【ぼちぼちクライミング&読書】

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「私の源氏物語ノート」荻原規子

2024年02月26日 08時50分53秒 | 読書(古典)


「私の源氏物語ノート」荻原規子

「源氏物語」を全訳した著者によるエッセイ。

P70
『源氏物語』五十四帖には、さまざまな身の上の女性が出てきますが、一番の幸せを得たのは末摘花かもしれません。
成り上がった幸運をいうなら、明石の君が一番で、自分の娘が中宮になり、高貴な孫たちに囲まれて晩年を送ります。けれども代償に多くの苦悩や忍耐を重ねてきました。
花散里も運のよい女性で、あまり器量がよくなくても、六条院の夏の町に住んで第二夫人になりました。それは、この人がまれにみる気立てのよさで、多くを望まず大らかに構えていたため、源氏の親愛を得たのです。
マイナス面しか持たないのに幸せになったのは、末摘花一人でしょう。

P221
源氏はどこまでも愛執の人であり、口ではくり返し出家願望を語りますが、いつまでたっても真の発心に至りません。
紫の上がこの世を去って初めて、心の底から思い知るのでしょう。

*******

ところで、日本の職場は、役職で呼びかける。
「課長」とか「部長」、と。
本作品でも、昇級するたびに呼び名も変わり、覚えなおさないといけない。
登場人物が多いのに、さらに呼び方が変わるとついていけない。
そこが「源氏物語」のハードルのひとつ、と思う。

【参考リンク】

「源氏物語 紫の結び」荻原規子

「源氏物語 宇治の結び」荻原規子

「源氏物語 つる花の結び」荻原規子

【蛇足の感想】
少女を誘拐し、義母と密通、同僚の妻を寝取る・・・、
モラルハザード、不倫全開の物語が展開する。
「わたしはこういうことが許される立場のものだよ」、とパワハラも加味。
これを学校教育で教える日本はすごい。

【ネット上の紹介】
原文から全訳を成した荻原規子の源氏物語鑑賞エッセイ。同じ長編物語作家だからわかること、紫式部への深度あるその視点。
いつのまにか役割交代―頭中将の次男紅梅と、長男柏木
みんなの光源氏―紫式部の文通仲間
原因はいつも藤壺―源氏が求め続けたもの
巨大な「若菜」―大団円の暗転へ
なくもがなの求婚―『枕草子』参照の謎
似姿の連鎖―藤壺の宮から浮舟まで
「中の品」の範囲―落ちぶれた高貴な女性
好対照な二人―源氏の孫匂宮と、源氏の末子薫
女三の宮という人―紫の上の努力と限界
意地悪な「玉鬘十帖」―若い娘の悩みごと
浮舟の母親―高貴な連れ子をもった意地
紫の上の死―葬送の空の月
優雅な四季の邸宅1―中宮の秋の町
優雅な四季の邸宅2―春を好む紫の上
優雅な四季の邸宅3―花散里と初夏
優雅な四季の邸宅4―明石の君の冬
若い女の出家―宇治十帖のくり返し
父の帝の愛情―源氏の罪のゆくえ
源氏の出家願望―紫の上との対比
若い源氏の美と笑い―「青海波」の妙
若い源氏の甘え―夕顔と朧月夜
乳母子の奮闘―匂宮の時方、浮舟の右近
真相を得た夕霧―柏木の遺言と薫
鈴虫の宴―女三の宮と冷泉院


「街道をゆく~南蛮のみち」司馬遼太郎

2024年02月23日 09時17分02秒 | 読書(旅・紀行)
「街道をゆく~南蛮のみち」司馬遼太郎

P12-13
日本では、ふるくから、
本朝、震旦(中国)、天竺(インド)
という3つの文明圏しかないという思いこみがあった。
(中略)
その三国世界観の壁をやぶってとびこんきたのが、南蛮というものであった。
(中略)
ちなみに、日本語解釈の上で南蛮というのはスペイン、ポルトガルのことであり、やや遅れて成立する紅毛というのはオランダのことである。

P14
ミカエルという「神に似たる者」は、古くからユダヤ教のなかに存在し、天使の首座であった。さらにいえば『新約聖書』になると、この大天使はイスラエルの守護天使である。
ザヴィエルは、こんにちの国別でいえば、スペイン国籍ということになるが、当時はピレネー山脈のスペイン側のふもとにあったナバラ王国の一城主の子としてうまれ、民族的な所属を厳密にいうとすれば、バスク人である。

P27
ケルト人という古ヨーロッパ人は、大文明をもつローマに征服されたが、紀元前のふるい時代にすぐれた青銅器文明をもち、紀元前900年以後は鉄器生産に長じ、諸道具を農業などの生産に役立てていた。ただケルト人広域社会を形成していなかったため、ローマ人の、戦士の大集団を組織づくる能力をもった文明の侵入者に対しては弱かった。

P183
聖ヤコブのことを、スペイン語では、サン・ティアゴという。サン・ティアゴはスペインの守護神のことであり、話が横へそれるが、天草・島原で戦った日本の切支丹たちも、勝利を祈るとき、
「さんちゃご!」
と、いっせいに叫んでいたらしい。

P272
私がかつて見た日本の城やヨーロッパの城は、戦闘よりも平和の象徴のような印象があった。というより城は市民生活と調和させねば生きてゆけない。その上で城じだいの永遠をねがっているようなたたずまがあるのだが、ザヴィエル城ばかりは、たけだけしいばかりに戦闘的である。


【ネット上の紹介】
1982年、筆者はフランス、スペイン、ポルトガルの旅に出る。『街道』シリーズ初のヨーロッパ行で、日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザヴィエルの人生をたどってゆく。学んだパリ大学、イエズス会の結盟を誓ったモンマルトルの丘を訪ね、バスクの地へ。生誕地のザヴィエル城では自分を「オバケ」と呼ぶ修道士が現れる。濃厚なバスク人の世界に包まれてゆく。
バスクとそのひとびと(カトリーヌ
カンドウ神父
ザヴィエルの右手
カルチェ・ラタンの青春
十六世紀の大学生
ロヨラの妖気
ザヴィエルの回心
夏の丘 ほか)


「仮面後宮」(1)(2) 松田志乃ぶ

2024年02月21日 13時55分21秒 | 読書(歴史/時代)


「仮面後宮~女東宮の誕生」(1) 松田志乃ぶ
「仮面後宮~修羅の花嫁」(2) 松田志乃ぶ

松田志乃ぶさんの最新刊。
(1)が出たのが、昨年1月。
(2)を読むにあたって1巻から読み返した。
これで、謎は解明され物語は終了するが、続編を予感させる終わり方となっている。
期待したいと思う。

P190
皇族というのは蚕のようだと、わたくし、幼いながらに思いましたわ。誰かの庇護がなければ生きられない。自分の力で食べるものさえ見つけられない。翅はあっても飛ぶことはできない・・・・・・(後略)」

1、2巻通して読んで感じるのは、シリアスな内容ということ。
「嘘つきは姫君のはじまり」のようなコミカル要素は控えられている。
少し淋しい感じがする。

続巻があれば、火の宮の「その後の都生活」になるのでしょうか?
「事件」が起きるんでしょうね。
登場人物は、一新されるのでしょう。
もったいないけどしかたない。

普賢、映の宮、貴の宮、五百重・・・
1匹と3人はレギュラー出演間違いない。
そこは喜んでよい。

【もの足りない点】
著者の「あとがき」がないのが残念。
短くても、なにか書いてほしかった。
編集者も段取りすべし。

【誤植】
火の宮と残る三人の
  ↓
火の宮と残る四人の

【ネット上の紹介】
前代未聞の「女東宮候補」として、八雲の院の御所に集められた五人の姫君たちーー。両親を早くに亡くし、宇治の田舎で貧しく暮らしていた火の宮もその候補となるが、強引で高慢な八雲の院のやりかたに憤りを覚えていた。五人の姫君--火の宮、犬の宮、恋の宮、四季の宮、和歌の宮--は、雷光殿という一風変わった建物に滞在することになる。だが、八雲の院との顔合わせ直後、和歌の宮が命を落とす。病死や事故死ではありえない、明らかな殺人--。雷光殿は池の中州に建てられた建物であり、渡るには船を使うしかない。船は中州側につながれたままであることなどから、「犯人は外部からの侵入者ではなく、もともと雷光殿にいた人間であり、今もこの建物内にいる」という状況が発覚。お互いがお互いを疑う中、さらなる犠牲が……。一方、森羅殿に滞在している貴の宮は、宇治で自分たちを襲った賊の「ある特徴」を思い出す。急ぎ、雷光殿にいる姉・火の宮に伝えようとするが……!?熾烈で哀しい道を進み、「女東宮」の座に就く姫君とはーー。


シンガポール、雑感

2024年02月19日 08時41分27秒 | シンガポール2024

シンガポールは、「明るい独裁国家」、「明るい北朝鮮」と言われる。
一党独裁で、政権交代しない。

P56「日本戦後史論」内田樹/白井聡・・・シンガポールについて
民主主義は経済成長にプラスにならないと判断されたので、建国以来一党独裁が続いています。国内治安法という法律があって、反政府的な人物は令状なしで逮捕拘禁することができる。労働組合は政府公認のものしかない。大学生は入学に際して「反政府的な意見を持っていない」ことを示す公的な証明書の提出を義務づけられている。反政府的なメディアは存在しない。リー・クアン・ユー一家が首相ポストを世襲し、国有企業を支配している。

経済優先の都市国家なので、けっこう裕福。
相続税のからみで、日本の富裕層も晩年を過ごすため来ている。

P261「プライベートバンカー」清武英利
2千万シンガポールドル以上の資産を持つ外国人が、その資産の半分以上を5年以上、シンガポールで維持することを条件に永住権を取得できるようになった。相続税もキャピタルゲイン課税もないオフショアに住む権利を、カネで買える時代が到来し、日本人富裕層もなだれ込んだ。

裕福な方が多いので、人口の90%が家を所有し、
多くの家庭で外国人メイドを雇用している。
だから、「メイド税」なるものもある。

道を歩いていても、電車に乗っても、多民族国家だな、と感じる。
7割以上が中華、残りがマレー系、インド系。
白人もけっこう見かけた。(犬を連れて散歩している)
儒教思想があるので、中華系の方は年長者に親切。

MRT小印度駅を降りると、インドの民族衣装専門店がいくつもある。

Chinatown駅

よくこんな建物を作ったなぁ


清潔できれい、という印象。
治安もいい、と感じた。
電車の中で眠っている方も少なからずいる。
建造物も味わいがあり美しい。
そういうのが好きな人は、ハマると思う。


↑ 私の泊まったホテル。
Hotel MI Bencoolen、浴室、トイレも含めて十分な広さ。
清潔で良かった。3泊4日で¥56,276円、食事なし。
道路を渡るとフードコートあり。
ちなみに、航空運賃は148,600円(シンガポール航空)。

【参考】
先々月=台湾
先月=香港に出かけた。
比較のため、航空運賃を記しておく。

香港(キャセイパシフィック)・・・79,750円
台湾(ピーチ)52,810円

香港、台湾は、また機会があれば訪問したい。
シンガポールは今回で充分、再訪はない。


シンガポール④、最終日

2024年02月16日 09時28分57秒 | シンガポール2024

帰国して書いている。
最終日は、再度、ボタニック・ガーデン(世界遺産)に行ってきた。












11:15分にホテル出発、12:00チャンギ空港到着。
滝(映像)の前で、皆さん記念写真を撮っていた。
けっこう迫力がある。


シンガポール③、スンゲイ・ブロウ

2024年02月14日 19時52分34秒 | シンガポール2024

スンゲイ・ブロウに行ってきた。
シンガポール北端にある自然公園。
MRTクランジ駅前から#925バスに乗る。
「クランンジブラウワー・カーパークB」で下車、徒歩数分でビジターセンター。
そこから、コスタル・トレイルを歩く。




ジョホール海峡をはさんで、対岸はマレーシア。

マングローブ

大湿地帯だ

海岸沿いを歩くコース

ヤギ農園があったので、見学する
餌をもらえると思って勢いよくやってくる
もらえないので、鉄棒を囓っている・・・スマン。

ゴール地点からバスでMRTに戻る予定だったが、バスが来ない。
インフォメーションで確認すると、日曜しか来ないバス停らしい。
(そんなバス停があるって知らなかった)
仕方がないのビジターセンターに戻る。

バスが来たので確認すると、#925なのに、MRTクランジ駅に行かないらしい。
#925でも2種類あるらしい。(ループラインで、バスの屋根を見たら分かるらしい)
違いがよく分からない。
次のバスを待って聞くと、今度のバスはOKだった。
(ややこしいので、「午後から帰国」って人は、訪問を避けた方が良い)

いったんホテル近くに戻り、フォートカニングに移動。



静かな散策コース
歴史的な経緯がある場所だけど省略。


*ez-linkカードのチャージが手間だったので書いておく。
台湾や香港では、駅員さんに頼んだらやってくれた。
機械を使って自分でもやったけど、ややこしくなかった。

シンガポールでは、駅員さんは、やってくれない。
まず機械を見つける必要がある。
キャッシュ可と、カードのみ可、があるから。(それを知らなかった)
現金可能な機械を見つけたら、カードをセンサーに立てて置く。
画面表示ボタンがいくつもあり、キャッシュ・ボタンは、
下に小さくあり、分かりにくい。
また、私の指がクライマー指で反応が悪い。(イミグレーションでも指紋マシーンに反応せず。係員の方が私の指にスプレーをして、やっと反応した)

おつりが出ないので、チャージしたい金額を用意する必要あり。
最後にレシートボタンを押すと、バランス(残高)が表示されて出てくる。
以上、書くと簡単なように思えるけど、実際やってみて。
(日曜しか来ないバス停があるのを知らないのと同様、最初の前提を知らないと、対処しようがない)


シンガポール②、Night Safari & Zoo

2024年02月13日 19時17分33秒 | シンガポール2024

ブキ・ティマの後、ナイトサファリに行ってきた。
シンガポールの動物園は有名。

勘違いしていた。
同じ動物園を夜に行く、と。
イメージとして、同じ役者さんがマチネーをした後、夜公演をする、と。
ナイトサファリのエリアは、動物園とは別にある。
夜専門の動物たちが迎えてくれる。

Dhoby Ghaut駅~Khatib駅へ。
MRT南北線Khatib、A出口、シャトルバスに乗る。
とりあえずトラムで園内1周して、トレイルコース=4種類を実施。
①フィッシングキャット・トレイル
②レオパード・トレイル
③イーストロッジ・トレイル
④タスマニアデビル・トレイル(以前のワラビー・トレイルに相当)

動物達の写真を披露したいけど、夜に写真を撮る腕がなくて失敗。



さて翌日。(すなわち今日)
再び動物園に行ってきた。
さっそくホワイトタイガーが出迎えてくれる。

サイの上に乗った鳥が、サイの皮膚を突いているが、特に怒った様子はなし。



今まで行った動物園で一番大きい

歩いていたら、溝にオオトカゲがいた・・・子どももびっくりしてた





シンガポール①、ブキ・ティマ自然保護区

2024年02月12日 17時51分14秒 | シンガポール2024

シンガポールに来ている。
2月11日は、移動のみ。
21:20第1ターミナル-23:20関空出発-翌日5:10シンガポール到着SQ623
全然眠れなかった。(これから、深夜便は止めようと思う・・・とても疲れるから)


2月12日は、早朝到着して入国審査。
シンガポールは、あらかじめアライバルカードをネット上で入力しておく。
(これをしておかないと、入国できない)
それをプリントするか、スクショしてスマホに入れておく。
イミグレーションでは、パスポートと親指指紋をスキャンして通過。

その後、2万円をシンガポールドル(SG$)に換金し、ez-linkカードを購入。
ez-linkカードは、10SG$、それに50SG$チャージ。
香港では、”add”を使ったが、シンガポールでは”top up”を使うとのこと。 
「所変われば品変わる」、ということ。

その後、ホテルに移動。
本来なら、14時からチェックインだけど、早朝チェックインしていただき、
荷物を部屋に入れて整理し、出かける準備をする。

今日は、シンガポール最高峰に登ることにする。
トレイルが設定されていて、人気コースとなっている。

MRTビューティー・ワールド駅A出口~アッパー・ブギ・ティマ・ロード北進
~Jalan Anak Bukit道路横断~Hindhede Rd北東方向に直進すると登山口。
下の写真は山頂・・・眺望は良くない。

標高▲163mだけど、とてもしんどかった。(寝不足+むし暑さ)

皆さん、汗だくになって登っていた。
夏はどうなるのだろう?

ビジターセンターのはく製。

下山後、登山口近くにあるマレー鉄道跡を歩く。







鉄道跡をブキ・ティマ・トラス橋まで歩いて、
そこからキング・アルバート・パーク駅へ。
そのままホテルに戻らず、MRTボタニック・ガーデン駅で降りる。



植物園だけど、場所がら熱帯植物が中心になっている。





(つづく)


「旅ごころはリュートに乗って」星野博美

2024年02月11日 08時26分06秒 | 読書(エッセイ&コラム)

「旅ごころはリュートに乗って 歌がみちびく中世巡礼」星野博美
 
星野博美さんエッセイ、再読。
「みんな彗星を見ていた」の姉妹編。

グリーンスリーヴス
P17
イングランド民謡といわれるこの曲だが、実はヘンリー8世作という根強い説がある。後に妻となって斬首刑に処せられるアン・ブーリンへの求愛を表現した曲だとか。

P88
「処女聖マリアの被昇天の教義」が、ローマ教皇(ピウス12世)によって全世界に向けて交付されたのは、比較的最近のことで、なんと1950年だという。逆に言えば、それまでカトリック教会では、聖母の扱いに決着がついていなかったということだ。

P170
セビーリャでもアルカサルを訪れた。このアルカサルは、ミュージシャンのPVのロケ地に使われたり、アメリカのテレビドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』の一場面に登場したりする、モーロ〈北アフリカのイスラーム〉文化と中世ヨーロッパが融合した大変美しい建造物である。
 
P223
長い時代と広い地域をカバーするカンティガでは、それが隣町に住むイスラーム教徒であろうと、ビザンツ帝国を苦しめたアラブ人であろうと、オリエントで頭角を現し始めたテュルク人であろうと、モロッコのベルベル人であろうと、ざっくり「モーロ」と表現する。

P225
カンティガが隠したい、最も濃い陰は、この歌集に内包された反ユダヤ主義ではないだろうか、という予感がした。

P234
ノートル・ダムは訳せば「我らが淑女」で聖母マリアを意味する。つまり『ノートル・ダムの奇跡』はカンティガと同じく、まさに聖母の奇跡集なのだ。
 
P291
「サントス」は聖人を指していたのか。そして「御作業」とは生涯だったのか・・・・・・。つまりこの本は、聖人伝だったのである。
 
 
【ネット上の紹介】
我ら、死に向かって急ごう、罪を断ち切ろう…“死の舞踏”が脳裏に踊った時代、人は何に心のよりどころを求めたのか?リュートに魅せられ、時空を超えた旅に出た。舞台はルネサンスから中世へ、やがてキリスト教の深淵へ―。
グリーンスリーヴス(イングランド民謡)
ピーヴァ(ヨアン・アンブロージオ・ダルツァ)
千々の悲しみ(ルイス・デ・ナルバエス)
死に向かって急ごう(『モンセラートの朱い本』)
天にあまねく我らが女王よ(『モンセラートの朱い本』)
死の舞踏(ハンス・ホルバイン)
聖母マリアの七つの喜び(カンティガ一番)
聖母の御業に驚くなかれ(カンティガ二六番)
コンスタンティノープル包囲(カンティガ二八番)
コンスタンティノープルを守った聖母のイコン(カンティガ二六四番)
右手を斬られたダマスコの聖イオアン(カンティガ二六五番)
モーロ王の嘆き(グラナダのロマンセ)
マラケシュを救った聖母の御旗(カンティガ一八一番)
気がふれたホスピタル騎士団の修道士(カンティガ二七五番)
殺されたユダヤ人の子ども(カンティガ四番)
ユダヤ人に汚されたキリストの像(カンティガ一二番)
囚われ人は決して(「獅子心王」リチャード一世)
聖人と福者
サントスの御作業
日本の殉教伝

「今日はヒョウ柄を着る日」星野博美

2024年02月09日 09時39分01秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「今日はヒョウ柄を着る日」星野博美

星野博美さんのエッセイ、再読。

P24-25
女子校出身の私は、女性の言動には非常に神経質なところがある。十代の頃、同級生たちは、あとで引きずり下ろすために相手を持ち上げたり、散々叩きのめしておいて救いの手を差し伸べ、恩を売ったりと、手のこんだ距離の構築を図っていた。女性の発する、真意の見えない曖昧な発言を真に受けると、十中八九、捕食者の餌食となる運命が待ち受けている。

P52
「なぜ盂蘭節に引っ越しすると縁起が悪いの?」
(中略)
「だって盂蘭節は、あの世の門が開いて、あらゆる死者の霊が地上に降りてくる時じゃないか。へんな霊がうちに棲みついたら困るんだよ。門が閉まるまでにきちんと帰ってもらわないとね」

日本のキリスト教徒に質問
P128
「やはりお盆はされないのですね?」
「しません。キリスト教徒の霊は、天国から戻ってきたりしないので。お盆に先祖の霊が帰ってくるという感覚は想像がつきません」

P165
世の中には、猫のいる人間と、猫のいない人間の二種類しかいない。
海苔(のり)が亡くなって、はや一年半になる。私はとうとう、猫のいない人間になってしまった。

【ネット上の紹介】
朝から賑わう戸越銀座商店街。そこでおばあちゃんたちがまとう「ヒョウ柄」の存在に気づいた著者は、人間界と動物界の相似性に敏感になる。そして若い世代‐高齢者、記憶‐真実、現世‐あの世といった境界を行き来しはじめ…。星野博美ワールドの「その先」を指し示す、あやしくてせつない、ユーモアあふれる豊かな異界の淵へ、ようこそ!新境地をひらく最新エッセイ集!


「ゾンビ化するアメリカ」町山智浩

2024年02月07日 17時51分39秒 | 読書(海外事情)


「ゾンビ化するアメリカ」町山智浩

P68
アディダスの社名は創業者アドルフ・ダスラーの名前に由来している。靴工場の経営者だったダスラーはヒットラーのナチ党に参加し、ドイツ軍のために靴を作っていた。そんな歴史を背負ったアディダスにとって「反ユダヤ」と呼ばれるのはなんとしても避けたい。

P88
ハーシェル・ウォーカーは、数々のスキャンダルについて聞かれ「この選挙は私のためではなく、国民のためのものです」と言おうとして選挙Electionを勃起Erectionと言って大恥をかいてしまった。(EとRの区別は難しい。人ごととして笑えない。愛するlove を、こするrub と発音してしまう)

P179
BEEFは「牛肉」じゃなくて「不平」「悪罵」を意味するスラング。

P182
「アジア系の親は子どもの通信簿はAしか許さない。血液型がBでも叱る」というジョークもある。

P199
ツイッター社を440億で買収したイーロン・マスクは去年の10月に同社のCEOになったが、やることなすこと失敗だらけ。まず7500人いた社員を1000人に減らした。減らしすぎてシステムのメンテナンスもできず、エラーは日常茶飯事になった。
また、デマや陰謀論、テロや差別など、危険なツイートを監視するスタッフを辞めさせたため、ひどいツイートが激増した。

ポテト飢饉1840年について
P247
この時期、アイルランドの人口は800万人から500万人に減った。アイリッシュ・ディアスポラ(アイルランド人世界離散)と呼ばれる。
職を求めて対岸のリバプールに渡ったアイルランド人の子孫がビートルズのジョン・レノンやポール・マッカートニーだし、大西洋を渡った移民の子孫はJ・F・ケネディ、オバマ、バイデン大統領、トム・クルーズやブラッド・ピットやジョージ・クルーニー、自動車王ヘンリー・フォードと西部劇の巨匠ジョン・フォードだ。

【ネット上の紹介】
この国はまだ息をしてますか?“トランプ・ランド”はまだ終わってない?アメリカの悪夢はまだ続く!澤井健のイラスト完全収録。
民家に車で突っ込んで焼死したハリウッド女優アン・ヘッシュの壮絶な人生
公文書持ち出しのトランプ その信者は謎のおしっこテロ
『NOPE/ノープ』は映画史から消されたアフリカ系の復讐
女性やゲイの権利を潰す最高裁判事の黒幕はカトリックの騎士!
「うちの子は爬虫類!」陰謀論にハマったトランプ信者たちが各地で大暴走
難民を他州に送りつけディズニーに嫌がらせ フロリダ州知事デサンティス
イタリアの極右首相とトランプの参謀の怪しい関係
フロリダで共和党が強いのはキューバ移民をケネディが裏切ったから
トランプが住むフロリダの超高級住宅地を開発した大富豪はなぜ呪われたのか
全米最大のお達者コミュニティでは男性がモテモテ
ユダヤ陰謀論者のカニエ・ウェストをアディダスが切った理由
ペロシ議長が襲われたツイッター買収で陰謀論が野放し
『風と共に去りぬ』のアトランタは今ヒップホップの首都で南部のハリウッド
トランプ再出馬演説はウソだらけ 公文書持ち出しで監獄から選挙活動?
元NFLスターの上院議員候補が妻を殺そうとしたのは多重人格が原因?
テンプテーションズの自伝ミュージカルは死屍累々のコンフュージョン
カニエ・ウェストついにナチ宣言 その原因はポルノ?
「暗号資産の王」は会社ごっこで懲役115年?
共和党初のゲイ議員は学歴、職歴、資産おまけに民族も全部ウソ!
アイダホの猟奇殺人犯人逮捕の決め手はDNAデータベース〔ほか〕


「アメリカがカルトに乗っ取られた!」町山智浩

2024年02月05日 08時02分04秒 | 読書(海外事情)


「アメリカがカルトに乗っ取られた!」町山智浩

P174
「グルーマー」とは「子どもにグルーミングする人」という意味で、「小児性愛者」の婉曲表現。

P256
中絶を罪と考える保守的なキリスト教徒が多い南部や中西部では、かつて州法で中絶が禁じられてきた。しかし1973年、連邦最高裁が中絶は女性の権利であると判決し、合法になった。それ以来、保守的キリスト教徒はその最高裁判決を覆すことを悲願としてきた。

【ネット上の紹介】
次のアメリカ大統領は誰だ?バイデンの不調につけ込んで、トランプ陣営が大躍進? 次の大統領選を左右する中間選挙の直前、アメリカの1年の話題を総ざらえ!
ニューヨークが営業再開 外国からの観光客に路上で無料ワクチン打ちまくり
北米各地の熱波で数千人死亡 生き残るのは金持ちだけ?
東京五輪はアメリカで「電通地獄」と報道された
シモーネ・バイルズや大坂なおみの棄権を叩くキモオヤジたち
クオモNY州知事がセクハラで辞任 じゃあトランプは?
アフガン陥落でバイデン批判沸騰 でも難民は受け入れないの?
ニルヴァーナのジャケで泳いでた赤ん坊が金を求めて…
マシュー・マコノヒーが出馬を考えるほどヒドいテキサス州の政治とは?
セックスさせないよ!テキサスの中絶禁止に女性ストの呼びかけ
反ワクチン反マスクのデマゴーグが次から次に死んでいく〔ほか〕


「戸越銀座でつかまえて」星野博美

2024年02月02日 09時23分01秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「戸越銀座でつかまえて」星野博美

星野博美さんのエッセイ、再読。
実家=戸越銀座に戻ってからの日々を綴っている。
週刊朝日での連載(2008年7月~2009年9月)が元になっている。

P8
自分はたった一つ、「自由」という小さな選択をしただけのつもりだった。
しかしこの「自由」というやつはすごく強欲で、ストーカーのように執念深い怪物だ。ちょっと楽しそうな出来事が現れるたびに「俺とあいつのどっちが大事なんだ!」とわめき散らし、「おまえは最後には俺のところに戻ってくるよな」と耳元でささやき続ける。それにすっかり洗脳され、楽しみや喜びが罪悪のように感じられる。
自由という名の暴君が、人生を食いつぶし始めたのである。

P72
旅とは何だろう。一言で言えば、片っ端から出会い、片っ端から別れること、だと私は思っている。出会いと別れがひっきりなしに訪れるから、喜怒哀楽の起伏は日常の比ではなく、思春期真っ最中の人のように、泣いたり笑ったり怒ったりを繰り返す。

P198
そしてハンガリーから帰国した日の翌日、しろは死んでしまった。
その翌年は取材のために中国へ行き、帰国した翌日、のりの兄、たまを亡くした。
私が海外へ行かなくなったのはそれからだ。海外へ行くたびに猫を失う。私には海外旅行が、もはや忌まわしいものにしか思えなくなってしまった。
そしてそれから精神状態が落ちこみ、実家へ戻ることに決めたのはすでに述べた通りだ。

P207
獣医のゆき子先生が言った。
「猫ちゃんって、がんばり屋なんですよ。必要以上に元気に振る舞うんです」
もともと捕食動物である猫は、弱みを見せると敵に攻撃されることを知っている。
だから本当は弱っているのに、攻撃されないよう、気丈に振る舞うのだという。

P226
私は丸二日、ゆきの遺体を抱いて眠った。
人が、死を受け入れるのはいつなのだろうか。

P228
このままだと、動物病院へ通ずる道しか歩けない人間になってしまう。ぼやーっと歩いても、動物病院へたどり着けない場所へ自分を隔離する必要がある。そして壊れた頭のプログラムを書き換えるくらいの荒療治が必要なのかもしれない。

そして、長崎県にある五島自動車学校へ、合宿免許を取りに行くことに決めた。
「島へ免許を取りに行く」


P290
1人暮らしに敗北して実家に戻った。
それを認められるようになったのは、ようやく今年に入ってからだ。その一言を書いたら、鉛筆が進み始めた。そして結局連載時の原稿のおよそ半分は捨て、あらたに書きなおすことにした。

【ネット上の紹介】
40代、非婚。「自由」に生きることに疲れ、一人暮らしをやめて戻ったのは実家のある戸越銀座だった。変わりゆく故郷の風景、老いゆく両親と愛猫2匹、近所のお年寄りとの交流。そのなかで見つけた新たな生き方。“旅する作家”が旅せず綴る珠玉のエッセイ。
第1章 とまどいだらけの地元暮らし(二つの町
妻妾同居 ほか)
第2章 私が子どもだった頃(仔猫と旅人
えこひいき ほか)
第3章 あまのじゃくの道(負け猫と負け犬
時間よ止まれ ほか)
第4章 そこにはいつも、猫がいた(皆既日食
時差 ほか)
第5章 戸越銀座が教えてくれたこと(二〇一一年三月十一日
防災訓練 ほか)