著者は、退職後2004年から沖縄に住み、81歳になる2017年まで1,000回を超えるガイドを務めた。81歳でガイドを引退されたが、本書には、そのエッセンスが詰まっている。
【米軍侵攻略図】↓
【沖縄本島の軍事基地】↓
最後に追いつめられた場所・・・×印が米須海岸
「ギーザバンタ」の向こう付近から、この右側の荒崎海岸を回り込んだ辺り、この辺りに追い詰められ殺されるか捕虜になった場所です。
ここで何千人か何万人死んだか分かりません。(中略)
みなさんの右手の突端が荒崎海岸ですが、あの少しこちらに寄った辺りを「ひめゆり」の宮木喜久子さんらの一行が彷徨っていて、米兵とばったり出会ったのです。
6月21日のことです。米兵が自動小銃を乱射しました。
P10
沖縄で多い姓
①比嘉
②金城
③大城
④宮城
⑤新垣
P10-11
1609年に島津藩に侵略されて、それ以降は島津藩が、実質的な支配者になったのです。
そこで「大和風(本土風)の名字はまかりなあらぬ」として、東さんは比嘉さんに変えさせられました(1624年通達)。
沖縄では「大和風は駄目」「三文字姓に」
東→比嘉
船越→富名腰
徳川→渡久川
前田→真栄田
奄美では「一次姓」に
元(はじめ)
碇(いかり)
文(かざり)
中(あたり)
P68
朝鮮族の姓の部分は(金さん、朴さんなど)は氏を示す姓ではなく、一族の呼び名なのです。学術的にいえば、氏族名(CLAN)なのです。(中略)
従って結婚しても女性は姓の部分の呼び方が変わりません。子どもは男女ともに父親の「本貫」に入ります。(本貫=ある姓をつくった始祖の出身地)
P115
嘉数高台は沖縄に関する平和学習をする上で大事なところです。沖縄戦で本格的な地上戦が始まった場所であり、かつ目の前に見える普天間飛行場から沖縄の基地問題を説明できる場所でもあるのです。
【参考リンク】
歩く・みる・考える沖縄(1987年刊)
道の駅かでな - 嘉手納基地を一望
【番外編】
P109
日本では乳脂肪分が8%以上でなければ「アイスクリーム」と言ってはいけない、それ未満だと「アイスミルク」「ラクトアイス」などと表記しなければなりません。
サーターアンダギー
P112
これがうまいというより、「優美堂」のはうまい!(中略)ここの味を100点だとしたら、空港などで売っているのは50点だとボクは思っています。(ここまで言い切ったら空港店への営業妨害かも・・・大丈夫?)
【参考】
沖縄は全国でいちばん出生率が高い。未婚率はトップクラスで、失業率ではもうずっと最下位。(by「戦争とバスタオル」)
【ネット上の紹介】
父は沖縄のどこで、どのように戦死させられたのか―。沖縄戦とはどのような戦争だったのか―。どうして沖縄戦になったのか―。戦争を防ぐ、戦争を起こさないためにはどうしたらいいか―。これらを生涯の命題として沖縄案内の現場に立った名案内人の、オキナワと日本の現実をも問う「魂の平和ガイド」を載録して再現!
1 ホテル出発、南部の第一現場へ
2 ひめゆりの案内~第三外科壕の前で
3 「平和の礎」を歩く
4 「魂魄の塔」「米須海岸」案内
5 「嘉数高台」を歩く
6 「安保の見える丘」案内
「アメリカンビレッジの夜」アケミ・ジョンソン/真田由美子/訳
沖縄に取材したノンフィクション。
11人の女性たちが登場する。
『彼女たちの言葉から、複雑で矛盾に満ちた沖縄の歴史と現実が浮かび上がる』、とある。ジョン・ダワー氏も、『類いまれな語り手が、帝国の基地の町に生きるとはどういうことかを鮮やかに描き出す』、と褒めている。
P23
米兵が沖縄で女性をレイプするとき、沖縄は純真無垢な少女となる――悪漢アメリカによって連れ去られ、殴られ、組み敷かれ、犯される少女。日本政府はその悪漢を招き入れ、暴行を手助けしたポン引きだ。
P62
1970年、米兵が起こした交通事故が発端となったコザ暴動のさなか、数多くの沖縄人が米兵を殴り、車に火をつけたが、群衆は黒人を標的にしなかった。
P78
まもなく沖縄は在外米軍基地のなかでも選り抜きの赴任地となった。「その魅力と快適さから、兵士たちは競って沖縄勤務を希望する」と、ニューヨーク・タイムズ」紙は報じた。(競って希望した結果がこれか・・・)
P195
鈴代の考えでは、軍事訓練と性暴力は不可分の関係にある。「他者を差別し、自分の力を行使して意に沿わせる意識がなければ、兵士としてやっていけないからです」。
P232
米軍は公には買春禁止の立場をとるようになったかもしれないが、ときおり本音が露呈する。1995年の女子小学生強姦事件後、米太平洋司令官のリチャード・マッキー海軍大将は記者の前で事件について、「犯行に使用した車を借りる金があれば、女(売春婦)を買えたのに。三人はばかだ」と発言した。三人で売春婦をひとり雇えばすむことだからだ。
P251
ふたつの国と文化のなかで成長した作家パール・バックは、「アメラジン」という用語を作り、みずから混合人種の子供たちを重ね合わせ、その支援に情熱をそそいだ。
P278
普天間飛行場は「世界一危険な米軍施設」と言われてきた。(オスプレイは、その墜落事故の多さから「未亡人製造機(ウィドウメーカー)」の異名をとる)
P336
よく言われるジョークに、首相(安倍晋三)はドナルド・トランプの「愛犬」というものがあった。主人の足元でよだれを垂らし、何でも従う、と。
【参考図書】
「敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人」(上)ジョン・ダワー
「敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人」(下)ジョン・ダワー
「沖縄アンダーグラウンド」藤井誠二
「裸足で逃げる」上間陽子
【ネット上の紹介】
「対話はいつもあまりに単純化され、人々は口をつぐみ黙りこむ。矛盾をもっと認識することで人々は話しやすくなる」1972年に日本へ復帰するまでの27年間、アメリカに占領・統治され、その後も基地が置かれた沖縄は、戦後70年以上、基地との共生を強いられてきた。米兵による犯罪や事故、自然破壊もあとをたたない。2016年に20歳の女性が米軍関係者により暴行を受けて殺害されると、抗議デモは過去20年を通じて最大規模となった。米軍基地をめぐって対立する日米両政府と沖縄県。普天間基地の移設問題も混迷をきわめている。だが、沖縄の基地をめぐる問題を「賛成か反対か」と二極化することでこぼれ落ちてしまう現実がある。そう感じた日系四世の著者は、沖縄に生きるあらゆる立場の女性――沖縄戦で学徒看護隊に動員された女性、基地で働く女性、米兵との恋愛結婚を夢見る女性、アイデンティティに悩む「アメラジアン」、基地反対運動の活動家ら――の話を聞き歩いた。彼女たちの言葉から、複雑で矛盾に満ちた沖縄の歴史と現実が浮かび上がる。------------------------類いまれな語り手が、帝国の基地の町に生きるとはどういうことかを鮮やかに描き出すジョン・ダワー(『敗北を抱きしめて』著者)推薦------------------------【著者】アケミ・ジョンソン(Akemi Johnson)ブラウン大学東アジア研究学部卒、アイオワ大学大学院創作科修了。フルブライト奨学金を得て日本に留学中、沖縄に滞在したほか、京都アメリカ大学コンソーシアムでも学んだ。現在は沖縄について各紙誌に寄稿するほか、ジョージ・ワシントン大学、ハワイ大学などで教鞭をとる。初の著書となる本書でウィリアム・サローヤン国際賞にノミネートされた。【訳者】真田由美子(さなだ・ゆみこ)翻訳家。ノンフィクションの主な訳書にカーギル『聖書の成り立ちを語る都市』(白水社)、リンジー『まっくらやみで見えたもの』、ウィルソン『キッチンの歴史』(以上、河出書房新社)、コーエン『あなたはあなたのままでいい』(イースト・プレス)ほか、小説ではピアースの短編集『小型哺乳類館』(早川書房)がある。
【目次】
リナ
イヴ
アシュリー
サチコ
アリサ
スズヨ
デイジー
ミヨ
エミ
チエ
アイ
P31
第1章 消し去られた街、生の痕跡
第2章 変貌する夜に生きる者たち
第3章 闇社会の収奪システム
第4章 娼婦とヤクザと革命―幻の映画『モトシンカカランヌー』の「アケミ」を捜して
第5章 歴史の底に置かれた売春女性―佐木隆三が見た沖縄
第6章 「レイプの軍隊」と沖縄売春史
第7章 売春街の子どもたち
第8章 浄化の論理と、夜の身体と
終章 作家・沖山真知子の記憶
2018年 第9回 山田風太郎賞受賞
2018年 第160回 直木賞受賞
1952年から1972年返還まで、沖縄を舞台にした物語。
沖縄アンダーグラウンド、裏面史である。
541ページは読みごたえがあった。
今年のベストの一冊と思う。
P209
この島には二種類の子どもがいる。学校に通っている子と、通うことの出来ない子。戦争から数年を経ても、親や家のない、教育を受けられない浮浪児は残っている。(戦災孤児がいつから浮浪児と言われるようになったのだろう?)
P239
「おれは最近、思うんだよな。本当に目の仇にしなきゃならんのはアメリカーよりも日本人(ヤマトンチュ)なんじゃないかって。デモで声を上げるのが民主主義の基本だなんて復帰協は言うけど、この島の人権や民主制はまがいものさ。本物のそれらはもうずっと、本土のやつらが独り占めにしてこっちまで回ってきとらん」
【ネット上の紹介】
英雄を失った島に、新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染み、グスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり―同じ夢に向かった。超弩級の才能が放つ、青春と革命の一大叙事詩!!
「神に守られた島」中脇初枝
戦争末期、沖永良部島が舞台。
島に住む子どもの視点で描かれる。
3部構成になっている。
第一部=戦争末期、島の子どもたちの様子
第二部=特攻機が島に不時着する
第三部=敗戦を迎える
P108
「貴重な飛行機を失って、ぼくだけ生き残ってしまった」
伍長はまた海を見た。
「昨日、一緒に出撃したみんなは沖縄に辿りついて突入している。ぼくも昨日、みんなと一緒に死ぬはずだったのに。死んで神になるはずだったのに」
伍長は叫ぶようにそう言うと、頭を抱えた。
胸で人形が大きく揺れた。
ぼくたちも黙りこんだ。
波の音と鳥の鳴き声が沈黙を埋めていく。
「ここにいれば?」
カミがぽつりと言った。
【ネット上の紹介】
沖永良部島―沖縄のすぐそばにある小さな島は、大戦末期、米軍機による激しい攻撃を受けた。戦況が厳しくなっていくなか、島のこどもたちは戦争を肌で感じつつも、いきいきと過ごしていた。そんなある日、島に特攻機が不時着するという事件が起きる。
「キジムナーkids 」上原正三
戦後間もない頃の沖縄が舞台。
子どもの目を通して沖縄が描かれる。
ウルトラマンのシナリオライター上原正三氏の自伝小説。
5人の子どもたちを中心に周囲の大人たちも描かれる。
戦争をどう生き抜いたのか、ときおり登場人物たちの回想シーンが入る。
それは生きているのが不思議なくらいの凄絶な過去である。
P298
シュルシュル!夜明け前の空を切り裂くように光の矢が頭上を過ぎてゆく。艦砲射撃が始まったのだ。ハルはイモをカマスにつめて家族が避難する墓へ急いだ。ハルの目の前で爆弾が墓に命中した。ハルも爆風に飛ばされたがすぐに立ち上がり走り寄った。
「かあちゃん、とうちゃん!ああ」
両親が、おじい、おばあが砕けた墓石に埋もれて動かない。弟のヒデオの手が動いた。
「ヒデオッ」
ヒデオが目を開けた。
「ねえちゃん」ヒデオは微かに笑い、手を伸ばした。
「しっかりッ」
ヒデオはハルの手をしっかり握りしめた。ハルはヒデオを助けようと必死で引きずり出した。
ずるずると臓器が長く伸びている。ヒデオの内蔵だ。ハルはその場で気を失った。
P106
ひめゆりの塔の前で車を降りて塔に向かって歩き出した時、「セイちゃーん、セイちゃーん」と呼ぶ声がした。空耳かと思った。だけどまた聞こえた。「セイちゃーん」。見えた。ガマの方から小学校から一緒だったスミちゃんや隣の席で仲良くなったテルちゃんが笑顔で手を振りながら駆け寄ってきた。その姿は半透明でゆらゆら揺れ、次第に実体になった。
【感想】
おそらく、今年度ベスト作品、と思う。
お薦めです、読んでみて。
ちなみに、(本作以外で)沖縄を舞台にした作品、私の選ぶベストは…
【ネット上の紹介】
出会い、友情、冒険、好奇心、別れ…そして、希望。たくましく生きた子供たち“キジムナーkids”を、ウルトラマンのシナリオライターがみずみずしく描く自伝小説。
「黒島の女たち」城戸久枝
1945年、特攻隊は鹿児島の知覧、鹿屋、串良の飛行場から、沖縄目指して飛び立った。
しかし、全ての飛行機が沖縄に到着した訳ではない。
整備不良から、途中で墜落し、そのうち何人かが黒島に漂着する。
生き残った特攻隊員たちと黒島の人々との交流を描いたノンフィクション。
【感想】
城戸久枝さんと言えば、「あの戦争から遠く離れて」が有名。
私も読んだが、内容の濃い、素晴らしい作品だった。
本作は、それと比較するとイマイチ。
なぜなら、本来の内容は1章と2章で完了してしまうから。
残り6章まで、映画監督・小林広司さんとちえみさんの話に移行する。
それはそれで、読ませるんだけど…本筋はどうなったの?、と。
思い入れは強くても、作品としての完成度は低い。
【おまけ】
黒島という名の島はは日本中にある。
有名なのは、沖縄八重山諸島の「ハートアイランド」。
本作の黒島は、鹿児島・薩摩半島の南70kmにある島の事である。
小林広司さんの「黒島を忘れない」を先に読みべきだったかもしれない。
【参考リンク】
黒島について | 鹿児島県三島村
三島村ホームページ
黒島を忘れない 公式サイト
【ネット上の紹介】
1945年、春。6人の特攻隊員が、この島に不時着した。けんめいな介抱によって、いのちを救われた。あれから70年が過ぎて、いまでも交流は続いている。老いもあって、きずなは途絶える。記憶は風化される。それでも、あの戦争を語り継ごうとする人たちがいる。
プロローグ 船上にて
第1章 黒島の物語
第2章 黒島の長い一日
インターミッション 忘れられた島―
第3章 明るい母子家庭
第4章 サクラの家
インターミッション 最後の日
第5章 花になる
第6章 戦争を語り継ぐということ
エピローグ 忘れられない島
「裸足で逃げる」上間陽子
沖縄の方は、温和な方が多い、と思っていた。
普通にDV男がいるし、暴力団もいるし、暴走族もいる。
DVを受けて、「裸足で逃げる」女性たち。
彼女たちに寄り添った記録である。
P6
私たちは生まれたときから、身体を清潔にされ、なでられ、いたわられることで成長する。だから身体は、そのひとの存在が祝福された記憶をとどめている。その身体が、おさえつけられ、なぐられ、懇願しても泣き叫んでもそれがやまぬ状況、それが、暴力が行使されるときだ。そのため暴力を受けるということは、そのひとが自分を大切に思う気持ちを徹底的に破壊してしまう。
P77
沖縄の非行少年たちには、先輩を絶対とみなす「しーじゃー・うっとう(先輩と後輩)」関係の文化がある。
堕胎手術3日後にキャバクラに出勤した京香
P182
客のすすめる強い酒を飲むと、京香はすぐに出血した。
だが京香はその席を退席しなかった。自分にその席につくように言ったボーイに、
「ナプキン買ってこい!走って買ってこい!」というと、ボーイが買ってきたナプキンで処置を済ませてもう一度その席に戻り、今度はその客を酔いつぶした。
【ネット上の紹介】
沖縄の女性たちが暴力を受け、そこから逃げて、自分の居場所をつくりあげていくまでの記録。
まえがき―沖縄に帰る
キャバ嬢になること
記念写真
カバンにドレスをつめこんで
病院の待合室で
あたらしい柔軟剤 あたらしい家族
さがさないよ さようなら
調査記録
「生かされて生きて 元ひめゆり学徒隊“いのちの語り部”」与那覇百子
著者はひめゆり学徒隊の生き残り。
沖縄戦の生き証人である。
P35-36
「女学生さん、痛いよ、痛いよ」
大きな体をした兵隊さんが、子供のように痛がっています。
「どうしたんですか?」
「包帯を解いて傷口を見てくれ。痛くてたまらないんだ」
看護婦の資格を持っていない私たちは、勝手に包帯を解いたり巻き直したりしてはいけないと言われていましたが、軍医さんも看護婦さんもいないので、仕方ありません。言われるまま、血膿の付いた包帯を外しました。すると、血まみれの傷口に小さな白いものが、爪楊枝の束を上から見たようにびっしり埋まって、もぞもぞ動いているではありませんか。
「兵隊さん、これ何ですか?」
「うじ虫だよ。女学生さん、取ってくれ」
P37
艦砲射撃がやんでいる時間帯は、壕のなかはとても静かです。そんなとき、ギィギィと形容しがたい音があちこちから聞こえてきます。最初は何の音か分からなかったのですが、それは、うじ虫が肉を噛む音でした。
P178
動員されたひめゆり学徒隊
240人(生徒222人、教師18人)
生存者
104人(生徒99人、教師5人)
【経緯】
最初、「ひめゆりたちの沖縄戦」を読もうと思ったら絶版で、入手不可能。
図書館にもなかった。
そこで、原作を読むことにした。
それが、本書である。
【ネット上の紹介】
太平洋戦争末期の昭和二十年三月から六月にかけて、沖縄で繰り広げられた地上戦。沖縄師範学校女子部と沖縄第一高等女学校の生徒たち二百二十二人で構成された「ひめゆり学徒隊」は、負傷兵の看護要員として最前線に動員された。その一人である著者は、多くの仲間の死に直面する中で、自らも死を覚悟する。戦火をくぐり抜け奇跡的に生き残った著者が、時代を超えて語り伝える祈りといのちのメッセージ。
[目次]
第1章 忍び寄る戦火第
2章 南風原陸軍病院
第3章 仲間の悲劇
第4章 父との再会
第5章 南部への撤退
第6章 解散命令
第7章 自決か捕虜か
第8章 朝日を浴びて
第9章 収容所生活
第10章 鎮魂
「沖縄の70年 フォト・ストーリー 」石川文洋
沖縄の70年を写真とともに振り返る。
著者は、沖縄出身のカメラマン。
丹念に取材した内容を、深い愛情を込めて語る。
集団自決について
P27
沖縄戦での「集団自決」は、力の強い者が弱い者を殺したうえで最後に自殺することが多い。父は子や老いた両親を、夫は妻を、母は子を、というように殺す。
その方法も、鎌や包丁、カミソリなどの刃物で、のどや動脈を切ったり、胸を刺す。クワで後頭部を打つ、石や棒で頭を叩く。紐で首を絞める。子どもを岩の上に叩きつける。それが、あちらでも、こちらでも、集団で行われる。異常心理となり、敵に殺されるよりは、せめて自分の手でと考えての行動であろう。
この惨劇にまで追い込んだ皇民化教育や日本軍を憎み、「自決」とは絶対に呼びたくないという生存者もいる。
証言
P53
「子どもを殺して自分だけ生き延びようという親はひとりもいない。自分も死を決意して子どもたちをこれ以上苦しませてはいけないという気持ちでしょう。殺されるのなら自分の手で安らかにという、親の愛情だと思います。泣きながら子どもを殺している光景を、数カ所で見ています」
P120
2月4日、嘉手納基地内にはデモを警戒する米兵が一列に並んでいた、米兵たちには沖縄は多くの血を流して確保した島という占領意識がある。また世界の平和を守るために駐留しているという意識もある。米兵の思い上がった意識は、ベトナムにおけるものと同じであった。(1969年2月4日)
【感想】
フォト・ストーリー とあるので、写真集に説明文が添えられている作品、と想像していた。
その逆で、文章に写真が添えられている、と言った印象。
さまざまな証言を集めているが、よく胸の内明かしてくれたなぁ、と思う。
著者の人柄と関わりの深さゆえ、であろう。
【ネット上の紹介】
一九三八年に沖縄に生まれ、幼い頃に本土に移住した著者は、ベトナム従軍カメラマンとして、ベトナム戦争に関わる沖縄米軍基地を取材した。それをきっかけに、自らのルーツとも向き合いながら沖縄について考え続け、撮り続けてきた著者が、七〇年の歴史を、戦争と基地を軸に描き出す。カラー写真多数。
[目次]
第1章 沖縄に生まれて
第2章 沖縄戦の記憶
第3章 南洋群島の沖縄人―海のむこうの戦争体験
第4章 ベトナム戦争と沖縄
第5章 本土復帰
第6章 米軍基地一九七二~二〇一五
第7章 故郷を思う
「旅の人、島の人」俵万智
俵万智さんは、3.11の震災で小学生の息子と避難する。
仙台、山形、羽田から那覇、そして石垣島へ。
この本は、石垣島での様子が書かれている。
P131-132
石垣島に来てわかったのだが、ここは八重山諸島。本島とは違う言葉が数多くあり、「沖縄の方言」というふうには一くくりにできない。そして八重山の島々の中でもまた、さまざまな違いがある。
・・・例えば「ウエルカム」
本島「めんそーれ」
石垣島「おーりとーり」
黒島「わーりたぼーり」
宮古島「んみゃーち」
・・・例えば「畑」
本島「ハル」(畑で働く人「ハルサー」)
黒島「パタキ」
宮古島「パリ」
「#育児ことわざ」が紹介されている。(P113-115)
私の選んだベスト10は・・・
「ねこにもこんばんは」
「泣く子は黙らない」
「悪事の前の静けさ」
「花より団子虫」
「泣きっ面に鼻水」
「目の上のごはんつぶ」
「寝る子はものすごく早くおきる 」
「臭いものは蓋をしても臭い」
「寝た子は重い」
「鬼嫁の目にも涙」
【参考リンク】
八重山諸島とは? | 南ぬ島 石垣空港
いつか、八重山諸島に行きたいと思っているので、読んでみた。
湿度、紫外線、虫に注意。
【ネット上の紹介】
沖縄の石垣島に、息子と移住して三年あまり。旅の人というにはやや長く、島の人というにはまだ短い時間が流れた。住んでみて初めてわかること、慣れてないからこそ驚けること。旅人でも島人でもない宙ぶらりんだから見えるものを、楽しみながら綴った最新エッセイ集。
「砂の剣」比嘉慂
初期作品集。
次の7編が収録されている。
▼第1話/砂の剣
▼第2話/砂の落日
▼第3話/母について
▼第4話/砂の呼声
▼第5話/砂の兵士
▼第6話/学舎
▼第7話/喜劇土掘り
初期作品集であるが、すでに完成度は高い。
どれも佳作ばかり。
戦争がテーマで、戦時中の沖縄が舞台。
・・・と言っても、暗いだけの作品じゃない。
淡々と現実が描写され、ユーモアさえ感じられる。
戦争を題材にして、沖縄、文化、歴史が描かれる。
深く、濃い作品である。
【ネット上の紹介】
●あらすじ/太平洋戦争末期、沖縄の離島、前島に日本国軍の小隊がやってきた。名目は防衛。が、日本兵達は、水源である森の木を切り倒したり、爆弾を使って海の魚を獲ったりして、島を破壊していく。それだけでなく、軍隊がいるということは、敵軍の攻撃目標になるということも意味していた……(第1話)。
▼日本の敗戦で幕を閉じた太平洋戦争。沖縄の山を守る日本軍“山の部隊”は降伏を拒否し、敵前逃亡をした日本兵を殺したりと、身内である日本人に当たっていた。「生き残るために戦う」を信条にしていた湧川村長が、山の部隊の説得に行くが……(第2話)。
▼乳飲み子と、子供3人をかかえ、防空壕から墓の穴まで、戦火から逃げ続けた一人の母親の物語。命懸けで子供達を守ったこの母こそ、作者比嘉慂の実の母親である(第3話)。
●その他の登場キャラクター/海里分校長
「美童物語(みやらびものがたり)」(2)比嘉慂
シリーズ2作目。
1作目と同じく、戦時下の沖縄が舞台。
カマルが登場するが、周囲の人々にもスポットがあたる。
短編4編が収録されていて、いずれも味わい深い。
糸満売り―姉の章―
糸満売り―母の章―
ユタ
世を捨てよ
「糸満売り」
ヤンバルから糸満に身売りされた少女・キヨがメインに描かれる。
糸満から那覇まで魚を売りに来たキヨがカマルと出会う。
読み書きの出来ないキヨは、カマルにヤンバルの母への手紙を頼む。
「ユタ」
クラスメートの玉栄が将来ユタになりたい、と言う。
戦時下当時、ユタは迷信を広め、人心を惑わす、と言われた。P103
玉栄はユタになれるだろうか?
「世を捨てよ」
戦死した兵士の家に奉仕活動に来たカマルと美佐子。
その家のタツ子と仲よくなる。
一見、元気そうに見えるタツ子の母だが、タツ子から悩みを聞くことになる・・・。
1作目に劣らず、すばらしい内容であった。
これほどの作品はめったにない。
すべての図書館に常備して、広く読まれて欲しい。
ホント、そう思う。
【ネット上の紹介】
第1巻に続き、ノロ(女性司祭者)の家の娘・カマルの成長とともに描かれる戦時下の沖縄を生きた人々のドラマ。身売りされ行商となった少女・キヨの自立までを描く 『糸満売り(イチマンウィ)』母の章&姉の章ほか読み切り4編を収録。
「美童物語(みやらびものがたり)」比嘉慂
戦時下の沖縄を舞台にした作品。
少女・カマルの目をとおして描かれる沖縄の自然、人々、文化。
おもしろくて、レベルも高いであろうと、予測して読んだ。
それでも、その予想をはるかに超える充実度であった。
短編が4編が収録されている。
「風葬」
「ジュリ馬」
「方言札」
「仁政叔父さん」
私は、「ジュリ馬」と「方言札」が特に好き。
好きなシーンは、「仁政叔父さん」で、ヒーオバーのマブイが姿を顕しカマルと遊ぶところ。
表紙裏を見ると2007年2月23日のまま重版していない。
こんなに、すごい作品が。
いったいどうなっているのか?
読み終わった後、すぐ再読に入ったが、
何度読んでも泣けてくる。
ほんと味のある作品だ。
騙されたと思って、読んでみて。
沖縄文化に興味のある方もぜひ。
声を大にして薦める。
PS
美童(みやらび)とは少女・乙女の意。
折り返しには、このように説明されている。
もっとも美しく輝く年代に入った少女
また小さな女の子の成長に寄せる美しさもいう
広くとらえれば女性の美しさへの憧憬、
懐かしさとしても方言の会話で使われる
美しさとは特定の美形を指すのではなく
思春期の少女の持つ感受性の豊かさ、優しさ深さをいう
【ネット上の紹介】
ノロ(女性司祭者)の家に生まれたセジ(霊力)高い少女・カマルの目を通して描かれる、沖縄独特の風土を背景にした重厚な戦争ドラマ。死者の骨を浜で洗う儀式の真の意味を描く『風葬』ほか読み切り4編を収録。
【参考リンク】
比嘉慂『美童物語』 (07/23)
本作に匹敵する作品は、「夕凪の街 桜の国」「この世界の片隅に」くらいか?
こちらもオススメ
「遮断」古処誠二
淡々とした筆致、地味な作品。
売れている気配もない。
でも、すごい作品である。
沖縄戦を描いている。
友人の妻をともなって、前線を彷徨する。
職業軍人と地元住民の確執。
本土と沖縄の関係。
当時の沖縄の様子がリアルに再現される。
地味だけど、実力ある作家、と思う。
【ネット上の紹介】
置き去りにされた子供を捜して戦場を北上する。生きているはずがないと分かっていた。それでも、捜さずにはいられなかった。戦争という極限状態の下で、人は何を「信じる」ことができるのか?
PS
関連作品として、「沖縄軽便鉄道は死せず」(辻真先)をお薦めする。
こちらも沖縄戦が舞台となっている。
ヒットした様子はないが、内容レベルは高い。
(騙されたと思って読んでみて)
【ネット上の紹介】
太平洋戦争末期、沖縄は米軍の激しい空襲に曝されていた。本土疎開ももはや手遅れ。庶民の逃げる先はいまやヤンバル(本島北部)を覆う密林地帯しかなかった。沖縄刑務所もついに解散となり、収監されていた北城尚純もヤンバルに向かう。途中、老人の遺体にすがる少女に遭遇した。被弾した老人は酒蔵の主で、二百五十年の歴史をもつ古酒の甕を抱えていた。少女は父親が命と引き替えに守った古酒とともに逃げる決意を固める。囚人と少女の凄絶な脱出行が始まった。