【ぼちぼちクライミング&読書】

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「なぜノンフィクション作家はお化けが視えるのか」工藤美代子

2013年01月31日 22時05分32秒 | 読書(怪談/奇譚)

「なぜノンフィクション作家はお化けが視えるのか」工藤美代子

先日読んだ「もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら」の姉妹編。
ただし、こちらの方が早く出版された。
単行本発行時のタイトルは「日々是怪談」。
文庫化にあたり、「なぜノンフィクション作家はお化けが視えるのか」と改題され、
著者あとがき+岩井志麻子さんとの対談が追加された。
岩井志麻子さんも霊感体質なので、次々にエピソードが繰り出されるのがすごいし、
エピソードに即エピソードで対応する著者もすごすぎ(怖すぎ!)

内容は、先日読んだ「もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら」と同様、
盛りだくさんのエピソードが淡々と語られる。
いくつかエピソードが重複しているが、さほど気にならない。(「三島の首」)
文庫になって、入手しやすくなった。
ネットを見ていると、著者の他の作品より、コメントが圧倒的に多い。
売れていて、面白く感じた方も多い、ということでしょう。

PS
それにしても、この著者はすごい。
幽霊見るし、火の玉見るし、生霊飛ばすし、UFO見るし。
感度が良すぎる、ってのも考えものだ。
(それで印税が入るから、まっ、いっか?)

【ネット上の紹介】
霊感”に疎いはずだけれど、どうも私はお化けに好かれているらしい!?部屋の片隅に感じる人の気配、背後をスーッと横切っていく亡くなったはずのあの人。ノンフィクション作家の身の回りで起こる不思議で、ひんやり、じんわり怖い、24話。最恐エピソードと、作家・岩井志麻子氏との巻末対談を新たに追加収録。
[目次]
中国娘の掛け軸;
カーキ色の涙;
「ママ」と呼ぶ声が;
夫婦の秘めごと;
誰かの手が;
チャイムが鳴った;
あなたを信じるわ;
私に似た人;
里帰り;
じゃあ、死んだら;
アソール公爵の館で;
淋しい人たち;
行ってはいけない土地;
人肌が恋しくて;
聞き取れなかった言葉;
夢の出口;
三島の首;
魔性の人形;
虫の知らせ;
肉親の愛情;
あるひ突然;
酒場の約束;
背中が語る;
そっくりな顔

阿武山▲281.1m

2013年01月28日 22時35分59秒 | 登山&アウトドア(関西)

久しぶりに、阿武山に登ってきた。
安威川沿いを自転車でアプローチ45分。
登山口から1時間弱で登って降りてこられる低い山。
それでも、山に登ると気分がいい。








「もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら」工藤美代子

2013年01月25日 23時15分05秒 | 読書(怪談/奇譚)

「もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら」工藤美代子

世の中には霊感の強い方がいる。
たまたまその人が「ノンフィクション作家」であった。
数々の著者自身の「体験」が綴られている。
ノンフィクション作家なので、淡々と事実だけを書かれている。
怖がらせようとしてないので、あとからじわ~と怖くなってくる。
そんな本である。

著者は硬派の保守派作家。
昭和史に造詣が深く、政治家評伝、皇室を扱った作品を多数著されている。
それ以外に目をひくのが、ラフカディオ・ハーン3部作。
当然、工藤美代子さんも「怪談」の構成と文章を意識している、と思う。
だから、魅力的で面白いのである。
「三島由紀夫の首」は興味深いし、
「坂の途中の家」なんて怖いのなんのって。
思い出して、なんども怖くなってくる。
怖い話が好きな方には、お薦め。



【ネット上の紹介】
ノンフィクションの第一人者が自らの不思議体験を綴る、怪談実話エッセイ。怪談専門誌『幽』連載「日々続々怪談」ほかに書き下ろしを加え待望の単行本化。衝撃の文豪怪談実話「三島由紀夫の首」収録。
[目次]
病院にて;
その男の顔;
通じる思い;三島由紀夫の首;
知らない住人;
悪魔の木;
兄とコビー;
謎の笛の音;
元夫の真っ白な家;
坂の途中の家;
バリ島の黒魔術;
霊感DNA;
母からの電話;
「赤い」人たち;
火の玉は何色か?


「あい 永遠に在り」高田郁

2013年01月23日 22時03分10秒 | 読書(小説/日本)

「あい 永遠に在り」高田郁

高田郁さん新刊。
高田郁さんと言えば、『みをつくし料理帖』シリーズ、とてもおもしろい。
それ以外でも「銀二貫」「出世花」も良かった。
いずれも、読んでいて大きな感情のうねりを体験でき、物語の醍醐味を得られる。
ストーリーの展開、キャラクター設定も巧み。

今回は史実に基づいた、歴史小説。
制約を受けるため、自由な展開がない分、過去の作品と比べて感情の振幅は少ない。
その分、重く静かな展開となる。
(『みをつくし料理帖』のような怒濤の展開は無い。為念)
幕末から明治にかけて、実在した医師・関寛斎を取り上げている。
関寛斎は、徳冨蘆花氏や司馬遼太郎氏を始め多くの作家によって題材とされた人物。
著者の高田郁さんは、妻・あいの視点から描いている。
あとがきを読むと、資料がほとんどなく苦労したようで、
「婆はわしより偉かった」と、関寛斎の言葉が残るのみ。
ここから、著者は物語をふくらませ構築していった。

他の作品に比べて、地味な内容だけど、
歴史の重さが感じられる内容となっている。

【ネット上の紹介】
齢73歳にして、北海道開拓を志した医師・関寛斎。藩医師、戊辰戦争における野戦病院での功績など、これまでの地位や名誉を捨ててまでも彼は、北の大地を目指した。そんな夫を傍らで支え続けた妻・あい。幕末から明治へと激動の時代を生き、波乱の生涯を送ったふたりの育んだ愛のかたちとは―。妻・あいの視点から描く、歴史上に実在した知られざる傑物の姿とは―。愛することの意味を問う感動の物語。


クライミングとCM

2013年01月20日 10時59分29秒 | クライミング(一般)

クライミングも一般に知られるようになってきた。
クライミング人口も増えている、と聞く。
一般企業CMでもクライミング映像が登場するようになった。
イメージとしてどうなんでしょう?(10年前なら考えもしなかった)
一般認知度が高くなった、と言うことでしょうか?
例えば、次のCM映像。

企業広告活動 - キョーリン製薬ホールディングス(30秒、60秒、120秒・・・3バージョン)
ロクスノ(ROCK & SNOW)#57(P41)でも取り上げられた、白石阿島ちゃん。
なお、最新号ロクスノ#58(P55)でも、ケンタッキー、レッドリバーゴージでの記録が掲載されている。
次のとおり。
Omaha Beach(14a)---OS
God's Own Stone(14a)---3回目RP
Southern Smoke(14c)---4回目RP

CM映像は、ボルダリングだけでなく、けっこうな高さのフリーソロ映像もある。
おそらく5.9か、5.10くらい?
実力からしたら、なんら問題ないでしょうが、自然の岩だから、欠けたりのアクシデントはあり得る。(歳をとったせいか、老婆心として、危惧と不安を感じた)
もし、阿島ちゃんが大人だったら、違った感想を持ったかも・・・素直に、かっこいい!、と。

もう一つ紹介する。
GoogleのCMに野口啓代さんが起用されている。
(ATC-yamaさんに教えてもらった)
Googleモバイル「さがそう。」CM
クライミング・ジムで登っている映像。(場所は、平山ユージさんの「Base Camp」)

【おまけ紹介】
①フジテレビ系列Asian Muse 1月24日(木)22:54~23:00(関東圏のみ)
~世界を魅了する日本の美神たち~野口啓代さん出演。
②日本テレビ1月28日(月)
「世界まる見え!テレビ特捜部!」ゲストで野口啓代さん出演。(こっちは関西圏OK)
・・・以上、Base Campブログ情報による。→Climb Park ベースキャンプ


「あぽやん」「恋する空港」新野剛志

2013年01月19日 12時40分44秒 | 読書(小説/日本)


以前紹介した、空港を舞台にした「あぽやん」「恋する空港」がドラマ化された。
次のとおり。

【参考リンク】
http://www.tbs.co.jp/apoyan/

「恋する空港」新野剛志


第148回芥川賞・直木賞

2013年01月16日 22時56分45秒 | 読書(小説/日本)

第148回芥川賞・直木賞が決定。
次のとおり。
●直木賞受賞
『等伯』安部龍太郎
『何者』朝井リョウ
  

芥川賞受賞
『abさんご』黒田夏子
クリックすると拡大画像が見られます


「のろのろ歩け」中島京子

2013年01月12日 10時46分29秒 | 読書(小説/日本)

「のろのろ歩け」中島京子

過去の作品と比べて、今回は趣向が違う。
全て海外が舞台。

「北京の春の白い服」・・・北京・・・日本人女性編集者が北京でファッション雑誌を立ち上げる話
「時間の向こうの一週間」・・・上海・・・夫の海外赴任にともない、アパートを探す話
「天燈幸福」・・・・台湾・・・母の3人の「知り合い」を訪ねて歩く話

私は、どの短編も好みであった。

P155、ルー・ビンと亜矢子の会話
「私は彼と結婚生活を続けることに耐えられませんでした。離婚の理由は感情の爆発です」
エモーション・エクスプロージョン、とルー・ビンは言った。
「中国では、離婚理由で一番多いのがこれです。このように書きます」
ルー・ビンはベビーカーのポケットからメモ用紙とペンを取り出し、白い紙にこのように漢字で書いた。
〈感情破裂。婚姻法32条〉
(日本で一番多い「離婚理由」は何だろう?「性格不一致」か?byたきやん)

P156-157
「雲南は天国のような場所ですか?」
「そうですね、たぶん、ルーザーズ・ヘブンかもしれません」
「ルーザーズ・ヘブン?」
ルー・ビンはまたメモ用紙を取り出して、こんどはこう書いてみせた。
〈失敗者的天堂〉
失敗者的天堂?ルーザーズ・ヘブン?負け犬の楽園?(中略)
「悪い意味ではありません。(中略)私たちはルーザーを、もっと一般的な意味で使います。いまは上海でも北京でもどこでも、みんな成功を目指さなくてはならない。とても疲れます。都会では誰もが、成功者か失敗者か、どちらかになる。もうそうれは疲れるから嫌です。そういうときに、わたしはルーザーになりたい、と言うのです。(後略)」

タイトルについて
「慢慢走(マンマン・ゾウ)」からきている。挨拶の言葉。
P69-70
「ザイチェンと、どう違うの?」
「ザイチェンは、シー・ユー・アゲイン。マンマン・ゾウは、そうだな、テイク・ケアかな。直訳するとのろのろ歩け、だからね。のんびり行けや、くらいの感じかな」
慢慢走。のんびり行けや――。

【参考リンク】・・・離婚原因ランキング
やっぱり「性格不一致」がランキング1位のようです。
勢いで結婚しても、一緒に生活して「こんなはずではなかった!」、と・・・。
様々な言葉に出来ない感情が込められている、と・・・。
離婚の原因ランキング - 女性弁護士ナビ

【ネット上の紹介】
『北京の春の白い服』―1999年、中国初のファッション誌創刊に向けて派遣され北京で奔走する夏美。『時間の向こうの一週間』―2012年の上海、赴任したばかりで多忙な夫の代わりに家探しを引き受けた亜矢子。『天燈幸福』―「台湾に三人おじさんがいるのよ」という亡き母の言葉を手がかりに旅に出た美雨。時間も、距離も越えて、新しい扉をひらく彼女たちの物語。

【他の中島京子作品】
他にも読むなら、このあたりお薦め


いつか陽のあたる場所で

2013年01月10日 07時54分45秒 | TV/ドラマ

乃南アサさんの「いつか陽のあたる場所で」がNHKドラマ化された。
(原作より少し湿っぽい?)

【TVリンク】
いつか陽のあたる場所で | NHK

【参考リンク】
「いつか陽のあたる場所で」乃南アサ
「すれ違う背中を」乃南アサ


謹賀新年

2013年01月08日 22時07分48秒 | 身辺雑記

皆さん明けましておめでとうございます。
事情により今年は出かけず。
30年ぶりに自宅正月、です。
その代わり、読書時間は確保できた。
(「ソロモンの偽証」、ホント読み応えがった)


「ソロモンの偽証」宮部みゆき

2013年01月06日 10時34分31秒 | 読書(小説/日本)
「ソロモンの偽証」宮部みゆき

宮部みゆきさん、久々の現代ミステリ、それも大作。

ソロモンの偽証 第1部・・・「事件」、741ページ
ソロモンの偽証 第2部・・・「決意」、715ページ
ソロモンの偽証 第3部・・・「法廷」、722ページ

宮部みゆきさんと言えば、傑作「模倣犯」(2001年)を思い出す。
その後、私は、「誰か」(2003年)、「名もなき毒」(2006年)を読んだ。
(『誰か』より『名もなき毒』の方がずっとおもしろい。「ひがみ」「悪意」の描き方、キャラクター造形が絶妙だから)
そして、今回の「ソロモンの偽証」である。
学校を舞台にした、現代ミステリ。
物語は、1990年12月24日から始まり、1991年8月20日で終わる。
「模倣犯」では、犯人が少年から大人になるまでを描き、犯人側と追い詰める側の両面から描いた。
「ソロモンの偽証」では期間が短い。
けれど、約50人の登場人物・・・中学生を中心に、その両親、教師集団、刑事、マスコミの人間を描き、その組織、商店街、地域、そしてバブルがはじける寸前の「時代」を描いている。見事である。

12月24日、校舎屋上から落ちた少年は自殺なのか、他殺なのか?
第3部・法廷シーンが圧巻だけど、そこに至る過程に1部+2部(約1450ページを費やしている)。
その過程だけでも、充分におもしろく、すばらしい内容だ。
(第2部の後半あたりから、「伏線」が見えて、「タネ」が分かるように読者に親切(すぎる)に書いてくれているのは、意見が分かれるかもしれない)
それでも、充分におもしろいし、キャラクターも魅力的である。
いくつか文章を紹介する。(以下、「ネタバレ」ありなので、未読の方注意)

第1部、P374
 同級生や級友だからといって、一切の隔てがないわけではない。現実は逆だ。成績。容姿。運動能力。適切な場面でみんなにウケることを言えるかどうか。性格の明るさと暗さ。ありとあらゆる物差しで、生徒たちは互いを計り、計られる。そして付き合う相手を決める。先生たちは、人間は平等につくられているというけれど、そんなのは嘘だ。大人の社会に区別や格差があるように、学校のなかにもそれはある。子供は誰でもそれを知っている。理解している。認めている。
 そうでなければ、生きていかれない。

第1部、P385
自己中心的だということは共通しているが、この年頃の子供はみんなそうだ。そうでなかったらかえっておかしいくらいだ。十代前半から半ばまでの年頃は、徹底して自己チュウであって、自己チュウであるこを隠すだけの用心深さと狡さを持ってはいない。だからこそ、手痛い経験を積んで自己チュウの限界を知り、社会と折り合いを付ける方法を学んでゆくことのできる時期なのである。
 ただ問題は、世界の中心にいる自分自身の、そのまた中心にあるものが何か、ということいだろうと、礼子は思う。

第3部、P681
十四歳はそんなもんじゃないのか。みんな自意識過剰で、まわりとゴリゴリぶつかって、不安定な心は優越感とコンプレックスのカクテルで、傷ついたり傷つけたり、何年かそういう時期を過ごして、満身創痍になって抜け出していくんだ。

【キャラクターについて、あれこれ】
いままで他作品で、悪意、毒のあるキャラクターを絶妙に描いてきた著者であるが、本作品にも2人登場する。
垣内美奈絵と三宅樹理である。
ただ、他作品と異なるのは、行く手に一脈の光明を投げかけていること。ほったらかしにしていない。「救い」を与えている。

本作品で一番かわいそうなのは、浅井松子でしょう。気の毒すぎる。

一番ほっとするキャラクターは山崎晋吾。(著者も気に入ってる?)
P207・・・いついかなる時でも、必要とされる時と場所にきちんといる男。この学校裁判の、奇跡の男はこいつだ。

登場人物の中で、幼少なのは藤野涼子の妹・翔子と瞳子。単に可愛いだけの子供じゃなく、小さいなりの「悪意」を描いている。そのあたり、さすが、である。

古野章子、山埜かなめ・・・他の小説だったらヒロインになってもおかしくないキャラクター。でも、本作品では脇役にすぎない。

大出俊次・・・本作品は、単に粗暴なだけでなく、細かい心理と行動まで描いて深みをもたせた。悪役がさえないと、物語に奥行きがでない。彼のおかげで、第3部までもった、とも言える。

事件発生直後の人物相関図

【ネット上の紹介】
クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。彼の死を悼む声は小さかった。けど、噂は強力で、気がつけばあたしたちみんな、それに加担していた。そして、その悪意ある風評は、目撃者を名乗る、匿名の告発状を産み落とした―。新たな殺人計画。マスコミの過剰な報道。狂おしい嫉妬による異常行動。そして犠牲者が一人、また一人。学校は汚された。ことごとく無力な大人たちにはもう、任せておけない。学校に仕掛けられた史上最強のミステリー。

【参考図書】




「中野京子と読み解く名画の謎 旧約・新約聖書篇」

2013年01月01日 13時10分27秒 | 読書(エッセイ&コラム)

「中野京子と読み解く名画の謎 旧約・新約聖書篇」中野京子

昨年最後の本の紹介は「海街diary 5」であった。
今年は、中野京子作品の紹介から始めたい。
おもしろくて、知識も増える。

P110
「七つの大罪」というよく知られたキリスト教用語は、意外にも、聖書に明確な形で記載されているわけではない。
ではいったいどこから来たかというと、四世紀の修道士ポンディコスの著書にある「八つの枢要罪」が起源らしい。それによれば、罪の重さの順は、「大食」「色欲」「貪欲」「憂鬱」「憤怒」「虚飾」「傲慢」だという。
時は下って六世紀後半、ローマ教皇グレゴリウス一世により、罪の意識は八つから七つに絞られ(「虚飾」が「傲慢」に吸収され、「憂鬱」は「怠惰」に含まれ、新たに「嫉妬」が加わる)、順序も現在の形に変えられた。即ち、
「傲慢」
「貪欲」
「淫乱」
「憤怒」
「大食」
「嫉妬」
「怠惰」
(中略)
マハトバ・ガンジーも「新・七つの大罪」を提唱している、曰く、
「原則なき政治」
「道徳なき商業」
「労働なき富」
「人格なき教育」
「人間性なき科学」
「良心なき快楽」
「犠牲なき宗教」
――深く納得させられる。
そして二〇〇八年、何とヴァチカンが新時代のため「七つの大罪」を発表した。
「遺伝子組み換え」
「人体実験」
「環境汚染」
「社会的不公正」
「貧困を起こすこと」
「淫らなまでに金持ちになること」
「麻薬」

P217-218
なぜ欧米でユダヤ人は嫌われているのか?
(中略)
ユダヤ人はイエスを救世主(=キリスト)と認めない。同じ『旧約聖書』を聖典としているにもかかわらず、救世主はまだこの世に降臨していないと主張する。キリスト教徒にとっては許しがたいことだろう、神の子イエスを信じること、それがクリスチャンとしての信仰の第一なのだから。

P242
またノートルダムというフランス語は、マドンナ(Madonna)というイタリア語同様、聖母を指す。「Notre-Dame」即ち英語の「Our Lady(我らが貴婦人=聖母マリア)」のことなのだ。

P244
一般の日本人にはカトリックとプロテスタントの違いは難解で、それぞれの教会の区別もつきにくい。そこで、こう覚えておくといい。外観も内部もとにかく華やかで装飾的、磔刑図や聖母子像が飾ってあればカトリック教会。一方、プロテスタント教会は地味でシンプル、十字架はあってもイエスは架けられていないし、もちろんマリア図像はどこにもない。ついでに言えば、カトリック国(フランス、イタリア、スペインetc.)の食事が概して美味なのに比べ、禁欲的なプロテスタント国(アメリカ、イギリス、北欧各国etc.)の食事の不味さときたら……恐れ入り谷の鬼子母神。

【関連図書】


「名画と読むイエス・キリストの物語」中野京子

【ネット上の紹介】
せっかく絵を味わいたいと思っているのに、宗教画だからと敬して遠ざけるのでは、あまりにもったいない。本書は、もっと宗教画を楽しみたい人、名画を通して聖書や歴史や画家について知りたいと思う人のための一冊です。[目次]
旧約聖書の章(鼻はやめて指に―ミケランジェロ『アダムの創造』;知恵と引き換えの死―クラナハ『楽園』/マザッチョ『楽園追放』;人類初の殺人者―ブレイク『アダムとイヴによって見つけられたアベルの肉体』/コルモン『カイン』;天までとどけ―ブリューゲル『バベルの塔』;神様は謎かけばかり―レンブラント『イサクの犠牲』/カラヴァッジョ『イサクの犠牲』 ほか);新約聖書の章(おめでとう、と言われても…―ダ・ヴィンチ『受胎告知』/ロセッティ『見よ、われは主のはしためなり』;誰も気づかない―ブリューゲル『ベツレヘムの人口調査』;有名人と記念撮影―アルトドルファー『東方三博士の礼拝』/ボッティチェリ『東方三博士の礼拝』;洗礼と生首―フランチェスカ『キリストの洗礼』/クリムト『ユーディット2/サロメ』;弟子たち―カラヴァッジョ『聖マタイの召命』 ほか)