「天人唐草」山岸凉子(潮出版社)先日、チラリと紹介したが、きちんと書いておこうと思う。
(参考:
「雨無村役場産業課兼観光係」(3)岩本ナオ)
山岸凉子さん過去の短編集からの選りすぐり。
全6巻のうちの5巻目。
私はファンなので、たいていの作品を読んでいるつもり。
1巻~4巻は、購入済み単行本と内容がダブってしまうので買わなかった。
でも、5巻目収録の「流々草花」は未読なので即購入。
この内容は、簡単に言うと「デビュー裏話」、って感じ。
山岸凉子さんが、どのように苦労してデビューしたか、って話。
イニシャルになってるけど、講談社や集英社と解る。
また、M編集部やR編集部となってるのも(トーゼン)マーガレット編集部とりぼん編集部と解される。
非常に興味深い話である。(ただしファンにとって)
著者のデビュー作は「レフトアンドライト」であるが、今読んでもおもしろい。
でも、さすがに今日の山岸凉子さんを予想するのは困難。
りぼん編集部のA氏はエライ!
山岸凉子さんをデビューさせた眼力に恐れ入る。
それだけで、編集者として一生分の価値がある。
以下、「アラベスク」第2部、モスクワコンクールでの場面。
ザカレフスキー:しかしきみの眼力にはおそれいるね 今日の彼女を予想していたとは
ユーリ:いえ正直いってノンナがこれほど踊ってくれるとは・・・ノンナと山岸凉子さんがダブル。
現在日本で漫画家と呼ばれる方が何人いるか知らないが、
山岸凉子さんは最高位の1人。
まぎれもない天才である。
★山岸凉子スペシャルセレクション 第Ⅰ期全6巻 各巻の内容
Ⅰ わたしの人形は良い人形
わたしの人形は良い人形/鬼来迎(きらいごう)/ハーピー/グール(屍鬼)/白眼子(はくがんし)
Ⅱ 汐の声
汐の声(しおのこえ)/天鳥船(あめのとりふね)/八百比丘尼(やおびくに)/笛吹き童子/蛭子(ひるこ)/鬼
Ⅲ 神かくし
月読(つくよみ)/肥長比売(ひながひめ)/天沼矛(あめのぬぼこ)/黄泉比良坂(よもつひらさか)/海底(おぞこ)より/夜叉御前/海(わだつみ)の魚鱗宮(いろこのみや)/神かくし/神入山(神かくし Part.2)
Ⅳ 甕のぞきの色 甕のぞきの色(かめのぞきのいろ/ウンディーネ/木花佐久夜毘売(このはなのさくやひめ)/スピンクス/パニュキス/月氷修羅(げっぴょうしゅら)/着道楽
Ⅴ 天人唐草 天人唐草(てんにんからくさ)/銀壺・金鎖(ぎんこ・きんさ)/シュリンクス・パーン/負の暗示/悪夢/星の素白き花束の(ほしのましろきはなたばの)/蜃気楼/流々草花(るるそうげ)
Ⅵ 夏の寓話籠の中の鳥/時じくの香の木の実(ときじくのかくのこのみ)/二口女(ふたくちおんな)/化野の…(あだしのの)/千引きの石(ちびきのいわ)/鳥向楽(ちょうごうらく)/夏の寓話/パエトーン/夜の虹
PS
漫画家と編集者のトラブルは良く聞く。
集英社、講談社、小学館・・・いずれも一流出版社。
就職できるのは一流大学出身エリートであろう。
それがノンキャリアの漫画家に仕え、しかも相手の方がずっと稼ぐとなると、心中穏やかでなかろう。
簡単に言うと「嫉妬」、と思われる。
でも、よく考えてみて欲しい。
「才能」があるから漫画家や小説家になり、
「非才」だから、サラリーマンになるのである。
そこのところが解ってない編集者が多い。
中途半端に頭が良くて、プライドが高いので始末に負えない。
もちろん、そんな編集者ばかりではなかろう。
上記のAさんのような優れた編集者もいる。そこが救われる。
ちょっと聞いたエピソードがある。(言葉は不正確だが内容大筋は以下のとおり)
昔、赤塚不二夫さんが編集者に言った、「魔法を使えるヒロインの作品を作りたい」、と。
「ひみつのアッコちゃん」の構想が既にあったのである。
編集者は言った、「この科学の時代に魔法なんてバカか」、と。
バカはお前である。
なお、出版社内実を知る作品として
「格闘する者に○」(三浦しをん)がある。
おもしろいから読んでみて。