「歴史からの伝言」加藤陽子/佐藤優/福田和也
さて、この3人の共通点は?
…全員1960年生まれ!
7つのテーマに分けた鼎談が展開する。
P61
これは深読みかもしれませんが、昭和天皇の、すべての罪を一身に、というのは完全にキリストですよね。しかもカトリック的です。
P81
岸は、橋下や鈴木など、金が目当てか、情報を与えてくれるのか判然としないような人は近づけなかったであろう理念型で、佐藤はやはり状況対応型ですね。
P83
石原慎太郎さんは、栄作には、岸に対するコンプレックスがすごくあったと言ってました。
TPPについて
P174
これは自由貿易の促進を目的とするWTOシステムの例外を要求していくわけで、本質において関税同盟です。具体的に言えば、アメリカと日本から中国を排除するための同盟ですね。普遍的なWTOシステムのなかで例外をつくると。
【感想】
この3人はすごすぎる。誰か押さえる人が必要。
でないと、素人にはついて行けない。
【ネット上の紹介】
東アジア共同体構想、尾崎秀実、戦争責任、笠原和夫、安保、沖縄問題、東日本大震災、原敬、TPP、平沼騏一郎…。注目の論客たちによる、日本近現代史をめぐる必読の討議録。
第1章 尾崎秀実から再考する「東亜協同体」の可能性
第2章 皇室の母性と天皇の超越性
第3章 日米安保と沖縄の五十年
第4章 ポスト安保の思想と運動
第5章 危機下の宰相―原敬と“おとな”の政治
第6章 平沼騏一郎―「複雑怪奇」な機会主義者
第7章 排外主義はどこにあるか?―幕末、言語、TPP
正田マンが「比叡&日之影ツアー」 から帰ってきた。
10日ほど行ってきたそうだ。
面白い課題が多く、質の高いエリア、とのこと。
もし、大阪近郊にあったら大人気エリアでしょうね。
(あの『ホライゾン』(五段+/V15)があるところだ)
正田マンのブログで動画が紹介されている。
見てみて。
→https://www.youtube.com/watch?v=YLica_hwIKk
→比叡ツアーを振り返って 2017/03/28
「ちょっと早めの老い支度」岸本葉子
気になるテーマなので読んでみた。
特に、畠中雅子さんとの「住まいとお金」に関する対談が良かった。
どのような高齢者住宅を選ぶか?
P162
暮らしには、その人の何かしらのこだわりがあるものなんです。生活のパターンを崩さなくてもいいかという点を考えておいた方がいいですね。
P166
老後は心配ですが、まず目先の生活を充実させないと。老後だけがよくてもしょうがないですよ。
P171
エンディングノートは二冊用意するといいですね。緊急時の誰にでも見てもらいたいものと、資産関係のものと。奥にしまい込んでしまうと、お葬式が終わったあとに発見されるケースもあって、お葬式によんでほしくなかった人が、たくさん来ていたということもあるんですよ。
【ネット上の】
老後は気になる。でも、身辺整理にはまだ早い。そんな女性たちに送る等身大エッセイ。「モノと収納」「住まいと家事」「健康と食」「人付き合いと防犯」「お金と遺言」などをテーマに、今のうちからできる工夫や、つけておきたい生活習慣が、著者の実体験を通してリアルにまたコミカルに描かれる。対馬ルリ子さんとの「健康」のこと、畠中雅子さんとの「住まいとお金」についての対談も収録。いますぐ「老い支度」を始めたくなる。
1章 モノと収納の話
2章 住まいと家事の話
3章 健康と食の話
4章 人付き合いと防犯の話
5章 お金と遺言の話
6章 これからの話
「探偵は女手ひとつ」深町秋生
異色ハードボイルド探偵もの。
なぜ異色かと言うと、過疎の山形が舞台だから。
セリフも全編山形弁が駆使される。
それがとてもいい感じ。
深町秋生さんと言うと、高濃度のバイオレンスが特徴だが、
本作品では押さえている。
著者は、こういう地方を舞台にした日常に近い、探偵作品は初めてかと思う。
そこに住む人々の生活が感じられる。
例えば雪かきの状態で、独居老人が住んでいるとか…。
このような判断は、大阪に住んでいたら別世界の出来事で、言われないと分からない。
「アウトバーン」とは全く異なるが、とてもいい味を出していて、私は好みである。
(欲を言えば、シングルマザーの生活感をもう少し出してもよかったか、と)
【参考リンク】
深町秋生『探偵は女手ひとつ』 (03/21)
「幸せになっちゃ、おしまい」平安寿子
2007.3.8号-2008.5.22号『Hanako』に連載されたエッセイ。
P11
昔、こんな歌があった。
「若いという字は、苦しい字に似ているわ」
P15
自分だけがいい目を見たいと願ったら、いつまで経っても満たされない。なぜなら、望みは叶えられた途端、望みでなくなるから。幸せも、プーキーが言うように、ピークを過ぎたら下り坂と決まっているものだから。(中略)
幸せになっちゃ、おしまいよ。
P100
人間関係のコメディを書くというのが、私のメインテーマだ。
P165
学校とか職場とか、人間の集団は「個性を大事に」とか言っておきながら、「協調性」をもっとも要求する。自意識と協調性は相反するもので、そのため大人になればなるほど、みんな孤独になってしまうのだ。
【おまけ】
いつになく、「攻撃的」な文章、という印象を受けた。
何かあったのでしょうか。
【ネット上の紹介】
おとぎ話の決まり文句はみんな嘘っぱち。ほんとうの人生は、「めでたしめでたし」では終わらない。今日も頑張る女子たちに捧ぐ本音勝負の痛快エッセイ。
【目次】
幸せになっちゃ、おしまい(幸せになっちゃ、おしまい
心配しないで、ベイビー ほか)
イギリスのばあさんを目指せ(元祖エレガンスの呪縛
素敵なオペラ座ライフ ほか)
王子さまはお好き?(世界はひとりぼっちで一杯
片思いは報われるか? ほか)
頑張れ、わたし(来るぞ来るぞ。更年期が来るぞ
横もれ問題 ほか)
「いとの森の家」東直子
小学4年の加奈子は父の転勤により、都会から田舎の小学校に転校になる。
そこで出会った人々とエピソードが綴られている。
特に、おハルさんという、お婆さんは重要。
死刑囚の慰問を続けていて、「死刑囚の母」と呼ばれる白石ハルさんんがモデルとなっている。
自らの体験を元に書かれた作品で、舞台は福岡の糸島が舞台。
P10
名前を書き終わった先生が振り返ってふたたびこちらを向いたとき、教室はしずまりかえった。私はごくりと唾をのみこんだ。
「今日からこのクラスで一緒に勉強をすることになりました、山田加奈子さんです」
P139
布団たたみ雑巾しぼり別れとす
(中略)
「そうそう。死刑囚に、俳句や短歌の先生が教えに来てくれて、作るようになる人もいるのよ。この俳句は、昨日、この人が処刑の直前に書き残した俳句なの」
【参考リンク】
東直子さんインタビュー2015.4.7 (ブックショート)
直久(なおきゅう) (公式サイト)
【ネット上の紹介】
父の突然の思いつきで、小さな村に引っ越してきた加奈子は都会とのギャップにとまどいながらも、自然の恵みに満ちた田舎の暮らしに魅了されていく。そして、森で出会った笑顔の素敵なおばあさん・おハルさんと過ごす時間の中で、命の重みや死について、生きることについて考えはじめる―。著者初の自伝的小説。第31回坪田譲治文学賞受賞作。
中野京子と読み解く運命の絵」中野京子
絵画エッセイでは定評のある著者。
「怖い絵」シリーズが一段落して、今度は「運命の絵」シリーズ発動。
絵の蘊蓄だけでなく、背景となる歴史、国情も説明される。
読んでいて、「へえ、そうなのか」と感心しながら読んだ。
クリノリンについて
P114
それにしても、ふんわりと軽やかなスカートの下に無粋な鳥籠があるのを男性はどう思っていたのだろう?(中略)同時代の老美学教授が真剣に怒り、新聞に批判文を書いている、クリノリンは場所をとるし、男に挑戦しているので「厚かましい」。そして「人間の体型に間違った概念を与える」と。
ファッションの流行に当事者以外が文句を言っても始まらない。なぜならどんな不便で傍迷惑で馬鹿馬鹿しくて滑稽でも、いったんそれがお洒落と認識されたら飽きるまで止まらないのが人間なのだ。男性だってあの悪趣味極まるコドピース(股間用プロテクター)を、これみよがしに、しかも二世紀にわたって愛用し続けたではないか。
【ネット上の紹介】
絵画を鑑賞する際にただ眺めるだけでなく、描かれた背景や画家の思惑などを知った上で読み解けば、面白さは何倍にも増す――。その楽しさを実感させてくれる絵画エッセイの名手、中野京子さんの新シリーズ誕生です。テーマは“運命の絵”。命がけの恋に落ちた若者たち、歴史に名を残す英雄たちの葛藤、栄華を極めた者たちのその後、岐路に立つ人々……、運命の瞬間を描いた名画や、画家の人生を変えた一枚を読み解いていきます。描かれた人物たちのドラマや画家の境遇を知ることで、絵画への理解がぐんと深まり、興味も広がります。人間への鋭い観察力に裏づけられたドキッとする指摘や、ユーモアあふれる表現などの中野節はもちろん、健在。読むこと、観ることの魅力を強く感じる一冊です。
【目次】
ローマ帝国の栄光と邪悪―ジェローム『差し下ろされた親指』
擬人化された「運命」―ベッリーニ『好機』/デューラー『ネメシス』
一度見たら忘れない―ムンク『叫び』
夜明けの皇帝―ダヴィッド『書斎のナポレオン一世』
謎々を解いた先に―モロー『オイディプスとスフィンクス』/シュトゥック『スフィンクスの接吻』
アレクサンダー大王、かく戦えり―アルトドルファー『アレクサンドロスの戦い』
風景画の誕生―ホッベマ『ミッデルハルニスの並木道』
事故か、宿命か―ブローネル『自画像』/同『魅惑』
クリノリンの女王―ヴィンターハルター『皇后ウジェニー』
ドイツ帝国誕生への道―メンツェル『ヴィルヘルム一世の戦線への出発』
愛する時と死せる時―アングル『パオロとフランチェスカ』/シェーフェル『パオロとフランチェスカ』
ロココ式没落過程―ホガース『当世風結婚』1~4
故国で行き倒れになるよりは―ブラウン『イギリスの見納め』
少年は森に消えた―ウォーターハウス『ヒュラスとニンフ』
聖痕の瞬間―マックス『アンナ・カタリナ・エンメリヒ』/ジョット『聖フランチェスコ』
ヴェスヴィオ火山、大噴火―ブリューロフ『ポンペイ最後の日』/ショパン『ポンペイ最後の日』
感じるだけではわからない―ルノワール『シャルパンティエ夫人と子どもたち』
「老いと収納」群ようこ
私にぴったりのタイトル。
溜まっている不要物を整理したいと思っている。
でも、分別すること自体、手間と時間が掛かる。
取り掛かるには、きっかけと気合いもいる。
そんな訳で、保留状態。
P34
「物を減らすんだったら、三割とか五割ってだめね。七割くらい捨てないと、すっきりしないみたい」
著者が、物を捨てる指針にしているのは、次の御三方。
小笠原洋子「ケチじょうず」
ドミニック・ローホー
内澤旬子「捨てる女」
P43
(前略)最近、もっと上をいく、稲垣えみ子さんが登場してきた。(中略)
東日本大震災がきっかけになって、なるべく電気を使わない暮らしを目指し、とうとう冷蔵庫を処分し、会社もやめてしまった。私は会社はやめたが、冷蔵庫はさすがに処分できなかった。
(私も稲垣えみ子さんの本を読んだが、とうていマネが出来ない、と感じた)
【参考リンク】
「魂の退社 会社を辞めるということ。」稲垣えみ子
【書籍について】
20年くらい前、3割ほど処分した。
それでも、また溜まってしまう。
最近は図書館で8割くらい借りて読んでいるが、残り2割で溜まってくる。
(図書館に入らない本、入るのが待てない本、手元に置いておきたい本、ってのが購入対象)
目標は本棚に入りきる冊数に押さえること、理想は1000冊に絞り込むこと。
最終目標は百冊くらい…無理か?
成仏する前に達成したい。
【ネット上の紹介】
早く捨てなくっちゃ。長年、部屋の中にたまった物を眺め、ため息をついてきた。ところがマンションの大規模修繕工事をきっかけに、毎日少しずつ物を処分する日々が始まった。使い途がないレーザーディスクプレーヤー、重すぎる外国製の掃除機、似合わなくなったコート。老いを考えれば、今処分したほうがいいものは山のようにある。どうやったら捨てられるのか?限られた収納、溢れ出る物。「捨てる」闘いを描いた奮戦記!
【目次】
やっと捨てた…
こんなふうに暮らしたい
衣類
肌着
靴、バッグ
キッチン
化粧品、美容
着物関係
本
掃除関係
家具
「ザ・ファブル」(9)南勝久
シリーズ9冊目。
新たな章「ウツボ編」が始まった。
謎の悪党集団が出現。
いずれファブルとの対決に至ると思うが、
どう展開して、どこでぶつかるのか、先は読めない。
ミサキはどうかかわるのか?「妹」のヨウコは?
ミサキは髪を切った…何か思うところがあったのだろうか
新たなキャラクター、ヒナコ…今後の展開に深く関わってくるのだろうか?
【ネット上の紹介】
ヘビを食らい、クマをも倒した山籠もりも終わり、弟子のクロちゃんと共に、晴れて下山したファブル兄さん。一方、ペラペラナンパ師のユウキ君を、テキーラ祭りでぶっ潰したヨウコ姉さんも、久しぶりにハッピーな一夜を過ごした模様。ところが、ファブルらの暮らす大阪は太平市の一角に、謎の怪悪党が出現! 表向きは興信所を営むその男が、過保護の若者を標的に、非道な殺しを開始した。漆黒の大新章『ウツボ編』激始動!!
「死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの」堀川惠子
「永山基準」というものがある。
死刑の判断で、スタンダードとなるそうだ。
では、それは何なのか?
永山事件とは、どのような事件か?
膨大な資料と関係者からの取材により、掘り起こしていく。
P242
憎むべき犯人が、死刑になって処刑されることで癒やされる遺族も確かにいるだろう。他方、悲しみの分母に比べるとほんの僅かかもしれないが、犯人の真の更生が、遺族の慰藉に繋がる面もあることは否定できないのではないだろうか。
「犯人に償ってもらいたい」という言葉。その償いの方法は、「死」であるべきなのか、「更生」であるべきなのか――。深く、重い問いかけである。
「永山基準」とは何か?…最高裁判決の以下の部分を指している。
P349
犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害者感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき……極刑がやむをえないと認められる場合には、死刑の選択も許されるものといわなければならない。
P393
過ちを犯した者を非難することはたやすい。しかし、過ちを犯した者に向き合うことは難しい。その先に、すべての人々を満足させる明確な答えが見つからないからだ。
あとがきより
P396
人は、人を裁けるのか。本書を書きあげた今も、私は明言することを躊躇します。この大きな問いの入り口に、やっと立ったというのが偽らざる実感です。
第32回講談社ノンフィクション賞受賞作。
受賞前は専門書コーナーに置かれて、殆ど売れなかったそうだ。
ところが、受賞後一般の人が手にとって読んでくれるようになった。
講談社ノンフィクション賞の選考委員の方達は、さすがプロである。
膨大な作品群から、埋もれていた宝石を見つけ出したのだ。
著者も文庫本あとがきで次のように書かれている。
――「書く」という世界で私自身が生きていく道を拓いてくれました。
こうして、「教誨師」「原爆供養塔」へと繋がっていくのである。
【ネット上の紹介】
「永山基準」として名を留める、十九歳の連続射殺犯・永山則夫。本書は、彼が遺した一万五千通に上る膨大な書簡から、その凄惨な生いたちと、獄中結婚した妻との出会いにより、はじめて「生きたい」と願うようになる心の軌跡を浮かび上がらせる。永山基準の虚構を暴く、圧巻の講談社ノンフィクション賞受賞作。
第1章 生いたちから事件まで
第2章 一審「死刑」
第3章 二審「無期懲役」
第4章 再び、「死刑」
第5章 「永山基準」とは何か