【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

2013年ベスト10

2013年12月31日 15時19分23秒 | 読書(小説/日本)

文春ミステリーベスト10が発表された。(週刊文春12月12日号)
遅ればせながらリンクしておく。

2013年ベスト10


2013今年最後のポンポン山

2013年12月30日 20時02分01秒 | 登山&アウトドア(関西)

今年の登り納め。
ポンポン山に登ってきた。
先週より少し雪が増えて、稜線上は凍結していた。
おかげで山の中を走る人がいなくて助かった・・・と思っていたら1人いた。
凍結した山道を走るとは・・・よほどの達人か、常識と判断力が欠如しているか?

山頂に誰もいなかった・・・・こんなの初めて。

凍結している登山道

帰りは水声(スイセイ)の道を使って下山した。
上記看板が、この登山道を整備したと思われる山主さんにより掲げられている。

『水声の道はハイカー専用道』
『走る者、軽車両の乗り入れ等は、これより入山禁止』by山主

水声の道はとても整備された静かな山道である。
これからも利用しようと思う。
皆さんも走ったりせず、静かにゆっくり歩いて自然を楽しんでください。


「親ケア奮闘記」横井孝治

2013年12月28日 22時49分41秒 | 読書(介護/終活)

「親ケア奮闘記 がんばれ、母さん。たのむよ、父さん。」横井孝治

介護情報サイト「親ケア.com」を運営されている横井孝治さんの介護実録。
参考になるし、役立ち情報もきちんと記載されている。
なにより、読んでいて面白い。
P286
介護をする前と現代では、私自身の考え方や仕事内容、取り巻く環境が激変しました。今になってみれば、介護が必要になった父や母と向き合うなかで、私自身が抱いていた喜怒哀楽の感情、いろいろ考えさせられたこと、その結果として多くの出会いに恵まれたことのすべてが、両親からの贈り物だったように思えます。

・・・このような状態になるまで、そうとう苦労されている。
それは、この本を読めばよく解る。

この中で自分勝手な父が登場するが、第三者として読むぶんには、愉快な方である。
思わず笑ってしまう「自己チュー」である。
(誰でもこのような部分は持ち合わせている・・・思わず我が身を振り返った)

PS
なんとなく気になったのが、(書籍上で)著者の「妻」の影が薄いこと。
夫婦仲大丈夫?(よけいなお世話か?)

【参考リンク】
親を介護する人のための情報サイト 親ケア.com

横井孝治『親ケア奮闘記』 (11/08) - mm(ミリメートル) - FC2

[目次]
第1章 始まりは、突然に。(荒れ果てた実家。;母の告白。 ほか);第2章 母の入院。(クリニックへの遠い道。;初めてのクリニック。 ほか);第3章 父の異変。(戻らぬ父。;「お父さん、生きとったのか?」 ほか);第4章 家族の絆。(振り出し以下。;「私を殺してくれ」 ほか)
【ネット上の紹介】
すべての変えたのは一本の電話だった――。34歳男性、一人っ子。しかも遠距離。話題の介護アドバイザーによる泣き笑い介護録。
著者紹介
横井 孝治 (ヨコイ コウジ)  
1967年、三重県生まれ。印刷会社のコピーライターや宣伝・販促プランナーを経て、2006年に株式会社コミュニケーターを設立。宣伝・販促プロデュースやコンサルティング事業とともに、介護情報サイト「親ケア.com」などを運営。All About「介護」をはじめ、各メディアへの出演や寄稿、講演活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


「自伝じょうちゃん」松谷みよ子

2013年12月27日 20時55分47秒 | 読書(伝記/自伝/評伝)


「自伝じょうちゃん」松谷みよ子

松谷みよ子さんの自伝。

P251
父と死別したのは12歳のときで、以来、貧しく、つつましく暮らしてきた。」(中略)
疎開の荷物運びの日々、東京神田のもと父の事務所も空襲で焼失、練馬の家二軒も空襲で焼失、身寄りとてない信州での疎開生活。私の青春はどっぷり戦争の中にあった。
戦後、焼け跡の東京に戻り、働き始めたとき、友人が言った。「あなたにはどうしてもかなわないところがある。それは『じょうちゃん』の部分なのよ」と。

私が想像した以上に波瀾万丈の人生を送っておられた。
本作品は結婚生活が破綻して離婚するところで終わっている。
「その後」を読んでみたい。

【参考リンク】
松谷みよ子 公式ウェブサイト
松谷みよ子インタビュー


文庫本にもなった。

【目次】
神田の生まれ;神田から練馬へ;トコトンヤレ;幼い日、小学校へ入る;小学生のころ;父の死;女学校時代;姉の恋・日米開戦;銀行から交通公社へ;女子挺身隊となる;一本の口紅;疎開、そして敗戦へ;舞い込んだ一枚の葉書;大門町にて;東京へ出る;トウソウチュウ カエレヌ;職を失う;処女出版;かたつむりサークル;みどり会;結核再発、療養所へ;手術、結婚へ;太郎座創立―民話採訪へ;狂う;長女誕生;ハンブルグへ;別れ;新しい出発へ
【ネット上の紹介】
「モモちゃん」シリーズ、『龍の子太郎』など数多くの作品で、3世代にわたる読者を魅了し続ける著者初の自伝。幸福な少女時代、父の死、戦争と疎開、戦時下のOL生活、生涯の師との出会い、上京、波乱の結婚生活……激動の昭和史とともにつづる〈作家・松谷みよ子ができるまで〉。懐かしい日本の風景を描きながら、多くの友や忘れがたい人たちによって生かされた作家人生をふりかえる。『週刊朝日』連載。


ポンポン山

2013年12月23日 19時49分23秒 | 登山&アウトドア(関西)

久しぶりにポンポン山に登ってきた。

稜線上は、2、3日前に降った雪が残っていた。

今回、趣向を変えて、川久保から谷筋のルートを使った

八ヶ岳のような感じで枯れていた木立


「わたしをみつけて」中脇初枝

2013年12月22日 09時12分28秒 | 読書(小説/日本)

「わたしをみつけて」中脇初枝

とても良かった。
主人公の弥生は施設で育って、准看護師として病院に勤務している。

P144
「わたし、親に捨てられたんです。」
きかれもしないのに、わたしは言っていた。
「病院に捨てられていて、養護施設で育ったんです。九九ができないのは、一時期児童相談所というところに入っていて、学校へ行けなかったからですけど、施設は高校を卒業するまでしかいられないので、看護学校へ通いながら働いて、資格を取ったんです。」

誰にも嫌われないよう「よい子」を演じている。
それが、新しい師長が来たことで変わり始める。

P220
「あなたは、自分で自分を育てたのね。」
「え」
「あなたは、上手に自分を育てたわね。」

中脇初枝作品初めてだけど、他作品も読んでみたい。

【ネット上の紹介】
その切実な思いは、きっと届くと信じたい。いい子じゃないと、いけませんか。 誰かの仕打ちで、ひとは傷つく。でも、ほかの誰かのひとことで、生きていけるようになる。施設で育ち、今は准看護師として働く弥生は、問題がある医師にも異議は唱えない。なぜならやっと得た居場所を失いたくないから――。

「旅立つ理由」旦敬介

2013年12月21日 20時59分44秒 | 読書(小説/日本)

「旅立つ理由」旦敬介

ANAグループ機関誌「翼の王国」に連載された作品を集めた短編集。
世界各地・・・メキシコ、スペイン、ブラジル、ケニアなどを舞台にした小説。
それも、けっこう深く掘り下げていて、そこに暮らすか何度も尋ねないと分からないようなネタを提供している。
食べ物の記述も多くて、思わず食べたくなる。
旅行好きなかたに、お薦めの作品だ。
政治情勢にも触れられていて参考になる。

P116
1981年の初めのスペインは、40年近く独裁政権を敷いたフランコ将軍が死んでまだ5年しか経ってなく、ヨーロッパ共同体のメンバーになる日が来るとは、まだ誰も夢にも思っていない時代だった。

P124
1981年のスペインを思い出すと、望遠鏡を反対側から覗いているみたいに遠くに小さく見える。その翌年からわずか十年の間にスペインは、サッカーのワールド・カップと、バルセローナ・オリンピックと、セビーリャ万博を、立て続けに開催して、左派政権のもとで一気に加速して変わっていったからだ。 

【ネット上の紹介】
政変でケニアに逃げてきたエチオピア人、ベリーズに流れ着いた上海娘、メキシコ湾岸に住む黒人奴隷の子孫たち…。アフリカや南米の、そのさらなる辺境に暮らすふつうの人びとの真摯に生きる表情と飾らぬ姿を簡潔に写し取りながら、現代の地球において、人はどういう理由で旅に出るのか、どうして故郷を離れることを強いられるのかを問う、21の短篇。主人公以外は日本人がほとんど登場しない、異色の日本文学。

 


日々ケア

2013年12月19日 23時05分31秒 | 身辺雑記

年末で忙しく毎日残業。(更新滞り申し訳ない)
クライミング練習もしていないが、なぜか指先が割れて困っている。(過去の蓄積+水仕事か?)
毎日ハンドクリームを塗ってメンテしてるのに治らない。
そこで、軟膏『ヒビケア』を買ってみた。

PS
24時間後、少し修復されてきた。(痛みもマシになった)
ハンドクリームやオロナインでは対処できなかった事を考えると、ヒビケアなかなか効果有り。
エライ!

【日々の対処法】(メーカーサイトより)
●外出時は、コットンやシルクなどの通気性の良い手袋をする。
●お風呂の中で患部をよくマッサージする。
●寝ている間も肌の回復を高めるために、手袋や靴下をする。

【参考リンク】
パックリ割れのひび、あかぎれに「ヒビケア」|池田模範堂


「告白」町田康

2013年12月15日 09時35分48秒 | 読書(小説/日本)


「告白」町田康

大阪弁の小説は、少なからずあるが、
本作品は全編『河内弁』が駆使されている。
文学と河内弁・・・意外としっくりいっている。

P64
「ほいで熊やん、どっちゃの方へいこ」
「どっちの方てどういうこっちゃ」
「峠超えて真っ直ぐいたら飛鳥村やんか。左イいたら御所(ごせ)やろ。右いたら五條やで。五條から千早峠超えて小深へぬけよか。ほだら戻るの楽やんか」
「そやな」と熊太郎は気のない返事をした。

この作品は、関西人にとってなじみのある地名満載。
上の会話で峠とあるのは「水越峠」のことだし、
金剛山系の麓を中心に、水分、佐備、滝谷不動、富田林、八尾・・・。
これだけで親しみを感じる。
水越峠など、柏木に行くために(軽く)100回以上超えているし。

さて、本作品は史実を基に書かれている。
いわゆる「河内十人斬り」である。
実はこのところ、通勤BGMは民謡を聴いていた。
その流れで、「盆踊り」のCDを聴いた。
さらに、「河内音頭」を聴いた。
図書館で河内家菊水丸『真説・河内十人斬り(前・中・後)』CD3枚を借りた。
これがやたら面白く、夢中になるくらいすばらしかった。
そんな訳で、町田康さんの「告白」を読みたくなった。
(以前から気になっていた作品でもあった)

P167
「ほんでおまえ名ァはなんちゅうね」
「谷弥五郎ちゅうね」
「ふーん。われ谷弥五郎か」
「そや。谷弥五郎や」
「ほで、どっからきたんや」

これが、城戸熊太郎と谷弥五郎の出会いのシーンだ!
興味のある方、読んでみて。
でも、分厚い作品(676ページ)なので、河内音頭CDから聴いた方がいいかも。

【関連リンク】
河内十人斬り - Wikipedia

水分神社HomePage

【ネット上の紹介】
人はなぜ人を殺すのか―。河内音頭のスタンダードナンバーにうたいつがれる、実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに、永遠のテーマに迫る著者渾身の長編小説。第四十一回谷崎潤一郎賞受賞作。


師走

2013年12月14日 21時43分09秒 | 身辺雑記

年末業務、毎日残業で忙しい。
クライミング練習、読書も出来ず、まいっている。
(更新も滞って申し訳ない)

寒さもこたえる12月。
それなのに、寝室のエアコンが故障した。
さらに、寝室の照明もタマ切れ。
掃除、洗濯、買い物の後、Joshinに行ってきた。
購入したのは次の3つ。

①エアコンPanasonic・CS-283CXR(8-10畳用)本体+リサイクル費用等¥140,000円
②LEDエコナビ照明器具PanasonicHH-LC533AR¥18,800円
③電話機+子機2台¥17,800円

以上、覚書として書いておく。

追記
①については、配管延長費2100×2=4200円追加支払い。
2階なので、配管を延長する必要かあったから。
コンセントの形も変わった・・・モーターの容量が大きくなったから。
工事は翌日12/15(日曜)13:30~15:45くらいまで。
午前中は、定番の掃除、洗濯の後、植木屋さんと剪定の相談し、
その後、図書館、本屋、散髪、買い物で時間がつぶれた。
よって、クライミング練習は出来なかった。


さくら草

2013年12月09日 22時34分49秒 | 身辺雑記

花を買って、植木鉢に植え替えた。
(夏に買った花たちは、とっくに枯れて寂しい状態だったので)

下の写真は、左から、桜草、アリッサム、ジュリアン。
桜草は外来種を入れると400種類くらいあるそうだ。
一番右端も、左端と同じく桜草。
来年1月には花が咲く、と思う。
(@210×2,@75×3,@250×2,@125×3)


桜草と聞いて、真っ先に思い出すのがプリムローズ。
永井するみさんの「さくら草」、別名プリムローズ殺人事件。
ジュニアブランド業界を舞台に展開するミステリ。

【ネット上の紹介】
殺害された少女がまとっていたのは、ローティーンに人気のジュニアブランドだった。被害者がそのブランドに夢中だったことに、いち早く気づいた少年課の刑事・白石理恵は、特別に捜査に加わることとなる。そのブランドの服を着た少女に執着する男の犯行、と見た捜査が行き詰まる中、第二の事件が発生。ブランド側の思惑も絡まり事件は思わぬ展開を見せる。華やかな警察小説登場。


阿武山

2013年12月08日 21時34分31秒 | 登山&アウトドア(関西)

阿武山に登ってきた。
安威川沿いを自転車で走って、登山口まで30分。
山頂まで登って降りるのに1時間。
身近に楽しめる山が近くにあってありがたい。

北摂の山々

柿がなっていた

吹田方面


「ニッチを探して」島田雅彦

2013年12月06日 23時56分04秒 | 読書(小説/日本)

「ニッチを探して」島田雅彦

妻と大学生の娘を残して銀行員が失踪する。
普通のサラリーマンがホームレスに。
都会を舞台にしたサバイバルストーリー。

例えば主人公・藤原はゲームセンターを訪問する。
両替機やマシーンの下にカネが落ちてないか調べていると、
UFOキャッチャーで、青年二人の会話が聞こえてくる。

P127
――じゃあ、「みくる」を売り払って、焼き肉食おう。
――食えねえって。売ったって二千円にしかなんねえもん。
(中略)
このフィギアを「まんだらけ」に持っていくと、二千円で買い取ってくれる!

こんな感じで、都会でのサバイバルが描かれる。
ホームレス関連の雑学も身につく。
P199
上野公園、隅田公園、新宿中央公園が三大聖地だね。渋谷の宮下公園もそうだったが、整備を理由に排除されてしまったね。
――なぜ、そういう公園に集まってくるんでしょうか?
――炊き出しが頻繁に行われるからだよ。

最後は、銀行支店長と融資先・中国人組織との闘いになる。
サバイバル蘊蓄から一変して、サスペンス風に急展開。
先が読めずに、ハラハラする。

PS
中国残留孤児、ニセ孤児移民、二世、三世による犯罪組織“ドラゴン”についても触れられている。(P287)
怒羅権 - Wikipedia


PS2
サバイバル部分だけなら、「失踪日記」を読んだ方がいいような気がする。(よけいなお世話だけど)
 
立ち読み

【ネット上の紹介】
背任の容疑をかけられ、妻と娘を残し失踪した元銀行員の冒険。飢えに耐え、星を見ながら、草の上で眠り、雨に濡れ、虫に刺されながら、死者と対話したり、神に祈ったりし、なまった筋肉に鞭打ち、鈍った勘を研ぎ澄まし、わずかばかりの食料を調達してくる。所持金ゼロでも暮らせるニッチは何処にある?

「 ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」ニコ・ニコルソン

2013年12月04日 22時35分46秒 | 読書(マンガ/アニメ)

「 ニコ・ニコルソンのオトナ☆漫画」ニコ・ニコルソン

漫画で漫画を紹介する。
話題のマンガ52作品。
ツボを押さえ楽しく紹介してくれる。

「3月のライオン」の紹介ページ↓


PS
著者の実家は、宮城県の海沿いの町、山元町。
2011年3月11日、津波により壊滅し、母と祖母は、一命をとりとめる。
家を再建するまでの様子を描いた作品を、以前紹介した。
「ナガサレール イエタテール」ニコ・ニコルソン

【ネット上の紹介】
話題のマンガ全52作品、マンガで感想描いたらこうなりました。月刊誌『デジモノステーション』の人気連載、ついに単行本化! “マンガで描いた新感覚マンガガイド"連載4年分をカラーで収録。+単行本描き下ろしも。今、全ての“オトナ”がたしなむべきマンガがわかる、これがニコルソン的マンガコラムなのです。◆紹介マンガ作品『鈴木先生』『少女ファイト』『3月のライオン』『GIANT KILLING』『宇宙兄弟』……ほか人気マンガ全52作品!ニニニのニコルソン 妖怪探訪 in 境港、第1部・第2部関連マンガガイドも!!

「暗殺者たち」黒川創

2013年12月01日 09時24分23秒 | 読書(小説/日本)

「暗殺者たち」黒川創

日本近代史に興味がある方必読。
1909年10月26日、伊藤博文は安重根に暗殺される。
その伊藤博文もかつて、暗殺者であった。
夏目漱石の新たに発見された文章から当時の状況を読み解いていく。
幸徳秋水、管野須賀子、荒畑寒村の三角関係に触れながら物語が進行していく。
文芸作品ではあるが、ほとんどノンフィクション。
講談社や文春の「新書」として出版されてもおかしくない内容。
19世紀末から20世紀初めの反政府運動が重層的に表現される。

P120
1881年3月、皇帝アレクサンドル二世は、急進化してナロードニキのグループから分かれた「人民の意志」党のテロリストたちのよって、二発の爆弾を投げつけられて、ペテルブルク市内で暗殺されます。このとき、イコン画修行のため、宣教師ニコライによって日本から送り出された女子画学生・山下りんは、この街のネフスキー大通りのホテルに到着したばかりで、大きな爆発音を聞いています。山下りんは満23歳、そして、テロリストたちを現場で指図した女性指導者ソフィア・ペロフスカヤは満27歳でした。また、ひと月ほど前に、59歳のドストエフスキーは同じ街のアパルトマンで急死していました。
13歳のエマ・ゴールドマンがケーニヒスベルクから引っ越してきて、この街の手袋工場の女工となって働きだすのは、さらにその次の年のことでした。

P139
伊藤博文を狙撃した安重根は、すでに、この1910年3月26日午前10時、伊藤殺害からちょうど五ヶ月目の同日同時刻を選び、遼東半島の日本租借地、旅順監獄で処刑されています。
「韓国併合」調印から二日後、8月24日、43歳の夏目漱石は、胃病を悪化させて養生に出むいていた伊豆の温泉地の旅館で、大量の血を吐いて、危篤状態に陥ります。

管野須賀子の手記より(・・・とても興味深い記述である)
P180
寒村は私を、死んだ妹と同じように姉ちゃんといい、私は寒村をかつ坊と呼んでいた。
同棲していても、夫婦というより姉弟と云った方が適当のような間柄であった。ゆえに夫婦として物足りないという感情が、そもそもの二人を隔てる原因であったが、その代わりに又別れての後も姉弟同様な過去の親しい感情は残っている。私は同棲当時も今日も、彼に対する感情に少しも変わりが無いのである。
Kanno.Suga.jpg

【ネット上の紹介】
安重根による伊藤博文暗殺。夏目漱石の「韓満所感」。大逆事件で処刑された幸徳秋水、管野須賀子、そして生きのびた者。二〇世紀初頭、動乱とテロルの世界を、人びとのリアルな姿として語りなおす。一〇〇%の知られざる史実から生みだされた長篇小説。