「バッタを倒しにアフリカへ」前野ウルド浩太郎
私は虫が苦手である。
でも、興味はある。
バッタ博士・前野氏のアフリカ・サハラ砂漠での奮戦の書。
と同時に、学者が食べていく苦労も描かれている。(好きな事をするのも大変だなぁ)
モーリタニアの風習も描かれていて興味深い。
軽妙な文章で、楽しく読めるよう工夫されている。
P158
「砂漠のヘビは水を求めて深夜徘徊する。ベッドの脇に水を置くのはヘビを呼んでいるようなものだ。寝るときは必ず水をベッドから離すこと。そして、ベッドは砂丘の頂上にセッティングするのがベストだ。草木の周りにはヘビがよく潜んでいるから、襲われやすいぞ」
P207
日本では細めの女性が好まれる傾向にあるが、逆にモーリタニアでは、ふくよかなほうがモテる。そのため、少女時代から強制的に太らせる伝統的な風習がある。これは「ガバージュ」と呼ばれるもので、現在は健康によくないからやめるようにと政府が呼びかけている。
【ネット上の紹介】
バッタ被害を食い止めるため、バッタ博士は単身、モーリタニアへと旅立った。それが、修羅への道とも知らずに…。『孤独なバッダが群れるとき』の著者が贈る、科学冒険就職ノンフィクション!
第1章 サハラに青春を賭ける
第2章 アフリカに染まる
第3章 旅立ちを前に
第4章 裏切りの大干ばつ
第5章 聖地でのあがき
第6章 地雷の海を越えて
第7章 彷徨える博士
第8章 「神の罰」に挑む
第9章 我、サハラに死せず
「淳子のてっぺん」唯川恵
田部井淳子さんは、昨年2016年10月20日に亡くなられた。
本書は、彼女をモデルにして「小説」という形で描いている。
とても面白く感じた。
昭和21年、小学校に入学するところから物語が始まる。
やがて東京の大学に進学し、田舎に帰らず東京で就職する。
フェミニズムとはほど遠い当時の世相を背景に、どのように山の世界にのめり込んでいったのか丁寧に描かれる。
山好きな方にお薦め。
山に登ったことのない方も、読んだら「登ってみようか」、って思うかもしれない。
【校正ミス?】
登場人物は実名だったり仮名だったりする。
主人公の田部井淳子→小説では田名部淳子。
隊長の宮崎英子→小説では広田明子。
平川宏子→小説では広瀬小百合。
山岳会の名前・竜鳳登高会→小説では「昇龍山登会」。
P199若山美子さんが実名で登場する。
「あら、でもあなたは川井さんとマッターホルン初登頂に成功してるじゃない」
(川井とは、もちろん、今井通子さんのこと。著者は仮名で挙げている)
P209
「ううん、マッターホルンを一緒に登った今井通子と組んで、グランド・ジョラス北壁を狙う計画が持ち上がって、(後略)」
(こちらでは、実名で名前を挙げている…この辺り、統一感がない。校正の方が指摘すべき箇所、と思うけど)
【参考リンク】
公式HP
NHKアーカイブス 日本女子登山隊エベレスト登頂(1975年) - 日本放送協会(NHK)
【参考図書】
【ネット上の紹介】
2016年10月に逝去した登山家・田部井淳子。男女差別が色濃い時代、女性として世界で初めてエベレスト登頂に成功した彼女は、どのように生き、どのように山に魅入られたのか―その物語を完全小説化。山を愛し、家族を思い、人生を慈しんだ淳子が、その“てっぺん”に至るまでの、辛く苦しくも、喜びと輝きに満ちた日々。すべての女性の背中を優しく押してくれる、感動長篇!
「ねうちもん京都 お金をかけずに京めぐり」グレゴリ青山
著者は京都観光に関して、複数の作品を著している。
本書は、その中でもメジャーな観光地を取り上げた作品。
私はういろうが好きなので、この五建外良屋には行ってみたい
小松屋のきんつばも美味しそう
寺町通に行ったら、本能寺は要チェック
本能寺の変の前日、信長に危険を知らせるがごとく鳴き始めた三足の蛙の香炉が展示されてるそうだ
読んでいて、三十三間堂に行ってるのに、なぜ養源院に立ち寄らない、とか。
三千院に行ってるのに、なぜ寂光院を訪問しない、とか。
色々突っ込み処がある。
その分、食べ物屋や土産物屋の紹介にページを割いている。
歴史や文学より、読者の興味はそっち、って事でしょう。
無い物ねだりをしてはいけない、と言うことだ。
【ネット上の紹介】
京都名所12ヶ所とその周辺の食べる・観る・買う
「京都案内したげるわー」―“グ”のオススメ散策コース
京都人が食べてるおいしいもん
甘いもん天国
魅惑の舞妓はん
路上のねうちもん
捨てない京都
祈りと禅の京都
布もん京都
厳選!魅惑の8エリアねうちもんてくてく散歩〔ほか〕
国内の観光地として絶大な人気を誇る京都。けれども実際に訪れると「どこに行っても観光客だらけ」「何を食べても高い!味しない!」「敷居も高い」ということがよくある。本書では、そんなガッカリを180度くつがえします! 京都生まれ京都育ちの漫画家・グレゴリ青山が「払った金額以上に満足できる」もののみに厳選して、真に値打ちある観光スポット、飲食店、お土産を紹介します。
「エイリアン: コヴェナント」を観てきた。
先日、「フェリシー」を観たときは9割以上空席だった。
今回も、空席が目立った。8割くらい?
リドリー・スコットのエイリアン新作だよ!
こんなことでいいの?!
「フォースの覚醒」は満席だったのに。
世間の興味は、私の趣味と異なる、ってことか。
【参考リンク】
日本語公式サイト
ここからは、未だ観ていない方は読まない方が良い。
特にネタバレ、って訳じゃないけど、文章の雰囲気から内容を察してしまうかもしれないので。
さて、リドリー・スコット作品なので、細かいところまで凝った迫力ある映像だった。(R15+指定)
恐怖の盛り上げ方も巧い。
ただ、前作=つまり初回「エイリアン」では、恐怖そのものを描こうとした、と言われた。
今回も、それを期待した。
でも、途中から「エイリアン2」のようなアクションになった。
リドリー・スコット作品なのに、これでいいの?(私の思い込みと思い入れ?)
それと、このエンディングはアレだな…。
初回の「エイリアン」に繋がるから、このような終わり方なんでしょうね。
でも、すっきり感はない。
プロローグが長くて、すぐ本編に入らなかったけど、途中で、伏線の意味が分かってくる。
だから、このエンディング…なのか。(続編あるかも?)
【覚書】
初回ノストロモ号の物語は西暦2122年
今回コヴェナント号の物語は2104年
プロメテウスの物語は2093年。
【おまけ】
途中で「フリークライミングじゃないからロープをつける云々」のセリフが出て来るが、
これは、「フリーソロじゃないから…」の誤訳か?(日本語吹き替え版)
アレックス・オノルドの影響?
【参考】
町山智浩 『エイリアン: コヴェナント』を語る - miyearnZZ Labo
「枕草子のたくらみ」山本淳子
「枕草子」に隠された様々な思いを読み解いていく。
読んでいて、切ない気持ちになった。
1000年の時を経て、心に染みてくる。
P4
紫式部が出仕したのは、長保2(1000)年の定子の崩御によって清少納言が職場を去ってから、5年が過ぎた後のことである。二人が内裏にいた時期はすれ違っており、今まさに対抗し合う二勢力を代表する文芸の女房として角を突き合わせることはなかった。察するに面識もなかったのではないか。
「紫式部日記」の清少納言へのコメントについて
P6
批評はやがて非難となり、言い募るうちに激高の色さえ帯びて、最後は清少納言の行く末を呪うかのように終わっている。
なぜ紫式部は、ここまで清少納言を、そして『枕草子』を批判したのか。研究者から「教養ある中年の貴族女性としての慎みを一切かなぐり捨てたかのよう」「いささか異常」とまで言われるこの批評は、長く才女間のライバル意識によるものと考えられてきた。
P17
紫式部の清少納言批判を、清少納言本人が目にすることはなかっただろう。が、もし目にしても、批判は的外れではない、むしろ言い得ていると、彼女はきっと笑ったに違いない。闇にあって闇を書いていないのは、清少納言自身がそう意図したからだ。何はさておき、定子のために作ったのだ。定子の生前には、定子が楽しむように。その死を受けては、定子の魂が鎮められるように。皆が定子を忘れぬように。
春は、あけぼの。この有名な冒頭について…
P28
清少納言は、私たち千年後の読者に向けてこの章段を書いたのではない。今ここで苦しみを抱える定子のために、あるいはその魂のために書いたのだ。
P48
我が身の分身である作品内の「清少納言」に演じ切らせたのだ。もちろんそれは定子のため、あるいは定子死後の読者の心に働きかけるためである。
目的のために身を挺するこうした方法は、プライドが高くてはできない。例えば紫式部には、到底まねのできないことだったのではないか。
P60
今こそ胸を張って、自由闊達な定子文化サロンを書いて遺さなくては。清少納言が『枕草子』に自分たちの生活文化を記したということには、そうした意味があったのだ。
(中略)
確信犯として他愛なさを纏う章段たちは、悲しみに暮れていた定子の心を、温かく励ましたに違いない。
P130
胸つぶれてとくあけたれば、紙にはものも書かせ給はず、山吹の花びら一重包ませ給へり。
P132
ただ一枚の小さな花びらによって、定子は思いのたけを清少納言に伝え、清少納言はそれを受け止めて生きる力を取り戻した。
P139
ふと思い出し、清少納言の好きな紙を贈った。するとやがて、手元に一冊の冊子が密かに届く。題は『枕草子』。(中略)
中関白家が倒れ権威は地に落ち、何もかも失ったかのように思われたこの時に。今度は定子の心に熱いものがこみ上げただろう。かつてのプライドを思い出し、うつむいた顔を上げることができただろう。(そして、定子は山吹の文を清少納言におくるのだ)
P271
喪われたものへの鎮魂の書、それが同時代の『枕草子』だった。その意味で、『枕草子』は一つの〈挽歌〉だったのだ。
【おまけ】
『源氏物語』の桐壺更衣とは?…ここは実際読んでみて。「そうだったのか!」と驚いた。P157
【ネット上の紹介】
平安に暮らす女房の視線で、その日常を明るく軽やかに描いた随筆として有名な『枕草子』。だが、作者・清少納言の執筆の真意は“お仕えする中宮定子の御ため”その一点にこそあった。生前は定子の心を慰めるために、死後にはその鎮魂のために思いを込めて―。定子の死後、その敵方であった藤原道長の権勢極まる世で、『枕草子』は潰されることなく、平安社会に流布した。果たしてこの事実は何を意味するのか。『枕草子』が平安社会を生き延びるために、清少納言が駆使した戦略とは?冒頭「春はあけぼの」に込められた、真実の思いとは?『枕草子』のまったく新しい扉が、ここに開かれる。
清少納言の企て
春は、あけぼの
新風・定子との出会い
笛は
貴公子伊周
季節に寄せる思い
変転
女房という生き方
政変の中で
人生の真実〔ほか〕
「鬼平犯科帳」(15)池波正太郎
シリーズ15作目。
今回は長篇。
池波正太郎さんは、短篇の方がスピード感があって楽しめる。
少なくとも、本シリーズと「剣客商売」では、そう感じた。
鰻について
P167
(前略)平蔵が若いころには、
「あのようなものを食べるものではない」
といわれていた。
そのころの鰻は、ほとんどが丸焼きにしたものに豆油(たまり)やら山椒味噌やらを塗りつけただけのものを辻売りにしており、
「何といっても、あいつを食うと精がつく」
というので、はげしい労働をする人びとの口をよろこばせはそたが、これが料理屋で出す料理にはならなかった。
【ネット上の紹介】
火付盗賊改方の二同心が、立て続けに殺害される。その太刀筋は、半年前に平蔵を襲った兇刃に似ていた。何者かの火盗改方への挑戦に、平蔵は二十数年前に亡師・高杉銀平が語った「忘れられぬ剣客」の記憶を手操る。その男こそ、「雲竜剣」の遣い手・堀本伯道であったが…。忍び寄る恐怖と敵に立ち向う迫力の特別長篇・初登場!
「鬼平犯科帳」(12)池波正太郎
シリーズ12巻目。
次の7編が収録されている。
「いろおとこ」
「高杉道場・三羽烏」
「見張りの見張り」
「密偵たちの宴」
「二つの顔」
「白蝮」
「二人女房」
P252
平蔵が若いころには、このように素人女の世話を路上でもちかける、などということはなかった。
世話をした女から、どれだけの割前を取るのか知らぬが、いま、これを稼業にしている者を「阿呆烏」と隠語でよぶそうな。
P302
[武士はいや、町人好かぬ、いろは茶屋]
などという川柳がのこっている。
つまり、いろは茶屋の地主が上野・寛永寺であるところから、客に僧侶が多いことをさしたものだ。
【ネット上の紹介】
盗賊の頭・長沼又兵衛は、かつて本所・高杉道場で、平蔵、岸井左馬之助とともに、三羽烏と呼ばれた男だった(「高杉道場・三羽烏」)。腕利きの密偵六人衆が集まり、盗賊だった頃の思い出話を肴に、飲んで飲んで、その挙句…(「密偵たちの宴」)。ほかに「いろおとこ」「見張りの見張り」「二つの顔」「白蝮」「二人女房」の全七篇を収録
「貯金1000万円以下でも老後は暮らせる!」畠中雅子
目の前に迫った切実な問題「老後」。
いったい、いくらあったら安心なのか?
「最低でも3000万円、出来れば5000万円」これは本当なのか?
あるに越したことはないが、ない袖は振れぬ、である。
少なくても、大丈夫なのか?
老後設計の為に、本書を読んでみた。
(本来なら、青色字の箇所は、本に書かれているとおりを写しているが、今回は私がかいつまんで要点をまとめている…情報が多いので、ご容赦下さい)
実際、本書を読んでいただくのがベスト!
P56
(年金受給を)1か月遅らせると0.7%増額となります。1年で8.4%も年金額が増える計算で、仮にいちばん遅い70歳からもらい始めるようにすると、42%の増額となり、増額された年金額が生涯続きます。(長生きしたら得だけど、そんなに生きられるのだろうか?)
老後の住まいを考える
P106
①ずっと自宅で暮らす
②自宅を売って、コンパクトなマンションに住み替える
③しばらく自宅、介護認定を受けたら、介護付有料老人ホームなどに住み替える
親子同居はリスキー、とのこと。お嫁さんが同居を望まないから、と。
P144
東京スター銀行のリバースモーゲージについて書かれている。
資金繰りが厳しくなったら、一考の価値あり。
P156
「イオンのお葬式」が費用が抑えられて良いらしい。
(高いお葬式に比べると、祭壇の花が少し淋しいかも?)
介護が必要になった際の、住み替え方法
①70代半ばを過ぎたら、自立しているうちに介護型ケアハウスを併設しているケアハウスに住み替える
②要介護2までは在宅で介護を受け、要介護3になったら、すぐに特養の申請をして、入居できるのを待つ
③要介護認定を受けたら、自分の年金額で入居できるエリアの介護付有料老人ホームを探して転居する
見学の際の注意点(要点をまとめてみた)
P184-186
見学の際は、食事も試してみる(必ず料金を払う事…タダで食事をいただくと、味の評価が甘くなるから)
食事の際、お酒を飲めるかどうか確認
周辺にどのくらい飲食店があるか
入浴時間も確認(施設のなかには、人出の多い午前中しか、入浴できないところがある)
アクティビティが多いか少ないか(多いとゆっくり読書できない)
「食事がおいしい」という評判はあてにならない
「入居率」をチェック(開設して2~3年が経過しても空きが多い施設は要注意、経営面でも不安)
「そんぽの家」という介護付有料老人ホームがあり、入居一時金もなく、月額費用も地方なら11~12万円
【参考リンク】
介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
大阪府/介護サービス情報の公表のページ
【ネット上の紹介】
年金/保険/再就職/節約/介護…etc.老後の生活設計の勘どころ、大事なところだけをざっくり把握!50歳からの安心老後を実現するマネープランの教科書。
序章 「貯金1000万円」を貯められそうにない人の人生設計
第1章 貯金の少ない人が知っておきたい暮らしの知識
第2章 老後を乗り切る生活の知恵
第3章 老後資金を左右する住まいのお金
第4章 老後の暮らしを守る保険の話
第5章 介護にどう備えるべきか?
「出会いなおし」森絵都
森絵都さんの新刊。
前回の「みかづき」が良かったので、読んでみた。
でも、今回はイマイチ。
短編集だけでど、途中で挫折。
読む気力が失せてしまった。
第2話「カブとセロリの塩昆布サラダ」で嫌になった。
クレイマーの主婦の話。
まるで、普通の主婦のように描いているが、
私の感覚では、病的なクレイマーである。
518円の惣菜に、カブの代わりに大根が入っていたのを激怒。
カブの入った惣菜を自宅まで持ってこい、と。
結局、百貨店の惣菜担当者と責任者が惣菜を持って駆けつけて謝罪。
近づきたくタイプだ。
【おまけ】
クレームを付けたが、今回はともかく、過去の作品は素晴らしい。
私の森絵都作品第1位は、ダントツで「永遠の出口」。
第2位は、先日読んだ「みかづき」。
3位は「DIVE!!」。
4位は「カラフル」。
【ネット上の紹介】
年を重ねるということは、おなじ相手に、何回も、出会いなおすということだ。出会い、別れ、再会、また別れ―。人は会うたびに知らない顔を見せ、立体的になる。人生の特別な瞬間を凝縮した、名手による珠玉の六編。
総合病院の病棟が舞台。
末期癌の患者たちと医師・早坂ルミ子の物語。
患者たちは余命僅かと知ると、やり残したこと、後悔の念に苛まれる。
あの時に、こうしていたら、ああしていたら、と。
となると、同著者の「リセット」を思い出す。
本書も、人生やり直し小説「リセット」別バージョン。
私は、この手の作品が好きなので、それなりに楽しめた。
【関連作品】
![](http://www1.e-hon.ne.jp/images/syoseki/ac/40/32020940.jpg)
![クリックして画像を拡大](http://www1.e-hon.ne.jp/images/syoseki/ac/21/32522021.jpg)
【ネット上の紹介】
田川病院に勤務する医師の早坂ルミ子は末期のがん患者を診ているが、患者の気持ちがわからないのが悩みの種。ある日、ルミ子は病院の中庭で不思議な聴診器を拾う。その聴診器を胸に当てると、患者の“心の声”が聞こえてくるのだ。「もし高校時代に戻れたら、芸能界デビューしたい」―母に反対されて夢を諦めた小都子が目を閉じて願うと、“もうひとつの人生”へ通じる扉が現れる。念願の女優になった小都子だが…。聴診器の力で“あの日”へ戻った患者達の人生は、どんな結末を迎えるのか。夢、家族、結婚、友情。共感の嵐を呼んだヒューマンドラマ。
「鬼平犯科帳」(11)池波正太郎
シリーズ11作目。
次の7編が収録されている。
「男色一本饂飩」
「土蜘蛛の金五郎」
「土」
「亡き味噌屋」
「密告」
「毒」
「雨隠れの鶴吉」
P38
この[算者]というのは[算術や数理のことに熟達した人]を指す。ゆえに、この職業は、算盤をはじめ数理・計算の知識に通じてい、これを諸人に教えて報酬を得るのである。そればかりか、諸方の商家への出入りし、また、武家屋敷の財政についての相談にあずかるという、現代でいう[経営コンサルタント]のようなこともしていたらしい。
P376
「物事には、いちいち理屈をつけるものではない。人間という生きものは理屈とは全く無縁のものなのに……どうも、得てして理づめに生きたがるのがおかしい、と、ね」
【ネット上の紹介】
人気絶大、いまや国民的時代小説といえる「鬼平犯科帳シリーズ」全24巻を、より読みやすい【決定版】で毎月二巻ずつ順次刊行中。色白でぽってりとした同心・木村忠吾の好物は、豊島屋の一本饂飩。親指ほどの太さの一本うどんがとぐろを巻いて盛られていて、柚子や摺胡麻、葱などの濃目の汁で食べるのである。そんな忠吾が、豊島屋で男色の侍に目をつけられ誘拐される「男色一本饂飩」ほか、ちょっとうまそうな食べ物が脇役となっている作品が印象的な第11巻。「男色一本饂飩」「土蜘蛛の金五郎」「土」「亡き味噌屋」「密告」「毒」「雨隠れの鶴吉」の7篇を収録。