「韓国カルチャー」伊東順子
P33
「日本では『愛の不時着』が人気だけど、いったいどうして? 他の国ではそうでもないのに」――と、韓国の人によく驚かれるが、理由はいろいろだろう。すぐに思いつくのは主役のヒョンビンの人気が他国より盤石であったこと。そしてもうひとつはドラマの舞台となった「北朝鮮」への感心の高さである。(後略)」
P60
「韓流」という言葉はそもそも中国で作られた新造語だった。それを韓国が取り入れ、日本も飛びついた。2000年代初頭に中国で巻き起こった韓流ブームは、ストレートに北朝鮮にも伝わったのである。
P98
孤独な男性の子守は母親世代までで十分。「風と石と女」に象徴される済州島にしても、男たちは「強い女」を持ち上げながら、実際は女に甘えていたとか。
P197
最近の韓国ドラマは最終的には「和解」が訪れる。信じられないほどの意地悪や騙し合いがあっても、「悪人」は打倒されるか、反省して「善人」に変身して手を取り合う。そうやって人間についての希望を失わないにする。そこには孟子に倣う韓国儒教の「性善説」がベースにある。
P208
1997年の秋、アジア通貨危機が起こり、韓国は「国家倒産」の寸前の段階までいく。
P211
韓国では病院のランクによって、外来診療の自費負担率が異なり、上級総合病院クラスになると6割負担と高率になる。(中略)
ちなみに韓国の医療機関は、医院、病院、総合病院、上級総合病院というランクに分かれている。
P215
「(前略)韓国の小学校ではね、『困っている人を見たら助けましょう』と教えるんです。今、日本の学校ではどうでしょう?むしろ『他人に迷惑をかけないように』じゃないですか?」
P216
医師と聖職者と軍人という3つの職業が並ぶことは、今の日本ではあまりないだろう。
【関連図書】
「韓国社会の現在」春木育美
「韓国現地からの報告」伊東順子
「となりの韓国人」黒田福美
「「不時着」しても終わらない」黒田福美
【ネット上の紹介】
韓国カルチャーが世界で人気を博している。その理由は、それらが韓国社会の“いま”を巧妙に映し出す鏡であるからだ。近年話題となった小説、ドラマ、映画などのさまざまなカルチャーから見た、韓国のリアルな姿を考察する。
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