【ぼちぼちクライミング&読書】

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「火の柱」ケン・フォレット

2024年01月12日 08時26分22秒 | 読書(小説/海外)

「火の柱」(全3巻)ケン・フォレット

『大聖堂』『大聖堂―果てしなき世界』につづく作品。
英国史でも、特におもしろいところ。
群像劇が、ヨーロッパ各地を舞台に展開する。

①P64
「ヘンリー八世は3人の子を残されました」(中略)「長男のエドワード六世は幼くして王位を継がれ、跡継ぎを為す前に去られました。というわけで、そのあと、ヘンリー八世の長女のメアリー・チューダーが王位を継承されました。理屈の上で当然のことですが、もしメアリー女王が子を為さずに他界されたら、王位を継ぐのはヘンリー八世のもう1人の娘、すなわちエリザベス・チューダーということになります」
(中略)
「エリザベスは庶子です!ヘンリー八世は彼女の母親を真に正式な妻としては迎えていません。先妻との離婚を教皇が認めていませんからね」
(中略)
「離婚は議会で承認されています」

①P66
「メアリー・スチュアートはヘンリー八世の姉の孫娘に過ぎません。しかし、エリザベス・チューダーはヘンリー八世の娘です」
(中略)
「メアリーはフランス語とスコットランド語を話すけれども、イングランド語はほとんど話せないと聞いている」

③P23・・・聖バルトロマイの大虐殺
パリでは、市民が無防備な女性や子供を何千人も惨殺している。どうして神はそれをお赦しに鳴るのか?教皇がフランス国王に手紙を送って祝意を表わすとは、いくらなんでもあんまりだ。

③P103
十字架を身につけているのはカトリックの証で、プロテスタントはそれを偶像崇拝と見なしていた。

③P374
結局は、メアリー・チュダー女王―”血塗れのメアリー”―が殺したプロテスタントと同じくらい多くのカトリックの命を、エリザベスも奪うことになったからだ。メアリーは彼らの信仰を咎めて殺し、エリザベスは彼らを反逆者として殺した。

*********

ヘンリー八世のあと、短いサイクルで政権が変わった。
カトリック優勢になったり、プロテスタントになったり。
エドワード6世→メアリー・チューダー→エリザベス・チューダー
ヘンリーの最初の王妃キャサリン・オブ・アラゴン
↑ヘンリーの最初の王妃キャサリン・オブ・アラゴン
メアリ-1世を生む。
メアリーは、プロテスタントを大量処刑してブラッディ・メアリーと言われる。
ヘンリーの2番目の王妃アン・ブーリン、1534年に描かれた肖像画の模写
↑ヘンリーの2番目の王妃アン・ブーリン
議会はキャサリンとの離婚を認めたが、バチカンは認めなかったので、「庶子」扱いかでもめる。エリザベス1世を生む
ヘンリーの3番目の王妃ジェーン・シーモア
↑ヘンリーの3番目の王妃ジェーン・シーモア(エドワード6世を生む)
エドワード6世は、マーク・トウェイン「王子と乞食」の主人公。

ややこしいのは、メアリー1世がもうひとりいること。
スコットランド女王=メアリー・スチュアート。(カトリック)

メアリー=マリア、なのでカトリック系の方に好まれる名前。
カトリックはマリア崇拝なので、教会にマリア像があったり、マリア様の肖像画が飾ってあるのは、カトリック教会。
プロテスタント教会は、マリア崇拝せず、教会内も飾り立てていない。
それにしても、キリスト教徒どうし、なぜ殺し合うのか?
教祖イエス・キリストも想定外と思われる。
結論として、宗教には過激な要素が織り込まれている、と。
それはイデオロギーと似ている、と感じた。

「プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで」深井智朗 

「キリスト教と戦争」 石川明人

【ネット上の紹介】
16世紀中葉のイングランド。大聖堂を擁する河畔の商業都市キングズブリッジで貿易を営むウィラード家は、カトリックでありながらもプロテスタントに対しても寛容な家柄だった。一方、商売敵でもあるフィッツジェラルド家は頑ななカトリックで、両家の仲は決していいとは言えなかった。ネッド・ウィラードとマージェリー・フィッツジェラルドは恋仲だったが、彼女の両親の反対にあって引き裂かれる。失意のネッドはサー・セシルを頼ってエリザベス・チューダーの下で仕事をするようになるが…。

「家なき娘」エクトール・マロ

2023年08月30日 06時01分47秒 | 読書(小説/海外)

「家なき娘」エクトール・マロ

「家なき娘」再読。(前回読んだのは2019年4月)
本書はフラマリオン社版挿絵入り大型本による全訳。
挿絵も初版H・ラノスのもの。
訳者によると、原書はには章タイトルがなく、数字だけが記されている、とのこと。訳者・二宮フサさんが編集部と相談してつけたそうだ。

エクトール・マロと言えば、日本では「家なき子」(1878年)が有名。
その15年後に上梓されたのが、「家なき娘」(1893年)。

「家なき子」原題:Sans famille=家族なし、家族がいない
「家なき娘」原題:En famille=家族で、家族のように、家族と共に

「家なき娘」は「家なき子」のだいぶ後に出版されたが、
タイトルから対になる作品だと分かる。

物語後半の舞台となるのは、架空の村マロクール。
モデルは、ニエーヴル川流域の中心部にあるフリクスクール。
訳者あとがきにも、
フリクスクール=マロクール
サン・フレール会社=ヴュルフラン・パンダヴォワーヌ会社、
の図式を連想させずにおかない、とある。

ヒロイン・ペリーヌは、エクトル・マロの孫娘の名前と同じ。
「家なき娘」刊行直後の1893年10月4日に生まれた、とある。P302

日本では「家なき子」が有名と書いたが、
1978年1月1日から12月31日、「ペリーヌ物語」と改題され放送された。
日本アニメーション制作、「世界名作劇場」の第4作、全53話。
これにより「家なき娘」も有名になった。


Wikipediaによると、次のように書かれている。
それまで1年おきに世界名作劇場を手がけ、本作品でも監督として参加が予定されていた高畑勲が、本作品のタイトル決定後、原作に否定的な立場を見せて監督を拒否したため、急遽『あらいぐまラスカル』を制作中だった斎藤博に監督を依頼することになり、さらに高畑の監督拒否にともなって当初参加を見込んでいた小田部羊一、宮崎駿らも不参加となったため、残った美術監督の井岡雅宏を除いてスタッフの座組みを一から作り直すことになるトラブルがあった。

ヴュルフラン氏がブルジョアで、そこに身を寄せるペリーヌという構図が気に入らなかったのかもしれない。
高畑勲は宮崎駿と仲がよかった。
宮崎駿は、数千人の従業員を擁した一族が経営する宮崎航空興学の役員を務めるブルジョア。大学も学習院卒。
それは、OKなようだ。

以下、「家なき娘」と「ペリーヌ物語」の違いを思いつくまま書いておく。
アニメでは、ペリーヌの母はインド人と英国人のハーフとなっているが、本書では、インド人と書かれている。
だから、ペリーヌは、「ブロンドの髪に琥珀色の肌」
「切れ長でりこうそうでまじめな黒い目が印象的」とある。
「一目ではっきりとわかる混血なのに、すこしも気にならない」。以上P12


アニメはボスニアでの父の葬儀から始まる。
その後、ボスニア→クロアチア→イタリア→スイス→フランスと移動する。

現代なら、クロアチアからイタリア・トリエステに行くには、スロベニアを通らねばならない。でも、スロベニアは登場しない。まだ誕生していないから。

アニメ第4話・クロアチア編で、ペリーヌはオーストリア兵士に取り囲まれる。これは当時クロアチアがオーストリアに支配されていたから。クロアチア独立抵抗運動の貴族も登場している。後に、ユーゴスラビアとなり、再び分裂。
(このあたりの事情を描いた作品に「石の花 」(全5巻)があり、米原万里さんも絶讃されていた。私も読んだが複雑な民族紛争を理解する困難を感じた)

原作はパリに入るところから始まる。
クロアチア独立抵抗運動は描かれていない。
スイス山越えもない。

原作では、ヴュルフランの甥としてテオドールとカジミールの2人登場するが、アニメではテオドールのみ。
アニメではロザリーとランソワーズお祖母様が活躍するが、原作ではあまり活躍しない。ロザリーも両親がいない設定だが、アニメでは父がいる。
食堂も経営していない。

アニメでは犬のバロンが大活躍。
でも、原作では登場しない。(バロン=男爵の意味)
ロバのパリカールは登場する。

ヴュルフラン氏は目の手術をする。
アニメには病名が出ないが、原作では白内障とある。
白内障は水晶体が濁る病気、緑内障は眼圧の病気。

原作ではフィリップ弁護士は登場しない。
逆に、家庭教師のベローム先生は、アニメに登場しない。

ベローム先生の、ペリーヌへのアドバイス
p179
「できるだけ口をきかないようになさい。問いつめられて、どうしてもこたえなければならなくなったときも、とりとめのないことか、漠然としたことしかいわないように。人生には、光るよりもくすんだほうがよく、賢すぎる女の子と思われるよりも、すこしおばかさんだと思われるほうがよいことが、よくあるものです。あなたの場合がそれです。だからあなたは、賢くみえなければみえないほど、いっそう賢いわけですよ。」
 
挿絵がすばらしい・・・初版のH・ラノス

小説では、ペリーヌ11歳から12歳、アニメでは13歳くらいの設定。
それでも、ペリーヌがワインを飲むシーンがある。
フランスでの実情に即した情景だが、子ども向けアニメとして大丈夫なのか、心配になった。放送当時はOKでも、今ならコンプライアンスの絡みでまずいかも。
 
【ネット上の紹介】
フランス人を父に、インド人を母に持つ少女ペリーヌ。インドからやっとの思いで、フランスにたどりついたとき、すでに父は亡く、母もパリで力尽きてしまう。一人ぼっちになったペリーヌは、父の話をたよりに、母の教えを胸に、父の故郷マロクールにむかう。はたして、祖父はペリーヌをむかえいれてくれるだろうか。ペリーヌの父は、結婚が原因で勘当されていた…。「家なき子」で有名な十九世紀フランスの文学者エクトール・マロの傑作。聡明な少女が困難をのりこえ、幸せを得るまでの物語。小学上級以上向。

「大聖堂-果てしなき世界」(上・中・下)K.フォレット

2023年08月21日 08時50分21秒 | 読書(小説/海外)


「大聖堂-果てしなき世界」(上・中・下)K.フォレット

「大聖堂」の続編。
約150年後、14世紀の前半、イングランド・キングズブリッジが舞台。
前作の子孫たちが登場する。
英仏100年戦争とペストが時代背景となる。

前作同様とても面白い。
――悪役の造形が巧いから。
これは大きな要因だ。
悪役が物語を引っ張ってくれる。
これに歴史要素が加味される。
だから万人受けしてベストセラーになった、と思う。

上巻P663
「愛は食べられないわ」アネットがいい捨てて、教会を出ていった。

中巻P11
「良心が咎めるなんていうのは、余裕のある人間の特権だよ」

中巻P279
なぜ神は自分が賛美されることを求めるのだろう?

中巻P515
この病気にかかった者のほとんどは5日以内に死亡した。人々はこれを”大悪疫”――ペスト――と呼んだ。

下巻P561
ギルドを招集する前に、カリストマーティンは主だった会員に個別に会って、あらかじめ彼らの支持を取りつけることにした。マーティンがずっと昔に編み出した手法である。彼のモットーは次のようなものだった。――”会合を開くのは、結果の予想がついてからにせよ”。(英国にも根回しがあったのね)

P564
「町を封鎖しなければならないわ。門をすべて閉じ、防壁に警備員を配置して、だれも入ってこられないようにするの」(14世紀ペストのパンデミックに対してロックダウンを実施。キングスブリッジは武漢か!)

P568
「必ずマスクを着用して、患者に触れたら、そのたびに手を酢で洗わなければなりません」(本作品は、英国で2007年、日本で2009年に発表された。後のコロナを予見するような内容だ)

【感想】
ヒロインのひとりがカリス。
(前作のアリエナに相当)
とても手間がかかって面倒な女性。
著者は、このようなタイプが好みなんでしょうね。

【参考リンク】

「大聖堂」(上・中・下)ケン・フォレット

【ネット上の紹介】
いつか、イングランドでいちばん高い建物を建てる――大きな夢を抱く建築職人のマーティンは、その才能に嫉妬した元親方の策略によって破門され、細々と生計を立てていた。一方、彼の恋人で富裕な羊毛商人の娘カリスは衰退する羊毛市を救うため、老朽化した橋の修復計画に奔走する。
そんな折り、町の橋が崩壊して多数の死者が!
全世界で1500万部のベストセラーとなった『大聖堂』から18年、世界中をふたたび熱狂させた続編が登場。


「大聖堂」(上・中・下)ケン・フォレット

2023年08月07日 10時07分22秒 | 読書(小説/海外)


「大聖堂」(上・中・下)ケン・フォレット

12世紀、イングランドが舞台の群像劇。
1123年から1174年。
途中でスペイン、フランスも舞台となる。

絞首刑のシーンから始まる。
そこにいた娘が呪いの言葉を吐き出す。
その場の全員がおののき震え出す。
魔女が信じられていた時代だから。
これがプロローグ。

この後、圧倒的な筆力で物語が展開する。
面白く読み応えたっぷり、物語の醍醐味を堪能。
中世の世相、宗教事情も分かって興味深い。
全3冊、各600頁あるのでかなりの分量。
躊躇するかもしれないが、読みはじめると止まらなくなる。
お薦め、ぜひ読んでみて。

イギリスの歴史に興味ある方は必読。
解説が養老孟司さんで、こちらも面白い。

PS
この物語で、マーサが報われない。
少し淋しく感じる。

【ネット上の紹介】
いつかこの手で大聖堂を建てたい―果てしない夢を抱き、放浪を続ける建築職人のトム。やがて彼は、キングズブリッジ修道院分院長のフィリップと出会う。かつて隆盛を誇ったその大聖堂は、大掛かりな修復を必要としていた。折りしも、国王が逝去し、内乱の危機が!十二世紀のイングランドを舞台に、幾多の人々が華麗に織りなす波瀾万丈、壮大な物語。


「マリー・アントワネット」シュテファン・ツヴァイク

2021年09月28日 10時45分30秒 | 読書(小説/海外)


「マリー・アントワネット」シュテファン・ツヴァイク

本書の面白さは、最初、享楽的で自分を甘やかすタイプの女性だったのが、不幸になるに従い、「王妃」という器にふさわしい人間となり、本来もっている自分を取り戻していく、この驚愕の変貌にある、と思う。

上巻P17
自分とは何か、これまで一度も問いかけたことのなかったこの女性が、苦しい試練によってようやく己の変貌に気づく。外見の魅力が失われたまさにそのとき、彼女は自分の内に何か新しい偉大なもの、試練なくして得られなかったものが生まれたことに気づく。
「不幸になってはじめて、自分が何者か、ほんとうにわかるのです」――誇りと動揺が相半ばするこの言葉が、ふいに彼女の驚きの口から洩れ出る。

リアンクール公が王に報告する
上巻P327
「バスティーユが襲撃されました!司令官が殺害されました!彼の首は槍先に刺されて、パリ中にさらされています!」。
「それは反乱ではないか」、不幸な君主は驚いて口ごもる。
 だが凶事の先触れは、無慈悲に訂正して曰く、「いいえ、陛下、革命です」。

フェルゼンと王妃
上巻P354
この女性が中傷され侮辱され迫害されて脅されていると知って初めて、ほんとうに心の底から彼女を愛するようになる。彼女が世の中から女神扱いされ、おびただしいお世辞に囲まれている間は身を引いて、彼女が助けを必要とし孤独になって初めて、敢然と彼女を愛したのである。

下巻P28
女性というものは、長い試練を経た確かな感情に従うときほど、誠実で高貴なときはない。そして王妃は、人間的にふるまうときほど王者らしいときはない。

下巻P60
(前略)王冠、子どもたち、自分の生命、全てを大規模な歴史的動乱から守らねばならなくなってようやく、自分自身の中に抵抗力をさがし、これまでは利用することなく貯蔵してあった知性と行動力を、いきなり引き出してくる。ついに水源を探りあてたのだ。
「不幸になってはじめて、自分が何者かわかります」という、美しく感動的な言葉が、彼女の手紙の中にきらめく。

下巻P63
「不幸になればなるほど、ほんとうの友人の真心に感謝せずにはいられません」
(中略)
35歳になってやっと彼女は、自分が何のために特別な運命を与えられたか気づいたのだ。

ランバール夫人に
下巻P209
「白くなってしまいました、不幸ゆえに」という悲劇的な文字とともに、一房の白髪を収めた指輪を友に贈った。

裁判のはじまり
下巻P302
(前略)裁判官の衣装を着込んだ警察官や書記なども相手にせず、正真正銘の裁判官、即ち歴史に対して、彼女は答えるのだ。
「いったい、いつになったらあなたは本来のあなたになるのでしょう」と20年前、彼女の母マリア・テレジアは悲嘆して書いてよこした。今、死を直前にして、ついにマリー・アントワネットは自らの力で、これまでは外からの借り物でしかなかった王者の品位を獲得する。名前は何というか、と言う質問に対して彼女は声を高め、きっぱりと、「オーストリア・ロートリンゲン家のマリー・アントワネット、38歳、フランス国王の未亡人です」。(この裁判シーンは秀逸。相手方との丁々発止のやりとりがあるが、マリー・アントワネットの知性が光る。非常に抜け目なく、巧妙な受け答えで言質をとらせない)

裁判中のやりとり・・・首飾り事件のラ・モット夫人について
下巻P317
「彼女とは会ったことはございません」
「悪名高い首飾り事件において、彼女はあなたの犠牲者だったのではありませんか?」
「それはありえないでしょう。わたしは彼女を知らなかったのですから」
「ではあなたは彼女を知っていたことを、あくまで否認するのですね」
「わたしの思考法ですと、それは否認ではありません。わたしは真実を述べているのであり、これからも真実を申し上げるつもりです」

マリー・アントワネット、死の直前に書かれた手紙
「わたしには友人たちがいました。彼らと永遠に別れなければならないと思うと、そして彼らの苦痛を意識しますと、死んでゆく身でありながらそれが最大の苦しみです。わたしが最後の瞬間まで彼らのことを思っていたと、せめて知っていてくれますように。(後略)」

フェルゼンの日記
下巻P334
「彼女があの最後の瞬間にたったひとりきりで、話し合いという慰めもなかったということが、自分の数ある苦しみのうち最大の苦しみである」

【関連図書】

「 美術品でたどるマリー・アントワネットの生涯」中野京子
ルイ16世の遺書
P165
「我が妻には、わたしのせいで彼女の身にふりかかってしまった不幸、そしてともに過ごした期間にわたしが彼女に与えたであろう悲しみについて赦しを乞います」

【感想・コメント】
マリー・アントワネット評伝は数多くあるが、シュテファン・ツヴァイク版が有名でスタンダード。池田理代子さんも、本書を読んで「ベルサイユのばら」を描いた。翻訳は中野京子さんだけど、これ以上の適役はいない。完全新訳、決定版で、旧訳よりずいぶん読みやすくなった。

【ネット上の紹介】
女帝マリア・テレジアの愛娘にして、フランス宮廷に嫁いだ王妃マリー・アントワネット。国費を散財し悪女と罵られ、やがて革命までも呼び起こす。しかし彼女は本来、平凡な娘―平凡な人生を歩めば幸せに生きられたはずだった。贅沢、甘やかし、夫の不能…運命は様々に不幸という鞭をふるい、彼女を断頭台へと導いてゆく。歴史が生み出した悲劇の王妃の真実を、渾身の筆で描き出した伝記文学の金字塔。完全新訳、決定版。


「シンデレラとガラスの天井」ローラ・レーン/エレン・ホーン

2021年09月20日 08時26分27秒 | 読書(小説/海外)


「シンデレラとガラスの天井」ローラ・レーン/エレン・ホーン/颯田あきら訳

フェミニズム童話集。
例えば、眠り姫の話・・・意識を失ってる女性にキスするなんてセクハラなんじゃないの、いくらセレブな王子でも許せない、って視点で展開する。

P7
おとぎ話に出てくる女性たちに微妙な差異というものはありません。あるのはふたつのタイプだけ。すなわち、「悪玉」(紫色のアイシャドウを塗りすぎるタイプ)と「善玉」(眉毛を抜きすぎるタイプ)です。

人魚姫と海の魔女
P13
「いいかい、あんたが脚を手に入れたら、一緒に・・・・・・ヴァギナも手に入れることになる」

海の魔女は人魚姫にコンドームを渡す
P20
「必ずそれを使わせるんだよ」海の魔女は説明しました。「王子は船乗りだ。ということは、ぜったい梅毒で、あそこにいぼがある(後略)」

悪い王妃
P43
「白雪姫に説明されたの。自分はノンバイナリーだから、代名詞は”they"や"them"がいいんだって。(後略)」

P47
「マイクロアグレッション。社会の主流から取り残された人や鏡に対してなされる微妙な侮辱のことです。普通は善意ある人が日常的なやりとりの中でうっかりするものですが、それを悪い王妃がしたとなれば、どんなにひどいことになるか、想像してみてください」

P166
「結婚というのは時代遅れの父権的制度よ。その根本にあるのは経済提携と女性は父親の所有物で、そのあとは夫の所有物だとみなす有害なジェンダー・ロールなの」

【ネット上の紹介】
意識を失ってる女性にキスするなんて、ぞっとする。お金持ちになる方法は、王子との結婚だけじゃない。米国女性コメディ作家が語り直す、陽気で爽やかな現代のおとぎ話。


「ミシンの見る夢」ビアンカ・ピッツォルノ

2021年06月15日 08時31分02秒 | 読書(小説/海外)


「ミシンの見る夢」ビアンカ・ピッツォルノ

19世紀から20世紀、イタリアを舞台にした作品。
疫病により両親を亡くし、祖母に育てられる。
当時、お針子は、お屋敷に出向いて様々な縫い物をした。
祖母から針仕事を習い、ミシンと自分の腕一つで生きていく。
当時のイタリア階級社会での人間模様――友情、別離が淡々と描かれる。

著者はもともと児童文学作家。
本作は大人向けに書いた3作目、とのこと。
大人向け、児童文学の枠組みを超えた良質な作品、と思う。
とてもよかった。今年ベストのひとつ、と思う。

P159
「お金持ちほど頭がおかしいんだよ」こう教えてくれたのは祖母だ。「気のふれ方はひとそれぞれ」というのも。

初めて旅行をして海を見る
P166
こんなふうだとは想像してもみなかった。海は生きていて、眠り込む巨大な動物の背中のようだった。

PS
途中、「ジェイン・エア」を読むシーンも出てくる。


PS
なんとなく「イルカの家」を思い出した。


【ネット上の紹介】
19世紀末、階級社会のイタリア。お屋敷に通って針仕事を請け負うなかで知った、上流家庭の驚くべき秘密とは―ミシンひとつで自由に力強く人生を切り開いた小さなお針子の波瀾万丈の物語。


「砂漠の女ディリー」ワリス・ディリー

2021年03月21日 17時48分35秒 | 読書(小説/海外)

「砂漠の女ディリー」ワリス・ディリー

波瀾万丈、ワリス・ディリーの自伝。
ソマリアの砂漠に生まれ、遊牧民として山羊やらくだの世話をして生活してきたワリス。13歳で老人と結婚させられそうになり、夜明け前の砂漠を走って逃げる。
都会に出て、そこからロンドンで住み込みメイドをする。モデルとして見出され、やがてミラノ、パリ、ニューヨークと渡り歩く遊牧民の生活となり、いつしか「スーパーモデル」と言われる存在に。とてつもない勘と思い切りの良さで人生を切り開いていった女性。
読書の醍醐味の一つは、まるっきり想像もつかないような人生を追体験できること、と改めて気づかせてくれる作品だ。

P104

「あの人がおまえをもらうために、なにをもってきてくれると思う?ん?」
「なんなの?」
「ラクダ五頭だよ」ラクダを五頭もくれると言うんだ」父がわたしの腕をたたいた。
「父さんはおまえを誇りに思うよ」

P410
幸せというのは、なにかをもつことではないということも学んだ。わたしはなにももっていなかったが、とても幸せだった。

【ネット上の紹介】
遊牧民の少女ワリス・ディリーは、夜の砂漠へ逃げ出した。老人と結婚するなんて嫌。自分の人生を生きるため、砂漠の中をひた走る。やがて運命に導かれるようにロンドンへ。写真家の目に止まり、スーパーモデルへの階段を駆け上がる。だが華やかな成功の裏で、ある秘密が彼女を苦しめていた―。衝撃的な女子割礼の事実を公表し、世界的なベストセラーとなった話題作。映画『デザート・フラワー』の原作。


「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ

2021年01月05日 17時39分36秒 | 読書(小説/海外)


「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ

久しぶりに海外小説を読んだ。
評判が良いから、読んでみようかな、と。
確かに面白かった。

後半の法廷シーンも面白いが、それ以上に前半部分がすごい。
最初、母親がDVに耐えかねて出て行く。
次に、兄も出て行く。
最後、父親も出かけたまま戻ってこなくなる。
その時、カイアは6歳。

湿地の小屋でたったひとりで生きなければならなくなる。
貝を掘って売りに行き、魚を燻製にして売りに行く。
友だちはカモメだけ。

P32
高く低く鳴き声を響かせ、カモメたちが輪を描くように降下してきた。そして、カイアの目の前を飛び交い、トウモロコシの粉を放ってやると浜に降り立った。それからしばらくすると、鳥たちは静かにその場で羽を繕うようになった。カイアも膝を横に崩して砂浜に坐った。傍らに大きなカモメが寄ってきて、そこに居場所を定めた。
「今日はわたしの誕生日なの」カイアは鳥にささやきかけた。

P155
「どう言う意味なの?”ザリガニの鳴くところ”って。母さんもよく言ってたけど」カイアは、母さんがいつもこう口にして湿地を探検するよう勧めていたことを思い出した。(中略)
「そんな難しい意味はないよ。茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きている場所ってことさ。(後略)」

P304
夕暮れの潟湖にボートを差し入れながら、カイアはサギに話しかけた。「そこにいていいのよ。その場所はあなたのものなんだから!」

【印象に残るシーン】
湿地でサバイバルする描写に圧倒される。
自然は過酷だが、美しくもある。
自然描写がすばらしい。

村人はカイアを無視し、避けようとするが、黒人の夫婦が色々と世話をやいて助けてくれる。貝を買ってくれたり、服をくれたり。そのシーンも印象に残る。

【備考】
著者は動物学者で、フィールドワークを行い、そのノンフィクションは、ベストセラーになったそうだ。
本書は、69歳で執筆した初めての小説、とのこと。

【おまけ】
読んでいて、なんとなくロバート・R・マキャモンの「少年時代」を思い出した。
老後整理のためだいぶ本を処分したが、まだ手元で持っている。
最後まで、手放せない本、と思う。

【ネット上の紹介】
ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。全米500万部突破、感動と驚愕のベストセラー。


「炎の色」ピエール・ルメートル

2020年08月23日 10時19分59秒 | 読書(小説/海外)
「炎の色」ピエール・ルメートル

1927年、パリから物語が始まる。
マドレーヌは父の莫大な遺産を受け継ぐも、信頼していた複数の者に裏切られ、地位も財産も失い、1人息子のポールも不可解な事故で車椅子の生活となる。
前半3分の1が1927年から1929年が描かれ、残りが1933年を時代背景に復讐劇となる。

P346ー347
「あなたが言っているのは、ファシズムやナチズムですよ。それは別物だ」
 マドレーヌはむっとした。
「でも共産主義は、混乱を撒き散らそうとしているのよ。道徳も神様も否定しているんだわ」
「だったら神様が、あなたを助けてくれましたか?」

P372
代議士の仕事は人づき合いにあると、シャルルは常々考えていた。"司祭のようなものだ。アドバイスを与え、もっとも従順な者たちに輝かしい未来を約束する。司祭もわれわれも、抱えてる問題は同じ。まずは人々がミサに来なければならない”。

【おまけの感想】
当時のフランスを中心としたヨーロッパ情勢が描かれていて興味深い。
本作品はよく出来ていて面白い。
ただ、復讐譚と言うと、「モンテクリスト伯」だ。
残念ながら、これを超える作品は、未だに出ない。

【ネット上の紹介】
1927年2月、パリ。一大帝国を築き上げた実業家が死んだ。その長女マドレーヌ・ペリクールは、幼い一人息子ポールとともに、父の莫大な遺産を受け継いだ。しかし、事故に遭ったポールの看護に努める彼女は、自らを取り囲む悪意に気づかなかった―。やがて裏切られて地位も資産も失った彼女は、復讐を決意する!戦火が迫りつつある時代を舞台とした、息もつかせぬ群像劇。ゴンクール賞・英国推理作家協会賞受賞作『天国でまた会おう』に続く三部作第二弾。

「その女アレックス」ピエール・ルメートル

2020年01月12日 20時17分53秒 | 読書(小説/海外)
「その女アレックス」ピエール・ルメートル

ずっと気になっていたが、やっと読んだ。
面白いと評判の作品。
女性が誘拐される。
誘拐事件、と思ったら・・・これ以上書けない。
ネタバレになってしまう。
自分で読んで、驚いてほしい。
単純に、「面白い」で片付けれられない内容だ。

P240
ある時点から本人は忘れ、気づくのは他人だけになる。

P240
こうしたその場限りの会話というのは真実かどうかを問われないし、会話そのものが目的であって、中身はどうでもいいのだから。

【蛇足】
今後読もうと思っている方は、以下読まないで。
××は××されたが、○○はそのまま。
私は○○が諸悪の根源と思う。
初期の段階で、信田さよこさんのカウンセリングを受けていたら、ここまでならなかったかもしれない。
それにしても、新年早々読んだのが「アレックス」とは!
もっとめでたい内容の作品を選択すべき?
「羊たちの沈黙」なみにサイコなシーンあり。

【ネット上の紹介】
おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。

「家なき娘」エクトール・マロ

2019年04月18日 20時33分57秒 | 読書(小説/海外)
「家なき娘」エクトール・マロ

「家なき子」は、何度も読み返しているが、
「家なき娘」は、1度しか読んでいない。
(「家なき娘」=「ペリーヌ物語」として有名)
急に読み返したくなったので、読んでみた。
やはり面白い、一気読みだ。

ベローム先生の、ペリーヌへのアドバイス
p179
「できるだけ口をきかないようになさい。問いつめられて、どうしてもこたえなければならなくなったときも、とりとめのないことか、漠然としたことしかいわないように。人生には、光るようもくすんだほうがよく、賢すぎる女の子と思われるよりも、すこしおばかさんだと思われるほうがよいことが、よくあるものです。あなたの場合がそれです。だからあなたは、賢くみえなければみえないほど、いっそう賢いわけですよ。」

挿絵がすばらしい・・・初版のH・ラノス

【馬車の説明】


「13・67」陳浩基

2018年01月26日 21時01分27秒 | 読書(小説/海外)
「13・67」陳浩基

次の6編が収録されている。

1.黒と白のあいだの真実…2013年
2.任侠のジレンマ…2003年
3.クワンのいちばん長い日…1997年
4.テミスの天秤…1989年
5.借りた場所に…1977年
6.借りた時間に…1967年

普段ミステリを読まないのだが、本作品は、香港を舞台にしている。
しかも、2013年から1967年まで、順に年代を遡っていく。
そこに惹かれた。読むしかないな、と。

P66
ロー警部、愛情と憎しみは非常に近接した感情だ。

P122
「家は小さいほど楽だ。電気代もかからない」

1997年香港返還の年
P174
ツォウの家族はすでにイギリスへ移民していた。彼もまたイギリスの居住権を取得していたが、香港に残ったまま、警察官の仕事を続けていたのだ。香港では、祖国返還後の社会情勢や生活環境の変化に疑問をいだき、海外への移民を選択するものが多かった。イギリスでは、数百万人の香港市民にイギリス国籍を与える議案が否決されたが、政府は香港政庁の公務員が大量に流出して、政策執行能力が落ちることを懸念し、イギリス居住権取得の施策を打ち出した。資格を満たした公務員の申請を受け入れ、安心して香港で仕事を続けられるようにというのだ。したがって、一部の公務員は、家族がすでにイギリスかイギリス連邦の国へ移住しており、子どもたちにいたっては早くより海外留学し、現地で仕事を見つけるものが多かった。(1997年前後の香港事情は「転がる香港に苔は生えない」に詳しい)



【おまけ】
タイトルの「13・67」の意味は、2013年・1967年の事と思う。
それにしても、構成がすばらしい!
最終話「借りた時間に」P480「豊海プラスチックって知ってるか?」から始まる文章。
これを読んで、第1作「黒と白のあいだの真実」を振り返ると、何とも(感無量)としか言えない気分になる。トリック、人間ドラマ、社会情勢が複雑に交錯した作品だ。

【ネット上の紹介】
華文(中国語)ミステリーの到達点を示す記念碑的傑作が、ついに日本上陸!
現在(2013年)から1967年へ、1人の名刑事の警察人生を遡りながら、香港社会の変化(アイデンティティ、生活・風景、警察=権力)をたどる逆年代記(リバース・クロノロジー)形式の本格ミステリー。どの作品も結末に意外性があり、犯人との論戦やアクションもスピーディで迫力満点。
本格ミステリーとしても傑作だが、雨傘革命(14年)を経た今、67年の左派勢力(中国側)による反英暴動から中国返還など、香港社会の節目ごとに物語を配する構成により、市民と権力のあいだで揺れ動く香港警察のアイデェンティティを問う社会派ミステリーとしても読み応え十分。
2015年の台北国際ブックフェア賞など複数の文学賞を受賞。世界12カ国から翻訳オファーを受け、各国で刊行中。映画化件はウォン・カーウァイが取得した。著者は第2回島田荘司推理小説賞を受賞。本書は島田荘司賞受賞第1作でもある。

「愛憎の王冠」フィリッパ・グレゴリー

2016年08月28日 19時05分53秒 | 読書(小説/海外)


「愛憎の王冠」フィリッパ・グレゴリー

先月読んだ「ブーリン家の姉妹」の続き。
エドワード6世~メアリー、エリザベスの時代を描いている。
女王に道化として仕えたハンナの目を通して語られる。
「ブーリン家の姉妹」より、こちらの方が面白く感じた。

P45
「もし彼がエリザベスから王位継承権を取りあげれば、つぎはフランスの王子と結婚したスコットランドのメアリーだ。スペイン王のフェリペにとってみればイングランドの王位をフランス王の息子に奪われるぐらいなら、悪魔の化身にくれやったほうがましだ。そうは思わないか?」


メアリー(左)とエリザベス 

メアリーはカトリック、エリザベスはプロテスタント。
そして、ユダヤ人のハンナが語る。
日本人には分かりにくい、微妙な問題。
外国作品を読むときのハードルのひとつ。
それでも、何かを感じたくて読んだ。

【覚書】
ヘンリー八世は6人の妃をもった。
キャサリン・オブ・アガゴン→アン・ブーリン→ジェーン・シーモア→
アン・オブ・クレーヴ→キャサリン・ハワード→キャサリン・パー
最後のキャサリンがエドワード6世と一緒に、エリザベスにも教育をほどこした。
陰の功労者、偉大な王妃と言える。

【ネット上の紹介】
6人もの妻を娶ったイングランド国王ヘンリー8世亡き後、王位を継いだエドワード6世が病弱だったゆえ、水面下では継承者争いが勃発。最初の王妃の娘メアリーと、二番目の王妃で悪名高きアン・ブーリンの娘エリザベスを中心とした醜い争いに、ダドリーをはじめとする貴族らが激しく絡む。女王に道化として仕えたハンナの目を通して語られる裏切りと愛憎の英国版“大奥”の物語、決定版。 


ミスター・パートナー 2016年8月号

2016年07月26日 20時13分32秒 | 読書(小説/海外)


ミスター・パートナー 2016年8月号

今年は、シャーロット・ブロンテ生誕200年。
雑誌で特集が組まれたので、取り寄せてみた。
知らないことが色々書かれていて参考になった。
当時イギリスの衛生状態が悪く、病気が蔓延していたのが分かる。
エミリ・ブロンテは30歳、アン・ブロンテは29歳、シャーロットは38歳で亡くなる。

P15
シャーロットの姉、マライア(11歳)とエリザベス(10歳)が不衛生と栄養失調が原因で結核に感染して命を落としたカウアン・ブリッジの寄宿学校は、『ジェイン・エア』に登場するローウッド女学院のモデルとなった。

P20
『ジェイン・エア』の大ヒットで、発行から2ヶ月後の12月10日、シャーロットはスミス・エルダー社から印税100ポンドの銀行手形を受け、生まれて初めて印税を手にする(1840年代当時の1ポンドは約8万円換算)。初版2500部は3ヶ月以内に完売となって再版がかかり、2月にも印税100ポンドを受けとる。なお『ジェイン・エア』の次作『シャーリー』では、イギリス国内における作品の版権として500ポンドを受けとっている。(中略)
シャーロットの印税は彼女の死後、夫であるアーサー・ベル・ニコルズが管理することになるが、彼はシャーロットの父が亡くなると祖国アイルランドに帰り農夫として余生を過ごす。

[巻頭特集]
●シャーロット・ブロンテ生誕200年スペシャル
  『ジェイン・エア』の物語が生まれた村から

 ◇ブロンテ博物館の舞台裏を初公開!
 ◇日本ブロンテ協会会長に聞く
   日本人はなぜ『ジェイン・エア』が好きなのか?  
 ◇シャーロット・ブロンテ 38年の足跡
 ◇妹エミリーとアンの創作活動
 ◇小説の世界に迷い込む荒野の歩き方ガイド 


◆英国のテレビ番組を探る!
 イギリスの元気な老人たちのドキュメント
  シークレッツ・オブ・グローイング・オールド

◆作家・ジャーナリスト 林信吾の
 時事問題 日英の視点
  第12回「英国のEU離脱」

◆英国ブランド物語
 ヴァルヴォナ&クローラ
  絶品の食材とワインが揃う老舗