「ネット右翼になった父」鈴木大介
晩年、父親がヘイトスラングを口にし、嫌韓嫌中ワードを使うようになる。
どうして右傾化したのか?
その謎を探る。
P142
安倍晋三氏の死去によって、自民党議員の組織的支持層だった宗教団体が、伝統的家族観への回帰を推進し、女性の自由な人権やジェンダーへの多様性に対する大きな抵抗勢力であることが一気に語られるようになった。
P160
父はずっと損保業界に勤めていたが、戦後の損保業界では在日朝鮮人による保険料の不正請求(偽装事故等の案件)が極めて多く、その対処に苦悩したことも嫌韓感情の根底にあったのではないかというのだ。
P89
【価値観テスト】(抜粋)
(外交)日米同盟を強化すべきだ。
(外交)防衛費はもっと増やすべきだ。
(外交)日本は核保有を目指すべきだ。
(外交)集団的自衛権に賛成だ。
(経済)多少の格差を生んでも、経済成長は大事だ。
(経済)公共事業は減らすべきだ。
(経済)福祉をこれ以上充実させるなら増税すべきだ。
(社会)夫婦別姓に反対だ。
(社会)外国人労働者の受け入れ拡大に反対だ。
(社会)体罰はやむを得ない
出典根拠→価値観診断テスト
【ネット上の紹介】
ヘイトスラングを口にする父テレビの報道番組に毒づき続ける父右傾したYouTubeチャンネルを垂れ流す父 老いて右傾化した父と、子どもたちの分断「現代の家族病」に融和の道はあるか? ルポライターの長男が挑んだ、家族再生の道程! <本書の内容>社会的弱者に自己責任論をかざし、嫌韓嫌中ワードを使うようになった父。息子は言葉を失い、心を閉ざしてしまう。 父はいつから、なぜ、ネット右翼になってしまったのか? 父は本当にネット右翼だったのか?そもそもネトウヨの定義とは何か? 保守とは何か? 対話の回復を拒んだまま、末期がんの父を看取ってしまった息子は、苦悩し、煩悶する。父と家族の間にできた分断は不可避だったのか? 解消は不可能なのか? コミュニケーション不全に陥った親子に贈る、失望と落胆、のち愛と希望の家族論!
第1章 分断
第2章 対峙
第3章 検証
第4章 証言
第5章 追想
第6章 邂逅
「なんで家族を続けるの?」内田也哉子/中野信子
「家族」をテーマにした対談。
内田也哉子さんは樹木希林さんと内田裕也さんの娘。
19歳で本木雅弘さんと結婚。
早生まれなので、中野信子さんと同学年。
P26
「人間だけが同性愛をするかというと、そんなこともなくて、例えばアホウドリのカップルって、3分の1はレズビアンなんです。」
「どうやって子孫を残しているんですか?」
「と思うでしょ。そのときだけオスと浮気するんですって。」
P54
お父さんから受け継ぐ部分と、お母さんから主に受け継ぐ部分というのは、遺伝的に偏りがあるんですよ。知性はお母さん。(中略)
内蔵などの、他の身体の部分はお父さん。(中略)
情動の部分もそうかもしれない。情動脳の部分はオス側の遺伝子が発現しているらしいので。
P61
広く浅くタイプのAVPRは、男性が持っている場合は「離婚遺伝子」といわれ、女性が持っている場合は「不倫遺伝子」といわれます。(中略)
つまり、「貞淑」になる遺伝子と、「不倫」を好む遺伝子がある。(中略)
しかし実は、貞淑型と不倫型の人数の割合はおおむね5対5と推測されています。ということは、もともと一夫一婦制の結婚には向いていないタイプが人口の半数ほどいるということなんですよ。
P100
私、惰性というのは大事だと思っているの。「惰性で続いている」というのは収まるべきところに収まった、という意味でしょう。
P102
欧米の離婚率は日本より低いのかといったら、高いんだよね。ハグやキスといったスキンシップを大事にしていても破局を迎えるのだから、あまり意味がないんじゃないかと言いたい。(でも、ハグの瞬間は幸福感を得られる・・・それなりにメリットはあると思える。日々の生活は小さな事の積み重ねだから)
P120
SARSもMERSも、コロナウイルスの一種です。私は対処がきちんとできさえすれば、必要以上に怖がることはないという意見です。とはいえ重症化しそうだ、となったらすみやかに救急医療をうけることができる体制づくりは急がれますよね。
P128
人間は身体と脳の発達のバランスもあまりよくないですよね。身体が生殖に向いているのは二十代かもしれないけれど、脳が子育てに適した状態になるのは四十代ぐらいだということを示すデータがあります。
P130
愛は、環境が整わないうちは人類にとって子育てに有益なものだったけれど、人類は環境をかなり整えて、テクノロジーも発達させた。現代はもう、愛が毒になる時代が到来しつつある、と考えているんです。(中略)
べつに産むな、育てるなと言っているわけではないんですが。向いている人もいれば向いていない人もいるのだから、無理して愛をこじらせ、親子共に苦しむくらいだったらテクノロジーを利用したらいいのでは、と言いたいんです。
【ネット上の紹介】
樹木希林と内田裕也の娘として生まれ、家族団欒を知らずに育った内田也哉子。自身は十九歳で結婚、三児の母として家族を最優先に生きてきた。一方、中野信子は巨大なブラックホールを抱えてきた。その原点は両親の不和の記憶だった。家族に苦しむすべての人に贈る、経験的家族論!
プロローグ 家族のカタチ
はじめに 晒された家族
第1章 What is Family!?
第2章 毒親、不倫。そして私たちの結婚
番外編 中野信子の人生相談に内田也哉子がお悩みを投稿
第3章 出産、子育ては女が担うものなの?
第4章 女をやめたくなったことある?
第5章 イエ制度と夫婦別姓とドラッグと
第6章 What is Happiness?
おわりに 脳科学から見た家族
「妻が得する熟年離婚」荘司雅彦
離婚の際に直面する問題を小説形式で解説。
P30
離婚原因となる不貞行為は、基本的には反復・継続していることが必要で、それがために夫婦関係にひびが入る程度のものであることが必要とされている。だから、風俗に行ったり、酔った勢いで一度の過ちを犯してしまったような場合は、離婚原因としての不貞行為にはならない。
P38
アメリカ合衆国では、「セックスの切れ目が縁の切れ目」と言われて久しいので、我が国でも何年間もセックスレスが続くというのは立派な離婚原因といえるだろう。
P57
別居する前に、必要なものは事前にひそかに運び出しておくことが案外重要。喧嘩した勢いで家を出てくる人が多いが、冷静になって必要なものは事前に持って出ること。
P106
婚姻関係が破綻した後に行った不貞行為の場合は、いずれに対しても慰謝料は認められないとするのが判例だ。その理由としては、慰謝料を認める根拠は、不貞行為によって家庭の平和を害されたことによるものであり、既に夫婦関係が破綻して家庭の平和というものが存在しないような場合には、慰謝料を認める必要がないからだとされている。
【ネット上の紹介】
年金分割、退職金問題、調停・裁判の進め方、財産分与の貢献度、離婚後の身の振り方、などなど。離婚において女性が直面するであろう様々な問題の対処方法を、経験豊富な弁護士の著者が小説形式を用いながら分かりやすく解説。
第1話 青山みどり 58歳 専業主婦が自立するとき(年金分割
退職金
介護問題
調停の進め方)
第2話 細川百合子 60歳 35年間の妻の貢献度(財産分与の貢献度
破錠後の不倫
裁判手続き)
第3話 井上純子 56歳 離婚宣告は、ある日突然に(将来の退職金
不動産の原価)
第4話 米山京子 59歳 借金を残し、夫が消えた(夫の負債
不在者との離婚
リバース・モゲージ)
第5話 山本君枝 56歳 とにもかくにも財産探し(不明財産の見つけ方)
著者は、もともと五人家族だった。
最初に、祖母が亡くなり、父、母と、最後に兄が亡くなった。
こうして「家族終了」、となったのだ。
本書は、個人的な話だけでなく、「家族」について、様々な考察をしている。
言葉の使い方、コンビネーションが巧い。
「死」の可能性が迫ってきた状況における親への愛情表現
P20
「愛してる」というフレーズは、かろうじて私の語彙の引き出しには入っているものの、それはものすごく奥の方に死蔵されているだけ。いざという時にすぐ出てくる場所にスタンバイしておらず、精一杯頑張ってもやはり、
「今までありがとう!」
だったと思います。
P140
今となっては、夫が権力を握るよりも、妻主導家庭の方が、よっぽど平和であることも知られており、「かかあ天下」は死語と化したのです。(それでも、恐妻家、鬼嫁、という言葉は残っている)
仏壇について
P149
「アマゾンで買ったよ、五万円」
(そういえば、駅前の仏壇屋がつぶれた)
P192
1人暮らしのお年寄りよりも、家族と共に住むお年寄りの方が、自殺率が高いのだそうです。
P200
1人で生きることが「普通」である世においては、1人で死ぬこともまた「普通」になっていくのではないか。
P221
フランスのPACS(民事連帯契約)など、同性・異性に限らず共同生活を送る人が夫婦と同様の権利を得られるような制度が、ヨーロッパ諸国には存在しています。(日本も法制度を改正していったら、少子化に歯止めがかかるかもね)
P222
日本の夫婦は、苗字が同じになった瞬間から、一体感を深める努力を放棄する傾向があります。(夫婦は不断の努力が必要・・・余計なおせわだけどね)
【参考リンク】・・・今や、家族をレンタル出来る、おっさんもレンタル出来る!
【家族レンタル】家族代行・代理ならファミリーレンタル専門会社
おっさんレンタル (thebase.in)
【ネット上の紹介】
親が好きですか?子供が好きですか?夫婦で同じお墓に入りたいですか?帰りたい家はありますか?一緒に暮らしたいのは誰ですか?毒親からの超克・「一人」という家族形態・事実婚ってなあに?…他、日本の“家族”を考える全18章。
【目次】
パパ、愛してる
我が家の火宅事情
「嫁」というトランスフォーマー
自分の中の祖母成分
生き残るための家事能力
家庭科で教えるべきことは?
心配されたくて
修行としての家族旅行
呼び名は体をあらわす
長男の役割
お盆に集う意味
親の仕事、子供の仕事
世襲の妙味
毒親からの超克
「一人」という家族形態
疑似でも家族
事実婚ってなあに?
新しい家族
「毒親 毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ」中野信子
最初、薄味かな、と思っていたが、読み進むにしたがい、だんだん面白く感じてきた。特に第4章が良い。
東大生の特徴
P80
少なくとも私の周りは「勉強しろ」と言われて素直にコツコツとやってきたタイプはすくなかったのです。(それは、中野信子さんがそうだから、類は友を呼ぶ、では?)
P114
なぜ、私たちは絆を美しいと感じるのでしょうか。そして美しいと感じる一方で、絆というのは(言いにくいことですが)息苦しいものでもあります。
P121
P136
『阿闍世コンプレックス』という概念があります。
・・・阿闍世コンプレックス - Wikipedia
P153
人間の脳は、大きさとしては10歳頃までに大人の脳とほぼ同じくらいにまで成長します。しかし、神経回路という階層で見ると、20代後半頃までじっくりと時間をかけて成熟していくのです。
研究によれば、子どもの前で夫婦ゲンカすることそのものよりも、夫婦が仲直りをするシーンを見せないでいることの方が、子どもに大きいダメージを与えることが分かりました。
P164
母が危険な目に遭ったりする度合いが低いと、知能を高く育てられるというのです。これは生物学的理由というより、むしろ心理学的余裕が要因であると考えられています。
P169
どんなときも、24時間365日、自分を見つめて、愛して、可愛がってほしい――この要求は、恋人やパートナーするものでなく、本来は親に対して向けられる要求だったはずのものです。しかしながら、それは満たされることがなかったために、恋人やパートナーをその代理として、自分自身を育てなおそうとする。これが、「重い女」や、「束縛する男」の一側面なのだろうと思います。
P171
運命の人、というのは、結婚する相手、ということではなくて、あなたの人生を変えてくれる人、という意味です。
P175-177
パンドラという女性は、神々によって地上に送り込まれた「人類の災い」でした。ギリシャの神々にプロメテウスが抗い、天上の火を盗んで人類のものとしたその報いとして、人々に災厄をもたらすために創造され、遣わされた「世界最初の女性」だったのです。
(中略)
プロメテウスの弟であるエピメテウスは、パンドラの美しさに迷い、プロメテウスの制止も聞かず、彼女を妻にしてしまいます。それ以後、「人類は、すべての不幸の原因となる女たちとともに暮らさなければならなくなった」とギリシャ神話では語られています。
(中略)
この「災いの箱」というのは、人間の、生そのものなのでしょうか。「災いの箱」としての生を開ける役割を、この物語の中で世界最初の女性が担わされているのは、人間に生を与えることが女性の役割だという無意識の了解事項が、神話の形成に影響を与えていたからではないのでしょうか。
(中略)
パンドラの箱を開けたあと、最後にエルピスが残ります。このエルピスとは、「希望」とも訳されますが、前兆、予兆、期待など、複数のニュアンスの違った訳語があてられています。
あらゆる災厄に遭って、私たちになお残るエルピスとは、それでも目の前に続いている生の道筋のことなのではないか。そんな風に思います。
【ネット上の紹介】
親を憎んでしまうのは、自分のせい?なぜ、子どもを束縛したくなる?なぜ、愛しているのに、憎くなる?気鋭の脳科学者が「毒親」の正体とその向き合い方を分かりやすく説く。
第1章 子を妬む母(毒親
親の価値観から抜け出せない ほか)
第2章 愛し方がわからない父(父の子殺し―アブラハムのパラドックス
父子関係のモデルが消失した時代 ほか)
第3章 愛が毒に変わるとき―束縛する脳(“ママン”
愛着の傷 ほか)
第4章 親には解決できない「毒親」問題(毒親育ちは毒親になってしまうのか
ハリー・ハーロウのモンスターマザー ほか)
「あなたの悩みにおこたえしましょう」信田さよ子
2017年、本書の単行本版を図書館で借りて読んだ。
とても良かったので、買おうかな、と思ったら絶版で入手不可能。
文庫本になったら買おうと狙っていたが、いっこうにその気配無し。
それもそのはず、文庫化した際に、タイトルを変えていたから。
「家族の悩みにおこたえしましょう」→「あなたの悩みにおこたえしましょう」
もうちょっとで、文庫も絶版になって入手不可能になるところだった。
なんとか、紀伊國屋で「在庫僅少」となってる本書を見つけて購入した。
「悩みの相談」に関する書籍は多いが、本書がベスト。
P22
離婚は弱者である女性にとって最終的な切り札です。それを早く出し過ぎると、かえって足元を見られ条件的に不利になりかねません。
P29
復讐は狂乱と紙一重の行為であり、精神的ダメージも大きくなります。奥様は自分が崩壊することを覚悟しているのかもしれません。
P66
母親が娘がかわいくないと感じる理由は三つあります。子どもから拒否されていると感じるとき、もう一つは嫌悪する自分の一部を体現していると感じるとき、さらに子どもに嫉妬しているときです。
P125
夫婦の不一致は、お互いの様子をうかがい、相手の弱点を突いてやろうという力関係を生み出します。それを察知した子どもは対立から身を守るために緊張と状況察知の感度を高めます。
P160
小指が痛む人と大腿骨が痛む人を比較してはならないと思うのです。不幸は序列化できないのです。
P164
娘の人生に嬉々として介入して寄生している母親は、自分の人生の不良債権のツケを娘を使ってゼロにしようとしているのだと思います。
P216
虐待を母=女性の問題に矮小化し、さらに世代間連鎖という因果論で説明することで隠蔽されたものは何だったのでしょう。
P239-240
娘を、妻を、そして家族のことをいったい夫はどのようにとらえているのだろう、と。
残念ながらそんな詮索はほとんど意味がありません。おそらく夫は「何も考えていない」のです。
P251
私たちに与えられた想像力こそが、体験したことのない苦しみに思いを馳せることを可能にします。
もっとはっきり申し上げると、他者の苦しみを「わかる」ことなど私たちにはできないのです。
【参考リンク】
「家族の悩みにおこたえしましょう」信田さよ子
【ネット上の紹介】
現場で日々格闘するカウンセラーの著者は、相談者の数限りない不安や悩みに向き合ってきた。 結婚への不安、DV被害、共依存、子育ての悩み、老後の不安、依存症……。 これらさまざまな人生の悩みを、具体的にどうすれば解決できるのか? 50年近く臨床に携わってきたベテランカウンセラーが、Q&A方式で的確に処方箋を提示する。普段のカウンセリングでは表現しきれない、著者の考えを充分に知ることができる貴重な一冊。解説は酒井順子氏。
64歳の夫との将来の生活に不安をおぼえます モトコ、60歳
妻が不安定で困っています マサオ、55歳
親になるのが怖いのです ミチコ、38歳
妻より姉の面倒をみたいのです タケシ、58歳
二人の子どもが結婚しません ユミコ、68歳
どうして私は腹が立たないのでしょう? ユカ、40歳
娘から毎日のように責められます チエコ、51歳
浮気する妻に対して怒れません ユウジ、39歳
長女がかわいく感じられません アユミ、41歳
別居して戻ってきた娘が私を責めます クミコ、65歳〔ほか〕
1 家族の肖像―カウンセリングの事例をもとに(母からの不穏な宅配便
兵糧攻めとアディクション
僕はパスタのゆで方に命を懸ける
親からの借金リスト)
2 時代の鏡としての家族(戦後七〇年、何が変わったのか
家族における権力関係への気づき)
3 家族をとらえなおす(愛の幻想がついえた後に
高齢化社会の現実
いくつかの提言―必要なのは絆や愛ではなく、お金に対するルール形成
この国で「家族でいる」ということ
あとがきにかえて―近くて遠い家族、遠くて近い家族)
現代版「女三界に家なし」)
第1章 「ロマンチックラブ」幻想(女が結婚で手に入れるもの
「結婚は人生の墓場」の本当の意味 ほか)
第2章 夫を救おうとする妻たち(「共依存」のひとたち
被害者を自認する難しさ ほか)
第3章 「女」が沈むと「母」が出る(女の支配、男の支配
「母」というポジション ほか)
第4章 女の人生はスマートボール(離婚するひと、離婚できないひと
傷つくのは心ではなく人生 ほか)
第5章 生き延びるための「技術論」(別れられないひとのための「しのぎの生活」
「無いものは無い」からの出発)
少女が支える家族 ほか)
第2章 家族神話を生きる妻(神話を支える妻たち
セックスという名の深い河 ほか)
第3章 不可視化された暴力(加害者を嘲笑せよ
マジョリティであることの恐怖 ほか)
第4章 トラウマと時間(セクハラ元年、メディアの変化
トラウマと引き金 ほか)
「家族の悩みにおこたえしましょう」信田さよ子
私の知るかぎり、最高レベルの「回答集」である。
まるで、ミステリか心理劇を読んでいるような面白さ。
質問者自身が書かなかった(書けなかった)行間を読み、
今後の道標となる絵を描いて提示している。
感服した。プロの技を見た。
P19
離婚は弱者である女性にとって最終的な切り札です。それを早く出し過ぎると、かえって足元を見られ条件的に不利になりかねません。あみだくじのように順を追って夫が変化する可能性を試し、それを確かめていけば、夫がモトコさんの希望通りの理解を示すこともあるでしょう。それは離婚という最終結論の回避を意味します。もうひとつの切り札である夫のDVについても触れないようにします。効果的に使えるタイミングを慎重にうかがうことにしましょう。
不自然なほど丁寧な表現を使うのは、非日常的雰囲気を醸し出すことで、モトコさんの覚悟を示し夫との距離を保つために必要だからです。また、論理的破綻を示せば夫から突っ込まれる可能性があるため、「私は~思う」「私は~感じる」といったI-messageに徹することで、夫から介入される隙をつくらないようにします。
人生の分岐点は、心がけや決心といった心理的レベルではなく、具体的な言葉や行動によっていかようにも推移していく可能性があります。
P24
復讐は狂乱と紙一重の行為であり、精神的ダメージも大きくなります。奥様は自分が崩壊することを覚悟しているのかもしれません。
P28
虐待を受けた子どもたちは、理不尽な経験をする課程で「すべて自分が悪いから」という理由づけを行って世界を理解します。これによって説明不能なことはないので、究極の合理化と言えるでしょう。言い換えれば、虐待された子どもたちは自分を否定することと引き換えに、かろうじて世界の明晰さを獲得してきたのです。ミチコさんにも痛ましいほどの自己否定感の残滓が残っているような気がします。
P33
かわいそう=自分が救ってあげなければ=誰よりも自分に依存し必要としている、という等式が成立します。必要とされる相手を救うことで、救済者になる快感を味わうことができます。それは、救済対象を支配することで得られる満足感と同義です。この種の関係性に飢えている男性は、年齢を問わず意外に多いものです。
P54
大切な言葉を伝えるには、非日常的な場面を設定しなければなりません。
P56
母親が娘がかわいくないと感じる理由は三つあります。子どもから拒否されていると感じるとき、もう一つは嫌悪する自分の一部を体現していると感じるとき、さらに子どもに嫉妬しているときです。
P58
このように母親としての「自己中心性」こそが、一番の課題だと思います。アユミさんだけではありません。多くの母親が子どもを心配する姿を支えているのが、この自己中心性なのです。
P105
夫婦の不一致は、お互いの様子をうかがい、相手の弱点を突いてやろうという力関係を生み出します。それを察知した子どもは対立から身を守るために緊張と状況察知の感度を高めます。
P134
痛み、不幸、苦痛はきわめて個人的なものであり、比較は不可能だと思うからです。敷衍すれば、個人の尊重とはこのような個人的な負の感覚を比較せずそのまま尊重することに立脚しているのではないでしょうか。小指が痛む人と大腿骨が痛む人を比較してはならないと思うのです。
P138
娘の人生に嬉々として介入して寄生している母親は、自分の人生の不良債権のツケを娘を使ってゼロにしようとしているのだと思います。
P178
心理学用語が人々に取り入れられるのは相応の理由があります。その好例が性格という言葉です。今や日常用語になったこの言葉は戦後社会において急速に広がったものです。人々は生まれつきの家柄や性別によって決定されるのではなく、平等な人権に基づいて生きることができるようになりました。たとえ建前であったとしてもそのことが憲法に謳われてから、性格という言葉が流通し始めたのです。もともとの性質(たち)や性根、人品とも異なる性格という心理学的な言葉は、個人を尊重し、その結果として個人の責任に帰せられる言葉でした。親がしつけや育児に際して「あの子の性格は~」と語るとき、子どもには性格という目に見えない実体が備わっており、そこに問題があるのだと主張しているのです。子どもの性格は子どものものなのですから、親に責任はなくなります。
P188-100
娘を、妻を、そして家族のことをいったい夫はどのようにとらえているのだろう、と。
残念ながらそんな詮索はほとんど意味がありません。おそらく夫は「何も考えていない」のです。
(中略)
夫たちの主観的世界は、ほとんどが仕事の論理で構成されています。それは感情を排除し、結果だけがものを言い、努力次第でなんとかなるという信念に裏打ちされています。
(中略)
「自分はまじめに仕事をして家族を支えているのだから100点に違いない。それ以上何が必要なのか」
これが夫のすべてだと思います。
P209
私たちに与えられた想像力こそが、体験したことのない苦しみに思いを馳せることを可能にします。
もっとはっきり申し上げると、他者の苦しみを「わかる」ことなど私たちにはできないのです。
【ネット上の紹介】
現場で日々格闘するカウンセラーの著者は、相談者の数限りない不安や悩みに向き合ってきた。また3・11以降、「絆」の時代と強調される状況のなかで、むしろ潜在的な家族の問題が浮かび上がってきたと語っている。 老後の不安、嫁と姑の不仲、不登校、親への暴力、子育ての悩み、アルコール依存症、DV被害、共依存、アダルトチルドレン、結婚への不安……。これらさまざまな人生の悩みを、具体的にどうすれば解決できるのか? 本書は世に出回っている人生相談とは一線を画し、28通りの悩みに、臨床40年のエキスを結晶させて答える。普段のカウンセリングでは表現しきれない、著者の考えを充分に知ることができる貴重な一冊。
64歳の夫との将来の生活に不安をおぼえます
妻が不安定で困っています
親になるのが怖いのです
妻より姉の面倒をみたいのです
二人の子どもが結婚しません
どうして私は腹が立たないのでしょう?
娘から毎日のように責められます
浮気する妻に対して怒れません
長女がかわいく感じられません
別居して戻ってきた娘が私を責めます〔ほか〕
朝日新聞6/5、興味深い記事があったので保存しておく。
「姻族関係終了届」を出すと、「死後離婚」が出来る。
さらに「復氏届」を出すと、夫の籍から抜け、旧姓に戻れる。