残暑厳しい、昨日のこと。
お婆さんが犬を散歩させていた。
さぞ暑かろう、と・・・犬を団扇で扇ぎながら。
微笑ましい光景だった。
阿武山に登ってきた。
画面中央が阿武山(安威川堤防より撮影)
阿武山と、阿武山古墳の分岐点(藤原鎌足の墓、との説あり)
安威川で川遊びの子供たち・・・冷たくないのか?
孤高の鳥を発見
阿武山の楽しみは、下山後のアイスクリームとあんまん・・・次回は肉まんか?
「寝ても覚めても本の虫」児玉清
俳優・児玉清さんの読書エッセイ。
大変な読書家である。
特に、海外小説に造詣が深い。
私は、海外小説をあまり読まないので、参考になる。
一部文章紹介する。
P100
児玉清さんがシェルダン氏の豪邸を訪ねて、インタビューをする話。
「やはり他のベストセラー作家の作品を絶えずリサーチしているのですか」(中略)
「他の作家の作品は絶対に読まない。なぜなら自分の文体が崩れるから」
「どこで書かれるのですか、まさか手で書かれているのじゃないでしょうね」と質問すると、大きな声で笑われてしまった。彼は最初の頃から、ほとんど全作品が口述筆記であるとのこと。秘書の女性が彼の口述する文章を記録し、コンピューターで処理するのだそうである。
【参考リンク】
「負けるのは美しく」児玉 清2011.6.25
阿武山に登ってきた。
このところ、あまり登っていない。(足腰が弱っている)
先日の台風の影響か?栗が落ちていた。
尾根からの眺め・・・吹田方面
豊能町では、熊が捕獲されたそうだ。
→豊能町でツキノワグマが捕獲されました/高槻市ホームページ
茨木市のホームページでも、『ツキノワグマ注意』の書き込みがある。
次に転載しておく。
兵庫県但馬地域や、京都府北中部地域を中心にツキノワグマの目撃情報が多く寄せられています。
京都府に隣接する本市でも、クマの活動が活発になる初夏や秋にかけて、クマが出没する可能性があります。
山の中や周辺での農作業、ハイキングを行う際には、鈴やラジオなどを携行し、人間の存在を知らせることが重要です。
もしクマに出会ったら
※相手が野生動物である以上、絶対に安全を確保できる方法はありませんが、一般論として言われている内容を示しますので参考にして下さい。
●クマがこちらに気づいていない場合→気づかれないよう静かにその場を立ち去る。
●クマがこちらに気づいている場合→ゆっくりと後退し、その場から去る。
大声を出したり、走ったりするのは、かえってクマを興奮させます。
(熊は音に敏感・・・私は、ザックに鈴を付けている)
「女郎ぐも 日本ふしぎ草子」戸田誠二
民話を元に、戸田誠二さんが描く作品集。
昔話というと、往々にして残酷シーンが多い。
戸田誠二さんは、そのあたりをうまく料理して、
温かい仕上がりにしてくれている。
突き放したエンディングになっていない。
著者は、SFから昔話まで、幅広く描かれている。
ペンタッチ・・・私はもう少し柔らかいのが好み。
SFなら気にならないのだが、今回は日本の民話が元ネタ。
少し気になってしまった。
【ネット上の紹介】
日本各地に伝わる民話や伝承をもとに、市井に生きる人々の暮らしや風習、愛憎模様を丹念に紡いだ短編集。むかし話を通して、現代の私たちが〝生きる意味〟を、著者・戸田誠二氏が、静かに、温かく問いかけます。
「八月の六日間」北村薫
先日、「山女日記」を紹介した。→「山女日記」湊かなえ
本作品は、それに近い内容。
つまり、「限りなく日常に近い山」を描いている。
日常の延長線にある山・・・でも、日常とは異なる「お出かけ」。
微妙なところを描いている。
日々仕事をしていて、ふと山に思いをはせることがある。
逆に、山の中を歩いていて、日々の雑務を思い出すこともある。
すぱっ、と切替は難しい。
そんな感じの山行が描かれる。
様々な山行が描かれるが、毎回、ヒロインが悩むシーンがある。
どの本を持って行くか、と・・・。
重くなるだけなのに、持って行かざるを得ない気持ち。
それは、よく解る。
P231
疲れるのでは――という予感がある。本も読めない気がする。しかし、書籍は常備薬と同じだ。手の届くところに活字がないと不安になる。
【おまけ】1
「山女日記」の湊かなえさんと比べて、本作の北村薫さんの方が、
山の知識も経験も上、と感じた。
どちらが、おもしろいか?
・・・「山女日記」の方が、面白く感じた。
山の実力と、作品の面白さは比例しないようだ。
しかし、淡々と描写される本作は、水彩画のような味わいで、
人によっては、こちらが良い、と感じる方がいるかもしれない。
表紙もなんとも良い感じ。
【おまけ】2
『あずさ2号』の歌が話題になる。P188
「8時ちょうど」とは、朝なのか、夜なのか?
どうも、朝のようだ。
【おまけ】3
飛行機に乗るときも、どの本を持って行くか悩む。
一番印象に残っているのは・・・ 「離愁」(多島斗志之)かな。
【ネット上の紹介】
40歳目前、文芸誌の副編集長をしている“わたし”。ひたむきに仕事をしてきたが、生来の負けず嫌いと不器用さゆえか、心を擦り減らすことも多い。一緒に住んでいた男とは、3年前に別れた。そんな人生の不調が重なったときに、わたしの心を開いてくれるもの―山歩きと出逢った。四季折々の山の美しさ、怖ろしさ。様々な人との一期一会。いくつもの偶然の巡り合いを経て、心は次第にほどけていく。だが少しずつ、けれど確実に自分を取り巻く環境が変化していくなかで、わたしは思いもよらない報せを耳にして…。生きづらい世の中を生きる全ての人に贈る“働く山女子”小説!
「五色の舟」津原泰水/近藤ようこ
近藤ようこさんは、中世を舞台にしたオリジナル作品が多い。
でも、「ルームメイツ」「心の迷宮」のような優れた現代モノもある。
多彩な作品を情感豊かに描かれる。
今回は、津原泰水さんの作品を、マンガ化された。
昭和初期を舞台にした見世物小屋の「家族」を描く。
評判が良いので読んでみたが、確かにすごい作品だ。
日本の漫画界の奥深さを感じる。
【ネット上の紹介】
異形の者たちの哀切な運命――津原泰水の傑作幻想譚を、近藤ようこが鮮烈に漫画化。 先の見えない戦時にありながら、見世物小屋の一座として糊口をしのぐ、異形の者たちの家族がいた。未来を言い当てるという怪物「くだん」を一座に加えようとする家族を待つ運命とはーー。津原泰水の傑作幻想短編を、近藤ようこが奇跡の漫画化。
石井夫妻が、ヨーロッパから帰国した。
スロベニアから入って、ドイツに行ってこられた。
スロベニア・トポと地図を買ってきて頂いた。
重たくてかさばるのに、申し訳ない。(感謝)
石井君の奥さんがレポートを書いておられる。
次に、リンクしておく。
スロベニア (07/06)
<< 帰国しました (07/25)
ミシャペチ > (07/28)
その他 >(07/28)
さよなら、オスプ >> (7/30)
ミシャペチ >> (7/30)
オーストリア通過 (08/01)
ドイツ到着 (08/03)
ドイツ、初日 (08/05)
2日目 (08/06)
ちょっと、生活編 (08/08)
フランケンユーラ、2日目、3日目 (08/12)
「蝉しぐれ」藤沢周平
時代小説、名作中の名作。
評判の高い作品である。
少年の成長がリリカルに描かれている。
様々な苦難が襲いかかる。
お家断絶の一歩手前。
仲間に支えられながら、大人になっていく様子を描く。
万人に受ける、お薦め作品、と思う。
【蛇足】
本作品で、気になるのが、主人公の妻・せつ。
主人公の妻なのに、描かれ方が控えめすぎる。
登場回数も少ないし、個性のない描かれ方。
扱いが、少しひどすぎないか?
本作品唯一の瑕疵、と思う。
せつは、浮気もされて踏んだり蹴ったり。
文四郎は、初恋を満たして良い気分。
(男には)心地よいエンディング。
【ネット上の紹介】
映画「蝉しぐれ」の原作。 清流と木立にかこまれた城下組屋敷。淡い恋、友情、そして忍苦。苛烈な運命に翻弄されながら成長してゆく少年藩士の姿をゆたかな光の中に描いて、愛惜をさそう傑作長篇。(秋山 駿)
久しぶりに、竜王山に登ってきた。
このたびの盆休みは、天候に恵まれず。
展望はイマイチだが、登って良かった。
(脚力が弱っているのが判明)
先日、「天の梯 みをつくし料理帖」が出版された。
これで最終刊、完結となった。
これを機会に、初巻「八朔の雪」を読み返してみた。
8/10付感想で、「みをつくし料理帖」を「カリオストロ」に喩えた。
今回、読み返してみて、別な感想を持った。
第1章から、シリーズ主要男性キャラクター3人が登場する。
種市
小松原
源斉
この3人は、全て『化け物稲荷』の絡みで出会っている。
澪が掃除して、雑草を抜いて道を作り、神狐に赤い前掛けもかけた。
その御利益なのか、前述の3人との「引き合わせ」があり、後々までもずっと、澪を助けてくれる。
一種の仏教説話のような形態をとっていることに気づく。
さらに、「オルフェウスの窓」も思い出した。
『化け物稲荷』が『オルフェウスの窓』と重なる。
そうなると、澪がユリウス、である。
イザークとクラウスは、小松原と源斉。
(種市は、高齢のため除外)
読み返すと、様々な要素で楽しめる。(再び、妄言多謝)
「動物のお医者さん 1~6 愛蔵版」佐々木倫子
私がこのシリーズを初めて読んだのが、20年ほど前のこと。
1990年代初め頃。
とても面白かったので、友人にも薦めたりしていた。
結局、友人が東京に帰るときに、進呈した。
今回、愛蔵版が出たのを機に、再度全巻購入した。
本シリーズの特色は、佐々木倫子ファンならご存じのように、
「花とゆめ」に連載されたにもかかわらず、
色恋沙汰がまったくなく、動物を中心とした笑いが淡々と展開すること。
当時としては、画期的だったと思うし、現在でもそんな少女マンガは稀有、と思う。
本作で、「愛」は描かれるが、それは「動物愛」である。
(コアな少女マンガを読みたい方は、他をあたってください)
菱沼さんは、ハムテルと恋仲にならないし、
二階堂のマドンナにもならない。
主要人物どなたにも、カップル誕生は起こらない。
誰にも恋人は出来ないし、LOVEも芽生えない。
ホント、素晴らしい作品である。
世の中、発情している方ばかりでは無い、と証明した偉大な作品だ。
「天の梯 みをつくし料理帖」田郁
シリーズ10巻目にして、最終刊。
次の4編が収録されている。
結び草――葛尽くし
張り出大関――親父泣かせ
明日香風――心許り
天の梯――恋し粟おこし
これで完結だ!
以下、ネタバレ多数あり、未読の方ご注意。
●第一章、結び草――葛尽くし
今後の身の振り方について悩む澪。
周囲が考えている展望と、澪の考えに齟齬が生じる。
柳吾「そろそろ澪さんを一柳で預からせて頂きたい。私の持てるものを全て教えて、後世に名を残す料理人として育てたいのです」
これに、種市と芳も同意する。
ところが、澪は「否」と。
澪の基本となる考えが、次のように述べられる。(これは前巻P305でも触れられた)
P37
「口から撮るものだけが、ひとの身体を作ります。つまり、料理はひとの命を支える最も大切なものです。だからこそ、贅を尽くした特別なものではなく、食べるひとの心と身体を日々健やかに保ち得る料理を、私は作り続けていきたい。医師が患者に、母が子に、健やかであれと願う、そうした心を持って料理に向かいたいのです」
●第二章、張り出大関――親父泣かせ
澪は独り暮らしを始める。
朝は鼈甲珠と粕漬けを作り、夜はつる家で手伝い。
そんな澪に、貧しい徒組の組衆の為に弁当を作って欲しいと話が持ち込まれる。
ひとつ、十六文なので、あまり儲けにはならないが・・・。
どう対処するのか?
そんな折、政吉が自然薯をつかった料理を考案する。
師走恒例の料理番付・・・今年はどうなるのか?
●第三章、明日香風――心許り
物語は初心にかえった。
なぜ、天満一兆庵の江戸店がつぶれたのか?
佐兵衛が行方をくらました真の理由は?
これが発端である。
天満一兆庵の大阪本店が火事で焼失し、
佐兵衛を頼って江戸へ出てきた。
ところが、佐兵衛は消息を絶っていた、ってのが1作目。
この、根本部分を解明して解決したのがこの章、である。
このところご無沙汰の小野寺(小松原)も陰ながら活躍し、澪を助ける。
最終章の前章に相応しい内容だ。
起承転結の、「結」の前哨戦である。
本作品が非常に計算されたスケールの大きい作品であることが分かる。
●第四章、天の梯――恋し粟おこし
いったい、澪は四千両を用意して、あさひ太夫(野江)を身請けできるのか?
最終章までもつれ込んだけど、この短い一章だけで、大丈夫か?
ホント、やきもきさせてくれる。
摂津屋も、澪にプレッシャーをかける。
P244
「今日までかかって出なかった知恵が、今さら絞り出せるのか、甚だ疑問ですな」
(中略)
「では、四日だけ、待ちましょう。四日後に答えを聞きに、またここへ伺います」
はたして四日で、澪は四千両を用意する解決策を見いだせるのか?
P253
「なるほど、そんな手を考え付くとは、よくまあ知恵を絞ったものだ。で、翁屋伝右衛門に、幾らで売るつもりだね?」
「四千両です」
う~ん、そう来たか!
江戸の人に「著作権」「商標」の概念は、どの程度浸透していたのだろう?
(法的になくても、モラルとして・・・『のれん』の概念はあったから、理解できる)
あとは、あさひ太夫を身請けするのみ。
しかし、最後の問題が立ちふさがる。
P255
戯作者清右衛門は、どのお大尽に身請けされるよりも、幼馴染みの澪に身請けされるのが一番の吉祥、と言ったが、果たして本当にそうだろうか。
女が女を身請けしたとなれば、大騒ぎになる。吉原を出たあと、野江をこの借家へ迎えるとして、ひとの口に戸は立てられないのだ。
私は、四千両調達より、この身請け状況設定に感心した。
誰が身請けするか・・・とても重要な問題だ。
もし、澪が身請けしたなら、野江は生涯、心に負債と負荷を背負ってしまう。
しかし、この方法なら、何の重荷も無い。
絶妙な大団円、である。
【妄言】
Damsel in Distress(ダムゼル・イン・ディストレス)という言葉がある。
「囚われの姫君」のこと。→Damsel in distress - Wikipedia - ウィキペディア
古くはギリシア神話・アンドロメダ、映画ならスターウォーズのレイア姫。
本作では、「あさひ太夫」がそれにあたる。(「カリオストロ」なら、澪がルパン三世、野江がクラリス、か・・・しつこい?)
そういう意味で、「みをつくし料理帖」は、古典的手法、物語の定石を踏んだ設定、と言える。
つまり、囚われの姫君「あさひ太夫」を救出するミッションを遂行すべく、澪が奮闘するファンタジー、なのだ。
ただ、他作品と異なるのは、救出役が女性であった、という点。
もし、サラ・ウォーターズなら、澪と野江が結ばれて大団円、としたでしょうね。
(このエンディング、一部のマニアにしか受けない?)・・・妄言多謝
↑これがサラ・ウォーターズの傑作「荊の城」だ!
【今後】
本編はこれで終了だけど、P340『瓦版』に次のように書かれている。
長くお待ち頂くことになりますが、それぞれのその後をまとめて、特別巻として刊行させて頂くことでお気持ちに添えたら、と考えています。
・・・楽しみに待っていたい。
【おまけ】
おまけで、最終ページに文政11年『料理番付』が付いている。
これが、澪たちの『その後』である。
『西』に四ツ橋の『みをつくし』。
『東』は、元飯田町の『つる家』。
『勧進元』が、一柳改メ『天満一兆庵』、である。
・・・著者は、ホントはこれでオワリにしたかったのかもね。
(これで十分語っている、と思う・・・でも、番外編が出たら読んでみたい)
【蛇足】
前巻の発売の際は、大雪で入荷が送れた。
今回は、台風・・・だった。(買いに行くのも雨と風で大変)
書店に行くと、まだ陳列されていない。
「みをつくし新刊ありますか?」、と私が聞くと、
奥から出してくれた。(よかった!)
物語と供に、自然も波乱となる「みをつくし」である。
「山女日記」湊かなえ
処女作「告白」から、何冊か読んできた。
やはり、「告白」がベスト。
それ以上の完成度は望めそうもない。
もう、湊かなえ作品を読むのはやめよう、と思っていた。
しかし、今回は山が舞台。
気になって仕方ない。
とりあえず購入して読んでみた。
結果から言うと、読む価値があった。
思った以上に面白かった。
しかも、これが湊かなえ作品か!って思うような新境地。
知らずに読んで、
・・・「これは柚木麻子さんの作品」とか、
・・・「宮下奈都さんの作品」と言われたら、
それで、納得するかもしれない。
悪意を徹底的に描いて、後味が悪い、ってのがいつもの湊かなえ作品。
それが、「癒やし」さえ感じられる内容となっている。
(湊かなえさんとカタルシスは無縁、と思っていたので驚いた)
次の7編収録されていて、「山ガール」が登場する趣向である。
妙高山
火打山
槍ヶ岳
利尻山
白馬岳
金時山
トンガリロ
それぞれヒロインは異なるが、微妙にリンクしている。
ある作品の脇役が、次の作品のヒロインだったりする。
しっかり読む必要がある。(私は何度もページを戻って確認しながら読み進んだ)
最初の「妙高山」で、ぐっと引きつけられる。
デパートに勤務する同期の女性3人で、山を登ることになった。
ところが、中心となる女性が突然行けなくなり、2人で行くことになる。
この2人の息が合わない。
いきなり言い争ってしまう。
しかも、言ってはいけないことを言ってしまう。
「言いたいことはわかった。わたしは、他人の立場になって物事を考えたり、相手のペースに合わせるっていう感覚が抜けているのかもしれない。だけど、不倫している人に言われることじゃない」
さて、この2人は、無事登頂して下山できるのか?
登山というのは、一種の極限状態。
すごく仲良くなることもあれば、最悪の関係になって、
下山してからも口をきかなくなって、不仲になったりすることがある。
そりゃ、一日中一緒に行動して、夜も一緒に休むのだから。
普段気にならないことが気になり、許せなくなったりする。
疲れているから、よけい許容範囲が狭くなる。
クライミングも同様だけど、登山より『生活』が占めるパーセントが低いので、まだましかも。
それでも、仲が良くても1週間くらいが限度。
毎週末一緒に行動していて仲が良いと思っていても、それは『勘違い』、である。
2週間以上行動を共にして、登り続けるには、よほど気が合わないと無理。
ついでに言うと、お互い一人一張のテントだと、夜はプライバシーが確保され、関係が長持ちする。
(さらに、食事も各人で作って食べるとなお良し・・・食べ物は、作り方も含め、トラブルの元だから)
アパートとか借りると、「逃げ場」が、(トイレ以外)ないので、しんどくなる。
食事、リズム、干渉、間合い、禁句・・・地雷を踏まないように、でも慎重になりすぎると、自分がまいってしまう。
ホント、年齢に関係なく、「人間関係」は、難しいものです。
話が、本作品から逸れた。
もう少し、文章を紹介する。
P39
「由美はどこを目指しているの?」
「・・・・・・は?妙高山の山頂でしょ」
「じゃなくて」
「あれ?もしかして、今日が火打山で明日が妙高山だった?」
「ううん。今向かっているのが妙高山。だけど、わたしが訊いているのは、部長と最終的にどうなりたいの?ってこと」
「・・・・・・わかんない」
「奥さんと離婚して自分と結婚してほしいなとか、今の関係のまま続けたいなとか」
「どっちも、深く考えたこと、ないな。じゃあ、りっちゃんのゴールは何?」
「わたしは当然・・・・・・」
結婚だろうか。わたしが目指しているところはそこなのだろうか。
それぞれの章で、ヒロイン達は山に登り、
登りながら、普段の生活を振り返り、内省する。
そこがポイントである。
山を舞台にした小説の書き手は何人かいる。
笹本稜平、樋口明雄、熊谷達也、谷甲州、真保裕一、夢枕獏、平山三男、大倉崇裕、堂場舜一・・・。
しかし、今回のような作品は、あるようでない。
(男性作家だと、主人公が人生に苦悩し、遭難者続出)
山が舞台なのに、アクションシーンがなく、心理劇となっている。
それじゃぁ、街を舞台にしたのと変わりない、と言われそう。
山を舞台にする意味ないじゃん、と。
でも、そこがいいのだ・・・私は、心理に徹底してこだわった点を、素晴らしい、と感じた。
拍手したい気分だ。
P260
神崎秀則さん、神崎美津子さん、太田永久子さん、牧野しのぶさん。最後に私の番が回ってきた。ロブに、Yuzuki、と伝える。
・・・何でもないシーンのように思えるけど、各章で登場した人たちである。
ニュージーランドのトンガリロに集結した。
感慨深いものがある。
P290
人は大なり小なり荷物を背負っている。ただ、その荷物は傍から見れば降ろしてしまえばいいのにと思うものでも、その人にとっては大切なものだったりする。むしろ、かけがえのないものだからこそ降ろすことができない。だから、模索する。それを背負ったまま生きていく方法を。吉田くんとわたしは互いの荷物を自分の解釈でしか捉えることができなかったのだ。
それでも、あのこじれた状況にあっても、二人で山に登っていたら・・・・・・。
【蛇足】1
ダナーの登山靴が出てくる。
おそらく、著者お気に入りの靴なんでしょうね。
(良い靴かどうかは、状況と個々人により様々)
私は、特に、こだわりはない。
山歩きの靴は、足に合えばそれでよい、と思っている。
靴擦れせず、フィットしていれば良い。
(もちろん、積雪期やクライミングになると、話は別だけど)
ただ、アウトドアは形から入るのも「楽しみ」の要素。
ブランドのウェア、靴、ザック・・・。
人それぞれ、である。
【蛇足】2
P94で、上高地帝国ホテルに1人で泊まる話が出てくる。
ビジネスホテルじゃないので、1人で泊まる部屋はない、と思っていたけど。
ツインのシングルユースとか、出来るのだろうか?
実際のところ、どうなんだろう?
【参考リンク】1
【前編】山に登る理由がわからないから本を読む - 幻冬舎plus
【後編】 登ってから書く、読んでから登る、山のお…
作家の読書道 第113回:湊かなえさん
【ネット上の紹介】
このまま結婚していいのだろうかーーその答えを出すため、「妙高山」で初めての登山をする百貨店勤めの律子。一緒に登る同僚の由美は仲人である部長と不倫中だ。由美の言動が何もかも気に入らない律子は、つい彼女に厳しく当たってしまう。医者の妻である姉から「利尻山」に誘われた希美。翻訳家の仕事がうまくいかず、親の脛をかじる希美は、雨の登山中、ずっと姉から見下されているという思いが拭えない。「トンガリロ」トレッキングツアーに参加した帽子デザイナーの柚月。前にきたときは、吉田くんとの自由旅行だった。彼と結婚するつもりだったのに、どうして、今、私は一人なんだろうか……。真面目に、正直に、懸命に生きてきた。私の人生はこんなはずではなかったのに……。誰にも言えない「思い」を抱え、一歩一歩、山を登る女たちは、やがて自分なりの小さな光を見いだしていく。女性の心理を丁寧に描き込み、共感と感動を呼ぶ連作長篇。
【参考リンク】2
「告白」湊かなえ
「少女」湊かなえ
「境遇」湊かなえ
「往復書簡」湊かなえ