【ぼちぼちクライミング&読書】

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「終わらない歌」宮下奈都

2014年01月30日 21時37分56秒 | 読書(小説/日本)

「終わらない歌」宮下奈都

先日読んだ「よろこびの歌」の続編。(→「よろこびの歌」宮下奈都
とても良かったので、すぐ取り寄せ読了。
続編だけど、面白さ失速せず。
レベルをキープ、というか、さらに盛り上がる。
あれから3年後、という設定。

「よろこびの歌」紹介のコメントで、ヒロインの身体能力低すぎ、と書いたが、
著者も分かって書いておられたのだろう。
次のように書かれている。

P105
「身体鍛えなよ」

早希は唐突に話題を変えた。
「鍛えるってどこを」
間に入るように里絵子が尋ねる。トレーニング、といっていた千夏の声を思い出した。この子たちはきっとじゅうぶんに鍛えているだろう。さらにトレーニングするとしたら、どこなんだろう。
「だって、オペラ歌手ってたいてい体格いいじゃない。玲も千夏も華奢でしょう、身体から作っていくことも考えたらどうかな」

ここからネタバレ状態となるので、未読の方、ご注意。

P207
「何を歌いましょうか」
よし、肝が据わった。落ち着いた声が出た。隣で千夏が息を殺してこちらを見ているのがわかる。千夏はきっと驚いている。私がこんなに本気になっているとは思っていなかったかもしれない。
「なんでもいいわよ。あなたのいちばん好きな歌を歌ってください」
(中略)
いちばん好きな歌。とっさに浮かんだのは、大学で日々レッスンを受けているオペラの歌曲ではなく、『麗しのマドンナ』だった。千夏がそこにいたせいかもしれない。十七歳の秋、私を歌うことに引き戻してくれた歌だ。

【ネット上の紹介】
卒業生を送る会の合唱から3年、少女たちは二十歳になった。御木元玲は音大に進学したが、自分の歌に価値を見いだせなくて、もがいている。ミュージカル女優をめざす原千夏が舞台の真ん中に立てる日は、まだ少し先みたいだ…。ぐるぐる、ぐるぐる。道に迷っている彼女たちを待つのは、どんな未来なんだろう。


イタリア・シチリア島

2014年01月29日 21時40分17秒 | クライミング(海外)

長老夫妻がイタリア・シチリア島に行ってこられた。
(「長老」というのは、単なる符号で、二人とも私よりずっと若くて元気)
次にリンクしておく。(メールにて、リンク了解済み)

イタリア・シチリア島ツアー その①

イタリア・シチリア島ツアー その②


「よろこびの歌」宮下奈都

2014年01月28日 21時31分34秒 | 読書(小説/日本)

「よろこびの歌」宮下奈都

読み終わるのが惜しくなる作品。
おそらく、今年度ベスト作品のひとつになる、と思う。
読み終わってから、再読もした。
・・・やはり、おもしろい。
お薦め、です。

音大附属高校の受験に失敗し、新設された歴史の浅い女子校に進学した御木元玲。
何のやる気も出ず、クラスメートとも交わらず、常に一人で行動する。
高校2年になったある日、合唱コンクールで指揮者に選ばれる。

P208
秋に、ちょっとした出来事があった。御木元さんがクラス対抗の合唱コンクールの指揮者に選ばれたのだ。彼女が指名されたのは、音楽家の娘だという噂が広まっていたせいもあるけど、その協調性のなさを腹立たしく思っている人もけっこういたからだと思う。
(中略)
いやいや引き受けたに違いないのに、御木元さんは途轍もなかった。特別としかいいようのない光を私たちに見せてくれた。彼女にしてみれば、特別なつもりもなかったのかもれない。指揮者になったことで光が漏れた、そんな感じだった。
級友たちをどうにか引っ張っていくために四苦八苦する彼女は、自分では歌わず、指揮と指導に徹していた。それでも彼女が各パートの出だしや山場を歌って示す、その歌声に触れただけで身体に鳥肌が立つようなことが何度もあった。

予想に反して、この作品のすばらしさは、合唱コンクールが終わってから出てくる。
御木元玲と原千夏の友情と歌への情熱が、縦糸、横糸として展開する。
さらに、クラスメート1人1人が丁寧に描かれる。
語り手も、各章で変わっていく。
ほんと、すばらしい。

なお、本作品には続編がある・・・「終わらない歌」。
すでに読了済みなので、後ほど紹介する。
終わらない歌 

【蛇足】
もし、作品について、(あえて)瑕疵を挙げるとしたら、ヒロインがマラソン苦手、ってこと。
声楽を志す人が、最下位になるだろうか?
肺活量を鍛えるため、ジョギングとかしないのだろうか?
少し、不思議に感じた。
なお、この点は著者も気になったのか、続編「終わらない歌」(P105)で、元クラスメートに
・・・「身体鍛えなよ」、と言わせている。
*この点について、再度こちらにて記載。→ 「終わらない歌」宮下奈都

【参考リンク】
「本の泉」第84回:今、注目の作家・宮下奈都登場!|著者インタビュー

【ネット上の紹介】
著名なヴァイオリニストの娘で、声楽を志す御木元玲は、音大附属高校の受験に失敗、新設女子高の普通科に進む。挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。しかし、校内合唱コンクールを機に、頑なだった玲の心に変化が生まれる―。見えない未来に惑う少女たちが、歌をきっかけに心を通わせ、成長する姿を美しく紡ぎ出した傑作。

【参考】
読んでいて、荻原規子さんの「樹上のゆりかご」を思い出した。
こちらも、すばらしい内容である。
中公文庫<br> 樹上のゆりかご 

【参考】
文庫本解説が大島真寿美さんである。
「ピエタ」の作者だから、であろう。→「ピエタ」大島真寿美

【ネット上の解説】18世紀ヴェネツィア。『四季』の作曲家ヴィヴァルディは、孤児たちを養育するピエタ慈善院で、“合奏・合唱の娘たち”を指導していた。ある日教え子エミーリアのもとに恩師の訃報が届く―史実を基に、女性たちの交流と絆を瑞々しく描いた傑作。2012年本屋大賞第3位。


「はなとゆめ」冲方丁

2014年01月27日 22時14分22秒 | 読書(小説/日本)

「はなとゆめ」冲方丁

なんだか雑誌のようなタイトルだけど、平安朝が舞台。
清少納言がヒロイン。

「枕草子」と言えば、有名な出だし・・・『春はあけぼの』。
まさか、このフレーズを読んで、涙腺がゆるむ日が来る、とは思わなかった。
ここに至るまで、著者が物語を盛り上げる。
後宮の雰囲気が良く出ている。

二つ気になった点がある。
道長がかなり「悪役」として描かれていること。
もうひとつ、紫式部が登場しないこと。
読者サービスで、出して欲しかったけど。
歌舞伎など、場面に関係なく「義経」を登場させたりする、と聞くし。
物語の流れに不協和音を入れたくなかったのでしょうか?

清少納言と中宮定子様・・・二人の関係は、実際どんな感じだったんだろう?
私の想像では、祐巳と祥子様。
あの「マリア様がみてる」、通称「マリみて」のスールの関係を思い出した。
ただ、違うのは、年上の清少納言が祐巳で、中宮定子様が祥子様、と言う逆転。
(こんなこと言ったら、国文学者に叱られるか?)
清少納言と中宮定子様の年齢差は約10歳だけど、なんとなくそう感じた。

【おまけ】
読んでいて、田辺聖子さんの「むかし・あけぼの小説枕草子」も思い出した。
随分昔に読んだので、記憶おぼろだけど、本作品との印象は異なる。
むかし・あけぼの 〈下〉 - 小説枕草子 角川文庫むかし・あけぼの 〈上〉 - 小説枕草子 角川文庫 

【ネット上の紹介】
わたし清少納言は28歳にして、帝の妃である中宮定子様に仕えることになった。華やかな宮中の雰囲気に馴染めずにいたが、17歳の定子様に漢詩の才能を認められ、知識を披露する楽しさに目覚めていく。貴族たちとの歌のやり取りなどが評判となり、清少納言の宮中での存在感は増していく。そんな中、定子様の父である関白・藤原道隆が死去し、叔父の道長が宮中で台頭していく。やがて一族の権力争いに清少納言も巻き込まれていき…。『天地明察』の異才が放つ最新歴史小説!

阿武山

2014年01月26日 20時08分17秒 | 登山&アウトドア(関西)

昼から天気が良くなってきたので、阿武山に登ってきた。

途中の尾根から

冬らしい樹木

安威川横の農地


「雨のなまえ」窪美澄

2014年01月25日 20時32分44秒 | 読書(小説/日本)

「雨のなまえ」窪美澄

単行本5冊目、今回は、短編集。
窪美澄さんの作品は全て読んでいる。
今回も、とても良かった、レベルをキープされている。
今まで、ハズレはない。

・・・とは言え、今回は、「救い」の無い話ばかり。
カタルシスとは無縁。
行き場のない思い、閉塞感が表現される。
読んでいるこちらまで鬱屈してくる。(でも、読まずにいられない)

5編収録されている。
いずれも雨に関係する話ばかり。

「雨のなまえ」
「記録的短時間大雨情報」
「雷放電」
「ゆきひら」
「あたたかい雨の降水課程」

P45
妻の視点から家族を表現している・・・なんと冷めていることか!
ばたばたと息子が階段を下りてくる音がする。夫に似て、すべての生活音が大きい。水の音がして、トイレから新聞紙を手にした夫が出てくる。こもったにおいが、廊下まで流れてくる。家族なのだから仕方がない。うんざりを通りこしたあきらめの気持ち。縁あって同じ家に暮らしているのに、私の、彼らに対する気持ちは驚くほど冷めている。家具や食器と同じように家族を見ている。その自分の冷たさを、恥じる気持ちも私にはもうない。それが、生活というものを維持していくあきらめなのだとわかっている。

P61
中身はどうあれ、家族というパッケージにくるまれ、生活は続いていた。

P86
夫は黙っている。二人で目も合わさず、テーブルのどこかを見つめている。この人に恋したことも確かにあった。二人の間に生まれた子どもを二人で育てた。それほどの縁があった。それなのに、心は近づいては失望し、それでもまた近づいて、離れていく。それでも同じ家に住み続けることのおろかさを抱え続けたまま、私は澱んだ水たまりのような女になってしまった。

P185
小さな子どもの視点から両親を表現する(巧い!)
自分は、二つの乾電池につながった豆電球みたいだ、と思った。つながってはいるが、理科の実験で見たように、ぴかっ、とは光らない。どちらかと言うと、自分の体から発する何かを、父や母に吸い取られているような気がした。

【参考】
WEB本の雑誌に【作家の読者道】というのがある。
第116回が窪美澄さん。
このインタビューの中で、窪美澄さんが、松谷みよ子さんの『小説・捨てていく話』について触れている。
次のとおり。

「モモちゃん」シリーズの松谷みよ子さんの『小説・捨てていく話』というのがあって、これはご主人と別れる話なんです。松谷さんご自身、劇団をやっていたご主人のためにお金を稼ぐのにご主人はばんばん浮気をする。結局松谷さんのほうから別れるんですけれど、「モモちゃん」を読んでこれを読むと背筋が凍ります(笑)。あのシリーズの背景にはこれがあったのね、という。すごく温度を低くして、「私はそれを~~しました」「私はこれを~~しました」と淡々と書かかれているので、よりいっそう怖いです。

【参考リンク】1
「晴天の迷いクジラ」窪美澄
「ふがいない僕は空を見た」窪美澄
「クラウドクラスターを愛する方法」窪美澄
「アニバーサリー」窪美澄

【参考リンク】2
作家の読者道 第116回:窪美澄 - WEB本の雑誌
【リアル30's】変えてみる?識者に聞く 作家・窪美澄さん(46) - 毎日jp

【ネット上の紹介】
妻の妊娠中、逃げるように浮気をする男。パート先のアルバイト学生に焦がれる中年の主婦。不釣り合いな美しい女と結婚したサラリーマン。幼なじみの少女の死を引きずり続ける中学教師。まだ小さな息子とふたりで生きることを決めた女。満たされない思い。逃げ出したくなるような現実。殺伐としたこの日常を生きるすべての人に―。いまエンタメ界最注目の著者が描く、ヒリヒリするほど生々しい五人の物語。


昨年の読書2013.1-2013.12

2014年01月22日 08時39分38秒 | 読書(ベスト)


昨年の印象に残った本をまとめてみた。
もっと少なく絞り込もうと思ったけどこれが限度。
でも、もし1冊を挙げろ、と言われたら、
「竹林はるか遠く」・・・になるかな。


【ノンフィクション】
「竹林はるか遠く 日本人少女ヨーコの戦争体験記」ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ
「小蓮(シャオリェン)の恋人 新日本人としての残留孤児二世」井田真木子
「エンジェルフライト~国際霊柩送還士」佐々涼子
「日本の路地を旅する」上原善広
「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」門田隆将
「ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて」安田浩一
「死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う」森達也

【エッセイ・コラム】
「99%対1%アメリカ格差ウォーズ」町山智浩
「もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら」工藤美代子
「親ケア奮闘記」横井孝治
「民族衣装を着なかったアイヌ」瀧口夕美
「涙と花札」金惠京
「島へ免許を取りに行く」星野博美

【小説】
「残月 みをつくし料理帖」高田郁
「いちばん長い夜に」乃南アサ
「わたしをみつけて」中脇初枝
「天空の犬」樋口明雄

「おれのおばさん」佐川光晴
「海の見える街」畑野智美
「アニバーサリー」窪美澄
「螢草」葉室麟
「さようなら、オレンジ」岩城けい

「地のはてから」(上・下)乃南アサ
「暗殺者たち」黒川創
「ソロモンの偽証」宮部みゆき
「王妃の帰還」柚木麻子

【マンガ・その他】
「みずほ草紙(1)」花輪和一
「風童」花輪和一
「凍りの掌(て) シベリア抑留記」おざわゆき
「夜見の国から 残虐村綺譚」池辺かつみ
「3月のライオン」(9)羽海野チカ
「チャンネルはそのまま!」(6)佐々木倫子
「フイチン再見(ツァイチェン)!」(1)村上もとか
「人間仮免中」卯月妙子
「失踪日記」吾妻ひでお
「うちは精肉店」本橋成一


「虹、つどうべし 別所一族ご無念御留」玉岡かおる

2014年01月20日 20時59分07秒 | 読書(小説/日本)

「虹、つどうべし 別所一族ご無念御留」玉岡かおる

玉岡かおるさん・・・以前から気になっていた。
一度読んでみたい、と思っていた。
今回、「戦国」を時代背景に書かれた。
ネット上の紹介は・・・
黒田官兵衛から終戦工作の命を受け、その渦中に送り込まれた女間者
さっそく借りて読んでみた。

夥しい餓死者を出し、戦国史上稀にみる悲惨な篭城戦となった三木合戦、とある。
いったいどのような状況だったのか?
あまり知られていない、播磨の状況が分かった。
いずれ、他の著書も読んでみようと思っている。

【参考リンク】
玉岡かおる公式サイト

【ネット上の紹介】
夥しい餓死者を出し、戦国史上稀にみる悲惨な篭城戦となった三木合戦。黒田官兵衛から終戦工作の命を受け、その渦中に送り込まれた女間者・希久が直面した過酷な運命とは?絶望の淵に射し込んだ一条の光を哀感溢れる筆致で描く「女の戦国絵巻」。渾身の書き下ろし。


第150回芥川賞・直木賞

2014年01月19日 10時30分21秒 | 読書(小説/日本)

第150回芥川賞・直木賞が発表された。
次のとおり。

第150回芥川賞は小山田浩子さんの「穴」に決定しました

第150回直木賞は朝井まかてさんと姫野カオルコさんに決定しました
 
【ネット上の紹介】
仕事を辞め、夫の田舎に移り住んだ夏。
奇妙な獣の姿を追う私は、得体の知れない穴に落ちた。


【ネット上の紹介】
柏木イク、昭和33年生まれ。いつも傍らに、犬。
犬から透けて見える飼い主朝井まかて
の事情。『リアル・シンデレラ』以来となる長編小説! 
 
【ネット上の紹介】
樋口一葉の歌の師匠だった中島歌子が、水戸天狗党の妻として過ごした幕末。
苛烈な運命に翻弄された女の一生を、巧緻な筆で甦らせる。


「モモちゃんとアカネちゃんのほん」松谷みよ子

2014年01月17日 21時47分52秒 | 読書(小説/日本)


「モモちゃんとアカネちゃんのほん」松谷みよ子

このシリーズは全部で6冊ある。
約30年にわたって書かれた人気作品。
①「ちいさいモモちゃん」1964年
②「モモちゃんとプー」1974年
③「モモちゃんとアカネちゃん」1974年
④「ちいさいアカネちゃん」1978年
⑤「アカネちゃんとお客さんのパパ」1983年
⑥「アカネちゃんとなみだの海」1992年

先日、「自伝じょうちゃん」、「小説・捨てていく話」を読んだ。
本シリーズは、松谷みよ子さんの実生活とリンクしている。
児童書で初めて『離婚』を扱った作品、とも聞いた。

いったい、どう反映されているのか気になって、図書館で借りて調べてみた。

3巻目、「モモちゃんとアカネちゃん」で、パパとママが、『お別れ』する。
最初、予兆がある。
パパが家に帰ってこなくなり、代わりに「くつ」だけが帰宅するようになる。
やがて、「死に神」がやってくる。
どうしたら、死に神から逃れることができるのか?
ママは森のおばあさんに相談に行く。
以下、森のおばあさんとママの会話。

P131
「あるく木とそだつ木が、ちいさなうえ木ばちの中で、根っこがからまりあって、どっちもかれそうになるところへきているんだよ。もちろん、うえ木ばちの中で、おたがいよりそってそだつ木もあるし、大きくそだつ木に、つたがからまるようにくらしていくこともある。だがねえ、あるく木というもんはかなしいもんだ。あるかないではいられないのさ。」
「あるいてもいいんです。あるいちゃいけないなんていってません。あるきかたなんです・・・・・・。」
「それはわかっているよ。」
おばあさんは、くっくっとのどでわらいました。
「でもおまえさんは、やどり木にはなれない。だからしかたがないのさ。」

P135
ママとパパは、いろいろおはなしをして、さようならをすることにきめました。
ママがモモちゃんに、
「ママとモモちゃんとアカネちゃんと三人で、森のむこうの町へおひっこしをするのよ。」
というと、モモちゃんはびっくりして、それからかなしそうなかおをしました。つぎにはねあがって、
「トラックにのせてね!」
とさけびました。

【参考リンク】
モモちゃんの部屋(作者公式サイト)

ちいさいモモちゃん / 財団法人大阪国際児童文学館 子どもの本100選

「自伝じょうちゃん」松谷みよ子

「小説・捨てていく話」松谷みよ子

【こぼれ話】
ウィキペディアによると、次のように書かれている。

6巻あとがきによると当初は2巻で終わる予定だったが、当時まだ5歳だった次女が「モモちゃんのモデルは姉だ。なら続きが出れば、自分に父がいない理由も判る」と気づき、松谷に続編をせがんだことで、出たという。

なお、パパは、「モモちゃんのなみだの海」で死亡する。


「小説・捨てていく話」松谷みよ子

2014年01月14日 21時58分44秒 | 読書(小説/日本)

小説・捨てていく話
「小説・捨てていく話」松谷みよ子

先日、松谷みよ子さんの伝記「じょうちゃん」を読んだ。(→「自伝じょうちゃん」松谷みよ子
この本が続編に相当する。
『小説』となっているが、すべて実際起こったこと、と感じる。

前作「じょうちゃん」では、小さい頃から離婚に至るまでが書かれている。
本作は、タイトルどおり「離婚」に焦点を当てて、その後を描いている。
別れても別れきれない。
『捨てる話』、なのに、『捨てきれない想い』が、書かれている。

P14
それから長い歳月が経ち、別れますと夫に告げたとき、夫は信じられないようでした。
「君はなんでも古いものを大切にするひとじゃないか」
そうです。でも心だって、すうっと割れることもあるんですよね。

P88-89義父との会話
「ところで蕗ちゃん、今度のこと、どうしただい」
(中略)
「踏んで歩かれましたから」
「そうか」
舅もただひとこと、そういいました。 
(中略)
しかし、長い歳月を経たいま、もうすこしいいようはなかったものかと、考えてみるのです。
「言葉が通じなくなりました」
こんないいかただって、できたでしょう。そのほうがより真実ではなかったか。
もっとも通じないと一方的に思っていた私ですが、あのひとのほうも、なにをいっても表面的にしかとらえない私に絶望したのかもしれません。
「舌切り雀のばあさまが、舌を切ることもできなくて逃げてきました」
こんなふうにいえたら、とも思うのです。

P184
人間の暮らしには、ハレとケがあります。あのひとの本をまとめる、供養する、それはハレの世界であり、写真に蝋燭をあげ、水を供える、守ってくださいと念じる、その日常はケの世界でしょう。しかし、ハレともケとも分かち難い心の奥に、ヘドロがつもった沼がありました。
(中略)
のぞかれて、いや、のぞかせて蛇の女房は蛇となりました。そう思ったとき、人間の殻をすっぽり捨てたくなりました。ハレもケも、なにもかも。
(ここから「捨てる話」のタイトルがきているのか?)

P187
あの人に対する愛があるとすれば、それは戦友愛かもしれない、ふと思いました。生きるか死ぬか、戦時を、戦後をくぐってきた戦友です。そして変革の時代、乱世の時代を貧しくはありましたが手を携え、夢に向かって生きてきたと思うのです。
となれば同志愛というべきか。捨てきれずにかかえてきたもの。
 申しおくれましたが私は三歳年上の姉さん女房でした。

民話風の喩えもあり、深い味わいがある。
本来どろどろしてる話なのに、清澄な雰囲気さえ漂う。
すばらしい文章力、と思う。

【参考】
WEB本の雑誌に【作家の読者道】というのがある。
第116回が窪美澄さん。
このインタビューの中で、窪美澄さんが、松谷みよ子さんの『小説・捨てていく話』について触れている。
次のとおり。

「モモちゃん」シリーズの松谷みよ子さんの『小説・捨てていく話』というのがあって、これはご主人と別れる話なんです。松谷さんご自身、劇団をやっていたご主人のためにお金を稼ぐのにご主人はばんばん浮気をする。結局松谷さんのほうから別れるんですけれど、「モモちゃん」を読んでこれを読むと背筋が凍ります(笑)。あのシリーズの背景にはこれがあったのね、という。すごく温度を低くして、「私はそれを~~しました」「私はこれを~~しました」と淡々と書かかれているので、よりいっそう怖いです。

「雨のなまえ」窪美澄でも触れたけど、再録しておく)

【ネット上の紹介】
夫婦とはまことに切ないものです。小さな劇団を共に築いた、一組の夫婦の別れと絆。
[目次]
薔薇の家;電気釜のうた;猫の会議;靴;滝;死の仮面;親指姫;2つの縁側;雨;山姥の林;狼;踏切り;2つの手紙;モスクワにて;夫婦漫才;死;ストップウォッチ;人形;ある埋葬;葬式泥棒;蝋燭

【参考リンク】
松谷みよ子「小説・捨てていく話」


今年最初のポンポン山

2014年01月13日 20時36分18秒 | 登山&アウトドア(関西)

ポンポン山に登ってきた。
登りは神峰山寺から本山寺経由で山頂、下りは水声の道。
登り2時間弱、下りも2時間弱。

本山寺から少し行ったところ

山頂間近

山頂は閑散としていた(ベンチの上にあるのは私のザック)

さすが水声の道・・・水が澄んでいる


ROCK & SNOW 062 冬号 2013

2014年01月12日 21時07分07秒 | 読書(山関係)

ROCK & SNOW 062 冬号 2013
ROCK & SNOW 062 冬号 2013

遅くなったが、気になった記事をピックアップ。

①今回の特集は『会心の登攀』。
P40遠藤由加さんの記事がよかった。
8000m無酸素アルパイン、ビッグウォールA5、・・・これだけでも十分すばらしい。
さらに、スペインで8b+をRPされた。

年齢とともに、限界を押し上げるのは困難となってくる。(痛切に、日々感じている)
それでも、練習とメンテを続けるのは、大変な労力を必要とする。
(練習量に比例して上達する若者には、解らないでしょうね)
だから、この記事は励みになる。


②P93-95
シングルロープ・テスト。
細いロープが増えてきた。
ビレイディバイスとの相性はどうか?
細い=軽い、故に、細いロープが普及する。
問題は、細すぎるとビレイしにくい、止めにくい、ってこと。
ビレイディバイスとの相性もある。

私のアドバイスは、次のとおり。
A、ビレイヤーをころころ変えない。(知らない人に頼まない)
B、信頼できる方に頼む。
C、細いロープを使用するときは、ビレイヤーの了解を得る。
D、ビレイディバイスは、何を使うのか、確認する。
E、ロープとの相性について、お互いチェックする。

F、非力&不慣れな方のビレイ、細いロープ、ロングフォール、体重差10kg以上・・・この4つが揃うと事故のもと。

【参考】
アルテリアのHPでバッド・ビレイヤー動画が掲載されている。
綺麗なネエちゃんに気を取られて、ビレイがおろそかになる。
ビレイ中に携帯に出たり、とか。
笑えるけど、笑い事じゃない!

The World's Worst Belayer - Bad belaying techniques

P113-115
ジョン・バーカーの記事。
世界中のクライマーに影響を与えたジョン・バーカー。
2009年7月5日、フリーソロで亡くなられた。(合掌)

【ネット上の紹介】
ROCK & SNOW 062 冬号 2013
特集:会心のクライミング
世界を震撼させたウエリ・シュテックのアンナプルナ南壁ソロ28時間、
マイク・リベツキによるグリーンランドの未踏の大岩壁登攀、
日本のギリギリボーイズたちが繰り広げる瑞牆山での連続登攀、
そして佐藤裕介の宿願であった「冬の称名滝初登攀」など、
トップクライマーたちが経験したベストクライミングをそれぞれが回想し、レポートする。
第2特集:山岳滑降の現在形2013【日本のスキーアルピニズム】
三浦大介による「中部山岳急斜面スキー滑降の実践とグレーディングの試み」、
加藤直之の「滑り手のためのアルピニズム考」
ガイド=(国内)城ヶ崎ボルダー、
(海外)トゥラミメドウズ
レポート:2013W-CUP総括
第8回ピオレドール・アジア速報 レユニオン島の渓谷登攀
用具企画:9mmシングルロープ


くわい

2014年01月12日 10時01分32秒 | 身辺雑記


くわいは、「芽が出る」と縁起が良いそうだ。(ちなみに「午年」もウマくいく、と縁起がよい)
よく行く八百屋で、おせち料理の定番「くわい」が安くなっていた。
それで、つい買ってしまった。(正月料理で、くわいが一番好き、なので)

大きなものと小さいのと、2種類買った。
左がおおきなくわい。
右端の小さなくわいと比べてみて、その巨大さが分かる。
真ん中の白いくわいは私が包丁で皮をむいたもの。 
(芽の部分は爪でむく・・・大きなくわいは3つ200円)


「あなたの人生、片づけます」垣谷美雨

2014年01月11日 22時03分40秒 | 読書(小説/日本)

「あなたの人生、片づけます」垣谷美雨

部屋をかたづけられない人は多い。
・・・私もそうだけど。(床の上に本、書類、モノが散乱)
片づけ屋・大庭十萬里は、一見普通のおばさん。
このおばさんが、部屋の掃除、整理整頓を指南してくれる。
しかし、それだけじゃない。
同時に、心までクリーニングしてくれる。

P201
「ですが、これは家電四品目ですよ」
「カデンヨンヒンモク?」
「家電四品目というのは、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機のことで、市の粗大ゴミには出せないんです。新しいのに買い替えたときに電器屋に引き取ってもらわないと、あとで面倒ことになるんです。引き取ってくれる業者を自分で捜さなきゃなりませんし、そうなるとリサイクル料以外にも引取料が必要で、これが結構高いんですよ」

P207
「考えてみれば、日本人のほとんどが〈成り上がり〉だったんです。戦後の高度成長期に突入し、三種の神器と言われた白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫を買い揃えるために頑張って働いた」
「ええ、そうでした」
「戦争による質素倹約の反動もあったのか、ファッション雑誌をめくり、おしゃれに際限がなくなった。数年ごとに車を買い替え、洋風家具を買い揃え、家の中を飾り立てた・・・・・・」

P208
「お嬢さんがおっしゃるように、女も五十歳を過ぎたら死ぬ用意をすべきだと思います。(後略)」

【ネット上の紹介】
結婚適齢期を過ぎた独身OL、連れ合いに先立たれた老人や資産家女性、一部屋だけ片づいた部屋がある主婦…。『部屋を片づけられない人間は、心に問題がある』と考えている片づけ屋・大庭十萬里は、原因を探りながら手助けをしていく。この本を読んだら、きっとあなたも部屋を片づけたくなる!

【おまけ】
P105に『心もお掃除いたします』とあるが、
このフレーズを読むと近藤史恵さん『掃除人・キリコ』シリーズを思い出す。
(こちらも、お薦め!)