「キリスト教と日本人 宣教史から信仰の本質を問う」石川明人
P68
宣教師のなかには、1580年から教会領になっていた長崎と茂木を要塞化して、ポルトガル・スペインの軍隊を呼び寄せ、そこを足がかりにして日本を制圧することを真面目に検討する者もいたのである。
P79
欲望に基づく「侵略」よりも。善意や正義感に基づく「防衛」の方が凶暴なのだ。
フランシスコ会宣教師・アセンシオンの言葉
P85
スペイン国王は日本のキリスト教とたちを「救済」「防衛」するために、長崎や平戸に要塞を設け、武装艦隊を配備すべきだと説いていたのである。
P87
伴天連追放令の背景としてさらにもう一つ言及すべきなのは、当時ポルトガル人が女性や子供を含む日本人を奴隷として売買していたという問題である。秀吉にはそれも許せなかったのである。
P98
秀吉の時と違って完全な「禁教」にすることができたのは、カトリックであるスペイン・ポルトガルに対し、プロテスタントのオランダ・イギリスとのあいだで宣教を伴わない貿易が可能になったからでもある。
P184
1637年の島原天草一揆の時は、原城に立てこもったキリシタン(カトリック信徒)たちに対して、オランダのプロテスタントたちが海側から艦砲射撃を加えたこともあった。彼らはその見返りとして、ポルトガル船を日本から締め出して貿易を独占できるようになることを期待したからである。
P205
幕末から明治初期にかけては、確かにカトリックは「天主教」、プロテスタントは「耶蘇教」と呼ばれるようにもなった。
P215
ザビエルがやってきた戦国時代の日本人は、キリスト教を前にしても「新しい宗教がやってきた」という認識はなかったことになる。当時の人々の頭には、そもそも「宗教」という概念がなかったからだ。
P224
これまで宣教に費やしたコストとその成果とを比べるならば、やはりキリスト教は日本で成功したとは言い難い。
P226
フィリピンや韓国など、日本と同じアジアでありながら日本よりはるかにキリスト教が広まっている国はある。
【おまけ】・・・韓国事情
Wikipediaによると、韓国では、仏教が22.8%、プロテスタントが18.3%、カトリックが10.9%、儒教0.2%となっている。プロテスタントとカトリックを合わせたキリスト教全体では29.2%となっていて仏教より信者の数が多い。
・・・隣国であり、民族的にも近いのに、この差はいったい何なんだろう?
摩擦が起きるはずだ・・・「近くて遠い国」?
ちなみに、日本のキリスト教徒の割合は1%・・・以下、Wikipediaによる日本の場合、
NHK放送文化研究所による「ISSP国際比較調査(宗教)2008[6]」によると、「あなた自身は、何か宗教を信仰していますか」という問いに対して、「宗教を信仰していない」(無宗教)49.4%、仏教34%、神道2.7%、その他の宗教1.1%、プロテスタント0.7%、カトリック0.2%などとなっており、「宗教を信仰していない」人49.4%に対して「宗教を信仰している」人は38.7%となっている。
【感想】
著者の作品は今まで2冊読んだ。
「キリスト教と戦争」
「私たち、戦争人間について」
どちらもレベルが高く、分かりやすく書かれていて、面白かった。
今回も予想に違わず、とても良かった。お薦めです。
「キリスト教と戦争」
「私たち、戦争人間について」
【ネット上の紹介】
日本人の九九%はキリスト教を信じていない。世界最大の宗教は、なぜ日本では広まらなかったのか。宣教師たちは慈善事業や教育の一方、貿易、軍事にも関与し、仏教弾圧も指導した。禁教期を経て明治時代には日本の近代化にも貢献したが、結局その「信仰」が定着することはなかった。宗教を「信じる」とはどういうことか?そもそも「宗教」とは何か?宣教師たちの言動や、日本人のキリスト教に対する複雑な眼差しを糸口に、宗教についての固定観念を問い直す。
第1章 キリスト教を知らずに死んだ日本人に「救い」はない?
第2章 戦争協力、人身売買、そしてキリシタン迫害
第3章 禁教高札を撤去した日本
第4章 「本当のキリスト教」は日本に根付かないのか
第5章 「キリスト教」ではなく「キリスト道」?
第6章 疑う者も、救われる