村上春樹と言えば世界的作家なんだけど、そうした「格調高き文学」なイメージとは程遠い、こういうカジュアルな作品もあるのがとても不思議に思える。
人体模型工場、消しゴム工場、コム・デ・ギャルソンの下請け工場、CD工場…ジャンルも場所もバラバラな、7つの「工場」をイラストレーターの安西氏と共に見学したレポート集である。
当然、小学生の作文のようでもなければ新入社員の研修レポートみたいな出来でもない。そこは当然、村上流視点で書かれているのだが、けっこう面白いよこの人。目の付け所が鋭い、なんてことは全く見えない。見学しながら暴走しちゃう妄想が逞しいのだ。「んなワケあるかー!」とツッコミたくなるような心配や仮定話が次から次へと出てくる。本作は1987年刊行と古いけれど、村上春樹の視点がその後コロリと変わってしまったなんてことはあるまい。そして本作が氏にとって「私の恥ずかしい過去」なワケでもあるまい。
読後は、レポートされている工場のことより、この作家のことが離れなかった。
2012年5月10日 通勤電車車中にて読了
人体模型工場、消しゴム工場、コム・デ・ギャルソンの下請け工場、CD工場…ジャンルも場所もバラバラな、7つの「工場」をイラストレーターの安西氏と共に見学したレポート集である。
当然、小学生の作文のようでもなければ新入社員の研修レポートみたいな出来でもない。そこは当然、村上流視点で書かれているのだが、けっこう面白いよこの人。目の付け所が鋭い、なんてことは全く見えない。見学しながら暴走しちゃう妄想が逞しいのだ。「んなワケあるかー!」とツッコミたくなるような心配や仮定話が次から次へと出てくる。本作は1987年刊行と古いけれど、村上春樹の視点がその後コロリと変わってしまったなんてことはあるまい。そして本作が氏にとって「私の恥ずかしい過去」なワケでもあるまい。
読後は、レポートされている工場のことより、この作家のことが離れなかった。
2012年5月10日 通勤電車車中にて読了