「知らなかった、ぼくらの戦争」アーサー・ビナード/編著
著者が太平洋戦争を生き延びた人たちを訪ねていく。
多くの方が高齢で、もうこの手の本は出ないだろう、と思っていた。
しかし、これほど貴重な証言が埋もれていたとは・・・驚いた!
2017年に出版されたが、出版時、既に多くの方が亡くなられている。
それほど貴重な証言だ、嚙み締めて読むべし。
読むのが遅れたが、今年ベストの1冊、と思う。
P39
米軍による日本への爆撃の指揮官だったカーチス・ルメイ大将って、いまだに許す気持ちになれないな。日本側にはもはや反撃する能力がないと、アイツはだれよりもわかっていて、それなのにドシドシ焼夷弾を落としまくって、日本中の都市を火の海にして、無差別殺戮を繰り返したんだ。とんでもない馬鹿野郎だと、俺は思っているよ。(まったく同感だ。原爆も指示し、後に、ベトナム戦争時では、「石器時代に後戻りさせてやる」と発言した。なお、佐藤栄作内閣の時に、一等旭日大綬章が授与された。推薦は当時の防衛庁長官小泉純也と外務大臣椎名悦三郎の連名。勲章より、精神鑑定を受けさせるべきだ)
P154
沖縄戦で心に刻んだ最大の教訓は「軍隊は民間人を守らない」ということです。
高畑勲氏の話
P248
「はらはら」と表裏一体なのは「笑い」ですね。ちょっと客観的だから笑えるんですよ。「どきどき」というのは、もう笑えない。わたしの同僚の宮崎駿の作品も、『天空の城ラピュタ』のころまでは笑えたんですけど。それ以降になると、くすっと笑わせるところ以外では笑えなくなっちゃって。宮﨑アニメに特別の特別な魅力があることは、ぼくはよくわかっています。でもすっかり「どきどき型」、つまり巻き込み型になったんです。
【追加の感想】
本書に登場する人々は、どの方も「生き延びた」という意味で、運が強い。
その中でも、とてつもない強運とサバイバル能力があるのが平良啓子さんだ。
1,800人の疎開児童を乗せた「対馬丸」は、撃沈され、筏で6日漂流したのち無人島に漂着、のち漁船に救助される。その後、1945年2月に沖縄に戻るも、沖縄戦が始まる。4人に1人亡くなったと言われる沖縄戦で、やんばるの山奥に逃げて生き抜く。
【参考リンク】
OKINAWA 2015 死線を泳いだ少女 平良啓子さんの証言(当時9歳)
【ネット上の紹介】
いつまで知らないでいるつもり!? アメリカ出身の詩人アーサー・ビナード氏(1967年生まれ)が、日本人の太平洋戦争体験者たちを訪ね歩き、戦争の実態と、個人が争いから゛生き延びる知恵゛を探ります。登場する語り手は、真珠湾攻撃に参加したゼロ戦の元パイロット、「毒ガス島」で働いた元女子学徒、戦後GHQで働いた元事務員など、実にさまざま。日本人以上に日本社会に詳しいビナード氏が、自身の受けたアメリカの教育とも照らし合わせながら戦争に対する考察を深めます。日本民間放送連盟賞・2016年番組部門[ラジオ報道番組]最優秀賞を受賞した、文化放送「アーサー・ビナード『探しています』」を採録して再構成した書籍です。「『平和』って、無知のままでいること?」 「『戦後』って、いつの戦争のあと?」
第1章 「パールハーバー」と「真珠湾」と「真実」(マリは蹴りたしマリはなし(栗原澪子)
「空母は何隻いたのか?」(原田要) ほか)
第2章 黙って待っていたのでは、だれも教えてくれない(まだあげ初めし前髪の乙女たちは毒ガス島で働いていた(岡田黎子)
「君は狭間という日本語を知っているか」(飯田進) ほか)
第3章 初めて目にする「日本」(「外地」は一瞬にして「外国」となった(ちばてつや)
「日本という国が本当にあった!」(宮良作) ほか)
第4章 「終戦」は本当にあった?(八月十五日は引っ越しの日?(三遊亭金馬)
ストロボをいっぺんに何万個も(大岩孝平) ほか)
第5章 一億総英会話時代(GHQは東京日比谷で朝鮮戦争の業務を遂行(篠原栄子)
公園はすべてを見てきた(小坂哲瑯) ほか)