「結婚帝国」上野千鶴子/信田さよ子
P15
上野:結婚したからといって人生がリセットされるわけではないし、しないからといってお先まっくらなわけでもない。家族がセキュリティグッズになることもあるが、最大のリスクになることもある。
P30
上野:(前略)社会学には「相対的剥奪」という概念があります。リラティブ・デプリべーション(relative deprivation)です。つまり、みじめさに「絶対」はないということです。
P72
信田:「本当のわたし」とかね。踏みつぶしてやりたい言葉ですね。
P113
上野:わたしは結婚契約をこんなふうに定義しているんですよ。「自分の身体の性的使用権を、特定の唯一の異性に、生涯にわたって、排他的に譲渡する契約のこと」。
P123
上野:レイプには交通事故と思って「やりすごす」やり方があるのかもしれませんが、インセスト(親近姦)は信頼を利用した権力の乱用だから、もっと深刻でしょう。
P131
上野:妻を殴るのは、男の自意識の中では、自傷行為の延長。実際、わたしの知り合いの夫がそう言ったと聞いたことがある。「君を殴るのとき、僕の心が泣いているんだぁ」って。だけど、「痛いのはあんたじゃないだろ」。
P146
上野:女の場合は、男を所有できなくても、子どもは所有できるでしょ。だから子どもに向かうんでしょ。子どもは所有できると思っている。
P177
上野:「かわいいおばあちゃんになりたいって言う人がいますが、今までかわいくなかったわたしが、これから先、かわいくなれるわけがない」。
2004年、信田さよ子さんと上野千鶴子さんの対談。
10年以上前の対談だけど、古さを感じない。
つまり、世の中はさほど、変わっていない?
【ネット上の紹介】
結婚は、本当に女の岐れ道なのか―?結婚しても、しなくても、女女格差に家族問題、セックス、DV、老いた親の介護まで、難問は非情に降りかかる。もはや既婚/非婚のキーワードだけでは括れない「女」と「結婚」の現実を、“オンナの味方”二大巨頭が徹底的に語りあう!文庫版のための追加対談収録。
第1章 性規範と性行動のギャップを生きる三十代
第2章 「かけがえのなさ」の解体と純愛願望
第3章 「愛はなくてもセックスできる」は常識なのに
第4章 男の「愛」とセクシュアリティ
第5章 去勢しないかぎり、暴力は続くのか
第6章 結婚難民よ、どこへ行く
第7章 「カウンセラー無用論」を俎上にのせる
第8章 人は、社会的存在でなければならないのか
文庫版のための特別対談(上野千鶴子×信田さよ子)
「白樫の樹の下で」青山文平
青山文平名義のデビュー作で、松本清張賞受賞作品。
白樫の樹の下にある道場に通う3人が中心となって物語が進行する。
ポスト田沼時代の話。
連続殺人鬼が登場し、ミステリ仕立てで展開する。
おもしろかった、よく出来ている。
でも、近作と比べると、ちょっと落ちる。
青山文平作品の特色である、経済事情も書き込まれていない。
楽しめたけど、「普通の時代小説」、である。
【ネット上の紹介】
第18回松本清張賞受賞作。著者は齢、62歳。長らく経済関係の出版社に勤務した後、フリーライターとして現在に至ります。江戸幕府が開かれて180年たった、天明期、最下級の御家人で小普請組の3人の幼馴染が活躍します。当時は竹刀剣法花盛りの中で、彼らはいまだ木刀を使う古風な道場に通っています。ある日、江戸城内で田沼意知を切った刀を手にしたことから物語が動き始めます。
青山文平氏の短編集。
次の6編が収録されている。
三筋界隈
半席
春山入り
乳房
約定
夏の日
本作品は、単行本では「約定」と言うタイトルだった。
文庫化にあたって「春山入り」に変更したそうだ。
内容は全く同じ。
タイトルだけが変わった。
読んで分かった。
短編集のタイトルは、その作品集の顔であり代表だ。
「約定」より「春山入り」の方が断然良い。
完成度も内容もずっと上だ。
「半席」も収録されているが、これが後の連作短編集「半席」の第1作目。
いろいろ楽しめる内容だ。
【著者の言葉】
P281
一般的には、短篇はスケッチであり、長編の片手間に肩の力を抜いて描かれるもの、というような見方があるかもしれませんが、私は長篇となんら変わらぬ構えで小説世界の構築に取り組みます。その証左がまずは創作の期間で、私は一篇の短篇の制作に少なくとも三ヶ月をかけます。素材の探索にひと月、構想にひと月、そして執筆にひと月です。
【ネット上の紹介】
藩命により友を斬るための刀を探す武士の胸中を描く「春山入り」。小さな道場を開く浪人が、ふとしたことで介抱した行き倒れの痩せ侍。その侍が申し出た刀の交換と、劇的な結末を描く「三筋界隈」。城内の苛めで病んだ若侍が初めて人を斬る「夏の日」。他に、「半席」「約定」「乳房」等、踏み止まるしかないその場処でもがき続ける者たちの姿と人生の岐路を刻む本格時代小説の名品。
「魂でもいいから、そばにいて」奥野修司
サブタイトルが、「3・11後の霊体験を聞く」。
遺族の悲しみに寄り添ったレポート。
P9
たとえばタクシーの運転手だ。
「古川駅から陸前高田の病院まで客を乗せたんだが着いたところには土台しか残っていなかった。お客さん!と振り返ったら誰も乗っていなかったんだよ」
(中略)
またある女子大生の話。
「閖上大橋のあたりに行くと、高校時代にいつもそこで待ち合わせていた親友が立っているんです。でも、その子はお母さんと一緒に津波で流されたはずなんです」
このような“恐怖体験”が語られる訳じゃないし、テーマでもない。
著者は次のように述べている。
石巻での話
P246
十字路で前の車が止まったまま動かないので降りてたずねると、道路をたくさんの人が渡っているから待ってくれという。しかし、誰もそんな人は歩いていなかった――。当時は語る方も怖がっていたし、聞いている僕も怖かった。でも、僕が求めていたのはそういう“恐怖体験”ではない。津波で逝った大切な人と、共に生きようとしている人びとの物語を記録することだった。
P246
津波という不可抗力によって、大切な人を突然喪うという悲劇は、生き遺った人の心の中に大きな悲しみの澱を生んだ。ここに紹介した「亡き人との再会」ともいえる物語は、その悲しみを受け入れるためではない。むしろ大切なあの人との別れを認めず、姿は消えたがその存在を感じつつ、忘れることを拒否する自分を受け入れるためのように思う。きっとそれは、大切なあの人が、この世から忘れ去られないためでもあるのだろう。
奥野修司さんという高名なノンフィクション作家が、震災の霊体験を書かれた、ってことに興味を持って読んだ。同じノンフィクション作家・工藤美代子さんの霊体験集とは趣旨が異なる。
「なぜノンフィクション作家はお化けが視えるのか」工藤美代子
「もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら」工藤美代子
(こちらは、純粋に怖い体験集、である)
【おまけの感想】
ところで、本書を読んでいて気になったのが、携帯にまつわる霊体験が多い、ってことだ。
電波と霊は親和性があるのだろうか?
【ネット上の紹介】
今まで語れなかった。でも、どうしても伝えたい。未曾有の大震災で最愛の人を喪った絶望の淵で…大宅賞作家が紡いだ、“奇跡と再会”の記録。
春の旅(『待っている』『どこにも行かないよ』(亀井繁さんの体験)
青い玉になった父母からの言葉(熊谷正恵さんの体験)
兄から届いたメール“ありがとう”(熊谷常子さんの体験)
『ママ、笑って』―おもちゃを動かす三歳児(遠藤由理さんの体験)
神社が好きだったわが子の跫音(永沼恵子さんの体験))
夏の旅(霊になっても『抱いてほしかった』(阿部秀子さんの体験)
枕元に立った夫からの言葉(赤坂佳代子さんの体験)
携帯電話に出た伯父の霊(吉田加代さんの体験)
『ほんとうはなあ、怖かったんだぁ』(阿部由紀さんの体験)
三歳の孫が伝える『イチゴが食べたい』(千葉みよ子さんの体験))
秋の旅(『ずっと逢いたかった』―ハグする夫(高橋美佳さんの体験)
『ただいま』―津波で逝った夫から(菅野佳代子さんの体験)
深夜にノックした父と死の「お知らせ」(三浦幸治さんと村上貞子さんの体験)
“一番列車が参ります”と響くアナウンス(今野伸一さんと奈保子さんの体験)
あらわれた母と霊になった愛猫(大友陽子さんの体験)
避難所に浮かび上がった「母の顔」(吾孫耕太郎さんの体験))
「奇界遺産」佐藤健寿
世界遺産ならぬ奇界遺産。
通常の世界遺産より行ってみたくなる、かも。
↑ベトナム・ホーチミン郊外にあるスイ・ティエン公園。世界最強のテーマパーク。
↑ギリシャ/テッサリア地方、メテオラ
↑スペイン/アンダルシア、セテニルとロンダ
ポルトガル/カステロブランコ、モンサント…家と巨岩が一体化している
台湾/台中、ビンロウ売りの女性たち
【ネット上の紹介】
常識では考えられない!世にも奇妙な!不思議建築・不思議遺跡を大公開!フォトグラファー、佐藤健寿が過去五年に渡って世界を股にかけ、撮影・取材した世界の奇妙な人・物・場所。中国の洞窟村から、東南アジアの新興宗教、アメリカのUFO基地・エリア51、ギリシアのオーパーツ、南米ボリビアの忍者学、太平洋の呪われた遺跡、チベットのイエティ、インドのサイババ、あるいは何故か中国・三国志の子孫まで。訪問国40を超える、壮絶な現地取材を敢行。世界の奇妙なモノをただひたすら撮影、集成した強烈な写真集です。
「サトコとナダ」ユペチカ/著 西森マリー/監修
アメリカに留学したサトコ。
ルームメイトがイスラム女子。
それもサウジアラビア。
いったいどんな生活が繰り広げられるのか?
異文化交流4コマ漫画。
これが馴れ初め
ニカブ、ヒジャブ、チャドル、ブルカ…この違いが分かった
日本人の宗教観を説明するのは困難…多神教の国は少数派
【立ち読み】(1冊ほとんど立ち読みできる)
『サトコとナダ』ユペチカ | ツイ4 | 最前線
【ネット上の紹介】
ルームメイトはサウジアラビアの女の子!?初めてのアメリカ、イスラム文化、ひとつ屋根の下で繰り広げられる魅惑の異文化交流ライフ
壁に張りついているセミの抜け殻を見つけた。
風にも負けず張り付いている。
朝早くからセミが鳴いている
ウチのお婆さん曰く、
「セミは寿命が短いからいじめたらあかんで」
しかし、しばらくすると、
「うるさいな、竿でしばいたろか」
「小暮写眞館」宮部みゆき
先日読んだ「希望荘」が良かったので、読み残している現代小説、ってことで、本書を選んだ。
やはり、面白い。
凶悪犯罪は起きないが、「名もなき毒」の一歩進んだ姿を提示している。
高校生たちが活躍する青春小説としても楽しめる。
なお、本書は講談社のハードカバー→講談社文庫→今は、新潮文庫で読める。
私は、最初ハードカバーで読んでいたが、途中から講談社文庫・上下2冊に切り替えた。
700ページを超える単行本が重すぎて、保持するのがしんどいから。
P71
高齢者にとっては、毎日が日曜日なのではない。曜日なんか関係なくなるのだ。
P329
「そういう無神経と、積極的な悪意の境界線って、どっかにあるのかな」
【著者の言葉】
P546-547
やっぱり今までね、女性が犯人になるにしろ、女性が被害者になるにしろ……特に、この本の前に書いた『名もなき毒』なんて、非常に家庭は恵まれているのに、自分だけ逸脱していってしまう若い女性を書いたんですけども、結局、彼女は逮捕されるっていう形でしか、ピリオドを打てなかったんですね。でも、この本はそうじゃなくて、そういう危ういところにいる人が、ちゃんと自分で、向こう側にも行かずこっち側に帰って来れる話にしようと。
P547
ロジックとかヒューマニズムとかでは、もう私はエンジンがかからなくなってきたから、他に何があるんだろう、っていう時に、その「親切」っていうキーワードをもらったような気がしました。
【ネット上の紹介】
物語のすべてが詰まった700ページの宝箱著者3年ぶり現代エンターテインメント長編。
――この写真には謎がある。人の本音はときどき、思いがけない形で姿を見せるから。家族とともに古い写眞館付き住居に引っ越ししてきた高校生の花菱英一。変わった新居に戸惑う彼に、一枚の写真が持ち込まれる。それはあり得ない場所に女性の顔が浮かぶ心霊写真だった。不動産屋の事務員、垣本順子に見せると「幽霊(そのひと)」は泣いていると言う。謎を解くことになった英一は。待望の現代ミステリー。
「いいエリート、わるいエリート」山口真由
先日読んだ、「ハーバードで喝采された日本の「強み」」が良かったので、読んでみた。
この後、著者はハーバードに留学するが、その心境が分かった。
P42
「あなたは女の子なんだから、東大ではなく慶応に行ったら?」
大学受験の時、母は、冗談めかして、私にこう言いました。
P66
弁護士になる前の研修で裁判官からお伺いした話です。裁判官のかたは声を潜めて、「経験上、女性トラブルがずば抜けて多い職種が一つだけある。そう、医者なんだよ……」(後略)
P124
表面的な優しさの向こうに、私は、ナルシズムを感じてしまいます。人は、優しくされるより、むしろ優しくするときに快感を感じるのだそうです。
【参考】
「ハーバードで喝采された日本の「強み」」山口真由
【ネット上の紹介】
東大法学部在学中に司法試験と国家公務員1種に合格、成績はオール「優」で首席卒業、財務省に入り、弁護士に転職、ハーバード留学―そんな「非の打ちどころのないキャリア」は、どのようにして獲得されたのか。その裏にはどんな苦悩があったのか。エリートになりたい人、子どもをエリートにしたい親、エリートなんて鼻持ちならないと思う人へ、自らの半生をもとに本音で語る体験的エリート論!
第1章 いい勉強、わるい勉強(勉強し過ぎて幻聴を聴いた
勉強には努力に応じた見返りがある ほか)
第2章 いい東大生、わるい東大生(「東大=一番」ではなかった
教育を享受した者は社会に還元すべき ほか)
第3章 いい官僚、わるい官僚(採用面接で「つまんねえ人生だな」
外務省不採用で大泣き ほか)
第4章 いい弁護士、わるい弁護士(専門職はミッション
お客様の存在を初めて知る ほか)
第5章 いいエリート、わるいエリート(瑕疵がない鋼鉄のエリート
平等社会がエリートを叩く ほか)
「今日はヒョウ柄を着る日」星野博美
著者の、最新エッセイ。
P24-25
女子校出身の私は、女性の言動には非常に神経質なところがある。十代の頃、同級生たちは、あとで引きずり下ろすために相手を持ち上げたり、散々叩きのめしておいて救いの手を差し伸べ、恩を売ったりと、手のこんだ距離の構築を図っていた。女性の発する、真意の見えない曖昧な発言を真に受けると、十中八九、捕食者の餌食となる運命が待ち受けている。
著者は、理屈っぽく、面倒な性格である。
身近な存在だと、しんどいかもしれない。
だが、作家だと、それが利点となる。
こだわりのある変人万歳、である。
今回、少し内容が薄味になったような気がする。
(歳をとって一般の人に近づいたのだろうか?)
いや、のりが死んでしまったからかもしれない。
活力の源である猫が、これで一匹も居なくなってしまったから。
この悲しみを乗り越え、さらなる活躍をされるよう期待する。
P165
世の中には、猫のいる人間と、猫のいない人間の二種類しかいない。
のりが亡くなって、はや一年半になる。私はとうとう、猫のいない人間になってしまった。
【ネット上の紹介】
朝から賑わう戸越銀座商店街。そこでおばあちゃんたちがまとう「ヒョウ柄」の存在に気づいた著者は、人間界と動物界の相似性に敏感になる。そして若い世代‐高齢者、記憶‐真実、現世‐あの世といった境界を行き来しはじめ…。星野博美ワールドの「その先」を指し示す、あやしくてせつない、ユーモアあふれる豊かな異界の淵へ、ようこそ!新境地をひらく最新エッセイ集!
「遠縁の女」青山文平
次の3編が収録されている。
「機織る武家」
「沼尻新田」
「遠縁の女」
地方の侍の、さらに末端の武士たち。
その生活と心情がリアルに再現される。
P37
もっと商人や職人が増える。そうやって増えつづけて、やがて商人や職人の姿が明らかに百姓のそれを上回ったとき、村は町になる。
P156
好きなことが得意とは限らない。
逆に、得意なことが好きとも限らない。
(好きなことが、得意だったら幸せでしょうね。趣味と仕事が一致するようなもので、なかなか稀有なことだ。同様に、好きなタイプの異性が居たとして、それが自分に合うかと言うと、どうだろう?…それも稀有な事だと思う。それに、好みというのは微妙に移り変わっていく。世の中には、歳をとっても一緒に旅行したりする仲良し老夫婦が居るが、絶滅危惧種に認定し保護してあげたい)
P231
「人を、祭り上げるなよ。人を祭壇の上に上げて信じ込むのは、自分の判断を止めて、楽をしたいからだ。(後略)」
【おまけ】
「鬼はもとより」「つまをめとらば」「半席」「励み場」、そして本作「遠縁の女」と読み進んできた。
最初から経済を描くのが巧かったが、最近特に、微妙な心理描写も加わって、鬼に金棒状態。
初期の作品で未読のものがあるので、今のうちに溝を埋めておこうか、と思っている。
【ネット上の紹介】
『機織る武家』血の繋がらない三人が身を寄せ合う、二十俵二人扶持の武家一家。生活のため、後妻の縫は機織りを再開する。『沼尻新田』新田開発を持ちかけられ当惑する三十二歳当主。実地検分に訪れた現地のクロマツ林で、美しい女に出会う。『遠縁の女』寛政の世、浮世離れした剣の修行に出た武家。五年ぶりに帰国した彼を待っていたのは、女の仕掛ける謎―。直木賞受賞作「つまをめとらば」に続く清冽な世界。傑作武家小説集。
「希望荘」宮部みゆき
「杉村三郎シリーズ」の第4弾
「誰か」
「名もなき毒」
「ペテロの葬列」
そして、本作「希望荘」。
キャラクター造形、ストーリーテリング、謎解き、と三拍子揃った面白さ。
円熟の技を感じる。
次の4編が収録されている。
「聖域」
「希望荘」
「砂男」
「二重身」
特に良かったのが、「砂男」。
サイコパスの造形がリアルで、怖くなってくる。
小出しにする演出が巧い。
P61
「ベルは鐘、ブックはただの本じゃなしに〈ザ・ブック〉つまり聖書のことで、キャンドルは蝋燭。その三つは確か、魔女を象徴するアイテムだよ」
P243
「女性は、親友には彼氏をお披露目せずにいられないイキモノのようですからね」
(中略)
「大事な彼氏ならちゃんとしまっておけ、と言いたいですね」
P385
恥じ入るのをやめ、はにかんだ。この二つの差異は微妙だが、その違いは誰が見たってわかる。
【おまけ】
シリーズ4作品、どれもすぐれた出来栄え。
他の作家と比べると、どれも平均点以上。
でも、同じシリーズの中では、優劣がある。
「誰か」は、平均点の少し上くらい。
「名もなき毒」は、優れている。宮部みゆき作品の中でもトップクラスの仕上がり。
「ペテロの葬列」で、少し落ちる。前作が良すぎたので、期待しすぎたのもある。
そして、本作「希望荘」。これで盛り返した。満足、満足、ってところ。
【ネット上の紹介】
家族と仕事を失った杉村三郎は、東京都北区に私立探偵事務所を開業する。ある日、亡き父・武藤寛二が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を調査してほしいという依頼が舞い込む。依頼人の相沢幸司によれば、父は母の不倫による離婚後、息子と再会するまで30年の空白があった。果たして、武藤は人殺しだったのか。35年前の殺人事件の関係者を調べていくと、昨年発生した女性殺害事件を解決するカギが隠されていた!?(表題作「希望荘」)。「聖域」「希望荘」「砂男」「二重身」…私立探偵・杉村三郎が4つの難事件に挑む!!
「京の縁結び縁見屋の娘」三好昌子
人気作品を読んだ。
『このミステリーがすごい!』大賞・優秀賞受賞作品。
江戸時代を舞台にしたファンタジー。
P174
「この世の万物には形がある。だが、天地の神霊には形となる身体がない。だから人の身体に宿ることで、この世に在ろうとする。それを『鬼霊(きみ)』というのです」
P314
「(前略)人に深く関われば、それだけ力を失うてしまうんや。せやから天狗は山に棲む。鬼霊の源やさかいな」
【誤植】
珍しい誤植を見つけた。
「。」が2つ続いている。
長い読書生活で、初めてかも。
【おまけ】
ヒロインと天狗に、もう少し魅力があったらなぁ。
微妙に、私の趣味とズレた。(残念)
【ネット上の紹介】
「縁見屋の娘は祟りつき。男児を産まず二十六歳で死ぬ」―江戸時代、京で口入業を営む「縁見屋」の一人娘のお輪は、母、祖母、曾祖母がみな二十六歳で亡くなったという「悪縁」を知り、自らの行く末を案じる。謎めく修行者・帰燕は、秘術を用いて悪縁を祓えるというが…。縁見屋の歴史と四代にわたる呪縛、そして帰燕の正体。息を呑む真実がすべてを繋ぎ、やがて京全土を巻き込んでいく。
「よりぬき陰陽師」夢枕獏
人気シリーズ100作記念、ベスト集。
P123
「ゆくか」
「うむ」
「ゆこう」
「ゆこう」
そういうことになった。
(このゆるい感じがいい。それに繰り返しが多い…これって、小津映画?安倍晴明・源博雅が、笠智衆と原節子?)
東雅夫さんの言葉
P220
それまで、一部の国文学や歴史・民俗学の研究者にしか知られていないに等しかった「陰陽師」という存在に血肉を与え、その玄妙なる世界観を物語へと結実させ、幅広い読者に王朝期の闇の魅惑を知らしめた功績は多大である。
【ネット上の紹介】
大人気シリーズ100作記念アンソロジー! 日本人の心を鷲掴みにする安倍晴明・源博雅コンビの物語から著名人愛読者(池井戸潤、白石加代子、東雅夫、村上豊、渡辺真理)が選ぶベスト・オブ・ベスト。豪華対談、エッセイも収録! ■収録作品 ・「瘤取り晴明」 ・「月突法師」 ・「首」 ・「桃薗の柱の穴より児の手の人を招くこと」 ・「銅酒を飲む女」 ■対談 夢枕獏×池井戸潤「物語が動き始める瞬間」 「陰陽師」を愛読する池井戸さんをお招きし、大人気作家初顔合わせ! 創作法から趣味の釣りまで、至福のおしゃべりが続く。■推薦者の談話(白石加代子、渡辺真理、村上豊)、エッセイ(東雅夫) ■著者あとがき ■「陰陽師」作品リスト