日々のつれづれ(5代目)

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潮匡人著 「田中知事の『真実』」(小学館文庫)

2008-11-24 22:08:37 | 本・映画・展覧会
 タイトルの前に「長野県民は知らない」と付く。

 題名から想像できる通り、長野県知事(当時)・田中康夫をコキ降ろした著作だる。と言っても内容はスキャンダル的なものではなく、過去の報道・田中の著作と県知事としての言動を比較し、不一致な点を「一貫性がない」と指摘し、変わらぬ主張について「昔からこの人はこうだった」と糾弾する。

 本書を著す上で前提となるソースは公に報じられているもののみ、本人への取材は(相手にされなかったらしく)なし。ウラを取ってないのはどうかという考えもあるが、もし全ての作品でウラを取らなければならないのであれば過去の人物に関する著作は何も出せないことになってしまう。なのでヨシと考えるしかない。ただし、本人はダメでも周辺の人物に取材することは出来たはずで、その点は取材不足と突っ込まれても仕方ない。

 公務と並行した著述やタレント的活動への疑問、あるいは田中の品位・人間性の批判など、著者の指摘はもっともな所が多い。「『公』の人ではなく『私』の人なのだ」と言う一文はなるほどと腑に落ちる思いがする。

 だがどれほど真実を書こうと、この本のウソくささは消えない。それは、それまでの「吉村県政」時代の旧弊には触れず、変化を求めた県民の思いや「田中県政」のプラス面について語ることを怠っているから。だから、ヒステリックな批判(あえて中傷とは書かないでおく)本にしか見えない。一冊で全てを表すことは難しいので、本書ではネガティブな部分のみを切り出して見たというのであれば、ポジティブな部分のみを切り出した一冊があっても良いはずだ。ついでに書くと、田中康夫がどういう人物か、過去の言動を検証すればある程度は分かりそうなものを高支持率で勝たせた県民についての分析も欲しい。妄信したのか、「老害」よりはマシと判断したのか…ね。

 2008年11月15日 出張帰りの東北線車中にて読了
コメント (2)
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