【ぼちぼちクライミング&読書】

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「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」米原万里

2024年08月02日 07時38分34秒 | 読書(海外事情)
「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」米原万里

何度目かの読み返し。

P26
いわばレーニンゆかりの聖地巡礼という趣の映画。講堂の暗闇の中で、隣に座るリツァがつぶやいた。
「マリ、レーニンって、ずいぶんいい暮らしをしていたのね」

P132
「ロシア、東欧に移住して帰化したユダヤ系の人々の苗字は、ほとんどがドイツ語起源ですね」

P155
驚いたのは、イディッシュ語が聞きまごうほどにドイツ語にソックリだったことだ。ユダヤ人のもともとの母語であるヘブライ語はアラブ語と親戚語で、両方の言語を知らない者が耳で聞き分けることが不可能なほど似ている。(中略)中世期、ユダヤ人をもっとも受け容れたのがドイツ社会だったという事実を今更ながら実感した。

【参考図書】
「姉・米原万里」井上ユリ
妹のユリさんが書いている。
こちらも流れで読んだ。

【ネット上の紹介】
1960年、小学校4年生のマリは、プラハのソビエト学校にいた。男の見極め方やセックスのことを教えてくれるのは、ギリシャ人のリッツァ。ルーマニア人のアーニャは、どうしようもない嘘つきのまま皆に愛されていて、クラス1の優等生はユーゴスラビア人のヤスミンカだ。30年後、激動する東欧で音信の途絶えた彼女たちと、ようやく再会を果たしたマリが遭遇した真実とは―。

「漂流するトルコ」小島剛一

2024年07月29日 07時08分34秒 | 読書(海外事情)













「漂流するトルコ」小島剛一

読み返し。

P76
賄賂はトルコやその周辺の国々のあらゆる階層に広く深く根付いている慣習。(中略)多くの人は「賄賂を使わずにまともに生活できる国なんてこの世にはない」と確信している。

P138
トルコに住んでいる人と郵便による連絡はしていない。そんわけは、トルコでは「国家の安全のため」と称して公式に私信無断開封を国家が行っているからである。

P235
チェルノブイリ原発事故以来、トルコのガンや白血病の診断率は、それまでの数十倍に跳ね上がっている。 

P236
ユダヤ社会では「母親がユダヤ人であればユダヤ人であり、母親がユダヤ人でなければユダヤ人でない」と決まっている。

【ネット上の紹介】
政府に弾圧され続けるトルコの少数民族の言語と、その生活の実態を、スパイと疑われながら、調査し続けた著者。前著『トルコのもう一つの顔』(中公新書)が、まるで推理小説のようなスリルに満ちた物語と、著者の少数民族に対する愛情に涙が出たと絶賛され、長らく続編が待望されながら20年。前著でトルコを国外追放されたあと、再びトルコへの入国を果たし、波瀾万丈のトルコ旅行が開始される。著者の並外れた行動力と、深い知識、鋭い洞察力が生み出した画期的トルコ紀行。


「新・民族の世界地図」21世紀研究会

2024年07月27日 09時03分40秒 | 読書(海外事情)


「新・民族の世界地図」21世紀研究会

P31
「国語」には、他の民族語の存在を認めないという概念が含まれて、かなり国粋主義的な色合いが強い。(イギリスではただの「イングリッシュ」)

P34
ロシア語中心で国家統合を強行したスターリンその人は、グルジア出身であったのに。

P35
イギリスのウェールズはスコットランドやアイルランドと同様、ゲルマン系のアングロサクソン人より先住のケルト系民族の伝統が濃い地域である。

P72
インドネシアが国民の9割近く、1億8,000万人以上のイスラーム教徒をかかえるが、国教は定められていない。(中略)国民はイスラーム、カトリック、プロテスタント、ヒンドゥー教、仏教、それに近年認められた儒教のいずれかを信仰しなくてはならない。無宗教は共産主義を連想させるといい、憲法で信仰の自由は認められているが、なにも信仰しない自由は認められていないのである。(隣国マレーシアはイスラーム教徒5割で国教となっている)

P106
西洋の文化はヘブライズムとヘレニズムを2本の柱とするが、これら地中海地域の二大文化の基層に横たわるのが「ケルト」の文化である。

P112
「北の人」を意味するノルマン人は、おもにスカンジナビア半島に住んでいたゲルマン系の民族である。(中略)
デンマーク地方からイングランドに進出したノルマン人はイングランド人からはデーン人とよばれた。デーン人はアングロ・サクソン人を支配下におき、1016年にデーン朝を開いた。この王朝は短命に終わったが、1066年には、イングランド王家と縁戚関係を得ていたノルマンディー公ウィリアムがノルマン王朝を開く。世にいう「ノルマン・コンクェスト」である。

P171
アボリジニの子どもを親元から連れ去って白人家庭や隔離施設で養育するという乱暴な親子政策もおこなわれた。(中略)アボリジニがオーストラリア国民と認められたのは1967年のことだが、白豪主義による親子隔離政策は1971年まで続けられた。

【ネット上の紹介】
9・11以後、世界の枠組は変わってしまったのか?民族問題は「正義と悪」の二元論では割り切れない。民族地図から読み解けば、複雑な事件も全く新しい答えが見えてくる。
第1章 民族と言語
第2章 民族と宗教
第3章 民族の移動
第4章 先住民族・少数民族
第5章 民族対立・紛争
第6章 中東・アラブとユダヤ
第7章 エネルギー争奪戦


「トルコのもう一つの顔」小島剛一

2024年06月07日 08時14分09秒 | 読書(海外事情)

「トルコのもう一つの顔」小島剛一

13年ぶりの再読。

Pⅱ
回教徒の友人にある日「キリスト教徒でない者がナザレのイエスのことを『キリスト(救世主)』と呼ぶのは不謹慎だ」と責められて一言もなかった。ナザレのイエスは回教徒とユダヤ教徒にとっては「予言者」であって「救世主」ではない。

P35
トルコ政府代表は「クルド民族というものは存在しない」という答弁を続けている。(中略)トルコ政府の言明とは裏腹に、トルコ国民の実に3分の1がクルド人なのである。

P135
お寺や教会の鐘の音を聞いて「美しい」と言う人も「喧しい」と言う人もあり、さらには「恐ろしい」と言う人もある。では、トルコ人は山を見て「美しい」と思うことがほとんどないようである。

P144-152
「クルド人の民族主義者が皆マルクス・レーニン主義だなどということはない。ムシュ県はいつの選挙でもイスラーム原理主義政党が勝つのは知っているね。クルド人はシャーフィイー派が多くて、『宗教は阿片なり』の一言を聞くだけで無条件に反共なんだ。ところがマルクス・レーニン主義者かつ信心深い回教徒という人も結構あるし、左翼だけど反ソというのがまた随分多い。モスクワの政府がソ連の少数民族の民主主義を非難するのはロシアの民族主義の発露にほかならないことを見抜いているからだ」

【ネット上の紹介】
言語学者である著者はトルコ共和国を1970年に訪れて以来、その地の人々と諸言語の魅力にとりつかれ、十数年にわたり一年の半分をトルコでの野外調査に費す日日が続いた。調査中に見舞われた災難に、進んで救いの手をさしのべ、言葉や歌を教えてくれた村人たち。辺境にあって歳月を越えてひそやかに生き続ける「言葉」とその守り手への愛をこめて綴る、とかく情報不足になりがちなトルコという国での得がたい体験の記録である。

「ゾンビ化するアメリカ」町山智浩

2024年02月07日 17時51分39秒 | 読書(海外事情)


「ゾンビ化するアメリカ」町山智浩

P68
アディダスの社名は創業者アドルフ・ダスラーの名前に由来している。靴工場の経営者だったダスラーはヒットラーのナチ党に参加し、ドイツ軍のために靴を作っていた。そんな歴史を背負ったアディダスにとって「反ユダヤ」と呼ばれるのはなんとしても避けたい。

P88
ハーシェル・ウォーカーは、数々のスキャンダルについて聞かれ「この選挙は私のためではなく、国民のためのものです」と言おうとして選挙Electionを勃起Erectionと言って大恥をかいてしまった。(EとRの区別は難しい。人ごととして笑えない。愛するlove を、こするrub と発音してしまう)

P179
BEEFは「牛肉」じゃなくて「不平」「悪罵」を意味するスラング。

P182
「アジア系の親は子どもの通信簿はAしか許さない。血液型がBでも叱る」というジョークもある。

P199
ツイッター社を440億で買収したイーロン・マスクは去年の10月に同社のCEOになったが、やることなすこと失敗だらけ。まず7500人いた社員を1000人に減らした。減らしすぎてシステムのメンテナンスもできず、エラーは日常茶飯事になった。
また、デマや陰謀論、テロや差別など、危険なツイートを監視するスタッフを辞めさせたため、ひどいツイートが激増した。

ポテト飢饉1840年について
P247
この時期、アイルランドの人口は800万人から500万人に減った。アイリッシュ・ディアスポラ(アイルランド人世界離散)と呼ばれる。
職を求めて対岸のリバプールに渡ったアイルランド人の子孫がビートルズのジョン・レノンやポール・マッカートニーだし、大西洋を渡った移民の子孫はJ・F・ケネディ、オバマ、バイデン大統領、トム・クルーズやブラッド・ピットやジョージ・クルーニー、自動車王ヘンリー・フォードと西部劇の巨匠ジョン・フォードだ。

【ネット上の紹介】
この国はまだ息をしてますか?“トランプ・ランド”はまだ終わってない?アメリカの悪夢はまだ続く!澤井健のイラスト完全収録。
民家に車で突っ込んで焼死したハリウッド女優アン・ヘッシュの壮絶な人生
公文書持ち出しのトランプ その信者は謎のおしっこテロ
『NOPE/ノープ』は映画史から消されたアフリカ系の復讐
女性やゲイの権利を潰す最高裁判事の黒幕はカトリックの騎士!
「うちの子は爬虫類!」陰謀論にハマったトランプ信者たちが各地で大暴走
難民を他州に送りつけディズニーに嫌がらせ フロリダ州知事デサンティス
イタリアの極右首相とトランプの参謀の怪しい関係
フロリダで共和党が強いのはキューバ移民をケネディが裏切ったから
トランプが住むフロリダの超高級住宅地を開発した大富豪はなぜ呪われたのか
全米最大のお達者コミュニティでは男性がモテモテ
ユダヤ陰謀論者のカニエ・ウェストをアディダスが切った理由
ペロシ議長が襲われたツイッター買収で陰謀論が野放し
『風と共に去りぬ』のアトランタは今ヒップホップの首都で南部のハリウッド
トランプ再出馬演説はウソだらけ 公文書持ち出しで監獄から選挙活動?
元NFLスターの上院議員候補が妻を殺そうとしたのは多重人格が原因?
テンプテーションズの自伝ミュージカルは死屍累々のコンフュージョン
カニエ・ウェストついにナチ宣言 その原因はポルノ?
「暗号資産の王」は会社ごっこで懲役115年?
共和党初のゲイ議員は学歴、職歴、資産おまけに民族も全部ウソ!
アイダホの猟奇殺人犯人逮捕の決め手はDNAデータベース〔ほか〕


「アメリカがカルトに乗っ取られた!」町山智浩

2024年02月05日 08時02分04秒 | 読書(海外事情)


「アメリカがカルトに乗っ取られた!」町山智浩

P174
「グルーマー」とは「子どもにグルーミングする人」という意味で、「小児性愛者」の婉曲表現。

P256
中絶を罪と考える保守的なキリスト教徒が多い南部や中西部では、かつて州法で中絶が禁じられてきた。しかし1973年、連邦最高裁が中絶は女性の権利であると判決し、合法になった。それ以来、保守的キリスト教徒はその最高裁判決を覆すことを悲願としてきた。

【ネット上の紹介】
次のアメリカ大統領は誰だ?バイデンの不調につけ込んで、トランプ陣営が大躍進? 次の大統領選を左右する中間選挙の直前、アメリカの1年の話題を総ざらえ!
ニューヨークが営業再開 外国からの観光客に路上で無料ワクチン打ちまくり
北米各地の熱波で数千人死亡 生き残るのは金持ちだけ?
東京五輪はアメリカで「電通地獄」と報道された
シモーネ・バイルズや大坂なおみの棄権を叩くキモオヤジたち
クオモNY州知事がセクハラで辞任 じゃあトランプは?
アフガン陥落でバイデン批判沸騰 でも難民は受け入れないの?
ニルヴァーナのジャケで泳いでた赤ん坊が金を求めて…
マシュー・マコノヒーが出馬を考えるほどヒドいテキサス州の政治とは?
セックスさせないよ!テキサスの中絶禁止に女性ストの呼びかけ
反ワクチン反マスクのデマゴーグが次から次に死んでいく〔ほか〕


「世界裁判放浪記 」原口侑子

2023年11月24日 07時49分18秒 | 読書(海外事情)


「世界裁判放浪記 」原口侑子


P48・・・2011年バングラデシュ、タンガイルの街にて
私たちは縁石に座ってチャイをごちそうになり、おしゃべりをしていた。女の子の1人は「日本は遠い国?」と聞いた。私はそうだと言った。(中略)
「こことは全然違うの?」
「うーん。あまり変わらないかな。日本の人もお米を食べてお茶を飲む。でも、日本のお茶は、甘くない」
「えー!甘くないお茶なんてあるの」

P201
ブラジルでは、大統領だけでなく、誰がどんな裁判をしているかもネットで検索できるのだという。かたや日本では、注目の裁判は裁判所に並んで傍聴券の抽選を待つ。

P203
日本の紙証偏重主義はおそるべきものである。刑事裁判では、弁護人側が検察官の手元にしかない証拠をコピーしないといけない。コピーに1枚40円かかる地域もある。原則は被告人の自己負担で、コピー代に600万円支払った事件もあるという。

P259
娼館街は、付近にある女学校から訴えられ、2020年になってまたつぶされたという話を、タンガイルの友人経由で聞いた。

P336
ルワンダでは、裁判ももう何年も前からIT化されている。提訴するのもオンライン。支払もオンライン。
「通信がない人たちをどうカバーするかは課題になっている。(中略)政府がサービスセンターを作ったりNGOがステーションを作ったりして、サポートできる体制を作ればいい。日本は?」
「日本は逆だな。『ネットを使えない人もいるから』を理由に、新しい技術の導入を先送りにしている。まだ裁判所は『ファクシミリ』を使っている」(ファクシミリは、既に「遺物」としてスミソニアン博物化に展示されているらしい。日本は新しいもの好きなわりに、現状維持にもこだわる。キャッシュレス化も進まない。プリペイドカードも複数あり不便。統一してほしい。台湾には悠遊カード、香港には八達通カードがあり旅行者には便利。インバウンドで海外の方が大勢来られているが、現金支払が多くて困っていると聞く)

【朝日新聞記事】2023年11月19日 


【ネット上の紹介】
とある法律事務所に勤めていた弁護士は、あるとき世界各国放浪の旅にでる。目的の1つは裁判傍聴。訪れる先々で法廷へ赴き、傍聴したその国は30カ国。各国で出会う魅力的な人々や文化、緊張感漂う法廷内外の様子、裁く者・裁かれる者たちの人間模様を、ときに弁護士、ときの旅人の視点でみずみずしく描く。番外編として東京地方裁判所での裁判員裁判をおった迫真のルポも収録。
第1部 ユーラシア(その一)
第2部 アフリカ(その一)
第3部 アフリカ(その二)
第4部 ユーラシア(その二)
第5部 北太平洋と南米
第6部 ユーラシア(その三)
第7部 南太平洋


「人名の世界地図」21世紀研究会/編

2023年10月16日 06時08分48秒 | 読書(海外事情)


「人名の世界地図」21世紀研究会/編

面白くて、役に立つ。
小説を読んだり、ドラマを観たときに、人物のルーツを推測できる。

P4
すぐにユダヤ人だとわかるように、植物、金属名しか使わせなかったのだ。
(ゴールドマン、ゴールドバーグ、リリエンタールなど。金属・植物以外にも、フリードマン、グリーンバーグ、ホフマン、レヴィ、ネイサン、ロス、ロスチャイルド、ルービンスタイン)

P52
ピューリタンたちは、とりわけこの罪(ダヴィデ王の不倫)を忌み嫌ったため、アメリカの初期の移民などはディヴィッドという名前を子供たちにほとんどつかなかった。

P60
マイケルという名前がアイルランド人に多かったことから、その愛称のミックやミッキーはアイルランド人をさす俗称、ときに蔑称となった。(中略)
アイルランドを代表するもうひとつの名前、パトリックの愛称も、侮辱的にもちいられることが多かった。
パトリックの愛称パディやパットは、ミッキーがアイルランド人の貧しさをあげつらう名前であれば、かんしゃくもちというイメージと結びついている。また警官や消防士となったアイルランド系移民が多かったため、パディは警官をさす俗語となった。

P61
ジョンは、オランダではヤンとなる。ニューイングランドに入植したオランダ人をイギリス人がからかってよんだヤンキー(オランダ野郎)は、転じてアメリカ北部の住民を、さらにアメリカ人全体をさす俗称となった。

P142
アメリカのブリジットはさっぱり人気がない。理由は、19世紀半ばにアイルランドを襲った空前のジャガイモ飢饉にある。困窮した農民百万人が移住したアメリカでは、ブリジットという名前がアイルランド人のお手伝いさんの代名詞のようになってしまったのだ。

P150
ミッキーは、大天使ミカエルに由来するマイケルという名前の愛称だ。マイケルはパトリックとともに、アイルランドの男性名の典型とされる。
そして、このミッキーという愛称は、移住先のアメリカでも、実はアイルランド人への蔑称だったのだ。
ミッキーという名を思いついたのはディズニーの妻だが、映画でもミッキー・マウスの声優をつとめたディズニーは、チビのネズミ、ミッキーに自分の姿を重ね合わせていたのかもしれない。

P191
キリスト教が国教となったローマ帝国では、ユダヤ人の生活はしだいに制限されていく。ローマ帝国滅亡後の中世でも、ユダヤ人はキリスト教徒から蔑まれ、教会がキリスト教徒に禁止していた金融業を強制されたり、ペストはユダヤ人が井戸に投げ込んだ毒が原因だというような偏見に苦しめられた。

タイではお互い愛称で呼ぶ
P247
女性の愛称プン(ミツバチ)ちゃん、クン(エビ)ちゃん、メーオ(猫)ちゃんや、男の子チャーン(象)君、タオ(カメ)君、ケン(上手)君などは、愛称としてさほど違和感はない。

ネット上の紹介】
バーンスタイン、カラヤン、ニュートン―私たちがふだん何気なく聞きながしている人名のなかには、民族、宗教、英雄伝説の長い歴史が眠っている。またときには、「醜い頭」「曲った鼻」というあだ名が、なぜかそのままケネディ、キャメロンという姓になってしまうこともあった。音楽家のバッハはどうして「小川さん」なのか、シャガールという姓にこめられた秘密とは何か?三千年にわたる人名の謎を解き明かすタイムカプセルが、いま開かれる。
第1章 名前にこめられた意味
第2章 聖書がつくった人名の世界地図
第3章 ギリシア・ローマ―失われたものの伝説
第4章 花と宝石に彩られた女性名の反乱
第5章 コナー、ケヴィン―ケルト民族は生きている
第6章 ヴァイキングたちが運んだ名前
第7章 名前でも迫害されたユダヤ民族
第8章 姓氏でわかった中国三千年史
第9章 先祖の名とともに生きる朝鮮半島の人たち
第10章 アジア・アフリカの人名地図
第11章 黒人奴隷に押しつけられた名前
大索引 人名は「意味」の宝庫


「6カ国転校生ナージャの発見」キリーロバ・ナージャ

2023年03月27日 07時22分26秒 | 読書(海外事情)


「6カ国転校生ナージャの発見」キリーロバ・ナージャ

著者は、世界6カ国(ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ)で転校を繰り返した。
教育の常識や「ふつう」がひっくり返る本。

P52
フランスの小学校に転校して、初めてのお昼の時間がやってきた。「案内するよ!」と誘ってくれた隣の子と一緒にカフェテリアへ向かった。どんな給食が出るのだろうか。ワクワクしながら向かったが、出てきたのはあまりおいしくないお肉の何かと蒸し野菜だった。とりあえず、食べ始めた。カフェテリアはガラガラだった。ぜんぜん人が増える気配はない。みんなごはんを食べないのだろうか?と気になったがフランス語が話せない。身ぶり手ぶりで「みんななんで食べにこないのか?」と聞いてみた。
すると、しばらくの説明とジェスチャーで、フランスの学校では多くの人は家族と一緒にお昼と食べるために家に帰るのだということが分かった。「え、家に帰る!?」。わたしは、信じられなかった。「親は仕事じゃないの?」。しばらくしてどうやら親も同じように長めの昼休みがあって家に帰って食べる人が多いとのことだった。(中略)
ロシアの小学校は日本と同じでみんな給食だ。(中略)
アメリカの小学校はイギリスと似ていて、朝の出欠をとるときに、「HOT」(給食)か「COLD」(自前のランチ)かを先生に伝える。ここの違いは、みんな事前に配られた給食メニューを見て自分が好きな食べ物が出るときだけ給食にすることが出来ることだ。ピザ、ホットドッグ、ラザニア、タコスなどは人気で、給食を選ぶ人が普段よりも倍くらいになる。(中略)ここでは誰も嫌いなものを無理に食べさせることもしなければ、残しても問題ない。なぜなら、お金を払ったのはあなた(あなたの親)だから、お金を払ったものをどう扱うかはあなたの自由と考えると同級生から聞いた。(中略)
日本の給食の面白いところは、給食当番がみんなに給食を配ったり取り分けたりするところだ。子どもでやってもいいのか?(中略)カフェテリアがなく教室で食べるというのも新鮮だった。ただ、日本の給食にはひとつ大きな欠点がある。それは、ロシアにもいえることだが、多様性を許さないことだ。
(ムスリムやユダヤ教徒は特定の肉が食べられないし、アレルギーの子もいる。今後の課題、と思う)

【ネット上の紹介】
6つの国4つの言葉で学ぶとどうなるか?ソ連(当時)に生まれ、両親の転勤で世界6カ国(ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ)の地元校で教育を受けた著者ナージャが、それぞれの国での体験&発見を紹介。机の並べ方、筆記用具、テスト、ランチ…世界の教室はこんなに違った!正解はない、違いがあるだけ。「ふつう」がひっくり返り、世界の見え方が変わる本です。
第1章 ナージャの6カ国転校ツアー(筆記用具は?「よく書く」ためのえんぴつ。「よく考える」ためのペン
座席は?小学校の座席システム。実は、全部違った
体育は?ロシアの学校では、体育で整列するとき背が高い人が前だった
学年は?ロシアでは、「1年生」という学年が2学年ある
ランチは?小学校のランチシステム。実は、さまざまだった ほか)
第2章 大人になったナージャの5つの発見(「ふつう」が最大の個性だった!?
苦手なことは、克服しなくてもいい!
人見知りでも大丈夫!しゃべらなくても大丈夫!
どんな場所にも、必ずいいところがある!
6カ国の先生からもらったステキなヒントたち)


「チョンキンマンションのボスは知っている」小川さやか

2022年09月17日 10時45分56秒 | 読書(海外事情)


「チョンキンマンションのボスは知っている」小川さやか

香港に生きるタンザニア人たちの生活を描いている。
2020年 第51回 大宅壮一ノンフィクション賞受賞
2020年 第8回 河合隼雄学芸賞受賞

P10
世界各地から有象無象の交易人と労働者が中国・香港になだれこみ、模造品や偽物、コピー商品を含む中国製品を買いつけ、コンテナやエアカーゴで母国へ輸出する。(中略)私は、このような21世紀初頭に台頭した国境を超えるインフォーマルな経済の台頭そのものに胸を躍らせてしまったのだ。

P58
タンザニア人の難民認定の理由は様々だ。例えば、性質(たち)の悪い金融業者から多額の借金をしており帰国したら追い込まれる、民族的な小競り合いのある地域の首長の息子であり帰国したら復讐される、妖術師であると冤罪をかけられたが晴らす方法がない等々。

P198
香港の金融街・オフィス街でもある中環は、ビジネスマンや観光客、最先端の若者たちが楽しめる「垢抜けた」「クール」な雰囲気のクラブやバーが多いのに対して、湾仔は、フィリピン人歌手が洋楽のライブ演奏をするクラブやトップレスバーなど「何だか懐かしい」「アットホーム」な雰囲気の遊び場が多い。タンザニア人たちは、純粋に遊びに行くならば、湾仔のほうが圧倒的に好きなようだ。

【閑話休題】
私が香港に行ったのは1997年2月。
これは、「返還」の年。(返還される前に行っておきたかった)
ドラゴン航空に乗るとき、號外をもらったのを思い出す。
『鄧小平逝世』と書かれていて「えっ!」となった。


【ネット上の紹介】
香港のタンザニア人ビジネスマンの生活は、日本の常識から見れば「まさか!」の連続。交易人、難民、裏稼業に勤しむ者も巻きこんだ互助組合、SNSによる独自のシェア経済…。既存の制度にみじんも期待しない人々が見出した、合理的で可能性に満ちた有り様とは。閉塞した日本の状況を打破するヒントに満ちた一冊。
序章 「ボス」との出会い
第1章 チョンキンマンションのタンザニア人たち
第2章 「ついで」が構築するセーフティネット
第3章 ブローカーとしての仕事
第4章 シェアリング経済を支える「TRUST」
第5章 裏切りと助けあいの間で
第6章 愛と友情の秘訣は「金儲け」
最終章 チョンキンマンションのボスは知っている


「JK、インドで常識ぶっ壊される」熊谷はるか

2022年04月22日 08時39分14秒 | 読書(海外事情)


「JK、インドで常識ぶっ壊される」熊谷はるか

父の転勤により、普通の女子高生が、突然インドへ引っ越すことになる。
そこで見たものは、日本の常識とは異なる世界だった。
第16回出版甲子園グランプリ受賞作品。

P39
わたしにとってインドを象徴するといっても過言ではないアイコン的存在「ターバンおじさん」のはずなのに、この国に来てから数日もかからないと出会えなかった。
ようやく生ターバンおじさんに興奮するわたしの横で、親が何の気なしに呟いた。
「そういえば、ターバン巻いてるのってシーク教徒のひとだけなんだってね~」
しーくきょーと?
さらに、そのシーク教徒の信者たちは、インドの全人口の2パーセントにも満たないというのだ。

インターナショナルスクール人間模様
P41
大半はわたし自身と同じようにインドに赴任している親をもつ子どもで、その出身は世界中さまざまだった。なかでも特に韓国人が多かった。生徒母体の三割近くを占める韓国人生徒の多くは、サムスンなど電子系の会社に勤める親を持っていて、IT先進国同士の韓国とインドの結びつきを象徴していた。
一方で、日本人はきわめて少ない。各学年に2、3人程度しかいなかった。そのため、同じ東アジアの顔を持つものとして、韓国人に間違えられることもしばしばあった。こちらとしては、「全然韓国人とは雰囲気ちがうじゃん」と思うし、韓国人たちもわたしが自己紹介する前から「あれはジャパニーズだ」と認識しているみたいで英語でしか話しかけてこない。

P173
四学年の生徒でにぎわう体育館をぶらぶらしていると、同級生に声をかけられた。
「ハルカ!うちのクラブ、入ってよ!いや、入るべきだよ」
(中略)
今回わたしが勧誘された活動内容は、学校外の地元の子どもたちと交流しながら子どもの権利を訴えよう、というもの。いかにも意識高い系だ。
(中略)
そうして、スラムに行くことになった。

【コメント】
高校生にしたら、文章がこなれている。
正直、巧いな、と思う。
でも、星野博美、石井光太作品と比べると、見劣りする。(そりゃそうだ!トップレベルのプロと比べたら可哀想!)

今後、『JK』が取れたタイトルで勝負した時、真価が問われる、と思う。

【参考】

同じインドを舞台にしたレポート。
「南国港町おばちゃん信金」原康子

【ネット上の紹介】
普通の女子高生が、突然インドへ引っ越すことに。豊かな人が車を走らせる横で、1台のバイクに4人乗りする家族。スラムでの出会い。格差社会の光と影を描く女子高生視線のインド滞在記。
第1章 JK、インドへ行く
第2章 JK、インドライフにビビり散らかす
第3章 JK、インドグルメの沼に落ちる
第4章 JK、カオスを泳ぐ
第5章 JK、スラムに行く
終章 JK、インドを去る


「ルワンダ中央銀行総裁日記」服部正也

2021年08月12日 08時17分56秒 | 読書(海外事情)


「ルワンダ中央銀行総裁日記」服部正也

著者は、1965年から1971年まで、中央銀行総裁として着任。
周りは素人ばかり。孤軍奮闘して経済改革を断行していく。
日本人も捨てたもんじゃないな、と思った。
なお、私は増補版で読んだ。94年ルワンダ動乱をめぐる一文も掲載されていたのでよかった。実際の報道との違い、著者の現場経験からの考察が書かれている。

着任早々・・・
P21
まずい飯を食べていたらチトーがやってきて、「旦那様がお望みなら、きれいな女をつれてきましょうか」とささやく。この野郎と思ってこわい顔をしたら退散した。

P44
通貨は空気みたいなものです。それがなくては人間は生きていられません。空気がよごれておれば人間は衰弱します。しかし空気をきれいにしても、人間の健康が回復するとはかぎりません。空気は人間に必要であっても、栄養ではなく、人間が生きるためにはさらに食物をとり水を飲むことが必要なのです。通貨改革をすることは空気をきれいにすることです。財政を均衡させることは生きていくに足る栄養をとることです。しかし健康を回復するためには、栄養の内容が重要になってきます。経済でいえば財政の均衡の内容とその基礎になっている経済条件が、国民の発展に合うようになっていなければならないのです。

P303
ルワンダと隣国ブルンディの人口はともに、長身のツチ族が人口の10パーセント強、フツ族が90パーセント弱、その他少数のツワ族から構成されている。(なんとなく清朝の漢民族支配を思い出した)

P319
緒方貞子国連難民高等弁務官が、「愛国戦線」首脳と会見後、「彼らは口では良いことを言っているが、自分は、本当にすべてが良いと納得するまでは、難民たちにルワンダに帰れと言うつもりはない」と言ったと伝えられている。(さすが慧眼だ)

P322
冷戦が終わったから軍縮だというのはおめでた過ぎるのではないだろうか。平和、平和と叫ぶよりは、戦争は必ず起こるものとして、その被害を局限するための自衛策をとり、また、小国の争いでは犠牲を限定するため、武器輸出禁止を大国間で合意すべきであろう。国際収支のため武器輸出をすることや、累積債務の支払いのため武器輸出で外貨を稼がざるを得ない状況に追い込むことは、資本主義の道義的破綻といわざるを得ない。

P336
平和といい、貿易といい、援助というものは、究極的には国民と国民との関係という、いわば人の問題である。

P337
途上国の発展を阻む最大の障害は人の問題であるが、その発展の最大の要素もまた人なのである。

【ネット上の紹介】
一九六五年、経済的に繁栄する日本からアフリカ中央の一小国ルワンダの中央銀行総裁として着任した著者を待つものは、財政と国際収支の恒常的赤字であった―。本書は物理的条件の不利に屈せず、様々の驚きや発見の連続のなかで、あくまで民情に即した経済改革を遂行した日本人総裁の記録である。今回、九四年のルワンダ動乱をめぐる一文を増補し、著者の業績をその後のアフリカ経済の推移のなかに位置づける。
1 国際通貨基金からの誘い
2 ヨーロッパと隣国と
3 経済の応急措置
4 経済再建計画の答申
5 通貨改革実施の準備
6 通貨改革の実施とその成果
7 安定から発展へ
8 ルワンダを去る
増補1 ルワンダ動乱は正しく伝えられているか
増補2 「現場の人」の開発援助哲学


「世界遺産・封印されたミステリー」平川陽一

2021年04月01日 21時29分38秒 | 読書(海外事情)


「世界遺産・封印されたミステリー 今なお解けない謎に迫る」平川陽一

P33
(兵馬俑の)一万体近い兵士と馬はすべて東を向いて整然と並べられているのである。

ペトラ遺跡
P162
現在までに700ほど遺跡が発掘されたが、それはペトラ遺跡のほんの1%にすぎない。

〈トプカプ宮殿とピリ・レイスの地図〉
P136
1万数千年前に現代の測量技術に匹敵する高度な測量術があり、既にきわめて正確な地図を描いていた。

シャルトル大聖堂(パリから西へ80キロメートル)
P220
ロダンは「フランスのアクロポリス、静謐の殿堂」と呼んだ。

P218
「天海は、豊臣秀吉に敗れて惨死したはずの明智光秀だった」(とんでも説、だけど、本当だったらおもしろい。徳川家康は、春日局を優遇した実績があるから、そんな説がでるのでしょうね)

P203
カスバで買い物をして、若い女性がうっかり店の奥に入ると、二度と姿が見えなくなってしまうのだという。(私も噂で聞いたことがある)

P196
イギリスで「ゴー・ツー・ザ・タワー」(=ロンドン塔に行く)といえば、物見遊山に行くという意味だ。

【「ロンドン塔」関連のおまけ】
P218
もしイギリスに行くことがあれば、ぜひロンドン塔を訪ねてほしい。6羽のワタリガラスが飼われている。「ロンドン塔からカラスが去る時、王家に災いがふりかかる」という占星術師のお告げにより、国王チャールズ2世(在位1660ー1685)が法令を定めたからである。(「カラスは飼えるか」松原始より)

【ネット上の紹介】
歴史ロマンの発信源として、観光の目玉として、大いに夢をかき立てられる「世界遺産」。しかし、ピラミッドやナスカ地上絵から、日本の姫路城、法隆寺まで、今なお解けない謎に包まれた建造物・遺跡は多い。本書は、世界各地に分布するユネスコ指定の世界遺産のなかから、とくにミステリアスな謎や逸話に彩られたものを紹介。ガイドブックには書かれない意外な話題が満載。
第1章 支配者の謎
第2章 高度文明の驚異
第3章 建造にまつわるミステリー
第4章 歴史に隠された秘密
第5章 誰が造った・なぜ消えた


地雷を見つけるネズミ

2020年10月01日 19時00分48秒 | 読書(海外事情)
9/30朝日新聞の記事。
ネズミを使って地雷除去、とある。
地雷を見つけると地面をひっかいて知らせてくれる。
人間であれば最長4日かかるテニスコートほどの範囲の地雷捜索を、約30分で終えられる能力、と。
AIロボットが進化しても、訓練された動物には負ける。
盲導犬、救助犬、介助犬・・・まだまだ活躍しそうだ。
下欄「特派員メモ◆ソウル」は、文在寅政権が誇るコロナ対策「K防疫」について書かれている。携帯電話の通話記録から感染源の近くに誰がいたか、特定できるシステム。保健所での検査は待ち時間を含めて20分で終わり、結果は「陰性」、とある。

バチカンと中国

2020年09月29日 07時34分04秒 | 読書(海外事情)
中国に政府公認カトリック教会がある、って知らなかった。
「中国天主教愛国会」だ。
バチカンと中国は対立してきたが、暫定合意により、中国側が決めた司教を教皇が追認するようにした、と。
一方、政府の介入を嫌いローマ教皇に直接つながろうとする人々は中国各地で非公認の「地下教会」をつくり、弾圧を受けている、と。

関係改善により、弾圧は減るのだろうか?
バチカンは台湾との外交を維持している。
こちらにも影響が出るかもね。
朝日新聞2020/9/28