「学問」山田詠美
仁美が家族と東京から引っ越してくるところから物語が始まる。
舞台は静岡県美流間市。
その土地に住む、同年代の子どもたちとともに成長が描かれる。
4部構成になっている。
1部=7歳
2部=小学5年生
3部=中学2年生
4部=高校2年生
いつくか印象に残る文章を紹介する。
P21
母親同士というのは、いったいどうして、こういうつまらない会話を延々と続けるのでしょう。夕食時になれば、母は父に、お隣の奥さん、なんだか面倒臭そうな人ね、などと伝えるに決まっているのです。
P105
「涙って、汗と一緒で、定期的に流さないと体に悪いんだってさ。知ってた?」
P145
いかにも、自然。けれど、何故でしょう、その自然さは、いつも、彼女の心をつねるのです。そして、そのつねられ具合は、痛みには至らないものの、往々にして、彼女を涙の一歩手前まで押しやるのです。(小学生だから「せつない」という言葉を知らないのだ。でも、この言葉を他の言葉に置き換えて、これほどきちんと説明した文章を初めて読んだ・・・byたきやん)
P157
「ねえ、こういうことして赤ちゃん作るんならさ、その赤ちゃんって、どっから生まれて来るの?」
仁美の問いに、無量は何も言わず、その読めなかった漢字を指しました。
「嘘!?」と、千穂が声を上げます。
「うちのお母さん、私に嘘ついてたーっ。おへそから生まれるって言ってたーっ」
「うちのママは、おなかの皺から出てくるって言ってたよ。あれ、ただの二段腹だったんだーっ」
久しぶりに、山田詠美作品を読んだ。
今まで読んだ山田詠美作品のベストは、「ぼくは勉強ができない」「放課後の音符」。
さらに、これらの作品のダークサイドが、「蝶々の纏足」「風葬の教室」。
【ネット上の紹介】
東京から引っ越してきた仁美、リーダー格で人気者の心太、食いしん坊な無量、眠るのが生き甲斐の千穂。4人は友情とも恋愛ともつかない、特別な絆で結ばれていた。一歩一歩、大人の世界に近づく彼らの毎日を彩る生と性の輝き。そして訪れる、それぞれの人生の終わり。高度成長期の海辺の街を舞台に4人が過ごしたかけがえのない時間を、この上なく官能的な言葉で紡ぐ、渾身の長編。