り出してくるビリー・ドラモンド(ジェレミー・ペルトとの共演でその姿を観たときかなり驚いた)。そして独自の強度をもつティム・バーンと、久しぶりに観る知的なドン・バイロン。

これもクリス・デイヴィスの表現の幅があるからこその成果なのだろうと思うのだが、では、デイヴィス自身の個性は何かというと、まだよくわからない。確かにきらびやかで、攻めにも受けにも回っていてとても刺激的ではあるのだが。

●クリス・デイヴィス
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
マックス・ジョンソン『In the West』(JazzTokyo)(2014年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
トム・レイニー『Obbligato』(2013年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
スティーヴン・ガウチ+クリス・デイヴィス+マイケル・ビシオ『Three』(2008年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、2012年)


マーク・ドレッサー『Unveil』、『Nourishments』

2018-01-04 11:10:49 | アヴァンギャルド・ジャズ

去年(2017年9月)に巨匠マーク・ドレッサーの演奏を目の当たりにして、ああこういう人だったのかと感動のようなものを覚えた。それ以来、バンドのベーシスト以上には聴こえなかった音が、耳と脳の中で主役に躍り出たのだから面白いものである。

『Unveil』(clean feed、2003-2004年)

Mark Dresser (b)

個人的なスタジオで録音されたコントラバスソロ。マイクはベース本体とスピーカーにひとつずつ使われ、多重録音や編集は施されていない。

ドレッサーの音はことさらに重低音を効かせたものではない。ノイズは破裂的なものではなく、割れたような音もコアからさほど離れてはいないように感じられる。だからと言って音が細いというわけではなく、むしろ、豊かな倍音に注意が集まる。ときには口琴の音のように聴こえたりもする。これは聴き惚れる。

『Nourishments』(clean feed、-2013年)

Rudresh Mahanthappa (as)
Michael Dessen (tb)
Denman Maroney (hyperpiano)
Mark Dresser (b)
Tom Rainey (ds) (1,2,3,5)
Michael Sarin (ds) (4,6,7)

もちろんこの面々のなかで、個性的なルドレシュ・マハンサッパのアルトはかなり目立っているし、トム・レイニーの豪放に叩き落すようなドラミングも良い。デンマン・マロニーの「ハイパーピアノ」とはなんだろうか、ただ内部奏法もオーソドックスな演奏も混ぜ、ドレッサーの弦と絡み合っている。

そしてここでドレッサーのベースが一貫して存在感を発揮している。アンサンブルの巧みさもあるのだろうし、即興演奏において随時そのようにアンサンブル的にベース音を入れてくるということもあるのだろう。サウンドを下から力強く押し上げるというよりは、サウンドの隙間を豊かな音によって埋めてゆくようである。

●マーク・ドレッサー
マーク・ドレッサー7@The Stone(2017年)
マーク・ドレッサー7『Sedimental You』(2015-16年)
『苦悩の人々』再演
(2011年)
スティーヴ・リーマン『Interface』(2003年)
ジェリー・ヘミングウェイ『Down to the Wire』(1991年)
ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy』(1988年)


ディー・ディー・ブリッジウォーター『Memphis... Yes, I'm Ready』

2018-01-04 00:14:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

ディー・ディー・ブリッジウォーター『Memphis... Yes, I'm Ready』(Okeh Records、2016年)を聴く。

Dee Dee Bridgewater (vo)
Kirk Whalum (ts, bs)
John Stoddart (key)
Lawrence "Boo" Mitchell (el-bongo, sizzle cymbal, tambourine)
Charles Hodges (hammond organ)
Jackie Clark (b)
Garry Goin (g)
James "Bishop" Sexton (ds)
Marc Franklin (tp)
Lannie McMillan (ts)
Kirk Smothers (ts)
Kameron Whalum (tb)
Kevin Whalum, Sharisse Norman, Candise Rayborn-Marshall, Stax Music Academy (backup vo)  

ディー・ディー・ブリッジウォーターのステージを観たのはもうずいぶん前で確か20世紀。ミルト・ジャクソンらによる完璧なバックアップもあり、リラックスしてマリリン・モンローの真似をしたりして観客を笑わせ、歌って踊り、それはもうチャーミングだった。目がハートになった。

本盤はディー・ディーが生まれたメンフィスをテーマにして、エルヴィス・プレスリー、B.B.キング、オーティス・レディングらが歌ったR&B/ソウルなどの歌を楽しそうに披露している。しかも、ハモンドオルガンやホーンセクションによるゴージャスなサウンドをバックにして。ハスキーな声で、元気がよくて、可愛くて、メロウで、ソウルフルで、なんてことしか言えないのだ。ディー・ディーならこのくらいは当然か。