「藍の糸 着物始末暦」(2)中島要
シリーズ2作目。
物語はさらにふくらみ、奥行きも出てきた。
新たな登場人物も加わった。
次の4編収録されている。
以下、ネタバレ有り。未読の方、ご注意。
藍の糸
魂結び
表と裏
恋接ぎ
●第一話「藍の糸」
綾太郎がお糸にちょっかいを出す話。
お玉は綾太郎の許婚。
あみつは、お玉に使えている桐屋の奉公人。
お糸とおみつは幼馴染み。
それに、お糸は、余一にぞっこんである。
だから、お糸が綾太郎になびくはずがない。
さて、どうなるか?
西海天女の異名をとるおいらん・唐橋も(再び)登場し、豪華キャストである。
唐橋と綾太郎の会話
P68
「あやさまは、なぜ職人が藍染めの袢纏や股引きを身につけるか、訳をご存じでありんしょう」
「当たり前だろ。藍染めは染めるほど丈夫になるし、切り傷や虫刺されにも効く。だから、火消しや職人、百姓が仕事着にするんじゃないか」
(中略)
「あい。しかも、洗えば洗うほど、色が鮮やかになります」
(中略)
「わっちら女郎は派手な錦、客が必死で稼いだ金を湯水のように使わせて・・・・・・相手が尾羽打ち枯らしたら、別れを告げるだけざます」
P70
唐橋が口にした通り、なるほどお糸は藍染めのきものだ。しかも、糸から染めあげた極上ものの紺色だ。
●第二話「魂結び」
六助のもとに、盗品の帯が持ち込まれた事が発端。
尋常ではない頭痛に悩まされる六助。
六助は、この世のものでないものが見えたり、声が聞こえたりする。
この帯は誰のものなのか?
今回のレギュラーは、六助と余一しか登場しない。
少し寂しいキャストだが、物語の根幹に関わる重要な事項が示される。
P125
余一が首から下げている守り袋には、水晶の数珠珠が二つ入っている。ひとつは元々持っていたもので、もうひとつは親方が死ぬ間際に渡したものだ。色と大きさがまるっきり一緒だから、元は同じ数珠玉だろう。それにどういう意味があるのか、六助にはわからない。
●第三話「表と裏」
家族、夫婦の問題は、本作品全体のテーマ。
この章では、特に強く出ている。
大隅屋の若旦那から振袖をもらったお玉。
お返しに何を贈ったらよいか?
奉公人のおみつは悩む。
P143
無論、お礼の文は届けてあるし、桐屋から大隅屋に相応なものも届けてある。しかし、お玉から綾太郎へのお返しは何もしていなかった。
「親の決めた縁談だもの。放っておいても大丈夫でしょ」
「そういうことじゃ困りますって、何度も申しあげたはずですっ」
おみつは、困って、結局、余一に相談に行く。
余一の家で、おみつは御高祖頭巾の女と出会う。
新たなキャラクター登場、である。(レギュラー入り間違いなし)
P147
すらりとした立ち姿は、まるで錦絵から抜け出たようだ。しかも上品な出で立ちをしている割に危うい色気を感じさせる。見たことのない類いの美人におみつはごくりと唾を呑んだ。
おみつに、もう一つ問題が起こる。
義母が十両貸してくれ、と奉公先にやって来たのだ。
2つの問題を抱えたおみつ。
解決できるのか?
佐野屋のご隠居さんも絡んで、物語は進行する。
ウルトラCクラスのエンディングだ。
オチもついて、見事。
●第四話「恋接ぎ」
再び、夫婦と家族の問題。
お糸の一膳飯屋『だるまや』の前に赤ん坊が捨てられる。
誰の赤ん坊か?
どうして『だるまや』なのか?
新キャラクター・達平(十歳)登場。
(前章の御高祖頭巾の女同様、こちらもレギュラー入りするでしょう)
【ネット上の紹介】g
呉服太物問屋の若旦那・綾太郎は、着物の染み抜きなどをなんでもこなす着物始末屋・余一のもとへ打掛の始末を頼んだ。毛嫌いする余一を困らせようと、生地が弱りすり切れた打掛を渡したのだが、その仕上がりは非の打ちどころのない出来栄えだった。余一に対して、何としても一泡吹かせたいと願う綾太郎。そんなある日、彼は古着屋の六助を伴い、余一に想いを寄せるお糸の飯屋を訪れた。血の気が多い職人や人足などの男達を前に、てきぱきと働くお糸を見て、綾太郎は彼女に惹かれはじめるが―(「藍の糸」より)。大好評、連作短篇時代小説。待望の第二弾!!