「枝豆そら豆」(上)(下)梓沢要
ひさしぶりに梓沢要作品を読んだ。
(2007年3月に「「恋戦恋勝」(文庫本「ゆすらうめ」)「女にこそあれ次郎法師」を読んでいらい)
明朗時代小説で、おもしろかった。
宮本昌孝さんの「夏雲あがれ」「藩校早春賦」に匹敵する佳作、と思う。
このような作品を読むと心が安らぐ、ホッとする。
下巻はロードムービーのような感じになって、登場人物と共に街道の旅が楽しめる。
ずっと読んでいたい、って気分になる。
終わり方が少し唐突な印象を受けるのが残念。
もっと続けて、大長編にして欲しかった。
【ネット上の紹介】
静岡新聞等々に連載され、大好評を博した明朗恋愛時代小説!紙問屋の小町娘おそのと侍女お菜津、ふたりの女主人公。江戸の町の運命と転変を描く!
【同著者のお勧め作品】
【参考作品・・・これが明朗時代小説だ!】
ナカガイ高槻店で、スカルパ・セッションが行われた。
(7/26日~29日まで4日間)
私も、週末参加した。
まずは、黄色テープのボルダーサーキットでウォームアップ。
さらに、110手課題をトライ。
その後、休憩して、スカルパ課題をトライした。
結果は・・・(1)~(9)は登れたけど、残り(10)~(15)はダメ、というか、登れる気がしない。
土曜は、インスティンクトで(1)~(9)を登った。
日曜は、スーパーモックでリピート。
日曜は、再トライなので、それぞれ無難に登れた。
やはり、ムーブが分かってしまうと違うものだ。体もなれるし。
(でも、(10)~(15)は登れる気がしない)
このあたりが私の限界なんでしょうね。
もし(難度の高いボルダーが)登れたら、リード・ルートの12後半をOSして、13後半RP可能、と思う。
ではその為に、身体を壊すくらいの練習をするのか?
それは、あまりに危険だし、リスクが大きすぎる。
永井するみさんは2010年9月3日に亡くなられた。
本作品が、著者最後の作品である。
すぐ出版されるかな、と思っていたけど死後約2年を必要とした。
内容は短編集。
それぞれゆるいリンクがある。
ミステリ風味だけど、心理要素に重きを置いている。
特に、「サムシング・ブルー」は傑作。
「日記」型式で物語が展開し、落とし穴がある。
永井するみさんは1961年生まれなので、40歳台で亡くなられたことになる。
1995年に「瑠璃光寺」、1996年に「マリーゴールド」を書かれている。
デビュー当時からレベルが高かったのが分かる。
「マリーゴールド」など、新人のレベルと思えない深みがある。
創作期間は約15年だけど、数々の佳作を残されている。
枯れ蔵 | ★★★★☆ | (新潮社、1997年1月/新潮文庫、2000年2月刊) |
樹縛 | 未読 | (新潮社、1998年4月刊/新潮文庫、2001年2月刊) |
ミレニアム | 未読 | (双葉]、1999年3月刊/双葉文庫、2000年11月刊) |
ランチタイム・ブルー | ★★★☆ | (集英社、1999年12月刊/集英社文庫、2005年2月) |
歪んだ匣 | ★★★★ | (祥伝社、2000年7月) |
大いなる聴衆 | ★★★★ | (新潮社、2000年8月/創元推理文庫、2005年6月) |
天使などいない | ★★★★☆ | (光文社、2001年4月/光文社文庫、2003年6月) |
隣人 | ★★★☆ | (双葉社、2001年7月/双葉文庫、2004年7月) |
防風林 | ★★★★☆ | (講談社、2002年1月/講談社文庫、2005年11月) |
ボランティア・スピリット | ★★★☆ | (光文社、2002年8月/光文社文庫、2005年1月) |
唇のあとに続くすべてのこと | ★★★★☆ | (光文社、2003年1月/光文社文庫、2005年10月) |
希望 | ★★★☆ | (文藝春秋、2003年12月) |
俯いていたつもりはない | ★★★☆ | (光文社、2004年9月/光文社文庫、2007年8月) |
ソナタの夜 | ★★★☆ | (講談社、2004年12月/講談社文庫、2008年1月) |
ビネツ 美熱 | ★★★☆ | (小学館、2005年6月) |
さくら草 | ★★★★☆ | (東京創元社、2006年5月) |
ダブル | ★★★★★ | (双葉社、2006年9月) |
欲しい | ★★★☆ | (集英社、2006年12月) |
年に一度、の二人 | ★★★★☆ | (講談社、、2007年3月) |
カカオ80%の夏 | ★★★★★ | (理論社、2007年4月) |
ドロップス | ★★★★★ | (講談社、2007年7月) |
グラデーション | ★★★★☆ | (光文社、2007年10月) |
義弟 | ★★★★☆ | (双葉社、2008年5月) |
レッド・マスカラの秋 | ★★★★☆ | (理論社、2008年12月) |
悪いことはしていない | ★★★★☆ | (毎日新聞社、2009年3月) |
グラニテ | ★★★★☆ | (集英社、2008年7月) |
マノロブラニクには早すぎる | ★★★★☆ | (ポプラ社、209年10月) |
逃げる | ★★★☆ | (2010年3月 光文社) |
秘密は日記に隠すもの | ★★★★ | (2012年7月 双葉社) |
著作前半は短編が多く、後半は長編が多い。(短編に佳作が多くハズレなし)
「唇のあとに続くすべてのこと」「天使などいない」「ランチタイム・ブルー」「歪んだ匣」「ボランティア・スピリット」「ソナタの夜」
著者の特徴として、不倫を含めて愛情テーマが多い。
「年に一度、の二人」「ドロップス」(文庫本化の際「涙のドロップス」に改題)・・・・ほとんどの作品がそう。
お仕事ミステリ・・・「さくら草」「ビネツ」「欲しい」も印象深い。
成長小説「グラデーション」も佳編。
女子高生が探偵として活躍する「カカオ80%の夏」「レッド・マスカラの秋」もよかった。
【「秘密は日記に隠すもの」ネット上の紹介】
父親の秘密を見つけた女子高生の日記「トロフィー」、母の死を引きずる43歳独身男性の日記「道化師」、姉妹で同居している結婚を控えた姉の日記「サムシング・ブルー」、熟年夫婦の日常を記した夫の日記「夫婦」。まったく無関係な4人だが、本人たちも気づかぬところで、実は不思議な繋がりがあった……。
![クリックして画像を拡大](http://www1.e-hon.ne.jp/images/syoseki/ac/86/32660986.jpg)
「さいごの色街飛田」井上理津子
2012年7月10日、朝日新聞・文化欄で井上理津子さんと本作品が大きく取りあげられていた。
12年にわたる取材で大手メディアが報じない社会の隙間を切り取った、と。
「飛田は、すごく雰囲気のある場所やで」、と聞いたことがある。
以前読んだ「血と骨」でも重要ポイント。
気になるテーマなので、読んでみた。
P94
飛田遊郭の営業形態は「居稼(てらし)」だった。
「居稼」は、妓楼に自分の部屋を与えられ、そこで客を取る形態のこと。芸者のように、置屋でスタンバイし、お呼びがかかって座敷に出向く形態「送り」に対して、こう呼ばれた。座敷には、往来に面して太い格子が巡らされ、本来、娼妓はその格子の中で、外向きに並ぶ。東京の「張り見世」と同じ、この形態のことも、大阪では「居稼」と呼んだ。客は外から覗き込んで、娼妓の品定めをする。娼妓がお客に顔を「照らす」を、当て字にしたもので、「稼ぐ」者が「居る」と書くとは、なんともストレートだ。
P106
滋賀県八日市市新地遊郭では、娼妓になる儀式として、女性を、死者の湯灌に見立てた「人間最後の別れ風呂」に入れ、その後、土間に蹴落とし、全裸で、麦飯に味噌汁をかけた「ネコメシ」を手を使わずに食べさせた。人間界から「畜生界」に入ると自覚させたのだという。「男根神」と書いて「おことさん」と呼ぶ木の棒を強制的に性器に入れる「入根の儀式」というのも行われたという。
P299
「この商売をして、よかったと思うことは一つもない」と、料亭経営者のマツノさんは言った。「現状満足度はゼロ%や」と、女の子を経ておばちゃんになったタエコさんも言った。それでも、みんな、生きていくために飛田にいる。
本書を読んで、飛田に行ってみたいと思う読者がいたとしたら、「おやめください」と申し上げたい。客として、お金を落としに行くならいい。そうでなく、物見にならば、行ってほしくない。そこで生きざるを得ない人たちが、ある意味、一所懸命に暮らしている町だから、邪魔をしてはいけない。
PS
私も、この本を読んで飛田に行ってみようかな、と思ったけど、上記の文章を読んで断念。
PS2
読む価値のある作品と思う。
一読をお勧めする。
【ネット上の紹介】
遊廓の名残りをとどめる、大阪・飛田。社会のあらゆる矛盾をのみ込む貪欲で多面的なこの街に、人はなぜ引き寄せられるのか!取材拒否の街に挑んだ12年、衝撃のノンフィクション。
[目次]
第1章 飛田に行きましたか;
第2章 飛田を歩く;
第3章 飛田のはじまり;
第4章 住めば天国、出たら地獄―戦後の飛田;
第5章 飛田に生きる;第6章 飛田で働く人たち
「怪談」柳広司
夏らしく「怪談」を読んでみた。
それも柳広司版である。
全部で6編。
雪おんな
ろくろ首
むじな
食人鬼
鏡と鐘
耳なし芳一
すべて、現代を舞台に書きなおされている。
どれもよく出来ているけど、「むじな」「鏡と鐘」がおもしろい。
「耳なし芳一(みみなしほういち)」は、ある意味けっさく。
原作では、平家物語の弾き語り・琵琶法師が平家の怨霊に招かれ、演奏を頼まれる話。
本作品では、現代にアレンジされて、ロックミュージシャンがライブハウスで「HEIKE」を歌う、って設定。
そのボーカルがヨシカズ(!)である。
・・・ここで、思わず笑ってしまう。
(だから、けっさくなのである)
【ネット上の紹介】
鮮やかな論理と、その論理から溢れ滲み出す怪異。小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの『怪談』を、柳広司が現代の物語として描き直した異色のミステリー。
「伝える力 「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を変える!」池上彰
平易な文章で、解りやすく解説されている。
具体例にも富んでいて理解しやすい。(ただし、2007年出版なので、話題が旧い)
インサイダー取引容疑で逮捕された村上世彰発言の問題点について
P76
「皆さんがぼくのことがすごく嫌いになったのは、むちゃくちゃ儲けたからですよ。2000億(円)くらい儲けたんではないでしょか」
(中略)
この発言で、彼の好感度は決定的に崩れ落ちました。
著者は、次のように発言したらよかった、と書いている。
P78
「一部、法を踏み外した点があったことは真摯に受け止めて、反省しています。二度とこうしたことがないようにしていきます。このためにも、経営者としての責任をとり、私はファンドの代表を辞任しました」
(中略)
「正しいか正しくないか」とは別に、「今、何を言うべきか」を判断する能力は、ビジネスパーソンに求められる資質といえるでしょう。
P183
改めて「使わないほうがよい言葉や文字」をおさらいしてみましょう。
・そして/それから
・順接の「が」
・ところで/さて
・いずれにしても
・絵文字の類
【ネット上の紹介】
仕事のさまざまな場面でコミュニケーション能力は求められる。基本であるにもかかわらず、意外と難しい。相づちを打ったり、返事をしたり、目をジッと見たり、あるいは反対に目をそらしたり…。「伝える」には、「話す」「書く」そして「聞く」能力が必須。それらによって、業績が左右されることも往々にしてある。現代のビジネスパーソンに不可欠な能力といえる「伝える力」をどうやって磨き、高めていったらよいのか。その極意を紹介する。
[目次]
第1章 「伝える力」を培う;
第2章 相手を惹きつける;
第3章 円滑にコミュニケーションする;
第4章 ビジネス文書を書く;
第5章 文章力をアップさせる;
第6章 わかりやすく伝える;
第7章 この言葉・表現は使わない;
第8章 上質のインプットをする
第147回芥川賞・直木賞が決まった。
芥川賞に鹿島田真希さん(35)の「冥土めぐり」
直木賞には辻村深月さん(32)の「鍵のない夢を見る」
【リンク】
第147回直木賞は辻村深月さんの「鍵のない夢を見る」に決定しました
第147回芥川賞は鹿島田真希さんの「冥土めぐり」に決定しました
桐野夏生選考委員の講評 直木賞辻村さんは…
芥川賞の鹿島田さん「力込めた作品」 直木賞は辻村さん 2012年07月17日
【おまけ】
今回、一部選考委員が代わり、世代交代がすすんだ。(もっと交替してもいいかもね・・・誰とは言いませんが)
■2012年2月21日石原慎太郎氏、黒井千次氏が芥川賞の選考委員を退任されました。
■2012年2月21日奥泉光氏、堀江敏幸氏が芥川賞の選考委員に就任されました。
「楽園のカンヴァス」原田マハ
織絵は、大原美術館で監視員をしている。
ある日、学芸課長・小宮山に呼び出される。
この美術館に監視員として勤めてかれこれ五年になるが、総務課はさておき、学芸課に呼び出されたことなど一度もない。
しかし、小宮山がさらに向かった先は、館長室だった。
アンリ・ルソーの大規模な展覧会が日本で企画されているという。
ニューヨーク近代美術館チーフ・キュレーター、ティム・ブラウンが、織絵を交渉の窓口にせよ、と指名してきたのだ。
「あらためて訊きますが、早川さん。ティム・W・ブラウン。ご存知ですね。あのニューヨーク近代美術館のチーフ・キュレーターだ」
(中略)
「早川織絵さん。あなたは、『一介の監視員』なんかじゃありませんね」
実は、織絵はソルボンヌで、コース最短の26歳で博士号を取得した隠れた過去がある。
当時、流麗なフランス語で次々に論文を発表して学会で話題になった。
しかし、今は、「事情」があり、アカデミズムから遠ざかっている。
第二章から、1983年スイス・バーゼルに舞台が移動する。
この時、謎の大富豪の邸宅で、若き日のティム・ブラウンと織絵は、アンリ・ルソーの絵の真贋で「対決」する。
・・・思った以上に面白かった。
2012年 第25回 山本周五郎賞受賞作品。
原田マハ作品を読むのは初めて。
機会があれば、他作品も読んでみたい。
PS1
著者略歴を見ると、美術史科卒業、約20年くらい、キュレーターのキャリアもあるそうだ。
今回は、満を持してのテーマ、と思われる。
(言わば、貴志祐介さんが、自身の保険会社勤務のキャリアを生かして、「黒い家」を執筆したようなもの)
→展覧会と小説を作ることで見えた都市の姿(第2回)/ 原田マハさん
PS2
最初、この作者は男性じゃないか、と思った。
なぜなら、ロマンチックすぎるから。
(調べたけど、やはり女性であった・・・つまり計算された演出、ということか)
ちなみに、原田宗典さんは実兄。
【参考】
参考までに、作品のテーマ・アンリ・ルソー作品を紹介する。(アンリ・ルソー - Wikipediaより)夢 1910年
飢えたライオン 1905年
眠るジプシー女 1897
【ネット上の紹介】
ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。その名作とほぼ同じ構図、同じタッチの作が目の前にある。持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、ヒントとして謎の古書を手渡した。好敵手は日本人研究者の早川織絵。リミットは七日間―。ピカソとルソー。二人の天才画家が生涯抱えた秘密が、いま、明かされる。
「アメリカのベジタリアンはなぜ太っているのか?」矢部武
アメリカ人を十把一絡げに論ずるのは乱暴だけど、(それでも)共通点はあるし、頷ける点が多い。
まず第1章・・・タイトルにもなっている「ベジタリアンなのになぜ太っているのか?」
P29
肉を食べなくても、アイスクリームやクッキー、パイ、ケーキ、ポテトフライ、ポテトチップス、キャンディ、ミルクセーキ、ソフトドリンクなど、ジャンクフードと呼ばれるものをたくさん食べれば肥満にもなるし、不健康にもなる。
第2章・・・「クリスチャンの国になぜ離婚が多いのか?」
P51
「アメリカでは教会へ行っていないと、地域社会の一員として認めてもらえないようなところがあり、とくに保守的な地域ではその傾向が強いのです。また、議員など公職に就こうとする人は、教会のメンバーにならないと、選挙になかなか勝てません。ですから、人々は名ばかりのクリスチャンになろうとするのです」
P56
アメリカの暴力と戦争の歴史は、建国時代にまでさかのぼる。彼らは「自分たちは神に選ばれた人間だ。だからアメリカを、世界を支配する資格がある」と、宗教を都合よく利用しながら先住民を殺して土地や財産を奪い、さらにメキシコやスペインなどと戦争して領土を拡大した。こう考えると、当時のアメリカ人の多くもまた、“名ばかりのクリスチャン”だったということになる。
P218
本書では、アメリカ人の不可解な心理と行動について述べてきた。
だが、読み進めるうちに、また冷製に分析してみると、「日本人にも当てはまるのでは?」と思った人も多いのではないだろうか。
「はじめに」でも述べたが、日本人はアメリカの経済力に必死で追いつこうとしているうちに、悪い面もたくさんもらってしまったのである。アメリカ人に似て日本人も、なんでも一所懸命にやらないと気がすまない人が多いから。
アメリカ人を批判しているうちに、火の粉は自分にかかてきた。
他人ごとではない。
【ネット上の紹介】
アメリカ人の思想・行動をたどっていけば社会全体の矛盾と仕組みが見えてくる。
[目次]
第1章 ベジタリアンなのになぜ太っているのか―簡単な解決策を求めたがる人たち;
第2章 クリスチャンの国になぜ離婚が多いのか―自由と権利ばかりを主張する人たち;
第3章 男女平等なのになぜ女性大統領がいないのか―本音と建前を使い分ける人々;
第4章 能力主義なのになぜ美容整形に殺到するのか―見た目がいちばんの能力と考える人々;
第5章 民主主義の国がなぜ戦争マニアなのか―大義名分で押し切ろうとする人々;
第6章 世界一豊かな国がなぜ超格差社会なのか―金品のみが豊かさのバロメーターだと考える人々;
第7章 やはり理解できないアメリカ人の心理―前向きだが自己中心的で傲慢な人たち
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「あんぽん 孫正義伝」佐野眞一
佐野眞一さんが、ソフトバンク・孫正義さんの伝記を書いた。
これは佐野眞一版『血と骨』、である。
いくつか文章を紹介する。
P253
インタビューで、3.11大震災について語っているシーン。
孫はインタビュー中、何度も「自分の非力さが悔しかった」と言って、涙ぐんだ。日本一の大金持ちがこの大災害に直面して、何もできない自分の「非力」さを嘆く。おべんちゃらではなく、その率直さに私は胸を打たれた。この大災害に際し、「自分の非力さが悔しかった」と言って涙ぐんだ政治家がいただろうか。
私はこの未曾有の大災害について誰がどんなことを言うかで、その人間の本性がわかると思っていた。
P254
石原(慎太郎)は震災後のテレビ番組で「孫なにがしが百億円寄付したって言うけど、あの男は本当に寄付したのかね?そんなことで人気取りした男に日本のエネルギー政策をまかせられるのか。大体、太陽や風車で日本の電力が本当にまかなえると思っているのかね?」という発言をして、孫への嫌悪感をあらわにした。
その後も石原は雑誌で「なぜ日本人はかくも堕落したのか」などという、自分のことは棚にあげたとんでもない夜郎自大な発言をして、その発表媒体ともども満天下に恥をさらした。私に言わせれば、いまや石原慎太郎は“使用済み核廃棄物”でしかない。
(言い得て妙である・・・byたきやん)
P395
私が本書で書こうと思ったのは、孫正義という特異な経営者はなぜ生まれたのか。それを朝鮮半島につながる血のルーツまで遡って探ることだった。言葉をかえれば、これは私なりの在日朝鮮人論であり、孫一族の「血と骨」の物語である。
以上、簡単に紹介したけど、読みごたえがあった。
一読をお勧めする。
【ネット上の初回】
ここに孫正義も知らない孫正義がいる 今から一世紀前。韓国・大邱で食い詰め、命からがら難破船で対馬海峡を渡った一族は、豚の糞尿と密造酒の臭いが充満する佐賀・鳥栖駅前の朝鮮に、一人の異端児を産み落とした。ノンフィクション界の巨人・佐野眞一が、全4回の本人取材や、ルーツである朝鮮半島の現地取材によって、うさんくさく、いかがわしく、ずる狡く……時代をひっかけ回し続ける男の正体に迫る。 “在日三世”として生をうけ、泥水をすするような「貧しさ」を体験した孫正義氏はいかにして身を起こしたのか。そして事あるごとに民族差別を受けてきたにも関わらず、なぜ国を愛するようになったのか。なぜ、東日本大震災以降、「脱原発」に固執するのか――。全ての「解」が本書で明らかになる。
![クリックして画像を拡大](http://www1.e-hon.ne.jp/images/syoseki/ac/58/32757058.jpg)
「勝ち逃げの女王~君たちに明日はない」(4)垣根涼介
4巻目、シリーズ最新刊。
垣根涼介さんには2つの大きなシリーズがある。
ひとつは「ヒートアイランド」シリーズ。
①「ヒートアイランド」
②「ギャングスター・レッスン」
③「サウダージ」
④「ボーダー」
もうひとつのシリーズが「君たちに明日はない」シリーズ。
リストラ請負人の話で、業界ネタ満載。
①「君たちに明日はない」
②「借金取りの王子」
③「張り込み姫」
今回読んだのが、このシリーズの4作目。
本シリーズは2作目が一番面白く、3作目で落ちる。
いくつか文章を紹介する。
P114(著者の仕事観が出ている)
(ようはさ、どんな企業に勤めてどんな役職になっているかっていうことより、そこでやっている仕事の、自分にとっての意味のほうが大事なんじゃないかなって)
さて、「好きこそものの上手なれ」というけど、やはり「才能」という壁は存在する。
次に、著者の「才能」への考え方が示されている。
P162
「(中略)次々と見せつけられる実力の差やセンスの壁に、それでも挫けずにその行為をやり続けるに値する、自分の中の必然です。それがあるかどうか。その気持ちだけが、その必然に支えられた情熱こそが、絶え間なく技術を支え、センスを磨き、実力を蓄えてくれる。また、それらの裏付けがあるからこそ、さらに情熱を持って長くやり続けられる。それが才能なんだって」
P197
テクニックではない。気持ちなのだ。
自分はどうありたいのか。何を表したいのか。何を、どう伝えたいのか。それを真摯に見極め、追求していく気持ちの強さ。それこそが、才能なのだ。また、その気持ちが強ければ強いほど、培ってきたテクニックも凄味を増す。
(努力している人にとって)救われる言葉の数々。
(精神論で解決できる場合もあるけど)・・・でも、報われない場合も多い。
私は「3月のライオン」(羽海野チカ)に書かれている言葉の方が現実に添っているように思う。
「信じれば夢は叶う」
それは多分本当だ
但し一文が抜けている
「信じて努力を続ければ夢は叶う」
――これが正解だ
さらに言えば
信じて
「他のどのライバルよりも1時間長く
毎日努力を続ければ
ある程度迄の夢は、かなりの確率で」
叶う――だ
【ネット上の紹介】
団塊の世代からバブル謳歌組、はたまたロスジェネ世代までリストラ請負人・村上真介が、サラリーマンの迷いをぶった斬る!イヤでもヤル気がわいてくる、痛快お仕事小説。
ナカガイジムスタッフ・石井夫妻がスペイン遠征中。
無事キャンプ場に到着したようです。(よかった)
約1ヶ月滞在予定で、新婚旅行も兼ねている。
しっかり楽しんできてほしい。
*奥さんが現地からブログ更新されている。
→キャンプ マスクン (07/05)
→ロデジャとキャンプ マスクン (07/08)
それにしても、夫婦揃って1ヶ月の有休とは、素晴らしい福利厚生である。
フツーの企業ではあり得ないでしょう。(ロストアロークラス?)
健康保険、厚生年金もあるし。
(他のジムはどうなんでしょう?)
「女子校育ち」辛酸なめ子
男性社会に於いて、我々の理解の及ばない言動を見る場合が有る。
我々男性と異なる意識・感性の潮流を見る時がある。
「それ」を解明する手助けとなるのが、この作品。
P142
オノ・ヨーコ、YOU、酒井順子、中村うさぎ、いとうあさこ・・・・・・皆、女子校出身者だと思うと何か通じるものがあるような気がします。彼女たちは、おそらく男性よりも女性の目を意識して表現活動をしている、それ故女性に嫌われにくいのでしょうか。
以前共学出身の女性が「男性にモテたいというのが仕事の原動力」と言うのを聞いて、ギャップを感じたことがあります。女子校出身者の場合は、男受けよりも、女子にモテたい、嫌われたくない、という意識で言動に注意を払います。
P148
「人は女に生まれるのではない。女になるのだ」と言ったのはボーヴォワール(女子校出身)ですが、女子校育ちの女性は大学や社会で男性と接するようになってから徐々に女になっていくのだと思います。思春期に一気に女になってしまうより、遅咲きの方が、女力省エネモードで長持ちするかもしれません。
女子校出身者は、弱い男性やダメな男性と付き合ってしまうことがある、と。
次は、精神科医・高橋龍太郎先生の言葉。P157
「そういう女性にとって、意外性は恋に落ちる大きな要素だからでしょう。ダメな男性ほど意外性を持っています。社会に背を向けて生きているような男性は、ダメさを武器に生きているので、女性は巧みに誘われ、自分しかわかってあげられないと思い込んでしまうのです」
【おまけ】
P14-15の女子校タイプ別図鑑、ってのがある。
すごく便利だし、力が入ってるのが分かるけど、私のような関西人には馴染みのない学校ばかり。
関西版のを作ってほしい。
・・・と不満を書いたけど、評判の本で、内容もつまっているので、楽しく読める。
【ネット上の紹介】
女子一〇〇%の濃密ワールドで洗礼を受けた彼女たちは、卒業後も独特のオーラを発し続ける。インタビュー、座談会、同窓会や文化祭潜入などもまじえ、知られざる生態をつまびらかにする。