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「家なき娘」エクトール・マロ

2023年08月30日 06時01分47秒 | 読書(小説/海外)

「家なき娘」エクトール・マロ

「家なき娘」再読。(前回読んだのは2019年4月)
本書はフラマリオン社版挿絵入り大型本による全訳。
挿絵も初版H・ラノスのもの。
訳者によると、原書はには章タイトルがなく、数字だけが記されている、とのこと。訳者・二宮フサさんが編集部と相談してつけたそうだ。

エクトール・マロと言えば、日本では「家なき子」(1878年)が有名。
その15年後に上梓されたのが、「家なき娘」(1893年)。

「家なき子」原題:Sans famille=家族なし、家族がいない
「家なき娘」原題:En famille=家族で、家族のように、家族と共に

「家なき娘」は「家なき子」のだいぶ後に出版されたが、
タイトルから対になる作品だと分かる。

物語後半の舞台となるのは、架空の村マロクール。
モデルは、ニエーヴル川流域の中心部にあるフリクスクール。
訳者あとがきにも、
フリクスクール=マロクール
サン・フレール会社=ヴュルフラン・パンダヴォワーヌ会社、
の図式を連想させずにおかない、とある。

ヒロイン・ペリーヌは、エクトル・マロの孫娘の名前と同じ。
「家なき娘」刊行直後の1893年10月4日に生まれた、とある。P302

日本では「家なき子」が有名と書いたが、
1978年1月1日から12月31日、「ペリーヌ物語」と改題され放送された。
日本アニメーション制作、「世界名作劇場」の第4作、全53話。
これにより「家なき娘」も有名になった。


Wikipediaによると、次のように書かれている。
それまで1年おきに世界名作劇場を手がけ、本作品でも監督として参加が予定されていた高畑勲が、本作品のタイトル決定後、原作に否定的な立場を見せて監督を拒否したため、急遽『あらいぐまラスカル』を制作中だった斎藤博に監督を依頼することになり、さらに高畑の監督拒否にともなって当初参加を見込んでいた小田部羊一、宮崎駿らも不参加となったため、残った美術監督の井岡雅宏を除いてスタッフの座組みを一から作り直すことになるトラブルがあった。

ヴュルフラン氏がブルジョアで、そこに身を寄せるペリーヌという構図が気に入らなかったのかもしれない。
高畑勲は宮崎駿と仲がよかった。
宮崎駿は、数千人の従業員を擁した一族が経営する宮崎航空興学の役員を務めるブルジョア。大学も学習院卒。
それは、OKなようだ。

以下、「家なき娘」と「ペリーヌ物語」の違いを思いつくまま書いておく。
アニメでは、ペリーヌの母はインド人と英国人のハーフとなっているが、本書では、インド人と書かれている。
だから、ペリーヌは、「ブロンドの髪に琥珀色の肌」
「切れ長でりこうそうでまじめな黒い目が印象的」とある。
「一目ではっきりとわかる混血なのに、すこしも気にならない」。以上P12


アニメはボスニアでの父の葬儀から始まる。
その後、ボスニア→クロアチア→イタリア→スイス→フランスと移動する。

現代なら、クロアチアからイタリア・トリエステに行くには、スロベニアを通らねばならない。でも、スロベニアは登場しない。まだ誕生していないから。

アニメ第4話・クロアチア編で、ペリーヌはオーストリア兵士に取り囲まれる。これは当時クロアチアがオーストリアに支配されていたから。クロアチア独立抵抗運動の貴族も登場している。後に、ユーゴスラビアとなり、再び分裂。
(このあたりの事情を描いた作品に「石の花 」(全5巻)があり、米原万里さんも絶讃されていた。私も読んだが複雑な民族紛争を理解する困難を感じた)

原作はパリに入るところから始まる。
クロアチア独立抵抗運動は描かれていない。
スイス山越えもない。

原作では、ヴュルフランの甥としてテオドールとカジミールの2人登場するが、アニメではテオドールのみ。
アニメではロザリーとランソワーズお祖母様が活躍するが、原作ではあまり活躍しない。ロザリーも両親がいない設定だが、アニメでは父がいる。
食堂も経営していない。

アニメでは犬のバロンが大活躍。
でも、原作では登場しない。(バロン=男爵の意味)
ロバのパリカールは登場する。

ヴュルフラン氏は目の手術をする。
アニメには病名が出ないが、原作では白内障とある。
白内障は水晶体が濁る病気、緑内障は眼圧の病気。

原作ではフィリップ弁護士は登場しない。
逆に、家庭教師のベローム先生は、アニメに登場しない。

ベローム先生の、ペリーヌへのアドバイス
p179
「できるだけ口をきかないようになさい。問いつめられて、どうしてもこたえなければならなくなったときも、とりとめのないことか、漠然としたことしかいわないように。人生には、光るよりもくすんだほうがよく、賢すぎる女の子と思われるよりも、すこしおばかさんだと思われるほうがよいことが、よくあるものです。あなたの場合がそれです。だからあなたは、賢くみえなければみえないほど、いっそう賢いわけですよ。」
 
挿絵がすばらしい・・・初版のH・ラノス

小説では、ペリーヌ11歳から12歳、アニメでは13歳くらいの設定。
それでも、ペリーヌがワインを飲むシーンがある。
フランスでの実情に即した情景だが、子ども向けアニメとして大丈夫なのか、心配になった。放送当時はOKでも、今ならコンプライアンスの絡みでまずいかも。
 
【ネット上の紹介】
フランス人を父に、インド人を母に持つ少女ペリーヌ。インドからやっとの思いで、フランスにたどりついたとき、すでに父は亡く、母もパリで力尽きてしまう。一人ぼっちになったペリーヌは、父の話をたよりに、母の教えを胸に、父の故郷マロクールにむかう。はたして、祖父はペリーヌをむかえいれてくれるだろうか。ペリーヌの父は、結婚が原因で勘当されていた…。「家なき子」で有名な十九世紀フランスの文学者エクトール・マロの傑作。聡明な少女が困難をのりこえ、幸せを得るまでの物語。小学上級以上向。

「破滅の王」上田早夕里

2023年08月28日 08時28分06秒 | 読書(小説/日本)


「破滅の王」上田早夕里

先日、「上海灯蛾」を読んだが、本書も〈戦時上海3部作〉の1冊。
治療不可能の細菌兵器がテーマ。

P35
通常ならば、満洲に移住してきた者には満洲国籍が適用されるはずだが、移住者が日本の国籍を失うのを嫌がるという理由から、日本政府は、わざと満洲国籍を制定していなかった。

P261
治療薬にはふたつの種類があって、ひとつは有機合成技術で作る合成抗菌薬、もうひとつは自然界に存在する微生物由来の抗生物質です。サルファ剤は前者、ペニシリンは後者。

P348
石井部隊の関係者は、極東軍事裁判における戦犯としての追及を免れた。(中略)内藤良一陸軍医中佐は、かつての部隊員と共に、日本初の血液銀行「日本ブラッドバンク」を創設、同社はのちに医薬品メーカー「ミドリ十字」となった。(中略)石井自身は開業医の仕事を続け、1959年に喉頭がんで死去。享年67。(帝銀事件は遅効性の毒が使用された為、石井部隊の関係者が絡んでるのではないか、と言われた。これについて、「日本の黒い霧」で松本清張氏がとりあげている。また1980年代、「ミドリ十字」は、薬害エイズ事件を引き起こした。後に吸収合併され消滅)

「戦跡巡礼」中津攸子

【関連図書】

「上海灯蛾」上田早夕里

【参考】
ウイルスは、栄養を摂取することがない。呼吸もしない。もちろん二酸化炭素を出すことも老廃物を排出することもない。つまり一切の代謝を行っていない。(中略)
ウイルスは自己複製能力を持つ。(中略)
結論を端的にいえば、私は、ウイルスを生物であるとは定義しない。つまり、生命とは自己複製するシステムである、との定義は不十分だと考えるのである。(P36「生物と無生物のあいだ」福岡伸一)


【ネット上の紹介】
一九四三年六月、上海。かつては自治を認められた租界に、各国の領事館や銀行、さらには娼館やアヘン窟が立ち並び、「魔都」と呼ばれるほど繁栄を誇ったこの地も、太平洋戦争を境に日本軍に占領され、かつての輝きを失っていた。上海自然科学研究所で細菌学科の研究員として働く宮本敏明は、日本総領事館から呼び出しを受け、総領事代理の菱科と、南京で大使館附武官補佐官を務める灰塚少佐と面会する。宮本はふたりから重要機密文書の精査を依頼されるが、その内容は驚くべきものであった。「キング」と暗号名で呼ばれる治療法皆無の新種の細菌兵器の詳細であり、しかも論文は、途中で始まり途中で終わる不完全なものだった。宮本は治療薬の製造を依頼されるものの、それは取りも直さず、自らの手でその細菌兵器を完成させるということを意味していた――。


「いつかは訪れたい美しき世界の教会」

2023年08月25日 13時36分17秒 | 読書(写真エッセイ)


「いつかは訪れたい美しき世界の教会」マイケル・ケリガン

P6
教会は決して、単なる宗教施設ではない。
権力者のモニュメントや共同体のシンボル、あるいは植民地の征服者が存在を誇示する手段として建てられてきた。


 ↑ ウエストミンスター寺院

                ↑ 右頁、サクレクール寺院

 ↑ カンタベリー大聖堂

【ネット上の紹介】
信仰と技巧と栄華の到達点! 壮麗な大聖堂から素朴な礼拝堂まで、今見るべき世界の教会を紹介。 世界の150を超える教会建築を、美しい写真と簡潔な紹介で巡る写真集。 多くの人の心を慰め、高揚をもたらし、時代の美を極めた建築。豪華絢爛な教会も、小ぢんまりと可憐な教会も、美しさが人を惹きつけることは変わらない。 本書では、カトリック、プロテスタント、正教を問わず、歴史ある有名な教会から、近年建てられた斬新な教会、地域の人々に愛される素朴な教会まで、美しき祈りの場を世界各地から広く紹介する。


「極楽征夷大将軍」垣根涼介

2023年08月23日 01時14分47秒 | 読書(歴史/時代)


「極楽征夷大将軍」垣根涼介

垣根涼介さんの新刊。
2023年 第169回 直木賞受賞。
以前は、現代小説を書いていたが、このところ歴史小説にシフトされている。
本作品は、室町幕府初代将軍・足利尊氏を中心とした群像劇。
鎌倉幕府滅亡、室町幕府の誕生&南北朝時代が描かれている。
2段組549頁で読み応えたっぷり。

P20
頼朝の寡婦、政子は、腹を痛めて産んだ自らの長子と孫を殺されることを黙認した。肉親の情より、得宗家の権益を守ることを優先した。

P53
今の鎌倉府に君臨する北条家は、その源氏の末端ですらない。鎌倉府が出来た頃には平氏の木っ端だった家柄が、辛うじて頼朝の係累ということだけで成り上がってきたにすぎない。

P193
初代征夷大将軍である源頼朝が、武士の土地所有を正式に守る法制度を確立した。以来、御家人たちの権益は、常に鎌倉府の許で保持されてきた。逆に言えば、権益を幕府から守られてきた武士たちを、御家人という。

P199
国司とは、朝廷の地方長官のことで、行政権、租税徴収権を含めて、その一国の支配を委任された官職のことである。対して守護職とは、幕府が任じた地方管の名残であり、該当国の治安、武士の統率という警察権を持つ。

P328
光厳上皇からの院宣を賜るべく、持明院統と近しい公卿、日野資名に協力を仰ぐ使者を送った。(中略)
ちなみにこの縁が契機となり、室町幕府の基盤が安定した後年、日野家は歴代将軍家に次々と正妻を送り込み、公卿としての権勢を極めることになる。(8代将軍義政の妻・日野富子が有名――応仁の乱を背景に巨万の富を築いた。でも、夫が入れ込んでいる銀閣寺には金を出さず悪妻の評を高めた)

P357
(楠木)正成は北条家の御内人であった。源氏はおろか平氏の陪臣か陪々臣で、詰まるところは素性定かならぬ即席の朝臣に過ぎない。(でも、軍略の天才で、戦をさせれば連戦連勝。そのカリスマ性により神となり、神戸市湊川神社に祀られている)

【感想】
足利尊氏が毛沢東で、弟・直義(ただよし)が鄧小平。
毛沢東と鄧小平は仲が悪かったが、
足利兄弟は仲がよかった。
尊氏は戦上手だけれど、実務能力がペケだった。
弟はその逆。
だから、最強タッグとなり室町幕府を開くことが出来た。

【参考リンク】

「信長の原理」垣根涼介

「室町無頼」垣根涼介

「光秀の定理」垣根涼介

【ネット上の紹介】
やる気なし使命感なし執着なしなぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。


「大聖堂-果てしなき世界」(上・中・下)K.フォレット

2023年08月21日 08時50分21秒 | 読書(小説/海外)


「大聖堂-果てしなき世界」(上・中・下)K.フォレット

「大聖堂」の続編。
約150年後、14世紀の前半、イングランド・キングズブリッジが舞台。
前作の子孫たちが登場する。
英仏100年戦争とペストが時代背景となる。

前作同様とても面白い。
――悪役の造形が巧いから。
これは大きな要因だ。
悪役が物語を引っ張ってくれる。
これに歴史要素が加味される。
だから万人受けしてベストセラーになった、と思う。

上巻P663
「愛は食べられないわ」アネットがいい捨てて、教会を出ていった。

中巻P11
「良心が咎めるなんていうのは、余裕のある人間の特権だよ」

中巻P279
なぜ神は自分が賛美されることを求めるのだろう?

中巻P515
この病気にかかった者のほとんどは5日以内に死亡した。人々はこれを”大悪疫”――ペスト――と呼んだ。

下巻P561
ギルドを招集する前に、カリストマーティンは主だった会員に個別に会って、あらかじめ彼らの支持を取りつけることにした。マーティンがずっと昔に編み出した手法である。彼のモットーは次のようなものだった。――”会合を開くのは、結果の予想がついてからにせよ”。(英国にも根回しがあったのね)

P564
「町を封鎖しなければならないわ。門をすべて閉じ、防壁に警備員を配置して、だれも入ってこられないようにするの」(14世紀ペストのパンデミックに対してロックダウンを実施。キングスブリッジは武漢か!)

P568
「必ずマスクを着用して、患者に触れたら、そのたびに手を酢で洗わなければなりません」(本作品は、英国で2007年、日本で2009年に発表された。後のコロナを予見するような内容だ)

【感想】
ヒロインのひとりがカリス。
(前作のアリエナに相当)
とても手間がかかって面倒な女性。
著者は、このようなタイプが好みなんでしょうね。

【参考リンク】

「大聖堂」(上・中・下)ケン・フォレット

【ネット上の紹介】
いつか、イングランドでいちばん高い建物を建てる――大きな夢を抱く建築職人のマーティンは、その才能に嫉妬した元親方の策略によって破門され、細々と生計を立てていた。一方、彼の恋人で富裕な羊毛商人の娘カリスは衰退する羊毛市を救うため、老朽化した橋の修復計画に奔走する。
そんな折り、町の橋が崩壊して多数の死者が!
全世界で1500万部のベストセラーとなった『大聖堂』から18年、世界中をふたたび熱狂させた続編が登場。


「RDG」再読

2023年08月18日 07時24分07秒 | 読書(小説/日本)

「RDG」シリーズを再読した。

#3「夏休みの過ごしかた」P192
「戸隠流って、あれですよね。木曽義仲に仕えていた戸隠山の修験者が、義仲が討たれたあとに伊賀に落ちのびて、12世紀ごろ、伊賀忍法とあわせて編みだしたと言われる」
(中略)
「けっこう武術の土地柄だったんだよね。お隣の飯綱山からは、神道無念流も生まれているし。これは、幕末に桂小五郎とか新撰組の芹沢鴨とか永倉新八とかが使っていた剣法だよ。武田家や真田家が戦国時代に使った忍びは、戸隠・飯綱から出た者だったに違いないし、伊賀へ行かなくても調べてかなりおもしろいんだよ、この地方の忍者たちは」

#6「星降る夜に願うこと」P108
「花咲かじいさんの犬?でも、裏の畑で大判小判を嗅ぎ当てた犬って、たしかブチ犬じゃなかった?」
高柳がすばやく言った。
「正しいのは白い犬だ。古い語りものには、神性の象徴として白い動物が出てくるからで、唱歌に出てくるポチという名前は、後年の後知恵だ」明治6年に「畜犬規則」が制定されると、飼い主の名札がついていない犬は野犬として殺処分されるようになってしまいました。このことがきっかけとなって各家庭で犬を飼うようになったのですが、その犬に多かったのが和犬ではなく、当時ステイタスとされていた「カメ(洋犬)」でした。そして、西洋式に「カメ」らしい名前をということで、「ポチ」や「ジョン」などといった名前が個別につけられるようになったということ・・・それまでは、「トラ」「クマ」「クロ」といった毛の色や大きさなど、見た目からついた名前で呼ばれていました、とのこと・・・「日本語の大疑問」P241国立国語研究所より)


「儒教と負け犬」酒井順子

2023年08月14日 06時53分15秒 | 読書(現代事情)


「儒教と負け犬」酒井順子

韓国、中国と、儒教の影響甚大なる国を訪問して座談会をひらく。
少子化と晩婚化の謎を追う旅行記。

P37
韓国の男性が兵役に就くのは、大学在学中のことが多いとのこと。つまり恋愛したい盛りのお年頃に、2年間も世俗を離れなければならないわけです。
すると、それまで交際していたカップルも、どうしても彼が兵役中に別れてしまうことが多くなる。

P55
儒教といえば親孝行、というイメージもあるわけですが、この「孝」という教えは、親孝行だけを指すものではありません。祖先の祭祀、親孝行、そして子孫を生むことという3点セットが「孝」なのだそうです。

P94
纏足がいつ始まったのかは定かではないそうですが、宋代末期には、女性が纏足をしないで「大足」のままでいると、人に笑われるような時代になりました。大足で闊歩しながら現代を生きる私のような者からすると、「しかし何故、足を小さくなどする必要が?」と思うわけですが、
①大足のままで肉体労働をするような下層民ではない、ということを示すため。纏足をしていないと結婚もできない、という風潮もあった。
②女性の行動範囲を制限するため
③男性の性欲を刺激するため
(中略)
女性を自らの支配下に置くため、女に凌駕されないため『纏足の歴史』
「女が卑弱で、人の下にいるのが主であることを明らかにするためであった」(班昭『女誡』)
「婦女は纏足する必要がある。さもなければ、男子のように強壮になり、夫になる者が征服することができない」(『海客談蓮』)

P102
「婚姻の問題があるのは、三高の女性たちですね」
(中略)
「学歴が高い、収入が高い、そして年齢が高いということです」
(中略)
「いい男はみんな結婚しちゃった。いい女はみんな残っちゃった」

P105
(上海は)急激な少子化&高齢化の危機が叫ばれており「白髪都市」などと言われはじめているとのこと。

P107
「上海では三高女と三低男は、絶対にくっつかないんですよ。三高女は余ってるけど、三低男は、余ってないから」
とのお答え。
「えっ、なぜ三低男は余っていないのですか?」
とさらに問えば、
「上海には『外来の嫁』という言葉があります。上海の三低男は、地方とか農村から嫁を取ればいいんです」
(中略)
「それだけではありません」
と周先生。
「面子の問題も、あるでしょうね」
(中略)
「自分より下の男は絶対にイヤ、という三高女が多いですね。それに、もしそういうカップルができたとしても、周囲の反対がものすごいです」
(中略)
「三高でなおかつ美人という人が上海にはたくさんいますが、あまりに完璧だと、かえって男性に恐怖心を与えるようです。(後略)

【参考】
儒教は基本的に男性のための宗教、上層部のための宗教であり、女性や下層階級はその枠のなかから排除されてしまう。「教養としての宗教事件史」島田裕巳P252)

【ネット上の紹介】
負け犬(日本)、老処女(韓国)、余女(中国)。何故、この三国で晩婚化が進むのか?負け犬の敗因が浮き彫りに…。
「老処女」を巡るソウルの旅(姦通罪のある国で
ソウル負け犬座談会1―法事とママボーイ

ソウル負け犬座談会2―徴兵制とカリスマ性
ソウル勝ち犬座談会―整形と受験地獄
儒教のプレッシャー
韓国女性開発院を訪ねて
老処女の結婚条件
発信する老処女達)
「余女」を巡る上海の旅(纏足が千年続いた国で
上海市婦女幹部学校を訪ねて(革命と男女平等
面子と三高女)
上海負け犬座談会1―親と上海男
上海負け犬座談会2―合コンと不倫
上海勝ち犬座談会1―女王と料理
上海勝ち犬座談会2―ツンデレと縁文)
儒教と負け犬(「女大学」を読む(三従と七去
益軒と諭吉)
「列女伝」を読む―強さと従順)
負け犬三都調査(その、恋愛とセックス
その、結婚と結婚後)
負け犬たちの希望


「太陽の帝国」「宋家の三姉妹」

2023年08月11日 07時06分55秒 | 映画(一般)


映画を2本観た・・・「太陽の帝国」「宋家の三姉妹」。

太陽の帝国とは日本のこと。
イギリスの作家、J・G・バラードの自伝小説が原作。
著者の捕虜収容所体験が元になっている。
スティーヴン・スピルバーグによって映画化1987年に公開された。
日中戦争当時の上海と蘇州が舞台。
当時、少年だったバラードの零戦マニアぶりも描かれる。

これで思い出すのが、フランス人作家・ピエール・ブール。
彼もまた、当時、日本人の捕虜となっている。
この経験をもとに、「戦場にかける橋」を執筆。
また、「猿の惑星」も著している。
故に、猿の惑星の「サル」とは「日本人」のこと、と言われているが、
違うという説もある。


「宋家の三姉妹」
(原題:宋家皇朝、英語題:The Soong Sisters)。
1997年、香港・日本合作映画。
宋靄齢・宋慶齢・宋美齢の三姉妹を描いている。

長女は財閥に嫁ぎ、次女は孫文に、末っ子の美齢は蒋介石と結婚した。
とんでもないセレブ姉妹だ。
この映画を観る前、父親による政略結婚、と思っていた。
事実はことなるようだ。
少なくとも、次女の結婚に、父は反対だった様子。
ほとんど駆け落ち状態。
一部日本も舞台となり興味深い。
何となく、日本の浅井三姉妹を思い出した。

【ネット上の紹介】・・・「太陽の帝国」
1941年、第二次世界大戦下。上海に暮らすイギリス人の少年ジムは、日本軍の“零戦”に憧れる無邪気な少年だった。だがその日本軍が上海に侵攻、攻撃は全土に及んだ。混乱に巻き込まれ、両親と離れ離れになってしまったジムを救ったのは…。第2次世界大戦下の上海を舞台に、ひとりの少年の成長を描いた、スティーブン・スピルバーグ監督が贈る珠玉の戦争ドラマ。初回生産限定。

【ネット上の紹介】・・・「宋家の三姉妹」
新しい時代を夢見る3人の女性を描くヒューマン・ドラマ。今世紀初頭の中国。古い因習にとらわれずに育てられてきた宋家の三姉妹。アメリカ留学から帰国した彼女たちは、それぞれに全く異なる結婚相手を選ぶ。長女の靄齢は財閥の御曹司と結婚し、中国経済を左右する大財閥を築く。次女の慶齢は革命家・孫文と恋をし、彼とともに情熱のすべてを革命に捧げる。そして、三女の美齢は野心あふれる若き軍司令官、蒋介石と結婚する。


植木散髪

2023年08月09日 06時22分02秒 | 身辺雑記

覚書として、身辺雑記を3点記しておく。
①植木を剪定してもらった。
②健康診断を受けた。
③浄水器カートリッジ交換。

植木は4人で2時間半=延べ7時間半。¥30,410円
専用トラックが来て、ゴミ積み込み、持って帰ってくれた。
切り取った枝葉を「普通ゴミ」で出すのは、ダメになったらしい。

健康診断を受けてきた。
結果、すべて異常なし、健康でした。
心電図のみ有料=100円。
今年は、保健医療センターで受けず、
近所の内科医院で検診してもらった。
来年はどうするか不明。

LIXIL浄水器カートリッジは1ヶ6,930円。

【覚書】
4/1になったら、すぐ電話する必要あり。
Webよりも電話優先。
9:00から受付開始。
皆がtelするので、つながらない可能性が高い。

雑草も依頼したが、満員御礼で却下の電話がかかってきた。


「大聖堂」(上・中・下)ケン・フォレット

2023年08月07日 10時07分22秒 | 読書(小説/海外)


「大聖堂」(上・中・下)ケン・フォレット

12世紀、イングランドが舞台の群像劇。
1123年から1174年。
途中でスペイン、フランスも舞台となる。

絞首刑のシーンから始まる。
そこにいた娘が呪いの言葉を吐き出す。
その場の全員がおののき震え出す。
魔女が信じられていた時代だから。
これがプロローグ。

この後、圧倒的な筆力で物語が展開する。
面白く読み応えたっぷり、物語の醍醐味を堪能。
中世の世相、宗教事情も分かって興味深い。
全3冊、各600頁あるのでかなりの分量。
躊躇するかもしれないが、読みはじめると止まらなくなる。
お薦め、ぜひ読んでみて。

イギリスの歴史に興味ある方は必読。
解説が養老孟司さんで、こちらも面白い。

PS
この物語で、マーサが報われない。
少し淋しく感じる。

【ネット上の紹介】
いつかこの手で大聖堂を建てたい―果てしない夢を抱き、放浪を続ける建築職人のトム。やがて彼は、キングズブリッジ修道院分院長のフィリップと出会う。かつて隆盛を誇ったその大聖堂は、大掛かりな修復を必要としていた。折りしも、国王が逝去し、内乱の危機が!十二世紀のイングランドを舞台に、幾多の人々が華麗に織りなす波瀾万丈、壮大な物語。


「 エチュード春一番 第3曲」荻原規子

2023年08月04日 07時30分24秒 | 読書(小説/日本)


「 エチュード春一番 第3曲 幻想組曲〈狼〉」荻原規子

2年ぶりに読み返し。
平将門の時代にタイムスリップする話。
このシリーズ、第4弾出るのだろうか?

【参考リンク】
「 エチュード春一番 第3曲」荻原規子 


「エチュード春一番 第1曲」荻原規子

「エチュード春一番 第2曲 三日月のボレロ」荻原規子

【ネット上の紹介】
八百万の神・モノクロと共に平将門の時代にタイムスリップしてしまった美綾「「これぞ荻原規子。さすが荻原規子。本の中に引きずり込まれそう」八咫烏シリーズの阿部智里も大絶賛! シリーズ続編が書き下ろしで登場! 全く新しい解釈で日本の歴史を取り込んだ超ファンタジー!