「画家とモデル」中野京子
中野京子さん、最新刊。近くの書店に無かったので、取り寄せて読んだ。
P98
シャガールの本名は、モイシェ(=モーゼ)・セガル。ユダヤ人とわかる。帝政ロシア領ヴィテブスク(現ベラルーシ)のユダヤ人強制居住区で生まれた。当時のロシアには、全世界のユダヤ人の4割にあたる500万人が暮らしていたという。
ユダヤ人迫害といえば、ナチスのホロコーストが真っ先に思い出されるが、実はロシアも凄惨な点では負けていない。大規模なポグロム(集団的計画的ユダヤ人迫害・虐殺)が19世紀後半から20世紀前半にかけ、ロシア全土でくり返された。
(「屋根の上のバイオリン弾き」は、ウクライナ地方のポグロムを描いた作品だ。ブロードウェイでヒットしたが、ニューヨークは5人に1人がユダヤ人と言われるユダヤ密集地帯・・・だから受け入れられた、と思うし、世代の断絶、価値観の違い、と言う普遍的なテーマもあって一般にも受けた、と思う。関係ないけど、9.11では貿易センタービルが狙われた。これってユダヤ密集地帯が関係ある、と思う?)
P106
(前略)幸せな結婚生活を送った男は必ずと言っていいほど再婚する。また母親の大のお気に入りで育った男は、女性に甘えなければ生きてゆけない。シャガールはどちらにもあてはまる。
P152
この年(1525年)、ルターは、貴族出身で16歳年下の元修道女カタリーナを妻に迎えた。(中略)ルターは以前から、結婚禁止は自然に反すると主張しており、主張どおり自らも実践したことを公表したのだ。こうしてカトリック神父が生涯独身なのに対して、プロテスタント牧師は妻帯が許されて今に至る。
【おまけ】
ニューヨークに密集するユダヤ人が、避暑地として訪れるのがキャッツキル山地で、別名「ユダヤ人のアルプス山脈」(the Jewish Alps)と言われた。
――あの「ダーティ・ダンシング」も、「マーベラス・ミセス・メイゼル」セカンドシーズン④⑤⑥もキャッツキルが舞台だ!
私は「ダーティ・ダンシング」のファンなので、「マーベラス・ミセス・メイゼル」でキャッツキルが出てきたとき、とても嬉しくなった。
【ネット上の紹介】
名画誕生秘話と画家の秘めた想い!ワイエス、レンピッカ、シャガール、ゴヤ、モロー、ベラスケス、サージェント…名画に刻まれた驚愕の関係を「怖い絵」シリーズの著者が読み解く!
晩年に得た真のミューズ―サージェントと“トーマス・E・マッケラーのヌード習作”
「飛んでいってしまった」―ゴヤと“黒衣のアルバ女公爵”
母として画家として―ベルト・モリゾと“夢みるジュリー”
守りぬいた秘密―ベラスケスと“バリェーカスの少年”“道化セバスティアン・デ・モーラ”
レンピッカ色に染める―タマラ・ド・レンピッカと“美しきラファエラ”
愛する母をマリアに―ギュスターヴ・モローと“ピエタ”
大王と「ちびの閣下」―メンツェルと“フリードリヒ大王のフルート・コンサート”
伯爵の御曹司とダンサー―ロートレックと“ムーラン・ルージュ、ラ・グリュ”
野蛮な時代の絶対君主に仕えて―ホルバインと“デンマークのクリスティーナの肖像”
愛のテーマ―シャガールと“誕生日”
過酷な運命の少女を見つめて―フォンターナと“アントニエッタ・ゴンザレスの肖像”
真横から捉えた武人の鼻―ピエロ・デラ・フランチェスカと“ウルビーノ公夫妻の肖像”
破滅型の芸術家に全てを捧げて―モディリアーニと“ジャンヌ・エビュテルヌ”
妹の顔のオイディプス―クノップフと“愛撫”
宗教改革家との共闘関係―クラーナハと“マルティン・ルター”
画家の悲しみを照り返す―レンブラントと“バテシバ”
呪われた三位一体―ヴァラドンと“網を打つ人”
「世紀の密会」―ワイエスと“ヘルガ・シリーズ”