【ぼちぼちクライミング&読書】

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「14歳〈フォーティーン〉満州開拓村からの帰還」澤地久枝

2015年11月05日 21時25分44秒 | 読書(戦争/引き揚げ/ 抑留)


「14歳〈フォーティーン〉満州開拓村からの帰還」澤地久枝

満州での敗戦体験、引き揚げ記録。
澤地久枝さんは昭和5年9月3日生まれ。
昭和19年(1944)から昭和20年(1945)年にかけて、14歳であった。
敗戦から16歳寸前まで、2年間の記録である。

P11
 戦争が終聞いた瞬間、「ああ、神風は吹かなかった」と真面目に思った。

P115
(半藤一利氏の文章からの引用)
 敗北を予見したドイツ海軍デーニッツは、降伏の4ヶ月前から、水上艦艇の全部を、東部ドイツからの難民と将兵を西へ移送するために投入した。「ソ連軍の蹂躙から守るためである」と。(日本の参謀本部の対応とえらい違い、である。関東軍が真っ先に引き揚げて開拓民を置き去りにした)

P165-166
2.26事件のあと、内閣は農業移民を国策として決定した。その後、20年間に100万戸、一世帯当たり5人として500万人の移民を送りだす方針を決めている。「昭和」の時代を考えるとき、少女は「満州国」と「開拓団」の問題を考えずにいられない。

P170
「日僑俘」の「僑」は「かりずまいの」の意味。

【ネット上の紹介】
「昭和」を見つめ、一貫して戦争や国家を問うてきた著者の原点となったのは、一九四五年、十四歳での敗戦体験だった。家族と渡った満州・吉林。敗戦後の難民生活は一年に及ぶ。「棄民」ともいうべき壮絶な日々、そして一家での日本への引き揚げ…。十四歳という多感な少女が軍国少女となり、日に日に戦争に巻き込まれていく様を、自身の記憶と膨大な資料から丁寧に回顧し綴る。

[目次]
十四歳の少女
秘密
王道楽土
戸籍騰本
学徒動員・無炊飯
水曲柳開拓団
八月十五日・敗戦
いやな記憶
蟄居の日々
内戦下
旧陸軍兵舎
日本へ


「小さな引揚者 写真集」飯山達雄/写真・文

2015年08月18日 21時41分22秒 | 読書(戦争/引き揚げ/ 抑留)


「小さな引揚者 写真集」飯山達雄/写真・文

タイトルどおり、引揚写真集。
先日、「世界の果てのこどもたち」を紹介した。
その作品の巻末、「参考図書」として紹介されていたのが本作。
気になったので取り寄せた。

片足を失った父が子どもを背負っている、胸には妻の遺骨・・・。

幼い姉が、幼い妹を背負って乗船する

大変な距離であることが分かる

 


「たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く」石村博子

2014年11月18日 21時44分33秒 | 読書(戦争/引き揚げ/ 抑留)


「たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く」石村博子

サンボという格闘技がある。
関節技を多用する、柔道に似た格闘技である。
41連勝無敗、すべて1本勝の伝説の男、それがビクトル古賀、である。
ところが、「俺が人生でいちばん輝いていたのは10歳だった」と言う。
たった1人で、満州の北の果てから引き揚げてきたのである。

この本は、「流れる星は生きている」「竹林はるか遠く」を読んだ方にお薦め。
ただし、異なる点もある。
普通、引き揚げ記録というと、悲壮感漂う。
ところが、この作品は明るい。(と言うか、脳天気?)
少年・ビクトル古賀の陽気な性格からくるものだろう。
それに、サバイバル能力が桁違いに高い。
すばらしい生命力である。

コサックの血を引く少年なので、コサックの歴史も詳しく書かれている。
貴重な引き揚げの記録であり、昭和史でもある。
著者の石村博子さんは、非常に丁寧な仕事をされている。
感心した。
読んでソンはない。 

【ネット上の紹介】
1945年、満州。少年はたった独りで死と隣り合わせの曠野へ踏み出した。41連戦すべて一本勝ち。格闘技で生ける伝説となり、日本柔道界・アマレス界にも大きな影響を与えた男・ビクトル古賀。コサックの血を引く男は「俺が人生でいちばん輝いていたのは10歳だった」と言う。彼は1000キロを独りで踏破し引き揚げたのだ。個人史と昭和史、そしてコサックの時代史が重なる最後の男が命がけで運んだ、満州の失われた物語。
[目次]序章
第1章 ハイラル最後の日
第2章 コサック最後の少年
第3章 ハルビンの孤独な日々
第4章 追い払われて
第5章 満州一〇〇〇キロ、独り歩き
終章 「古賀正一」から「ビクトル古賀」へ
番外編 コサックの流転、ラーパルジン一族の物語